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Trademark Appeal Case

使用商標と登録商標の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成6年審判第17444号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件登録第2036225号商標(以下、「本件商標」という。)は、「PENFIELD」の欧文字を横書きしてなり、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコード、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和55年6月24日登録出願、同63年4月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2.請求人は、「本件商標の指定商品中『運動具』について、その登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第6号証及び参考資料を提出している。

(1)請求人は、「運動用特殊衣服等」について商標「PENFIELD」を付して販売することを企図しており、かかる目的のために、「PENFIELD」の文字を一連に書してなる商標を第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、平成6年8月4日付で登録出願をした(甲第3号証)。

しかしながら、この商標登録出願は、本件商標の存在を理由に拒絶される虞がある。

よって、請求人は、本件商標を取り消すにつき重大な利害関係を有するものである。

本件商標は、請求人の調査の結果、審判請求前3年間指定商品「運動具」について使用されていた事実が発見できなかった。また、不使用について正当な理由があったとも認め難いものである。

よって、本件商標は、指定商品中「運動具」については商標法第50条第1項の規定により登録を取り消されるべきである。

(2)本件商標は、「PENFIELD」のゴシック体の欧文字を一連に書してなるところ、被請求人が本件商標の使用証明として提出した乙第1号証乃至乙第5号証をみると、甲第1号証に示された本件商標と同一の商標を見出すことができない。むしろ、乙第1号証、乙第2号証及び乙第5号証に示されているのは、中空部に熊の頭が描かれた「P」を含む「Penfield」である。

商標法第50条第2項には、審判請求の登録前3年以内に日本国内において

商標権者等

がその請求に係る指定商品のいずれかについて

登録商標の使用

をしていることが、審判による商標登録の取消を免れるための条件として規定されている。ここにいう「登録商標の使用」とは、登録商標と社会通念上同一である商標の使用をも含むとされ、社会通念上同一とは商標を実際に使用するに当たり、外観構成が多少変更された場合であっても、同一の商標とみるということである。その例が、商標審査基準(特許庁商標課編 社団法人発明協会1995年7月20日発行)の第73頁乃至第78頁に示されている。

そこで、本件商標と被請求人の使用に係る商標(以下、「使用商標」という。)とを比較すると、それらの外観構成から「ペンフィールド」の称呼を生ずると認められるため、称呼については同一である。

しかしながら、外観構成を比較すると、本件商標が大文字のゴシック体の欧文字のみで構成されているのに対し、使用商標は、中空部に熊の頭が描かれた「P」を含む「Penfield」であって、本件商標の外観構成とは大きく異なり、両者の印象も全く異なる。この外観構成の差異に鑑みれば、本件商標と使用商標とは、前記審査基準を参照しても、社会通念上同一とはいえず、したがって、被請求人が提出した証拠は、「登録商標の使用」を立証するものではなく、指定商品について登録商標に類似する商標の使用、即ち、いわゆる禁止権の範囲での使用を立証するものであるため、本件商標の使用証明とはなり得ない。

なお、東京高裁 昭和55年(行ケ)第337号についての昭和57年9月30日判決は、登録商標の使用とは、商標権者が指定商品について登録商標の使用をする権利を専有する範囲、即ち、いわゆる専用権を有する範囲における登録商標の使用をいうものであって、商標権者が禁止権を有するに止まる範囲、即ち、指定商品についての登録商標に類似する商標の使用を含まないものと解するべきであると判示している。

登録商標の使用とは、商標法第2条第3項に規定される行為をいうのであって、乙第5号証によって示されている事項は、請求人の理解によれば、単に使用商標の称呼が「ペンフィールド」であること、及び中空部に熊の頭が描かれた「P」を含む「Penfield」をタイプすることが不可能なので「PENFIELD」を用いているということを示しているにすぎない。

即ち、被請求人は、本件商標と使用商標とが同一の商標でないことを自覚しているのであり、この点を取り繕うべく、乙第5号証を提出したにすぎない。事実、請求人の調査の結果、被請求人の商品に本件商標と同一の商標が付されているものは発見されず、全て中空部に熊の頭が描かれた「P」を含む「Penfield」であった(甲第4号証)。

