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Trademark Appeal Case

使用商標の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2008−300317(T2008−300317/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4182197号商標の指定商品中「調味料」については、その登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4182197号商標(以下「本件商標」という。)は、「コクウマ」の文字を横書きしてなり、平成8年6月28日に登録出願、第30類「茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,肉まん,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン」を指定商品として、同10年8月28日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。

(1)請求の理由

過去3年以上前から現在に至るまでの間、本件商標権者が本件商標を指定商品中の商品「調味料」について使用している事実は認められない。また、商標登録原簿上使用権者の存在は認められないところであって、かつ、使用権者が本件商標を上記商品について使用している事実も認められない。

したがって、本件商標については、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもがその指定商品「調味料」について使用している事実は認められないところであるから、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中の商品「調味料」についての登録は取り消されるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁

(ア)答弁の内容

被請求人は、本件審判請求登録の日前三年以内に、本件取消審判の対象となる商標登録(以下「本件商標」という。)に係る指定商品「調味料」に含まれる商品「マヨネーズ(以下、被請求人が答弁書第2回で訂正しているとおり「マヨネーズタイプの調味料」という。)」について、本件商標の通常使用権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している旨主張し、乙第2号証ないし乙第12号証及び参考資料1として東京高等裁判所の判決文の写しを提出している。

(イ)証拠

本件商標「コクウマ」を商品「調味料」について使用することについて、被請求人と味の素株式会社との間に使用許諾契約があることについては争わない。しかし、被請求人の「本件登録と使用商標とが社会通念上同一である。」と言う主張、及び、味の素株式会社が使用しているとして提出されている証拠から「コクうま」の文字が商品「マヨネーズタイプの調味料」について、「商標」として使用されていると言う主張については争う。

(ウ)請求人の主張

a 本件登録と使用商標とは社会通念上同一の商標とは認められない。

(a)本件商標「コクウマ」と文字「コクうま」とは、商標法第50条第1項括弧書きに言う「平仮名、片仮名及びローマ字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当しない。

まず、被請求人は答弁書で「本件商標「コクウマ」と文字「コクうま」とが、商標法第50条第1項括弧書きに言う「平仮名、片仮名及びローマ字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当する。」と主張する。しかし、第50条第1項括弧書きに言う「平仮名、片仮名及びローマ字の表示を相互に変更する・・・」とは、常識的に解釈するならば、「コクウマ」を「こくうま」又は「KOKUUMA」に変更することを意味しており、決して「コクウマ」を「コクうま」とするように部分的に変更することまでも含むものでない。このような部分的な変更をも理由なく認めるならば「コくうま」、「コクウま」、「コくうマ」等の変更までも社会的同一となる変更に加えられることになってしまう。本来使用商標をそのまま出願し必要に応じて行う態様変更は、必要最低限度で十分であり無制限に認めることはできない。

更に、被請求人は、「コクウマ」と「コクうま」とは、「・・・同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当すると主張する。確かに「コクウマ」と「コクうま」とは、称呼「コクウマ」という文字面上で見れば共通に見えるとしても、前者は一連によどみなく「コクウマ」と称呼されるのに比して、後者はその構成文字から「コク」と「ウマ」の部分は半拍程度の間をおいて称呼される方が普通である。又、アクセントについても、その文字の構成態様から、前者は「コ」にあると認められるのに比して、後者は「コ」と「ウ」にあるものと認められるので、必ずしも両者は同一称呼であると言い切れないのである。

更に両者は、共通の観念を生じ又は暗示させるとも言えない。確かに、使用標章「コクうま」からは、「コクがあって旨い」程度の意味を直感させると考えられる。このため、食品の分類では、出願商標「こくうま」(甲第3号証)、同「こくうま充実」(甲第4号証)、同「コクうま」(甲第5号証)の各出願商標は自他商品の識別力がないものとして拒絶されている。しかし、本件商標は、「濃く旨」、「虚空魔」、「虚空間」、「子喰う魔」等の漢字を連想させる語と認められ、当該漢字に応答する観念を想起・暗示させる語と考えられ、また、そのような語であるが故に登録されたものと推定される。

