Trademark Appeal Case
周知商標と同一称呼の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900073(T2008−900073/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5092233号商標(以下「本件商標」という。)は、「Jumeirah」の文字を横書きしてなり、平成19年5月1日に登録出願され、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同年11月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要旨
登録異議申立人は、本件登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。)を提出した。
申立人は、ドバイに五つ星高級リゾートホテル「ジュメイラ ビーチホテル(Jumeirah Beach Hotel)」を設立・運営し、ロンドン、ニューヨーク等においても高級ホテルを営業しており、これらホテルの名称に統一的に「Jumeirah」使用し、本件商標の登録出願時及び登録査定時において「Jumeirah(ジュメイラ)」ホテルチェーンの略称として、日本国のみならず、世界的に周知・著名になっているものである。
また、申立人は、ホテルにとどまらず、レストラン、スパ施設、レジャー施設、巨大ショッピングモールを運営しているほか、実際に被服、アクセサリー、銀製品、寝具類、バッグ類、ゴルフ用具、DVDなど各種商品の販売も手掛けており、多角経営を行っていることから、本件商標の指定商品と関連を有するものである。
さらに、本件商標は「Jumeirah」の文字よりなり、申立人の使用する商標と同一の綴りからなるところ、これは英語、仏語、独語、伊語、西語のいずれの辞典にも見当たらないものであり、偶然の一致とは言い得ないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号、及び同第19号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知の要旨
当審は、平成20年11月27日付けで、商標権者に対し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与え、本件商標の登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき取消すべきものと認める旨要旨次のとおり通知した。
(1)申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、アラブ首長国連邦ドバイにおいて1997年に設立された王族系企業であり、同年、ドバイに五つ星高級リゾートホテル「ジュメイラ ビーチホテル(Jumeirah Beach Hotel)」を設立・運営して以来急成長し、ショッピングモールやオフィスタワーを備えたビジネス向けホテル「ジュメイラ エミレーツタワーズ(Jumeirah Emirates Towers)」、古代のドバイを再現したリゾート施設「マディナット ジュメイラ(Madinat Jumeirah)」、砂漠の真ん中に建造されたリゾートホテル「ジュメイラ バブ アルシャムズ デザート リゾート&スパ(Jumeirah Bab Al Shams Desert Resort&Spa)」、世界最高層のホテル「バージュ アル アラブ(Burj Al Arab)」や、これらに関連したレストラン、スパ施設、レジャー施設、巨大ショッピングモール等をも運営している。
また、ロンドンでは、高級ホテル「ジュメイラ カールトン タワー(Jumeirah Carton Tower)」、「ジュメイラ ラウンズ ホテル(Jumeirah Lowndes Hotel)」を営業し、ニューヨークでは、「ジュメイラ エセックス ハウス(Jumeirah Essex House)」を営業するほか、アブダビ、スペイン・マジョルカ、バミューダ、タイ、カタール・ドーハ、上海、ヨルダン等、世界的に最高級のホテルをチェーン展開している。
これら申立人の運営に係る各ホテル・施設等には、「Jumeirah」の文字からなる商標(以下「申立人商標」という。)が統一的に使用されている。(以上、甲第3、第4及び第6号証)
(イ)申立人のインターネットホームページには、日本語版も設けられており、申立人の運営に係る上記各ホテル・施設等について写真入りで紹介されている。それぞれのホテル・施設等を紹介する頁には常に申立人商標が表示されている(甲第3号証)。