したがって、乙第1号証乃至乙第5号証に示された使用商標は、本件商標と同一でないため、被請求人が立証する商標の使用は登録商標の使用とはいえない。

乙第6号証乃至乙第8号証を検討すると、使用商標は、あくまで中空部に熊の頭の描かれた「P」を含む商標「Penfield」であり、本件商標と同一の商標でない。

したがって、被請求人が主張する商標の使用は、登録商標の使用とはならず、被請求人は、本件商標を運動用特殊衣服に使用しているとはいえない。

乙第9号証及び乙第10号証を検討しても、使用商標は、あくまで、中空部に熊の頭の描かれた「P」を含む「Penfield」であり、本件商標と同一の商標ではない。

被請求人は、乙第10号証につき、「輸出用送り状(インボイス)には『Penfield』と明記されている。」と主張しているが、輸出用送り状は、被請求人の商品が日本に向けて輸出された事実を示しているにすぎない。

即ち、乙第9号証の商品カタログのみでは日本国内で商品が販売された事実を立証することができないため、乙第10号証を提出して日本国内に商品が持ち込まれた事実を示しているのである。

これに加えて、商標法第50条第2項には、商標権者等が、審判請求に係る指定商品について登録商標の使用をしていることを証明しなければ、商標登録の取消を免れない旨が規定されている。これを言い換えれば、商標登録の取消を免れるには商標権者等が登録商標を指定商品について使用していることを証明しなければならない。被請求人は、乙第10号証の輸出用送り状に基づいて本件商標が使用されていると主張するが、この輸出用送り状に示された貿易会社と被請求人との関係は不明であり、乙第10号証は、商標権者等による本件商標の使用を証明するものではない。

よって、乙第9号証及び乙第10号証は、本件商標の使用証明とはいえず、被請求人は本件商標を運動用特殊衣服に使用しているということはできない。

被請求人は、乙第11号証乃至乙第21号証を提出し、使用商標(中空部に熊の頭が描かれた「P」を含む商標「Penfield」)の周知著名性等を主張しているが、本件審判において判断されるべき事項は、本件審判の請求に係る登録商標が使用されているか否かであるので、被請求人の立証趣旨は不明である。

なお、この主張の中で、被請求人は、乙第17号証乃至乙第19号証に基づき、「現実に使用されていたことなど疑う余地の全くない程明白な事実である。加えて、商品に付されている商標が上述のように『P』を若干図案化したものであっても、取引の実際においては『PENFIELD』『ペンフィールド』印として用いられることもまた十分に明らかなところである。」と主張しているが、該各号証は雑誌等の記事であって、これでは商標権者等による登録商標の使用証明とはなり得ない。

よって、このような証拠により本件商標を請求に係る指定商品について使用していると主張する被請求人の主張は失当である。

以上のとおり、被請求人の主張には全く理由がなく、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品について登録商標を使用しているとはいえないものであるから、本件商標は指定商品「運動具」について登録を取り消されるべきものである。

(3)被請求人は、第二答弁書において、自他商品識別機能に変更を与えない限りでの変更は、商標の同一性を損なうものではないと主張しているが、特許庁審査基準には、登録商標の外観の態様の著しい変更使用は登録商標の使用とは認めておらず、即ち、登録商標の一部の使用、登録商標に他の文字を付加した使用等は、当該商標と外観、称呼及び観念において異なり、自他商品の識別標識として当該登録商標と同一の機能を果たすとはいえず、また社会通念上も同一とは認められていないので、被請求人の主張は失当である。

また、被請求人は、使用商標の第1文字「P」の中空部に熊の頭を結合した英文字「Penfield」が、本件商標と社会通念上同一である旨を主張していながら、被請求人は平成5年1月29日及び同2月10日に被請求人が実際に使用している商標を出願している(甲第5号証及び甲第6号証)。

