Trademark Appeal Case
鉛フリーの品質表示性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2008−7741(T2008−7741/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第7類「軸受,ベアリング」及び第12類「軸受,ベアリング」を指定商品として、平成19年2月19日に登録出願され、その後、指定商品については、同20年11月17日付け手続補正書により、第7類「鉛を含まない軸受,鉛を含まないベアリング」及び第12類「鉛を含まない軸受,鉛を含まないベアリング」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、橙色の枠内の上部に白抜きで『鉛』と下部に枠内を白地にして『フリー』の文字を二段に書してなるところ、近年、欧州特定有害物質規制(RoHS)の影響で有害物質である『鉛』を使用しない製品が製作販売されている実状よりすれば、これをその指定商品中、『鉛を用いない軸受,鉛を用いないベアリング』に使用した場合、単にその商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。また、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できる程度に至ったものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
本件審判事件について、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、当審において職権に基づく証拠調べをした結果、下記の事実を発見したので、商標法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、証拠調べの結果を通知した。
記
1 本願商標は、橙色の枠内の上部に白抜きで「鉛」の文字と、その下部に、白地の枠内に「フリー」の橙色の片仮名文字とを上下二段に横書きにしてなるところ、該「フリー」の文字は英語「free」の表音を片仮名文字で表記したものと認められることから、「鉛」、「free」及び「鉛フリー」の各文字に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(1)「鉛」
「(lead)金属元素の一。元素記号Pb 原子番号82。原子量207.2。青みを帯びた灰色の金属。方鉛鉱などから採取。重く(比重11.3)かつ軟らかい。展性に富み、極めて薄い板に製しうるが、延性に乏しく、細線とすることはできない。湿った空気中では酸化されて表面が薄くくもる。そのまま、または合金および化合物として、鉛管・鉛板および蓄電池極板・活字合金・半田鑞などに用いる。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第六版」)
(2)「free」
(ア)「『 ・・から自由な』『・・を免れた』『・・のない』:tax−free免税の/accident−free/trouble−free/LEAD−FREE/POST−FREE」。また、「lead free」の項に、「<ガソリンなどが>無鉛の」との記載がある。(株式会社研究社発行「リーダーズ英和中辞典」)
(イ))「[複合語の第2構成素として](・・)のない、(・・に)煩わされない:lead-free <ガソリンなど>無鉛の」との記載がある。(株式会社研究社発行「新英和大辞典」)
(ウ)「(通例-freeで)(しばしば化合物として用いられる)特定の物質を含んでいない:a sugar-〜soft drink 砂糖を加えない清涼飲料」との記載がある。(株式会社小学館発行「ランダムハウス英和大辞典」)
2 「鉛フリー」に関する新聞記事情報
(1)「大同メタル、銅合金系軸受の鉛フリー率を6割に向上」の見出しのもと、「【名古屋】大同メタル工業は自動車用の銅合金系軸受における鉛フリー製品の比率を、数量ベースで現在の2割から09年度中に6割に引き上げる。環境規制強化の動きに伴って需要が高まっているため、犬山事業所(愛知県犬山市)に鉛フリーのメッキラインを1本新設して対応する。投資額は2億円。銅合金系軸受はディーゼルエンジンに用いられる。2011年までに欧州などで環境規制が強化されるため、鉛フリー軸受への移行が進んでいる。大同メタルは鉛の代わりにビスマスを主に用いた鉛フリー軸受を開発、欧州の自動車メーカーを中心に新規受注や採用車種拡大の動きが出ている。このため、ビスマス主体のメッキラインを新設するなどして鉛フリーの比率を高める。・・・主にガソリンエンジンに用いられるアルミニウム合金系軸受は、ほぼ鉛フリー化している。」との記事がある。(2008.8.4日刊工業新聞4頁)
(2)「大豊工業、銅合金ブッシュの鉛フリー化を推進」の見出しのもと、「【名古屋】大豊工業は幸海工場(愛知県豊田市)で軸受の一種である銅合金ブッシュの鉛フリー化対応を進める。2月末にも鉛フリーの銅合金素材を製造する新ラインを稼働させる。07年中には、自動車向け銅合金ブッシュのほぼ全量を鉛フリータイプに切り替える予定。08年から欧州の新廃車規制(ELV)で、エンジンベアリングや銅合金ブッシュにも鉛が使用できなくなるため、それに対応していく。・・・同社はすでにエンジンベアリングでは鉛フリー化を進めており、現在の鉛フリー化率は全体の80%程度。エンジンベアリングで培った技術を活用し、鉛なしでも既存製品と同等の性能を持つ銅合金ブッシュの開発に成功した。」との記事がある。(2007.02.09 日刊工業新聞4頁)
(3)「大同メタル、英・中フォードからエンジン用鉛フリー軸受を受注」の見出しのもと、「【ことば/鉛フリー軸受】鉛を含まない軸受(ベアリング)のこと。通常、自動車のエンジンなどに使う軸受は、ピストン運動で特に高負荷が加えられるため、強度とともに高い潤滑性が強く求められる。軸受素材には、やわらかく加工がしやすく、かつ潤滑性能に優れる鉛が一般的に使用され、軸受本来の部品特性を引き出す金属としてなくてはならないものと考えられていた。一方、鉛は環境負荷物質に指定され、欧州ではRohs指令などにより、使用が厳しく規制されており、軸受メーカーに対しても鉛を使わない部品の開発が求められている。」との記事がある。(2004.11.05 日刊工業新聞1頁)