したがって、「コクウマ」を「コクうま」とする変更は、第50条第1項括弧書きに言う「平仮名、片仮名及びローマ字の表示を相互に変更する・・・」に該当せず、更に「・・・ 同一の称呼及び観念を生ずる商標」にも該当しない。

(b)本件商標「コクウマ」と文字「コクうま」とは、商標法第50条第1項括弧書き後段に言う「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」にも該当しない。

被請求人は答弁書で「本件商標「コクウマ」と文字「コクうま」とが、商標法第50条第1項括弧書きに言う「平仮名、片仮名及びローマ字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当しないとしても、同項括弧書き後段に言う「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する。」と主張する。更に、被請求人は答弁書で、「本件商標の最大の特徴は「コクウマ」という称呼にあると考えることが自然である。」と述べ、「「コクウマ」から「コクうま」への変更がその構成をなす基本をなす部分を変更するものではない。」と主張している。

しかし、上述したように「コクウマ」から生じる称呼と、「コクうま」から生じる称呼とは、語感・語調が微妙に異なり、更にはそれぞれの文字が暗示又は直感させる観念も異なるため、両者は到底社会通念上同一の商標とは認められない。

(c)上記主張は請求人の独断的ではなく、被請求人も「コクウマ」と「コクうま」とは社会通念上同一の商標とは認められないことを認めている。

即ち、提出された乙第2号証(被請求人の提出した契約書)によれば、被請求人は、本件商標「コクウマ」のみならず、使用標章「コクうま」についても出願しているが、被請求人の主張通り、もし、「コクウマ」と「コクうま」とが、明らかに社会通念上同一の商標であるならばわざわざ新たな出願をする必要はないからである。

(d)まとめ

以上に述べた理由から、本件登録と使用商標とは社会通念上同一の商標とは認められない。

b 提出された証拠中の標章「コクうま」は、商品「マヨネーズタイプの調味料」についての商標的使用とは認められない。

即ち、使用証拠を見ると、標章「ピュアセレクト」の部分については、登録商標を示す「Rマーク」が付記されているので、使用者にとって「ピュアセレクト」を商標として使用していることを確認することができる。しかし、標章「コクうま」の部分にはそのようなマークは付されていないため、少なくとも使用者にとって標章「コクうま」の部分は、商標と認識して使用していないことがわかる。

一方で提出されている標章「コクうま」の使用態様をみると、明らかに商品との関係で識別力の弱いと認められる「ローカロリー」「カロリー55%カット」の文字と並列して使用されているため、商標と言うよりも「コクがあって旨い」と言う品質を端的に伝えるための表示であると認められる。

したがって、提出された使用態様を見る限り標章「コクうま」は、「コクがあって旨い」という品質を表示するために使用されており、使用者の主観的にも、使用場所等を客観的に見ても、商標として使用されているものとは認められない。

(エ)結論

以上に述べた通り、被請求人は、本件商標と標章「コクうま」とは、社会通念上同一の商標とは認められず、しかもその使用は、商標的な使用をしているものとは認められないため、本件審判請求にかかる登録商標をその指定商品中の商品「調味料」について使用している事実を何ら立証されていないと言わざるを得ない。

したがって、本件審判請求の趣旨に述べた「本件商標の指定商品中、『調味料』についての登録を取り消すべき旨の審決」を求める次第である。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、さらに弁駁に対する答弁(第2回)をし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。)及び参考資料1ないし11を提出した。

(1)請求人は、本件商標が、その指定商品中、第30類「調味料」について継続して3年以上日本国内において商標権者等のいずれかによって使用された事実は存在しないと主張する。

しかし、以下に述べる通り、本件商標と社会通念上同一の商標が、被請求人たる本件商標権者(乙第1号証の1、乙第1号証の2)の許諾を受けて(独占的)通常使用権者となっている味の素株式会社により、当該審判請求登録日(平成20年4月1日)前3年以内に、請求に係る指定商品「調味料」に含まれる「マヨネーズタイプの調味料」について使用されているものである。