仮に、被請求人の主張するとおり第1文字「P」の中空部に熊の頭を結合した英文字「Penfield」が、本件商標と社会通念上同一であるとするならば、甲第5号証及び甲第6号証に示されるような別個独立した商標登録出願をすることは全く不必要であり、結局本件商標と甲第5号証及び甲第6号証に示される商標とは社会通念上同一でないことを被請求人自身も十分認識した上で、当該商標について別途登録を受けようと企んでいることは明らかである。そうでないとすれば、被請求人は同一の商標について二重の登録を受けることを企図していることになる。

さらに、被請求人の提出した乙第1号証の第2頁右上部、乙第6号証の第2頁左上部及び乙第9号証の第2頁左

文字Pが実質上同一であるとする被請求人の主張は、事実の基礎的認識において既に重大なる誤謬を犯している。

一方、甲第5号証及び甲第6号証に示される商標登録出願が仮に商標登録された場合、熊図形と英文字「Penfield」の結合は、いずれを主要部とし、いずれを補助(付記的)部分とするかの判断を不能ならしめる程不可分一体に構成されており、甲第5号証及び甲第6号証に示される商標より熊図形を抽出したものを使用したとしても、その使用はもはや本件商標の使用であるとはいえない。

即ち、甲第5号証及び甲第6号証に示される商標登録出願により、本件商標の社会通念上の同一性の範囲は著しく限定されており、よって被請求人の主張は失当であるといえる。

3.被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由を答弁書において概要次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第25号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)被請求人は、本件商標を「運動用特殊衣服」に使用してきているから、請求人の主張は理由がない。本件商標「PENFIELD」は、被請求人がアメリカ合衆国において1975年以来継続して被服及び運動用特殊衣服に使用してきているものであり、当該商標を付した商品は遅くとも1978年以来今日まで日本国で販売されてきている。そして、被請求人は、その製造販売に係る多数の商品について本件商標を使用しており、当該商標は、被請求人のハウスマークとも言うべきものであって、極めて重要な価値を有している。

まず、被請求人は、本件商標を付した商品「ヤッケ」を日本向けに輸出している(乙第1号証及び乙第2号証)。なお、乙第2号証に表示された「CAPE HEIGHTS,INC.」なる会社は、被請求人が販売及び輸出業務を取り扱わせるために設立した子会社である。この商品(個別商標「TRAPPER」、製品番号10381)は、登山で防寒用に着用されるものであって、事実、米国の登山隊が1993年に世界最高峰のエベレストに登ったときに隊員が着用している(乙第3号証)ことから見ても、本件取消に係る指定商品中の「運動用特殊衣服」(ヤッケ)に該当することは明らかである。同号証では「Early Winters Overfire Jackets」と記されているけれども、これは被請求人がOEM(相手先ブランド)で米国の通信販売業者である「Early Winters」に提供しているからであって、商品そのものは被請求人の上記「TRAPPER」と完全に同一である(乙第4号証通販業者の証明書)。

そして、日本国では遅くとも平成5年末頃から、輸入業者を介してスポーツ用品店で「登山用ヤッケ」として販売されており、本件商標が使用されている(乙第5号証)。ここで、当該「ヤッケ」に使用されている「PENFIELD」商標(被請求人のハウスマーク)は、「P」が中空部に熊の頭を描いた形になっているけれども、乙第5号証に示されているように「PENFIELD」及び「ペンフィールド」印として取引に用いられている。したがって、本件商標「PENFIELD」と同一の商標を、被請求人が運動用特殊衣服に属する「ヤッケ」に使用していることは疑問の余地がない。

また、乙第6号証は、被請求人の商品「アノラック」が記載されたカタログであるが、この商品(個別商標「PAC JAC」、製品番号70150)も同様に日本国へ輸出されている(乙第7号証)。頭部全体を覆うフードなど、登山で着用するための各種機能を備えており、運動用特殊衣服の一種である「アノラック」に該当すること間違いない。

日本でも、複数の輸入業者を通じてスポーツ用品店で「登山用アノラック」として販売されていて、当該商品には本件商標が付されている(乙第8号証)。販売開始は遅くとも平成5年末頃であり、乙第7号証に記載された輸入業者のルートでは同年3月頃から販売されているものと考えられるが、いずれにしても本件審判請求の登録前であることは明らかである。