(4)「クラレ、高耐熱ポリアミドを増産、愛媛・西条で3000トン体制」の見出しのもと、「クラレが耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」の本格展開に乗り出す。・・・耐熱特性としては融点が三百度C以上と高いことから、リフロー・ハンダ時の気泡発生を防止でき、ハンダの鉛フリー化による高温リフローにも対応できる。」との記事がある。(2003.08.28 化学工業日報1頁)
(5)「栗本鉄工所、漏水に強い鉛フリー銅合金を開発」の見出しのもと、「栗本鉄工所は漏水に強い鉛フリー銅合金『クリカブロンズ=写真』を開発した。環境負荷の高い鉛の代替材料としてニッケルを採用し、耐圧性能を確保した。バタフライ弁の軸受など水道用部材を主用途に売り込む。月内に銅合金鋳物メーカーにインゴットをサンプル出荷。先行品と同等の価格で07年4月に本格販売する予定。初年度に売上高2億円を目指す。」との記事がある。(2006.07.13 日刊工業新聞 13頁)
(6)「住金小倉、自動車用の無鉛快削鋼、米社に技術供与。」の見出しのもと、「住友金属工業の子会社の住友金属小倉(北九州市)は二十五日、自動車部品向け快削鋼の製造技術を米特殊鋼大手のティムケン社(オハイオ州)に供与することで合意したと発表した。住金小倉がホンダ向けに開発した鋼材で、北米での供給体制を確立する。技術供与するのはクランクシャフトに使う快削鋼。快削鋼は被削性を高めるため鉛を添加しているケースが多いが、欧米を中心に環境規制で鉛の使用制限が強まっている。住金小倉はホンダと協力しカルシウム、硫黄を添加した鉛フリーの快削鋼を開発した。」との記事がある。(2002.2.26 日経産業新聞 18頁)
(7)「NTN、鉛含まない滑り軸受け、夏から量産――フッ素樹脂など使用。」の見出しのもと、「NTNは自然環境に有害とされる鉛を含まない滑り軸受けを開発、夏にも量産を始める。摩擦を減らす目的で軸受けの内側に塗布している鉛化合物に替えて、充てん剤を混ぜたフッ素樹脂を使用した。自動車や一般産業機械に組み込む部品用などに売り込む。二年後をメドにすべての生産を鉛フリーの滑り軸受けに切り替え、四年後には月産百万個まで拡大する計画だ。」との記事がある。(2000.4.21 日経産業新聞 10頁)
(8)「松下電器、完全鉛フリーの蛍光灯用ガラス材料開発、電極部向けも」の見出しのもと、「松下電器産業は21日、蛍光灯の電極部に使える環境対応の無鉛ガラスの開発に世界で初めて成功したと発表した。ソーダガラス系の無鉛ガラスは現在、蛍光灯外管に採用され始めているが、今回の開発で蛍光灯ガラス材料の完全鉛フリーが可能になる。来月から、社内分社である照明社のガラス工場(大阪府高槻市)と中国・天津の2拠点で量産を始め、まず年産2000トン規模を目指す。翌月から同社で製造する1億3500万本の蛍光灯電極部のすべてを無鉛タイプに切り替える。」との記事がある。(2008.08.22 化学工業日報10頁)
(9)「旭プレシジョン、処理能力を拡充、環境対応型ニッケルメッキなど」の見出しのもと、「クロム・鉛フリーの濃黒色無電解ニッケルメッキ『フォスブラック3,』は、耐食性や耐摩耗性、硬度、耐熱性など各種黒色表面処理の特性を併せ持ちながら、無電解ニッケルメッキ液に含まれていた鉛を完全になくしたことで被膜中に鉛が含有する懸念がない。また、代表的な黒色メッキの亜鉛黒クロメートや黒クロムメッキのようにクロムを含まない。欧州RoHS指令など環境規制強化を背景に、光学部材の表面処理用途などを中心に伸びている。」との記事がある。(2008.08.20 化学工業日報3頁)
(10)「日立金属、鉛・カドミウムを大幅削減した鋳物継ぎ手を開発」の見出しのもと、「日立金属は23日、鉛とカドミウムの含有量を大幅に削減した鋳物継ぎ手を開発したと発表した。メッキメーカーの興和工業所と共同で、溶融亜鉛メッキに含まれる鉛の含有量比率を、従来の1・3%以下から0・003%以下に、カドミウムを0・4%以下から0・002%以下に引き下げたもの(いずれもJIS規格値)。09年4月までに新しいメッキ設備の準備を整え、順次、新商品に切り替える予定。価格は従来品と同程度を目指す。白継ぎ手は消火配管や空調配管などに使われ、高い防錆性能が求められる。・・・鉛にはメッキ炉の保護や、メッキのぬれ性(メッキ液の行きわたりやすさ)を向上させる役割があるが、環境負荷低減を目的に、興和工業所と鉛フリー化などに取り組んでいた。」との記事がある。(2008.07.24 日刊工業新聞15頁)
(11)「経営ひと言/山形東亜DKK・吉森洋社長『全員に資格取得』」の見出しのもと、「『ハンダ付けの技術は当社にとって基本中の基本』と強調するのは、山形東亜DKK(山形県新庄市)社長の吉森洋さん。このため従業員に『ハンダ付け技術の資格取得を促している』という。工場では鉛を使わないハンダ付けの作業を導入し、分析機器用の電子基板を生産する。だが『鉛フリーのハンダは鉛を使うものに比べて正確に接合しにくく、高い技能が求められる』。」との記事がある。(2008.04.07 日刊工業新聞6頁)
(12)「【地球環境大賞】受賞企業の現場から(下)地球環境大賞」の見出しのもと、「ところで、購入材料の中でもっとも有害物質含有の問題が起こるのは、はんだの中の鉛だ。たとえ「非鉛(鉛フリー)はんだ」でも、鉛は一定量含まれる。それだけに、法の規制濃度の1000PPM以下に管理するのは非常に重要だ。」との記事がある。(2008.04.04 FujiSankei Business i.13頁)
(13)「(成長術 元気な中小企業)日本スペリア社 環境に優しい鉛不要のはんだ開発【大阪】」の見出しのもと、「鉛を使わない、環境に優しい独自の『鉛フリーはんだ』を開発し、世界市場で成長を続けているのが、大阪府吹田市に本社を置く日本スペリア社(西村哲郎社長)だ。98年、スズと銅、ニッケルなどを使った独自の鉛フリーはんだを開発。松下電器産業のビデオ製品向けに採用されたことをきっかけに量産化にこぎつけた。世界24カ国・地域で特許を取得するなど、今では同社の主力商品となっている。」との記事がある。(2008.02.26 朝日新聞大阪朝刊10頁)
(14)「アルプス電、鉛フリーの光通信用非球面ガラスレンズ35種を開発」の見出しのもと、「アルプス電気は鉛を含まないガラスを使用した非球面レンズ(写真)35種類を開発した。4月からサンプル出荷する。家庭用光ファイバー通信回線(FTTH)や海底ケーブルなどの光通信用が対象で、同社従来品35種類を仕様変更なしで置き換えられる。サンプル価格は3675円。量産は8月から開始し、12月に月20万個を見込む。ガラスの原材料の一つである石英は硬いため、従来は鉛を混ぜて軟化し、加工しやすくしていた。新製品は鉛フリーにするため光学設計技術の活用や材料、製造プロセスの見直しで従来品と同じ仕様と価格を実現した。」との記事がある。(2008.01.17 日刊工業新聞9頁)