また、被請求人は第1回目の答弁書において、使用商品を「マヨネーズ」と述べたが「マヨネーズタイプの調味料」と訂正する。

(2)商標使用許諾契約の存在

乙第2号証として、被請求人と味の素株式会社との間で、2007年6月25日に交わされた商標使用許諾契約書の写しを提出する。

当該契約書第1条によれば、被請求人は、味の素株式会社に対し、2007年6月25日から3年間、指定商品「調味料」関して、本件商標権の専用使用権を許諾している。

ここで、専用使用権の設定は、登録によりその効果が生ずるが、上記契約書において許諾された専用使用権は、未だ本件商標の登録原簿には登録されていない(乙第1号証の1)。しかしながら、「専用使用権設定の合意があって登録のみを欠く場合は、契約の解釈として独占的通常使用権の設定がなされたとして当事者の意思を忖度して解釈すべきである」と考えられている(乙第3号証)。よって、現時点では専用使用権の効力は生じていないが、少なくとも、被請求人は、味の素株式会社に対して、本件商標権の(独占的)通常使用権を許諾していると言える。

(3)通常使用権者による本件商標の使用

乙第4号証は、2007年(平成19年)8月8日付けで、味の素株式会社(以下「通常使用権者」と称する。)より発表されたプレスリリースの写しであり、2007年8月30日より、「ピュアセレクト ローカロリー コクうま カロリー55%カット」の販売を開始することを発表したものである。乙第4号証に表れる当該製品のパッケージ写真では、「コクうま」の文字がパッケージ上方に、大きな文字で目立つよう書されており、「コクうま」の語が「商標として」使用されていることがわかる。また、このような態様にて使用されている「コクうま」は、他の部分から分離し、独立して出所表示として認識され得るものである。

なお、当該プレスリリースは、2007年8月8日付けで、通常使用権者のHP(http://www.ajinomoto.co.jp/)上にアップされたものである(乙第5号証)。乙第5号証は、通常使用権者のHPにおいて、「調味料・食品」関係のプレスリリースを検索したリストであり、2000年5月23日〜2008年4月22日までに通常使用権者が発表したプレスリリースが、新しいものから順に列挙されている。乙第5号証によれば、乙第4号証のプレスリリースが、2007年8月8日付けでHP上に公開され、公に提供されたものであることがわかる。

更に、乙第6号証は、平成19年9月24日発行の「日経MJ」第2頁の写し(抜粋)であり、通常使用権者の商品として、「ピュアセレクト ローカロリー コクうま カロリー55%カット」が紹介されている。また、乙第6号証においては、当該製品の発売日が、(平成19年)8月30日であることが明記されている。なお、乙第6号証では、通常使用権者の製品が「マヨネーズタイプの調味料」として紹介されているが、通常使用権者は、この製品を「マヨネーズタイプの調味料」と位置付けている(乙第7号証)。ちなみに、乙第7号証は、通常使用権者が2008年1月に作成し、配布している2008年春版の商品パンフレットであり、第1頁目並びに裏表紙から、作成に係る日付が確認できる。

加えて、乙第8号証は、平成20年2月22日発行の「日本食糧新聞」第11頁写し(抜粋)であるが、「ピュアセレクト ローカロリー コクうま カロリー55%カット」が、通常使用権者の製造・販売する製品として紹介されている。なお、乙第8号証においても、当該製品が、昨年(平成19年)8月に発売されたことが明記されている。

以上の証拠から、通常使用権者が、平成19年8月30日に、マヨネーズタイプの調味料「コクうま」の販売を開始したことは明らかである。

一方、実際の取引を示す具体的証拠として、通常使用権者が「コクうま」を納品した際に、購入者が確認のために署名した受領書の写しを提出する(乙第9号証)。このような受領書は、通常使用権者が、注文を受けた製品を、関連会社である味の素物流株式会社を通して発送する際に製品に添付するもので、購入者が製品を受領した際に、確認のために受領書に署名又は捺印してもらうための書類である。