また、本件商標の登録出願前に我が国で発行された「ドバイ」を紹介する旅行ガイドブックには、その表紙に上記世界最高層のホテル「バージュ アル アラブ」の写真が用いられているほか、申立人の運営に係る上記各ホテル・施設等について写真付きで詳細に紹介されている。例えば、その32頁には、「新世代の複合施設マディナ・ジュメイラ」の見出しの下に、「2004年の夏にドバイの西部のジュメイラビーチ沿いに、数世紀前のアラビアの王国を蘇らせたような、一つの『町』が砂漠の中から誕生した。四十ヘクタールもの広大な砂漠の地に、三つの豪華を極めたブティックホテル、中東最大のスパ施設、フィットネスクラブ、十八のスイミングプール、四十五軒のレストラン、一キロメートルに及ぶビーチ、伝統的な大衆市場『スーク』を再現した八十七軒の店を並べるショッピングセンター、一千人を収容できる屋外円形劇場、巨大なコンファレンスルームなどから成る巨大な複合施設である。」と記述され、308頁には、「新都心構想を象徴する先進的タワーホテル」の見出しの下に、「・・・かつては建物一つない砂漠であった。2000年に入りドバイ都心部の過密を逃れ、この地域にオフィスやホテル、コンドミニアムの建設が始まった。・・・新しい時代の都心はここになるだろうと予測されている。このエリアに誕生したのがエミレーツ・タワー。高い方がオフィスで、もう一つがホテルとなっている。オフィスタワーの高さは三百五十メートル。・・・ホテルは三百五メートルある。急成長するドバイを象徴し、新開発エリアのランドマーク的存在となっている。」と記述されている(甲第4号証)。
我が国の旅行社のホームページにおいては、海外旅行者のための海外ホテルチェーンの検索対象として「ジュメイラー」が掲げられているほか、ドバイのランドマーク的存在として申立人の運営に係る各ホテル、巨大ウォーターパーク、スパ施設等が写真付きで詳細に紹介されている。例えば、JTBビジネストラベルソリューションのホームページでは、「Jumeirahジュメイラ」の見出しの下に、上記世界最高層ホテル「バージュ アル アラブ」の写真と共に、「ジュメイラー(Jumeirah)は今、エキサイティングな新時代を迎えようとしてます。」等と記載され、knt!近畿日本ツーリストのホームページには、「ドバイビーチエリアの休日6日間(ジュメイラ・ビーチホテル)」の見出しの下に、上記ジュメイラ・ビーチホテルの写真等と共に「ドバイのランドマーク的存在。印象的な外観で、ドバイのランドマークとして人気を集めているジュメイラ・ビーチホテル。」と記載されている(甲第5号証の1ないし3)。
一部の航空会社のホームページにおいても、申立人の運営に係るホテルが申立人商標と共に紹介されており、「ジュメイラ」の見出しの下に、「ジュメイラ ホスピタリティ&レジャーではドバイそして世界で最も格式あるホテルやホスピタリティ関連事業を経営しています。ジュメイラ ホスピタリティ&レジャーが所有するジュメイラは、世界有数の最も魅力的かつ名高いワールドクラスのホテルを運営するラグジュリーブランドで、各ホテルでは他に類を見ない滞在、完璧なスタンダードを提供しています。・・・ジュメイラの傘下には世界的に有名であるとともに世界最高級のホテルであるバージュ アル アラブ、数々の賞に輝いたジュメイラ ビーチ ホテル、ジュメイラ エミレーツ タワーズ、ジュメイラ ビーチ クラブ リゾート&スパ、マディナット ジュメイラ、ジュメイラ バブ アル シャムズデザート リゾート&スパがあります。・・・」との記載がある(甲第5号証の4)。
そして、申立人運営に係る各ホテルに宿泊した日本人観光客は、近年、7,962人(2005年)から18,105人(2007年)と急増している(甲第10号証)。
(ウ)申立人の運営に係るホテルは、「2003年Business Traveller Middle East」で複数の賞を獲得したのをはじめ、2005年及び2006年には「World Travel Awards」から世界一のホテルとして表彰されるなど、各種の賞を受賞している(甲第3及び第7号証)。
(エ)申立人の運営に係るホテル・施設等は、上記甲第4号証の書籍のほか、本件商標の登録出願前から現在にかけて日本国内及び海外で発行された各種雑誌において、「Jumeirah」、「ジュメイラ」として広く紹介されている(甲第9号証の1ないし15)。
また、申立人は「Jumeirah」と題する雑誌を自ら発行している(甲第8号証)。