3 インターネット検索情報
(1)「大豊工業株式会社」のHP内の、「製品情報」中、軸受製品として、「鉛フリーエンジンベアリング」の記載がある。(http://www.taihonet.co.jp/product/beraring/engine/index.html )また、同HP内の、「技術開発の取り組み」中の「トライポロジーを核に、広がる研究・開発分野」の標題のもと、「環境負荷物質を含まない鉛フリー軸受」との記載がある。(http://www.taihonet.co.jp/technical/development.html)
(2)「フェデラルモーグル株式会社」のHP内の、「OEM」の「パワーシリンダーシステムズ」の標題で、「Bearing フェデラルモーグルは、エンジンベアリングとしてメインベアリング、スラストベアリング、コンロッドベアリング、小端部ブッシュなどを取り扱っています。エンジンの仕様に合わせて最適な材質が選択できるよう、幅広い材質を取り揃えております。また全材質の鉛フリー化をいち早く進めておりますのでお客様の鉛フリー化の要求にも応えることが可能です。」との記載がある。(http://www.federal-mogul.co.jp/oem/cylinder/bearing.html)
(3)「NTN株式会社」のHP内の、「製品・技術情報」内の「滑り軸受関連商品」として、「MLEベアリング」の説明において、「鉛フリーで環境にやさしくコンパクトな設計が可能。」との記載がある。(http://www.ntn.co.jp/japan/products/lineup/plainbearing.html)
(4)「日本精工株式会社」のHP中、「環境とNSK」の中の「開発・設計段階での取り組み」の標題で、「環境負荷物質の削減状況」中に、「事例1:クラッチパック用鉛フリー滑り軸受 自動車のオートマチックトランスミッション内には複数のクラッチパックやブレーキパックがあり、その回転支持部には転がり軸受とともに多くの滑り軸受が使用されています。滑り軸受には、潤滑性に優れているが環境負荷物質である鉛を20数%含有した銅合金が広く使用されており、お客様から軸受機能を低下させずに鉛の使用を廃止することが求められています。NSKグループで生産するクラッチパックは、ビスマス*7を代替物質とした銅合金の鉛フリー滑り軸受を適用し、2008年7月からのELV指令による規制に先駆けて対応を完了しました。」との記載がある。(http://www.jp.nsk.com/jp/csr/environment/development/index.html)
(5)三矢精工株式会社のHP中、「製品紹介」の「MF20」において「MF20はブロンズマトリックス中に高融点金属を均一に分散強化した、耐摩耗性、耐焼付性の優れた鉛フリー軸受です。」との記載がある。(http://www.mitsuya-seiko.co.jp/product/mf20.html)
(6)「白光株式会社」のホームページ(以下、HPという。)内の「製品情報」中、「鉛フリー対応製品とは? 鉛フリーはんだが主流になってきたのは何故?」の標題のもと、「1990年代に入り、廃棄された電子部品のはんだ付け材料(Sn−Pb等)が酸性雨により鉛(Pb)が溶け出して地下水を汚染する問題が起こりました。そこで、鉛を含まない鉛フリーはんだの研究が進められ、2000年以降には大手電機メーカーを中心にその実用化が始まり、現在では環境問題に対する世界的な気運の高まり(欧州連合が2006年7月1日に施行する有害物質規制:RoHS指令など)により、鉛フリーはんだの使用が主流となってきました。」との記載がある。(http://www.hakko.com/japan/namari/pages/index.html)
(7)「株式会社ミスミ」のHP内の、「カタログ専用Webサイト」において、「19インチラックマウントシャーシ(4Uマザーボード用)ATX、MicroATXマザーボード用 電源未搭載」の商品に、「鉛フリー」の文字を「鉛」と「フリー」の二段に横書して四角で囲んだ記載がある。(http://fpc.misumi.co.jp/catalogue/2007/html/PCBC-AREM4UMB.html)
(8)「日本サムスン株式会社」のHP内の、「エコ製品と鉛フリーについて」の標題において、FAQ中に、「Q3.サムスン電子では、鉛を含む製品と鉛フリー製品を容易に識別できる何らかの識別マークを製品に付けていますか。」との質問に対して、「サムスン電子では現在、製品(モジュール)およびパッケージ(モジュールおよびコンポーネント)にRoHS指令準拠のロゴマークを付けています。鉛フリーに関するJEDEC規格であるJESD97も、まもなく適用予定です。また、サムスン電子がSnPbバージョンと鉛フリーバージョンの両方の製品を供給する場合、鉛フリー製品(RoHS指令準拠)には固有の部品番号を付けます。ユーザーは、RoHS指令準拠の検索欄に製品コードを入力することによって、その製品がRoHS指令に準拠しているかどうか確認できます。」との記載がある。(http://origin.samsung.com/jp/products/semiconductor/divisionpolicy/Ecoproduct/FAQs.htm)
(9)「株式会社コンテック」のHP内の、「企業情報」中、「コンテックグループ 鉛フリー化、RoHS指令対応計画」の標題のもと、「製品の環境対応の識別管理のため、製品および梱包箱に以下のラベルを貼付しています。」として、「鉛フリー製品」に、「Pb」及び「free」の緑色の欧文字を二段に横書きし、楕円で囲んでいる記載がある。(http://www.contec.co.jp/corp/rohsdir_act_060105.html)
(10)「大同メタル工業株式会社」のHP内の、「製品紹介」中、「3 ダイダイン DDK05」の右横に、橙色の隅丸横長四角形の中に白抜き文字で「鉛フリー」との記載がある。(http://www.daido-dry.com/seihin/003/003.html)
(11)「株式会社アイ・オー・データ機器」のHP内の、「メモリー製品」の「DX533−GHシリーズ」の説明中に、「鉛&ハロゲンフリー」の説明文がなされ、その右横に「鉛フリー」及び「ハロゲンフリー」の文字を含む四角形の図形が記載されている。(http://www.iodata.jp/prod/memory/list/2005/dx533-gh/index.htm)