乙第9号証は、三重県農協食品株式会社宛てに製品を納品した際のもので、出荷年月日として「2007.11−07」の数字が印字されていることから、平成19年11月7日に出荷されたものであり、受領印の欄に「中山」氏の署名がある。出荷した品名は「PSローカロリーコクうま55%カット」であり(「PS」は、通常使用権者のブランド「ピュアセレクト」の略)、「30」箱の数量の注文であること、並びに1箱あたりの入数が「24」であること、が当該受領書からうかがえる。更に、「コード」欄の「08888−10」という数字は、通常使用権者が、「コクうま」の物流コードとして使用しているものであり、当該コードは、送り状、受領証、納品される製品の外箱、等に印字されるものである。参考までに、通常使用権者作成に係る「商品コード登録通知票」の写しを添付する(乙第10号証)。

なお、乙第10号証において、「発売年月日」が2007年8月27日となっているが、これは販売店等への一番早い出荷日であり、最終消費者への店頭販売は8月30日からである。念のために、乙第11号証として、通常使用権者が、小売業者等の販売店へ配布した告知文書を提出する。乙第11号証によれば、「コクうま」は、2007年8月27日から販売店へ出荷されていることがわかる。

以上より、平成20年4月1日より前3年以内に、通常使用権者が、「コクうま」の商標を「マヨネーズタイプの調味料」に使用していることは明らかである。また、「マヨネーズタイプの調味料」が、本件審判の請求に係る「調味料」に含まれる商品であることは、特許庁の類似商品・役務審査基準から明らかである。なお、仮に「コクうま」を使用している製品が、「マヨネーズタイプの調味料」であったとしても、これが指定商品「調味料」に含まれる商品であることに変わりはない。

(4)「コクうま」の使用が登録商標の使用に該当することについて

商標法第50条第2項によれば、同条第1項による取消を免れるためには、「登録商標」の使用が必要であるが、この「登録商標」の中には、同条第1項括弧書きで示す通り、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」も含まれる。このような括弧書きの規定は、「登録商標と物理的に同一のものを使用するというよりは、それを付する商品(役務)の具体的な性状に応じ、適宜に変更を加えて使用することがむしろ通常であるという産業界の実情にも合致する」という趣旨から設けられたものである(乙第12号証)。

前述した通常使用権者による使用は、すべて「コクうま」(「コク」が片仮名文字、「うま」が平仮名文字で書される態様)の使用である。一方、本件商標は全て片仮名文字にて書された「コクウマ」である。通常使用権者によるこのような使用商標は、登録商標の「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当するものであるので、以下この点を説明する。

まず、ここでいう「同一の称呼及び観念を生じる商標」とは、商標の構成から生ずる「呼び名」及び「意味・内容」のいずれをも同じくする商標をいう(乙第12号証)。

通常使用権者の使用商標は、本件商標「コクウマ」の後半部を「うま」という平仮名文字に変更するに過ぎないものであるから、両商標は、「平仮名及び片仮名の文字の表示を相互に変更する」関係にあると言える。

また、両者からは「コクウマ」という同一の称呼が生ずるから、両商標はその「呼び名」を同じくする。

更に、本件商標も実際の使用商標も、辞書に掲載されている既成語ではなく一種の造語であるが、たとえ造語であっても、そこからはある種のイメージや暗示的観念が想起されるところ、そのようなイメージや暗示的観念は、本件商標と使用商標で共通である。即ち、両商標は、その称呼「コクウマ」という音が、「コクがあって旨い」程度の共通のイメージや暗示的観念を想起させ得る。一方、両商標間で、別異の独立した観念が生じるとは言い難い。よって、両商標は、その構成から生ずる「意味・内容」を同じくする商標と言える。

以上より、使用商標である「コクうま」は、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当し、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であると思料する。

また、仮に、通常使用権者の使用商標が、「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」に該当しないとしても、当該使用商標は、本件商標と「社会通念上同一の商標」に該当する。

不使用商標の存在によって商標採択の機会を不当に奪うことを防ぐという、不使用取消審判制度の目的よりすれば、同条第1項の括弧書きはあくまで登録商標と社会通念上同一と認められる商標の例示的列挙にすぎず、例示列挙されたもの以外にも「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」が含まれることは明らかである。

そして、「社会通念上同一」の判断は、「登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない」か否かを基準に行われる(参考資料1)。