さらに、本件商標が付された被請求人の他の商品も多数が日本で輸入・販売されている。その一例は乙第9号証に示された登山用のパーカ(個別商標「STORMAWAY」、製品番号11493)であり、平成5年2月頃に米国の貿易会社(N.ASANO&CO.INC.)を経由して丸紅株式会社が日本へ輸入している(乙第10号証、輸出用送り状(インボイス)には「Penfield」と明記されている)。

このように、本件商標と同一の商標を付した被請求人の商品「ヤッケ」、「アノラック」及び「パーカ」が、本件審判請求の登録日前の3年以内に、日本国内に輸入され販売されたことが明らかである以上、請求人の主張は失当である。

本件商標はまた、被請求人が創作して1975年以来米国で使用してきているものである。被請求人の商品はもともと登山やカヌー、スキーなどの運動を行う際に着用することを目的として開発され販売されてきたが、その一部はカジュアルウェアないしタウンウェアとして消費者に愛用されるに至っている。日本国へは1978年以降、直接又は米国の貿易会社を経由して輸出している。被請求人は、当初「Penfield Sportswear,Inc.」(ペンフィールド スポーツウェア インク)と称していたが、1990年に「Bennett Atlantic, Inc.」(ベネット アトランティック インク)を設立し、業務を引き継ぐとともに販売部門を担当する「Cape Heights Inc.」(ケイプ ハイツ インク)を併せて設立し現在に至っている。そして米国では1997年に商標登録を受けている(乙第11号証)。

当初は日本との取引が少なかったこともあって、被請求人は日本国での商標登録出願を行わずにいたところ、「カキウチ株式会社」(当時は垣内商事株式会社)が1980年6月に第17類(乙第12号証)及び第24類の商品に関して商標登録出願をし、その内の後者が本件商標となった。実は、このカキウチ株式会社は米国法人を通じ、商標登録出願に先立つ1980年春頃に被請求人の前身であるPenfield Sportswear,Inc.に接触し、日本への商品輸出について打診を行った。被請求人はサンプルを提供するなど積極的に対応したけれども、結局継続的な取引関係を構築するまでには至らなかった(乙第13号証)。こうした経緯から見てカキウチ株式会社は、被請求人の商標を保護する目的で日本出願を行ったものと考えられる。但し、被請求人は出願に対し同意したこともなければ、話題にした記憶も全くない。

被請求人は、1981年に日本での出願を行うべく調査したところ上記カキウチ株式会社の出願を発見したが、同社の善意を信じて敢えて問題にしなかった。そして、第17類の登録(第1633655号)が存続期間の満了に近づく時期になって再度調査を行った結果、当該登録商標が請求人に譲渡されている(乙第12号証)事実に気付き、驚くとともにカキウチ株式会社に対して事情釈明を求めた(乙第14号証)。同社からの回答は乙第15号証に示されているとおりであり、出願時の事情は不明であるが、請求人から譲渡の申し入れがあり、同社としては使用しておらずその予定もなかったために60万円で譲渡したとのことである。そこで被請求人は、同一条件での本件商標の譲渡を求め、カキウチ株式会社が同意して本件商標が移転されることとなった次第である(乙第16号証)。 なお、第17類の登録第1633655号商標に関しては、登録名義人である請求人に対して合理的な条件での譲渡を申し入れたものの、専用使用権の設定を求められるなど、到底受け入れることのできない要求を突きつけられたため、交渉による解決を断念した。被請求人は商標法第50条の取消審判を提起しており係争中である(乙第12号証)が、必ずや取り消されるものと確信している。

本件商標を付した被請求人の商品(被服及び運動用特殊衣服)は、その優れた品質とリーズナブルな価格などのために米国では長年に亙って好評を博しており、日本国でも1990年以降人気が急上昇している。乙第17号証は、1993年2月に米国国務省・米国大使館が主催した「U.S.アパレル展’93」のパンフレットであり、第2頁に出展商品の一つとして本件商標が記載されている。また、乙第18号証は、ファッション関係の雑誌として長い歴史を誇る「MEN’S CLUB」1993年11月号に掲載されたいわゆるアウトドア商品のブランドを列挙した記事であるが、被請求人の本件商標も人気ブランドとして紹介されている。さらに、乙第19号証は、1994年2月に発行された「日本繊維新聞」及び「繊研新聞」の写しであり、同年の「U.S.アパレル展」の模様を紹介した記事が掲載されていて、本件商標を付した被請求人の商品が取り上げられており、人気の程が窺える。特に、同号証の1では「そして昨年から大ヒットしているのが『ペンフィールド』。・・・日本には直接輸出のみで商品を販売。90年から販売を開始し、93年に大きくジャンプアップした。」と記載され、下部に本件商標「PENFIELD」が明示されている。