(オ)申立人は、巨大ショッピングモールを設けているほか、インターネットを通じて「Jumeirah/COLLECTION」の商標の下に、被服、アクセサリー、銀製品、寝具類、バッグ類、ゴルフ用具、DVDなど各種商品を販売している(甲第13号証)。
(カ)申立人は、申立人商標を各国で登録しており、我が国においては第16類、第35類、第36類、第43類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として商標登録している(甲第2号証の1ないし4、第11及び第12号証)。
(2)以上の認定事実によれば、申立人は、かつては砂漠であったドバイのペルシャ湾に臨む浜辺地域(ビーチエリア)に1997年に五つ星高級リゾートホテル「ジュメイラ ビーチホテル」を設立・運営して以来、短期間に次々と高級ホテル、リゾート施設等を建設し、急速に事業を拡大・進展させ、その運営に係る特徴のある景観を有する超高級ホテル等と相俟って世界に話題を提供している王族系企業として広く知られているものというべきであり、「Jumeirah」、「ジュメイラ」といえば申立人を指すものともいえる。そして、ドバイのビーチエリアは、近年急速に発展し、ドバイを代表するランドマーク的地域となっているばかりでなく、該ビーチエリアに所在する申立人の運営に係る一群のホテル・施設等には申立人商標が統一的に使用されており、これらが我が国においても広く紹介されていることなどから、申立人商標及び「ジュメイラ」の商標は、我が国においても、申立人の業務に係るホテル・レジャー施設等の役務について使用する商標として、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続しているものと認められる。
また、申立人は、ホテルに止まらず、レストラン、スパ施設、レジャー施設、巨大ショッピングモールを運営しているほか、実際に被服、アクセサリー、銀製品、寝具類、バッグ類、ゴルフ用具、DVDなど各種商品の販売も手掛けており、多角経営を行っているものといえる。
(3)他方、本件商標は、申立人商標と同一の綴りからなるところ、これは英語、仏語、独語、伊語、西語のいずれの辞典にも見当たらないものであり、申立人商標と偶然一致したものとは考え難いものである。また、上記(2)の申立人の業務内容に照らせば、本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る役務・商品と少なからぬ関係を有するものといえる。
(4)以上を総合勘案すると、本件商標は、申立人の著名な略称からなるものであり、申立人の承諾を得たものとは認められないから、商標法第4条第1項第8号に該当するものというべきである。
また、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は周知著名となっている申立人商標ないしは申立人を連想、想起し、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものというべきである。
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものでないとしても、申立人商標が周知著名となっていること、申立人商標と本件商標とは社会通念上同一といえるものであること、「Jumeirah」は辞典に掲載されていない語であって親しまれた成語ではなく、本件商標が申立人商標と偶然一致したものとはいい難いこと、近年、ドバイ、特にそのビーチエリアが急速に発展して世界の富裕層が集まることで何かと話題になっていること、本件商標の指定商品は申立人がそのホテル等において取り扱っている商品を含むものであること、などを総合すると、本件商標権者は、申立人又は申立人商標の存在を知らなかったものとは考え難く、申立人商標が我が国において登録されていない商品分野があることを奇貨として、剽窃的に本件商標を登録出願し登録を受けたものというべきであり、本件商標は、申立人の我が国市場への参入を阻止し、不正の利益を得る目的、他人たる申立人に損害を加える目的等の不正の目的をもって使用するものといわざるを得ないから、商標法第4条第1項第19号に該当するものというべきである。
4 商標権者の意見
商標権者は、上記3の取消理由の通知に対し、何ら意見書を提出していない。
5 当審の判断
本件商標は、上記3の取消理由により商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第19号に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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