ここで、使用商標「コクうま」は、本件商標「コクウマ」の後半部を平仮名文字に変更したに過ぎない。本件商標は、ごく普通の片仮名文字「コクウマ」から成り、その外観に際立った特徴があるというものではない。むしろ、本件商標の最大の特徴は、その「コクウマ」という称呼にあると考えることが自然である。使用商標は、後半部をごく普通の平仮名文字に変更するに過ぎず、最大の特徴である「コクウマ」という称呼には何ら変更がないものであるから、この程度の変更は、その構成において基本をなす部分を変更するものではない。

更に、「コクウマ」を「コクうま」に変更したところで、商標の識別性に多大な影響が及ばされるとは考えられない。上述の通り、本件商標における最大の特徴は、その「コクウマ」という称呼にあると考えられるところ、両商標ではその称呼に何ら変更がなく、よって識別性にも影響が及ぼされるとは言えない。

以上のとおり、不使用取消審判の制度目的、商標法第50条第1項括弧書きの規定の趣旨、及び「社会通念上同一」の判断基準を総合的に考慮すると、上記の通常使用権者による使用を、同条第1項・第2項の「登録商標の使用」と認めないならば、不使用取消審判制度を濫用せしめる結果となることは明らかであり、妥当ではない。

したがって、本件商標の通常使用権者たる味の素株式会社の使用している「コクうま」は、本件商標「コクウマ」と社会通念上同一の商標と認定されるべきである。

(5)以上より、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者が「マヨネーズタイプの調味料」に使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件審判の取消の対象とはなり得ない商標である。このような商標登録を取消すことは業務上の信用の化体しない商標の整理を図るという不使用取消審判制度の趣旨に反するだけではなく、業務上の信用の保護という法目的にも反するものである。

(6)請求人は、弁駁書において、使用商標は「コクがあって旨い」程度の意味を直感させるが、本件商標は「濃く旨」、「虚空魔」、「虚空間」、「子喰う魔」等の漢字を連想させる語と認められるから、本件商標と使用商標は共通の観念を生じ又は暗示させるとは言えないと述べているが、両商標は「コクウマ」の称呼を共通にするから「コクがあって旨い」という暗示的・間接的観念が看取され、また本件商標と同様の漢字も連想されると考える方が、自然かつ妥当である。

(7)第1回目の答弁書で述べたとおり、通常使用権者は、「コクうま」を「商標」として使用しており、且つその使用態様も、独立して出所表示として認識されるものである。しかしながら、仮にこれが商標的使用には該当しないと認定される場合であっても、登録商標と社会通念上同一と認められる商標が、指定商品について使用されている限り、商標法50条の「使用」の要件は満たされる。としてしたがって、請求人の主張は、客観的根拠に乏しく妥当性を欠くものである。

したがって、答弁の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

4 当審の判断

(1)被請求人は、乙第1号証ないし乙第12号証を提出し、本件商標と社会通念上同一の商標が、通常使用権者により、審判請求登録前3年以内に、請求に係る指定商品「調味料」に含まれる「マヨネーズタイプの調味料」について使用されている旨主張している。

そこで、被請求人の提出に係る前記証拠についてみるに、乙第4号証は、2007年8月8日付けで、味の素株式会社(以下「通常使用権者」という。)より発表されたプレスリリースと認められるところ、該プレスリリースには、「味の素株式会社は、当社の新製品により、ローカロリーと豊かなコクのあるおいしさを兼ね備えたマヨネーズタイプ『ピュアセレクト ローカロリー コクうま カロリー55%カット』を新販売します。」と記載されおり、また、該マヨネーズ製品(以下「使用商品」という。)のパッケージ写真が掲載されていることが認められる。そして、該パッケージ写真では、「コクうま」の文字がパッケージ上方に、大きな文字で書されており、「コクうま」の語が商標(以下「使用商標」という。)として使用されていることが認められる。

同じく、乙第5号証は、通常使用権者のホームページと認められるところ、該ホームページには、前記乙第4号証のプレスリリースが、2007年8月8日付けでホームページ上に公開されたことが認められる。

同じく、乙第6号証は、2007年9月24日発行の「日経MJ」の記事と認められるところ、該記事には、通常使用権者の使用商品に関することが紹介されている。

同じく、乙第7号証は、商品パンフレット(2008年1月作成)と認められるところ、該パンフレットの、項目「マヨネーズ・ドレッシング」には、使用商品が掲載されている。

