Trademark Appeal Case
著名商標の類否と悪意登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900369(T2008−900369/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5144396号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成19年6月8日に登録出願、第14類「時計(「計時用具」を含む。),時計の部品及び附属品(「計時用具の部品及び附属品」を含む。)」を指定商品として、同20年5月13日に登録査定、同年6月20日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出した。
(1)使用商標
申立人が使用しているとして引用する商標は、以下の(ア)ないし(エ)のとおりである。
(ア)別掲(1)に表示する本件商標と同一の構成よりなる商標(以下「使用商標1」という。)
(イ)地の色が黒地である以外は別掲(1)に表示する本件商標と同一の構成よりなる商標(以下「使用商標2」という。)
(ウ)「MILLE MIGLIA」の欧文字よりなる商標(以下「使用商標3」という。)
(エ)「1000 MIGLIA」の欧文字よりなる商標(以下「使用商標4」という。
以下、まとめて「使用商標」という場合がある。
(2)商標法第4条第1項第7号該当について
使用商標は、申立人及びブレシア自動車クラブが主催・事務局となって運営してきたイタリアの正当なクラシックカーレースの名称及びそのシンボルマークとして広く知られているものである。本件商標は、申立人の使用商標1とほぼ同一であり、また、使用商標2とは色彩以外はほぼ同一である。さらに本件商標は、使用商標4と同一の文字をその構成中に含み、また、その文字から生ずる称呼は申立人の使用商標3から生ずる称呼と同一である。
商標権者は、「MILLE MIGRIA」カーレースの唯一の公認主催者である申立人から何ら許可を得ることなく本件商標を出願した。この点、商標権者は、イタリアの「MILLE MIGRIA」カーレースの協賛・特別協賛(オフィシャルスポンサー)をしてきたことから、商標権者が、前記申立人の使用商標が申立人の商標であることを本件商標出願以前から知っていたことは明らかである。
このような本件商標の登録を認めることは、正当なクラシックカーレースの名称及びシンボルマークとして広く知られているものを正当な権原を有する異議申立人又はブレシア自動車クラブ以外に認めることであり、信義則に反し、我が国の国際的信頼をも損なうおそれがあり、ひいては国際信義にも反するものとして公序良俗に反するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)申立人の使用商標は、申立人の商標としてイタリア、日本、その他の外国において著名な商標である。本件商標は、使用商標1とほぼ同一であり、また、使用商標2ないし4と類似する。商標権者は、申立人及びその関連団体が主催・事務局・後援をしている、申立人の業務に係るカーレースのスポンサーであるが、申立人の許可を得ることなく本件商標を出願し登録を受けた。
本件商標の登録を認めると、需要者が、申立人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、需要者が出所について誤認を生ずるおそれがある。また、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係にある者の業務に係る商品又は役務であると誤認するおそれもある。さらに、申立人の商標に化体された業務上の信用が不当に害され、著名な申立人の使用商標を希釈化させ、そのブランド価値を損なわせることになる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)申立人の使用商標は、申立人の商標としてイタリア、日本、その他の外国において著名な商標である。本件商標は、使用商標1とほぼ同一であり、また、使用商標2ないし4と類似する。商標権者は、本件商標の商標登録出願以前から著名な申立人の使用商標を熟知していながら、使用商標1とほぼ同一であり、使用商標2ないし4と極めて類似する商標を、申立人の許可無く日本において出願し登録を受けた。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 当審の判断
(1)申立人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)イタリアのブレシア自動車クラブは、1927年から、一時期中断があったものの、「MILLE MIGRIA」というカーレースをイタリアで開催してきたこと。また、上記カーレースには、前記2(1)(ア)ないし(エ)の各商標と同一構成からなる商標(「使用商標1と同一構成よりなる商標を「ミッレ・ミレア商標1」のようにいい、これらをまとめていうときは「ミッレ・ミレア商標」という。)が使用されてきたこと。(甲第6号証、甲第7号証)
(イ)我が国では、1992年にフジテレビジョンが日本へ「MILLE MIGRIA」をレースごと招いて開催し(甲第8号証)、一時中断したものの、1997年からテレビ朝日が主催し、また、2003年からテレビ朝日及びFORZAが主催し、ブレシア自動車クラブが後援者となって「La Festa Mille Miglia」が毎年開催され、テレビ放送やラジオ放送がされていること(甲第8号証ないし甲第17号証)。