以上のことからして、本件商標が被請求人の製造販売に係る商品を表示するものとして、本件審判請求前に日本国の取引者、需要者の間で広く知られるに至っていたことは明らかであり、ましてや現実に使用されていたことなど疑う余地が全くないほど明白な事実である。加えて、商品に付されている商標が上述のように「P」を若干図案化したものであっても、取引の実際においては「PENFIELD」「ペンフィールド」印として用いられていることもまた十分に明らかなところである。

被請求人は、請求人が上記第17類の登録名義人となるまで、請求人に関して何等の情報も持っておらず、当然ながら現在に至るまで取引関係も一切ない。初めて名前を聞いたときに日本の取引先に照会したところ、他社のコピー商品などを取り扱う会社との噂がある旨の回答を得て懸念していたが、その危惧は1993年秋に請求人が乙第20号証に示す商品等を販売するにおよんで、現実のものとなってしまった。なお、上述した第17類の登録商標に対する取消審判で、請求人は「PENFIELD」を当該審判請求の登録日(平成5年3月16日)前に使用したと主張しているけれども、被請求人の知る限り、同年秋までは使用していない筈である。乙第20号証の商品は、「P」の文字を図案化するなどして被請求人の商標に似せようとしている工夫が見られるばかりでなく、被請求人の所在する米国のマサチューセッツ州を直観させる「MASSACHUSETTS U.S.A.」の文字を「PENFILD」商標の直下に表示するなど、故意に被請求人商品との混同を狙っていることが明白である。上記乙第19号証の1には、「『ペンフィールド』は昨年急激に売れたため、問題も多い。例えばコピー商品が多発していることがその一つ。昨年できた東京近郊のアウトレットモールの中の某店では、コピー商品が膨大なボリュームで並ぶ。」との記載がある。

さらに請求人は、被請求人が使用している「P」のロゴマークのデッドコピーと「PENFIELD」の文字を組み合わせてなる商標を、平成5年1月28日に商標登録出願している(乙第21号証)。この出願商標は、被請求人が1980年代の一時期に実際に使用していた形そのものであり、請求人は被請求人のカタログ等を見て商標見本を作成したのであろう。因みに、被請求人は一日遅れで「Penfield」のロゴマークを出願している。

要するに、請求人は被請求人の周知商標「PENFIELD」が第三者の名義になっていたことを奇貨とし、被請求人が多年にわたる努力で築き上げてきた信用を横取りしようとの意図の下に、本件審判請求におよんだものといわざるを得ない。このような行動が商標法の精神に反することは論ずるまでもないところであって、本件審判請求が容認されるようなことは決してあってはならないことである。

上述のとおり、本件商標は、被請求人が遅くとも平成5年11月頃から日本において、運動用特殊衣服に属する「ヤッケ、アノラック」その他の商品に使用しているから、商標法第50条により取り消されるべきではない。

(2)商標法第50条の規定による登録の取消を免れるためには、登録商標を使用していることが必要であって、登録商標と類似する商標を使用しているのでは足りないということは、請求人の指摘を待つまでもなく、当該規定の趣旨からして当然のことである。問題は、「登録商標の使用」とは何かということであって、この点に関し請求人は極めて抽象的な議論を展開しているに止まる。