第4 証拠調べ通知に対する意見の要旨
前記第3の「証拠調べ通知」に対して、請求人は、平成20年11月17日付け意見書を提出し、要旨以下のように述べている。
1 本願商標について
本願商標は、「フリー」の片仮名三文字を取り囲む枠の上部が著しく拡幅(本願商標全体のうちの3分の2程度の領域)され、当該拡幅された上部に白抜き部分を設け、この白抜き部分によって「鉛」の漢字一文字を前記「フリー」の文字に対して極めて大きく構成されているという独創的な変形が施されており、構成全体として図形と文字との均衡がとられ、また、本願商標の文字部分を除く部分について、上記のとおりに部分的に著しく拡幅された上部と「フリー」の文字を取り囲む下部とは、黄金比(約1:1.618)に近い比率をもって分けられており、輪郭として使用される四角形等とは異なる印象を与えるものであり、ありふれた構成の域を脱する程度にまで図案化されているといえるのであり、「鉛フリー」の文字を単に枠で囲ったが如くの一般的な態様より構成されるものではない。
2 「フリー」又は「free」の文字について
本願商標の「フリー」の片仮名文字は、「自由なさま。解放的。」、「どこにも専属しない状態。無所属。」及び「無料」という多様な意味を有することから(広辞苑第四版(発行所 株式会社岩波書店 発行日 1991年11月15日)の第2274頁)、「鉛」の文字との関係において「鉛を含まない」という意味に直ちに理解されることはなく、本願商標の「鉛」及び「フリー」の文字を「鉛フリー」と組み合わせ得たとしても、「鉛に関係ない」、「鉛を含まない」、「鉛に煩わされない」といった多様な意味に理解されるものである。
3 証拠調べ通知書における新聞記事情報について
(1)の記事中の「鉛フリー」の文字は、「鉛に関係ない」、「鉛を含まない」及び「鉛に煩わされない」という多様な意味に理解され得るから、このような多様な意味から「鉛を含まない」という意味のみを容易に看取し得ることはない。
(2)、(5)及び(7)の記事中には、「鉛フリー」の文字自体に対する定義づけは一切なされておらず、「鉛なしでも既存製品と同等の性能を持つ」、「鉛の代替材料としてニッケルメッキを採用し」、「鉛を含まない滑り軸受けを開発」といった記載との関係においても、斯かる記事中の「鉛フリー」の文字は、「鉛に関係ない」、「鉛を含まない」及び「鉛に煩わされない」という多様な意味に理解され得るから、このような多様な意味から「鉛を含まない」という意味のみを容易に看取し得ることはない。
(3)の記事に記載されている文字は「鉛フリー軸受け」であり、「鉛フリー」の文字に対しては何ら記載されていないから、当該記事中の「鉛フリー」の文字は上記同様に多様な意味に理解され得る。
(4)、(6)及び(8)ないし(14)の記事は、ハンダ(はんだ)、快削鋼、蛍光灯ガラス材料、無電解ニッケルメッキ、鋳物継ぎ手及びガラスレンズに関する記載しか認められないから、斯かる新聞記事情報の受け手が本願指定商品の需要者であるとは到底認め難く、しかして、当該新聞記事情報は、「鉛フリー」の文字が本願指定商品の需要者に如何ように理解されるかについての判断材料たり得ないものである。してみると、証拠調べ通知書の「『鉛フリー』に関する新聞記事情報」には、本願指定商品の需要者との関係において「鉛フリー」の文字が「鉛を含んでいない」の意味合いを容易に看取し得るという実情については一切示されていない。
4 証拠調べ通知書におけるインターネット検索情報について
(1)ないし(5)及び(10)の記載中、「鉛フリー」の文字が如何なる意味で用いられているかについて、「鉛フリー」の文字が「鉛に関係ない」、「鉛を含まない」及び「鉛に煩わされない」という多様な意味に理解され得るから、このような多様な意味から「鉛を含まない」という意味のみを容易に看取し得ることはない。
(6)ないし(9)及び(11)の記載は、はんだ、ラックマウントシャーシ、半導体及びプリント基板に関するものであるから、斯かる新聞記事情報の受け手が本願指定商品の需要者であるとは到底認め難く、当該新聞記事情報は、「鉛フリー」の文字が本願指定商品の需要者に如何ように理解されるかについての判断材料たり得ないものである。
(7)の「株式会社ミスミ」のHP内には、現時点において同HP内を検索しても斯かる記載を見いだすことができず、また、仮に同HP内に「鉛フリー」の文字を「鉛」と「フリー」の二段に横書して四角で囲んだ記載があるとしても、斯かる記載は「19インチラックマウントシャーシ(4Uマザーボード用)ATX、MiroATXマザーボード用 電源未搭載」の商品との関係において表示されているにすぎず、本願指定商品の需要者とは何らの関係もない。
(9)及び(11)の記載は、「鉛フリーはんだで実装した製品」、「半導体部品」又は「プリント基板」との関係において表示されているにすぎず、本願指定商品の需要者とは何らの関係もなく、また、特異な態様でもって図案化された本願商標の構成とは明らかに異なる構成である。
(10)の記載は、同音同大で一定の間隔をもって横書きされた「鉛フリー」の白抜き文字が橙色の隅丸横長四角形の中に構成されているだけであり、上述のように特異な態様でもって図案化された本願商標の構成とは明らかに異なるものである。
5 本願商標の宣伝等について
(1)技術展等における宣伝等について
請求人は、「第10回機械要素技術展」(2006年6月21日から同23日まで開催。総来場者登録数75,267名)、「第9回関西機械要素技術展」(2006年10月11日から同13日まで開催。総来場者登録数26,530名)、「セミコン・ジャパン2006」(2006年12月6日から同8日まで開催。総来場者数109,800名)、「第11回機械要素技術展」(2007年6月27日から同29日まで開催。来場者登録数82,515名)及び「第10回関西機械要素技術展」(2007年10月3日から同5日まで開催。来場者登録数30,143名)に出展し、本願商標が表示されたパンフレット(平成19年11月28日付け意見書甲第19号証)を配布した。
(2)総合カタログ(2006−2007年版)による宣伝等について
「総合カタログ(2006−2007年版)」(平成19年11月28日付け意見書甲第7号証)に、本願商標を明示しており、該カタログは、2006年6月の時点で少なくとも20,000部が印刷されている。また、該カタログは、「第10回機械要素技術展」で1,700部、「第9回関西機械要素技術展」で900部、「セミコン・ジャパン2006」で300部配布されている。さらに、該カタログは、インターネットを通じた配布要求に対し、2006年度(2006年4月から2007年3月まで)に、合計1,455件配布された。