当該レースには、ミッレ・ミレア商標1及び別掲(2)からなる商標が使用されたこと(甲第9号証ないし甲第19号証)。
また、「La Festa Mille Miglia」に関連してイタリアの「Mille Miglia」がわが国においても紹介されていること(甲第20号証)。
なお、イタリアのMille Miglia委員会より公式に大会のシンボル“赤い矢印”の使用が承認され、姉妹イベントとして公認された国際大会は、日本の上記大会のほか、アルゼンチンの「1000 Millas Sport」及び米国の「California mille」があること(甲第11号証)。
(ウ)「MILLE MIGRIA」は、1977年に50周年記念の際にブレシアからローマへの往路及び復路のレースの復活が計画され、そのために組織的な支援及び資金が必要となり、その発起人の内いくつかの者(団体)がブレシア自動車クラブとともに主催者・事務局となり、名称と商標の所有者となったこと(甲第7号証)。
申立人は、使用商標とそれぞれ同一構成からなる国際登録商標(国際登録779502、国際登録556437、国際登録555346、国際登録776355)をイタリア等の国々を指定して所有にていること。なお、日本を指定国とするものはない(甲第2号証ないし甲第5号証)。
(エ)商標権者は、イタリアの「MILLE MIGRIA」については、1988年から公式スポンサーとなっており(甲第8号証、甲第26号証、甲第37号証ないし甲第45号証)、我が国の「La Festa Mille Miglia」についても2002年大会からオフィシャルスポンサーになっていること(甲第11号証ないし甲第17号証)。
(オ)別掲(1)の構成で黒色の商標である登録第3312283号及び第4162870号に係る無効審判請求事件である平成10年審判第35331号及び平成11年審判第35389号において、当該審判の請求人である「ダルマ エス アール エル」は、「請求人はブレシア自動車クラブからこの商標の使用を許諾され、かつ、サブライセンスを与える権限をも与えられている」旨主張していること(甲第24号証及び甲第25号証)。
(2)また、職権で調べたところによれば、商標権者は、別掲(2)の構成からなる登録第5051969号商標を所有しているが、当該商標の出願人は、「マルバ エス アール エル」(上記「ダルマ エス アール エル」が合併などにより名称変更したもの。)であり、登録設定後に当該出願人から本件商標権者に移転登録がなされている。
(3)上記(1)及び(2)によりすれば、ミッレ・ミレア商標は、ブレシア自動車クラブが中心となって行ってきた自動車レースに関連する商標として、本件商標の登録出願時には、イタリアを初め、我が国を含む国々において知られていることは認められるとしても、ブレシア自動車クラブは、複数の団体に名称や商標の所有を認めているところであり、商標権者も別件ではあるものの本件商標に関連する商標について、ブレシア自動車クラブの商標を管理する「マルバ エス アール エル」から当該商標権を取得している事実があることからすると、申立人の提出の証拠によっては、商標権者による本件商標の取得が信義則に反し、国際信義にも反するものとして、公序良俗に反するとまではいうことができないし、また、本件商標をその指定商品に使用した場合にブレシア自動車クラブの業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ということもできなし、さらに、不正の目的をもって使用するものとはいうことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当しないというのが相当である。
(4)申立人の主張について
申立人は、「MILLE MIGLIA」カーレースの唯一の公認主催者である旨主張し、また、申立人はブレシア自動車クラブにより完全に運営されている企業であり、当該自動車クラブと深い関わりを有していると主張しているが、その関係及び唯一の公認主催者であることにについては何ら立証していないので、申立人がイタリア等の国において使用商標と同一構成からなる商標の登録を有しているとしても、申立人がミッレ・ミレア商標の正当な権利者であるかどうかは不明であるというほかなく、また、申立人は、「使用商標は、申立人・プレシア自動車クラブによるカーレースイベントのシンボルマークとして頻繁に使用され、当該図形商標も申立人及びブレシア自動車クラブの業務を表すものとして極めて著名になっている」、「申立人の使用商標は、イタリア国内及び日本国内のみならず世界の複数の国において知られている」旨主張しているが、出願人の提出する証拠によっては、ミッレ・ミレア商標は、ブレシア自動車クラブの業務に係る商標として広く知られているものということができても申立人の業務に係る商標として我が国を含め、申立人が主張するように知られているとは認めることができない。
したがって、申立人の提出する証拠によっては、本件商標の取得について、申立人の許可を必要とする理由は認められないし、また、本件商標は、申立人の業務に係る商標と出所について混同を生じるおそれがあるとはいえないというべきである。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、同法43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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