請求人も認めているように、商標法第50条にいう登録商標の使用とは、登録商標と物理的に同一の商標は勿論、これと社会通念上同一と認識される商標の使用も含まれることは、特許庁の審査基準に明示されかつ判決例でも首肯されているところである。請求人は、使用商標の第1文字「P」の中空部に熊の頭を描いた「Penfield」が、登録商標と社会通念上の同一性を欠くと主張するが、明らかに誤りである。蓋し、商標の本質的な機能が出所表示にある以上、その同一性を判断するにあたっても自他商品識別標識機能こそが考慮されるべきであり、これに影響を与えない範囲での変更は、商標の同一性を損なうものではないからである。

使用商標の第1文字は、中空部に熊の頭を模した図形が描かれているけれども、一見して欧文字「P」を表したものと直観されるから、当該商標が「Penfield」として認識されることに疑問の余地など全くない。事実、取引の現場では「PENFIELD」「ペンフィールド」印として通用している(乙第5号証)。なお、請求人がこの証拠を提出した理由は、乙第1号証等に示した商標が実際の取引でどのように認識されているかを立証するために他ならず、商標法第2条第3項の使用の定義とは直接関係がない。請求人は、第1文字が「P」であり、したがって被請求人の使用商標が「ペンフィールド」の称呼を生ずる「Penfield」であることを認めながら、外観の相違を根拠に登録商標「PENFIELD」との同一性を否定しているけれども、意匠であればともかく、文字商標の同一性判断にとって外観は決して大きな意味を持たないというべきである。

ちなみに、「WILCO」の文字をゴシック体で書してなる使用商標は、「W」の文字を他の文字より少し大きく表示して横書きし、「W」の右下端から右方へ他の文字の下方にやや湾曲した線を引き、その線の右端を上方え立ち上がらせ、かつ、右方向に小さく半円状の弧を描いてなる登録商標「WILCO」と社会通念上同一であるとした判決(東京高裁昭和63年<行ケ>第239号、乙第22号証)を指摘しておく。この例では、登録商標は第5文字「O」の後ろに「r」、「s」及び「p」などが表されているとみることもでき、本件の場合と比べ両者の乖離はより大きいが、外観において著しく相違するものでなく、その称呼も共通であるとして同一性が肯定されている。

したがって、被請求人が登録商標と社会通念上同一の商標を使用していることは明らかであって、請求人の主張は失当というほかない。

さらに、被請求人は、上述した「P」にデザインを加えた商標と併せて、通常のゴシック体で表示した「PENFIELD」を商品のタッグに使用している(乙第23号証)し、1992年の春物カタログまでは、熊の頭を描いた「P」の下にこれと分離した形で「PENFIELD」を表示していた(乙第24号証)。また、1994年2月に開催された「第13回U.S.アパレル展」のパンフレットにも、通常のゴシック体で「PENFIELD」と表示した広告を掲載した(乙第25号証)。被請求人は、既提出の乙号証によって、本件商標の使用を十分に立証したものと確信しているが、これらもまた、本件商標の使用であることは一目瞭然である。

4.そこで判断するに、被請求人の提出に係る乙第17号証(U.S.アパレル展’93パンフレットの写し)によれば、ケ−プ・ハイツ社が、東京都豊島区池袋に所在するサンシャインシティ ワ−ルドインポ−トマ−ト7Fにおいて、本件審判請求の登録前3年以内の1993年(平成5年)2月8日から同年2月10日に開催されたU.S.アパレル展’93(主催 米国商務省・米国大使館等、後援通商産業省・日本貿易振興会等)に本件商標と同一の文字よりなる商標をその指定商品中の「運動用特殊衣服」に属する商品である「マウンテンパ−カ−」等を出展している事実が認められるものであり、さらに、被請求人の提出に係る乙第19号証の1(平成6年2月9日発行日本繊維新聞の写し)によれば、U.S.アパレル展は、翌年の2月にも開催され、ケープ・ハイツ社は前年同様に出展していることが認められる。

つぎに、ケープ・ハイツ社は、被請求人の提出に係る乙第14号証及び被請求人の主張を勘案すれば、被請求人から通常使用権を許諾されている者と認められる。

してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者によって本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件取消請求に係る商品について使用していたものといわなければならない。

したがって、本件商標の指定商品中請求に係る商品についての登録は、商標法第50条の規定により取消すことができない。

よって、結論のとおり審決する。

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