同じく、乙第8号証は、2008年2月22日発行の「日本食糧新聞」の記事と認められるところ、該記事には、通常使用権者の製造・販売する使用商品がマヨネーズとして紹介されている。

同じく、乙第9号証は、受領証と認められるところ、該受領証には、出荷年月日として「2007−11−07」の数字が印字され、2007年11月7日に出荷されたとみられるものであり、出荷した商品は使用商品と認められる。そして、該受領証は、通常使用権者が三重農協食品株式会社宛てに使用商品を納品した際のものと認められる。

同じく、乙第10号証は、通常使用権者作成に係る「商品コード登録通知票」と認められるところ、該通知票には、使用商品の物流コードが「08888−10」であることが記載されている。

同じく、乙第11号証は、通常使用権者が、小売業者等の販売店へ配布した告知文書と認められるところ、該告知文書には、使用商品の出荷日が2007年8月27日と記載されていることが認められる。

(2)以上の証拠によれば、使用商品は、本件商標の指定商品中、取消請求に係る「調味料」の範疇に属する商品と認められ、また、使用商標を付した使用商品は、通常使用権者により本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたものと認められる。

(3)次に、本件商標と使用商標とが社会通念上同一と認められるか否かについて判断する。

商標法第50条で規定するところの「登録商標の使用」とは、その請求に係る指定商品についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)ほか、同一と認められる範囲(例えば、商標の要部でない附記的な部分を多少変更して用いるとか、横書きの文字部分を縦書きにして用いるとかの場合)にあると解される。

そこで、これを本件についてみると、本件商標は、「コクウマ」の片仮名文字を同書、同大、等間隔に表してなるものであり、全体として一体の造語として把握、認識されるものであり、その構成文字全体に相応して「コクウマ」の称呼を生じるものと認められる。

これに対し、使用商標は、片仮名文字と平仮名文字を組み合わせ「コクうま」と表してなるものであるところ、その構成文字全体に相応して「コクウマ」の称呼を生じるものであるが、使用商品「マヨネーズタイプの調味料」を含む調味料との関係よりみると、構成中の「コク」は「コクがある」こと、及び「うま」は「旨いこと」を容易に想起するから、全体として「コクがあって旨い」といった意味合い理解、認識する場合が少なくないものと認められる。

このことは、被請求人の通常使用権者である味の素株式会社が、「ご販売店の皆様ヘ」という見出しの商品説明パンフレット(乙第11号証)において、「従来のマヨネーズと変わらないコクを保ちながら、・・・・、だからマヨネーズ本来の豊かなコクのある味わいをカロリーを気にせずお楽しみいただけます。」、「マヨネーズ本来の豊かなコクのあるおいしさをお楽しみいただけます。」と記載していること及び乙第6号証ないし乙第8号証においても同様な表現があることからも明らかである。

そうすると、使用商標は、本件商標と称呼において同一であるものの、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものとは言えないばかりでなく、観念においても同一視できないものであるから、かかる使用商標における変更使用は、本件商標が有する独自の識別性に大きな影響を与えるというべきであり、もはや登録商標の識別性に影響を与えない軽微な変更使用にとどまる範囲を逸脱しているといわなければならない。

してみれば、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認めることはできない。

また、他に被請求人の提出に係る証拠には、本件商標と社会通念上同一と認め得る商標を使用したと認める事に足る証拠はない。

(4)被請求人は、前記乙第1号証ないし乙第12号証のほか、本件商標の

指定商品中、取消請求に係る指定商品について、本件商標の使用を窺わせる主張及び立証はない。

(5)被請求人は、参考資料1を提出し、「『社会通念上同一』の判断は、『登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない』か否かを基準に行われる」旨主張しているが、使用商標は、本件商標を構成する「コクウマ」を「コクうま」に変更するものであって、前記(3)認定のとおりあるから、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。

(6)以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によれば、使用商標が、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が使用商品について使用していたものと認められるとしても、使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないから、本件商標が、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが使用商品について使用している事実が認められず、かつ、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があるとも認められないものである。

(7)したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る「調味料」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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