(3)総合カタログ(2007−2008年版)による宣伝等について
「総合カタログ(2007−2008年版)」(平成19年11月28日付け意見書甲第9号証)に本願商標を明示し、該カタログは、2007年6月の時点で少なくとも20,000部が印刷されている。また、該カタログは、「第11回機械要素技術展」で1,600部、「第10回関西機械要素技術展」で800部配布されている。さらに、該カタログは、インターネットを通じた配布要求に対し、2007年度(2007年4月から2008年3月まで)に、合計1,458件配布された。
(4)日本ベアリング新聞による宣伝等について
請求人は、2007年3月1日、同年4月1日、同年5月1日、同年6月1日、同年7月1日、同年8月1日、同年9月1日、同年10月1日、同年11月1日、同年12月1日、2008年1月1日、同年2月1日、同年3月1日、同年4月1日、同年5月1日、同年6月1日、同年7月1日、同年8月1日、同年9月1日、同年10月1日及び同年11月1日付け発行の日本ベアリング新聞の紙面の約2分の1の縦幅及び約3分の2の横幅の広告スペースにおいて、「オイレス#500」、「オイレス#2000」、「オイレス#300」、「オイレスルーテックE/E−02」及び「オイレスエアベアリング」の夫々の標題下に配置された軸受又はベアリングの写真の右上部に本願商標を表示し、且つ、当該広告スペースの下部に本審判請求人の名称を表示し、2007年2月15日、同年3月15日、同年4月15日、同年5月15日、同年6月15日、同年7月15日、同年8月15日、同年9月15日、同年10月15日、同年11月15日、同年12月15日、2008年1月1日、同年2月15日、同年3月15日、同年4月15日、同年5月15日、同年6月15日、同年7月15日、同年8月15日、同年9月15日及び同年10月15日付け発行の日本ベアリング新聞の紙面の約4分の1の縦幅及び全幅の広告スペースにおいて、「#80」、「#500SP」、「ルーテックE/E−02」、「ドライメットLF」及び「#2000」の夫々の標題と共に軸受又はベアリングの写真の右上部に本願商標を表示し、且つ、当該広告スペースの右下部に請求人の名称を表示している。
(5)「IEN(Industrial Equipment News)」(以下、「IEN」と称する。)について
平成19年12月1日付け発行の「IEN」に、本願商標を本願指定商品との関係において掲載した。
(6)「OILES NOTE 2008」による宣伝等について
「OILES NOTE 2008」には、本願商標が本願指定商品との関係において掲載され、2007年11月15日の時点において、「2008年版 オイレスノート A5一部4C」が1,760部、「2008年版 オイレスノート(1.2) A5一部4C」が3,852部、個人用の「2008年版 オイレスノート(個)」が499部及び代理店用の「2008年版 オイレスノート(代)」が15,019部印刷され、合計21,130部印刷されており、「2008年版 オイレスノート(個)」として分類された「OILES NOTE 2008」は予め予約していた個人に配布し、「2008年版 オイレスノート(代)」として分類された「OILES NOTE 2008」は代理店に配布し、その他の「OILES NOTE 2008」は、取引先、営業先に配布し、また、請求人の軸受又はベアリングの商品説明に用いられている。
(7)インターネット上における宣伝等について
請求人は、インターネット上において自社のホームページ(以下、「自社HP」と称する。)において、各種の本願指定商品の夫々との関係において本願商標を掲載している。自社HP内における本願商標は、遅くとも2006年9月から掲載され、現在に至るまで継続して掲載されている。
平成20年11月13日の時点において、自社HP内には「オイレス#80」、「オイレスエアベアリング」等種々の軸受又はベアリングとの関係において本願商標が掲載されている。
また、2006年9月から2008年10月までにおける自社HPへのアクセス件数は1,075,853件である。
(8)事業所及び代理店について
請求人の販売に係る軸受又はベアリングは、請求人の東京営業所、大阪営業所、名古屋営業所、豊田営業所、宇都宮営業所、太田営業所、水戸営業所、静岡営業所、浜松営業所、広島営業所及び九州営業所の夫々において販売され、また、各地域に営業所を有するダイドー株式会社、株式会社落合、株式会社三宝、藤川伝導機株式会社、高津伝動精機株式会社及び株式会社タツタといった代理店に委託販売されている。加えて、これらの代理店のホームページ(以下、「代理店HP」と称する)には、軸受又はベアリングとの関係において請求人を紹介している。
(9)販売数量について
請求人の販売に係る軸受又はベアリングの販売数量は、2006年度約19,200,000個、2007年度約18,400,000個である。
(10)本願指定商品の取引業界について
「2002 日本工業製品総覧」では、軸受又はベアリングの業者として121社が掲げられ、この中で、請求人は、無給油式ベアリング(オイルレスベアリング)又は無給油式軸受において国内5割のシェアを有する。
以上のことから、本願商標は、遅くとも2006年から現在に至るまで、上述の各技術展、総合カタログ(2006−2007年版及び2007−2008年版)、「OILES NOTE 2008」等の配布、日本ベアリング新聞、IEN及び自社HPへの掲載等に基づいて、本願指定商品との関係において需要者が何人かの業務に係る商品であると認識することができる程度にまで至っているものである。
6 商標法第4条第1項第16号について
本願指定商品は、本意見書と同日付け提出の手続補正書によって第7類「鉛を含まない軸受」及び「鉛を含まないベアリング」並びに第12類「鉛を含まない軸受」及び「鉛を含まないベアリング」に補正したことにより、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれはないから、本願は商標法第4条第1項第16号によって拒絶されるものではない。
7 むすび
本願商標は、ありふれた構成の域を脱する程度まで図案化されており、しかも、本願指定商品(第7類「鉛を含まない軸受」及び「鉛を含まないベアリング」並びに第12類「鉛を含まない軸受」及び「鉛を含まないベアリング」)についての商標の本質的機能に基づく使用態様によって使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる程度にまで至っているから、商標法第3条第1項第3号又は同法同条同項第6号並びに同法第4条第1項第16号の規定によって拒絶されるものではない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、四角を丸めた正方形の図形内に、上部から中央のやや下付近にわたって構成全体の約3分の2を橙色にし、その橙色内に白抜きされた「鉛」の文字を配し、さらに下部の約3分の1には橙色の輪郭線内に橙色の「フリー」の片仮名文字を配してなるところ、「鉛」及び「フリー」のいずれの文字も、やや太字であるが特別なデザインが施されているものではない。
そして、構成中の「鉛」の文字は、「金属元素の一」であり(株式会社岩波書店発行「広辞苑第六版」)、「フリー」の文字は、「・・・のない」(株式会社研究社発行「リーダーズ英和中辞典」及び同「新英和大辞典」)の意味を有する平易な外来語である。
ところで、前記第3の証拠調べによれば、以下の事実が認められる。(以下、文末の括弧書きの数字は、前記第3の項番を表す。)
(1)自動車用の銅合金系軸受に、鉛を含まない鉛フリー製品が存在し、近時の環境規制強化に伴い、鉛の代わりにビスマスを用いた鉛フリー軸受が開発されている(2(1))。
(2)軸受の一種である銅合金ブッシュについて、鉛なしでも既存製品と同等の性能を有する銅合金ブッシュの開発が進んでいる(2(2))。
(3)「鉛フリー軸受」が「鉛を含まない軸受(ベアリング)」と記載され、欧州ではRoHS指令などにより、軸受メーカーに対しても鉛を使わない部品の開発が求められている(2(3))。
(4)自然環境に有害とされる鉛を含まない滑り軸受の開発、量産が始まり、それが鉛フリーの滑り軸受と記載されている(2(7))。
(5)軸受製品を生産する企業の製品中に、「鉛フリーエンジンベアリング」の文字を付した商品が含まれている(3(1))。
(6)滑り軸受け関連製品の説明中に、「鉛フリーで環境にやさしくコンパクトな設計が可能」との記載がある(3(3))。
(7)クラッチパック用鉛フリー滑り軸受けの説明中に、「お客様から軸受機能を低下させずに鉛の使用を廃止することが求められています。NSKグループで生産するクラッチパックは、ビスマスを代替物質とした銅合金の鉛フリー滑り軸受を適用し、2008年7月からのELV指令による規制に先駆けて対応を完了しました。」との記載がある(3(4))。
(8)鉛を含む製品と鉛フリー製品とを容易に識別するため、鉛フリー製品に、「Pb」及び「free」の緑色の欧文字を二段に横書きし、楕円で囲んだラベルが存在し(3(9))、また、大同メタル工業株式会社のホームページ(以下、「HP」と称す。)内の製品紹介には、「3ダイダイン DDK05」の右横に、橙色の隅丸横長四角形の中に白抜き文字で「鉛フリー」の文字が記載されている(3(10))。
(9)軸受又はベアリング以外の各種製品においても、「鉛フリー」の文字が広く使用されている(3(6)ないし(8)及び(11))。
以上の事実からすれば、本願商標の指定商品を取り扱う業界においては、有害物質の環境規制強化に伴い、鉛を含まない軸受、鉛を含まないベアリングの開発や生産が行われており、鉛を含まない軸受及び鉛を含まないベアリングについて、商品の特徴を表すために「鉛フリー」の文字を付して取引されている実情にあるといい得るものである。そうすると、本願商標の構成中、「鉛フリー」の文字は、取引者、需要者において、鉛を含んでいないことを容易に認識させるものといえる。
そして、本願商標を構成する「鉛」及び「フリー」の各文字は、格別特徴のある字体ではなく、また、橙色の図形内に白抜きで文字を配置したり、あるいは、橙色の文字を配する構成についても、他社の「鉛フリー」の表示において橙色矩形内に白抜き文字を配する事例があること(前記第3 3(10))に照らすならば、単なる装飾的図形とみるのが相当である。また、本願商標の全体構成における橙色の配分構成についても、特別な図形的特徴を印象づけるとまではいえない。
そうとすれば、本願商標を指定商品に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、全体として、鉛を含んでいないという商品の特徴を理解、認識するにとどまるというべきであり、自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないとみるのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するというべきである。
なお、原査定は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨認定して本願を拒絶したものであるが、前記のとおり、本願商標は、同法第3条第1項第6号に該当するというべきであって、本願商標はこの理由をもって拒絶すべきものである。なお、商標法第3条第1項は、同一の法律要件(自他商品又は自他役務の識別力についての登録要件)に関する条項であって、同法第3条第1項第6号は、同法第3条第1項第1号から第5号までの総括条項と解されるものであるから、本願商標はその指定商品又は指定役務について同法第3条第1項第6号に該当すると判断するものである。
請求人は、証拠調べ通知に対する平成20年11月17日付け意見書において、本願商標は、枠に囲まれている文字は「フリー」であり、著しく拡幅させた枠の一部自体に「鉛」の文字を設けているという独創的な変形が施され、構成全体として図形と文字との均衡がとられ、また、上部と「フリー」の文字を取り囲む下部とは、黄金比(約1:1.618)に近い比率をもって分けられており、輪郭として使用される四角形等とは異なる印象を与えるものであり、ありふれた構成の域を脱する程度にまで図案化されている旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、「鉛フリー」の文字それ自体は、鉛等の有害物質の環境規制強化に伴い、「鉛を含まない」製品であることを識別するために付されて使用されている実情にあり、また、「鉛を含まない」という商品の特徴を強調するため、商品のカタログや広告等において、文字のデザイン化、着色等の表現手法が広く採用されているところであるから、前記した文字と図形から構成される本願商標は、特定の図形を連想させるような特異な構成からなるものとは認められないものであり、また、構成中の一部に色彩を施すといった手法は一般に行われているものであるから、本願商標の色彩の配分そのものに自他商品の識別力があるということはできない。
さらに、請求人は、本願商標の「フリー」の片仮名文字は、「自由なさま。解放的。」、「どこにも専属しない状態。無所属。」及び「無料」という多様な意味を有し、本願商標の「鉛」及び「フリー」の文字を「鉛フリー」と組み合わせたとしても、「鉛に関係ない」、「鉛を含まない」、「鉛に煩わされない」といった多様な意味に理解されることから、証拠調べ通知における証左は、「鉛フリー」の文字が需要者に如何ように理解されるかについて判断材料たり得ない旨主張する。
しかしながら、「フリー」の文字が辞書において多様な語義を含むものであるとしても、前記認定のとおり、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、「鉛フリー」の文字は、「鉛を含まない」という商品の特徴を表すものとして普通に取引されている実情にあること、さらに、請求人提出の平成19年11月28日付け意見書甲第19号証によれば、「オイレスドライメットLFは鉛フリー(鉛を含有しない)製品として安心してお使いいただけます。」と記載され、請求人自身が「鉛フリー」の文字を「鉛を含有しない」ものであること、すなわち、「鉛を含まない」という意味において使用しているものであるから、請求人の主張は採用の限りではない。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は自他商品・役務の識別標識としての機能を十分に果たしえるものであると主張すると同時に、本願指定商品との関係において宣伝広告され、販売された結果、需要者の間に広く認識される程度に至ったものであり、商標法第3条第2項により登録を受けることができる旨主張している。
ここで、自他商品の識別機能を果たし得ない商標が、使用により識別力を有するに至ったものとして登録が認められるのは、その商標と同一の商標及びその商標を使用していた商品又は役務と同一の商品又は役務に関する場合のみである。そして、当該商標が使用により識別力を有するに至ったかどうかは、実際に使用している商標ならびに商品又は役務の使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等及び広告宣伝の方法や回数などを総合的に勘案して判断されるべきものである。
そこで、上記観点から、請求人提出の平成19年11月28日付け意見書(甲第1号証ないし甲第20号証)及び同20年11月20日付け手続補足書(甲第1号証ないし甲第13号証)に基づいて、本願商標の商標法第3条第2項該当性について検討する。
(1)本願商標と使用商標の同一性について
請求人が提出する製品カタログのオイレスベアリング2006−2007及びオイレスベアリング2007−2008によれば、新製品紹介、選定の目安及び製品紹介の各カラー頁において、本願商標と同一の構成態様からなる標章が記載されている(平成19年11月28日付け意見書甲第7号証及び同甲第9号証)。
平成19年12月1日付け発行「IEN」には、紙面左上の約9分の1のスペースに、「OAB オイレスエアベアリング」の標題と共に、軸受又はベアリングの写真の右上部に、本願商標と同一の構成態様からなる標章が記載されている(平成20年11月17日付け意見書甲第3号証)。
「OILES NOTE 2008」のオイレスベアリングの標題(1ないし3頁)のもと、「プラスチック軸受・複層軸受」、「新製品紹介」、「金属軸受」、「直線往復動ユニット」、「オイレスエアベアリング」、「プレス金型用カムユニット」及び「樹脂金型用スライドコアガイドユニット」のそれぞれについて、本願商標と同一の構成態様からなる標章が記載されている(平成20年11月17日付け意見書甲第5号証)。
また、インターネットにおける請求人のHPにおいては、軸受又はベアリングの写真とともに、本願商標と同一の構成態様からなる標章が表示されている(平成20年11月17日付け意見書甲第7号証)。
以上からすると、本願商標と同一の商標が記載されたといい得るのは、オイレスベアリング2006−2007、オイレスベアリング2007−2008、平成19年12月1日付け発行「IEN」、「OILES NOTE 2008」及びインターネットにおける請求人のHPである。
なお、オイレスベアリング2006−2007及びオイレスベアリング2007−2008中の、樹脂系ベアリング寸法表、複層系ベアリング寸法表、金属系ベアリング寸法表及びスライドシフターの各頁において記載されている標章(平成19年11月28日付け意見書甲第7号証及び同甲第9号証)、請求人が技術展等において配布したと主張するパンフレットの右上部及び左下部の2箇所に記載されている標章(同第19号証)、2007年3月1日ないし2008年11月1日の毎月1日発行の日本ベアリング新聞の紙面の約2分の1の縦幅及び約3分の2の横幅の広告スペース及び2007年2月15日ないし2008年10月15日の毎月15日発行の同新聞の紙面の約4分の1の縦幅及び全幅の広告スペースにおいて、軸受又はベアリングの写真の右上部に記載した標章(平成20年11月17日付け意見書甲第1号証)については、本願商標と色彩が異なるものであるから、本願商標と同一のものであるということはできない。
また、請求人は各技術展において本願商標をパネル展示した旨主張するが、提出された写真(平成19年11月28日付け意見書甲第11号証3−(3)、同4−(3)、同甲第14号証6−(3)及び同甲第15号証7−(3))が不鮮明であり、これを確認することはできない。
(2)本願商標と同一の商標が使用された商品について
前記のとおり、オイレスベアリング2006−2007及びオイレスベアリング2007−2008中の新製品紹介、選定の目安及び製品紹介の各カラー頁、平成19年12月1日付け発行「IEN」、「OILES NOTE 2008」及びインターネットにおける請求人のHPにおいて使用されている商品は、本願の指定商品と同一といい得るものである。
(3)本願商標の使用等について
請求人の製品カタログであるオイレスベアリング2006−2007及び同2007−2008中の新製品紹介、選定の目安及び製品紹介の各カラー頁には、本願商標と併記して、緑色の葉状図形内に「RoHS」の白抜文字を配した標章が記載されているが、該標章の説明として、「RoHS指令対応製品にはこのマークが付いています。このマークの製品は、Pb、Hg、Cd、Cr+6(+6は上付文字で小さく記載されている)、PBB、PBDEの6物質の全てにRoHS指令規制値以内です。」と記載され、該標章が欧州委員会が制定したRoHS指令に対応した製品であることを示している(平成19年11月28日付け意見書甲第7号証2頁及び同甲第9号証2頁)。
同様に、本願商標と併記されている標章として、青色の円内に「標」の白抜きした文字を配した標章が「標準品」、灰色の正方形内に「素」の白抜きした文字を配した標章が「素材品」、黒色の正方形内に「受」の白抜き文字を配した標章が「受注生産品」、上下の横をやや太線にした青色の輪郭線内に「食衛」の青色の文字を配した標章が「食品衛生法適用」、正方形の上半分を黒色にしその中に「導電」の白抜き文字を配し、その下半分は黄色にしてその中に「N」の文字を右に倒した標章が「導電性」、そして本願商標と同一の構成態様からなる標章が「鉛フリー」と記載されている(平成19年11月28日付け意見書甲第7号証38頁及び同甲第9号証38頁)。
そうすると、前記の標章は、商品が「標準品」、「素材品」、「受注生産品」、「食品衛生法に適合」及び「導電性」を有するといった、その商品の品質を表すために使用されているものといい得るものであり、本願商標はこれらの標章と併記して使用され、かつ、本願商標の説明として「鉛フリー」と記載されていることからすれば、本願商標は、これに接する取引者、需要者において、その商品が「鉛を含まない」という商品の品質を表す標章の一類型であることを認識、把握するにとどまるものである。
また、平成19年12月1日付け発行の「IEN」(平成20年11月17日付け意見書甲第3号証)の広告においては、軸受又はベアリングの写真、そして写真の右上部に、本願商標が使用されているが、この広告の上部には、「OILES」の欧文字、「OAB」の欧文字及びその下に「オイレスエアベアリング」の表示、広告の下部には、「OILES」及び「オイレス工業株式会社」の表示があることから、上記広告は、自他商品の識別標識としての機能を果たすといい得る、「OILES」、「オイレスエアベアリング」又は「オイレス工業株式会社」の各商標をもってする請求人の取扱い商品の広告宣伝というべきであり、これらの各商標とともに表示された本願商標は、それ自体独立して取引の目的となるような態様で使用されたものとはいえず、本願商標が「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」とはいえない。
さらに、「OILES NOTE 2008」(平成20年11月17日付け意見書甲第5号証)においては、「プラスチック軸受・複層軸受」、「新製品紹介」、「金属軸受」、「直線往復動ユニット」、「オイレスエアベアリング」、「プレス金型用カムユニット」及び「樹脂金型スライドコアガイドユニット」の各文字の右横に本願商標が表示されているが、この広告の上部には、上記「IEN」と同様に、「オイレスベアリング」の文字が表示されていることからすれば、上記広告は、「オイレスベアリング」の商標をもってする請求人の取扱い商品の広告宣伝というべきであり、また、インターネットにおける請求人のHP(平成20年11月17日付け意見書甲第7号証)においては、軸受又はベアリングの商品名とその写真、そして写真の右横に、葉状図形内に「RoHS」の白抜文字を配した標章及び本願商標が小さく表されているが、いずれも各頁の左上部には、「OILES」及び「オイレスベアリング」の各文字が表示されているものであるから、上記各広告では、「OILES」又は「オイレスベアリング」の各商標をもってする請求人の取扱い商品の広告宣伝というべきであり、本願商標は、それ自体が独立して取引の目的となるような態様で使用されてきたとはいえないものである。
また、本願商標の使用期間についてみれば、製品カタログであるオイレスベアリング2006−2007によれば、「この内容は2006年6月現在のものです。」と記載され、「IEN」は2007年12月発行のものであること、「OILES NOTE 2008」には発行日が記載されていないこと、請求人のHPを複写した頁の右下には2008/11/13の記載があることからすれば、本願商標は少なくとも2006年6月時点の製品から現在まで約3年間使用されてきたといい得るものである。該製品カタログの配布先について、オイレスベアリング2006−2007は、「第10回機械要素技術展」、「第9回関西機械要素技術展」、「セミコン・ジャパン2006」及びインターネットを通じた要求に対して配布した旨、また、オイレスベアリング2007−2008は、「第11回機械要素技術展」、「第10回関西機械要素技術展」及びインターネットを通じた要求に対して配布した旨請求人は主張するが、請求人の提出する平成19年11月28日付け意見書甲第12号証には、例えば第8回機械要素技術展カタログ送付要求リストとして、81社が記載されているのみで、請求人の主張を裏付ける具体的な配布先のリストは提出されておらず、これを確認することができない。
さらに、請求人は、無給油式ベアリング(オイルレスベアリング)又は無給油式軸受において国内5割のシェアを有し、請求人の販売に係る軸受又はベアリングの販売数量は、2006年度約1,920万個、2007年度約1,840万個である旨主張するが、これら販売における本願商標の使用態様及び本願の指定商品との同一性については、客観的な証拠が提出されておらず、これを確認することはできない。
以上、請求人が提出した各証拠を総合して判断すると、本願商標については、これを使用した商品についての使用開始から約3年と短期間であり、また、製品カタログの配布先、商品販売における本願商標の使用態様及び本願の指定商品との同一性の裏付けがないものであり、かつ、同業者間における指定商品の市場占有率などは不明であり、使用状況を示す事実としては不十分といわざるを得ない。さらに、前記したとおり、本願商標の使用方法についても、本願商標がそれ自体独立して取引の対象となるような使用方法がされてきたとはいえなものである。
してみると、請求人の提出に係る各証拠によっては、本願商標がその指定商品に使用をされた結果、取引者、需要者が、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものということができない。
したがって、この点についての請求人の主張も採用することができない。
3 結論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
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