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Trademark Appeal Case

「アイピーファーム」の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2007−890148(T2007−890148/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4783134号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4783134号商標(以下「本件商標」という。)は、「アイピーファーム」の文字を標準文字で表してなり、平成15年11月20日に登録出願、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」を指定役務として、同16年7月2日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の31を提出した。

1 請求の理由

(1)無効事由

本件商標は、全指定役務について、商標法第3条第1項第6号に定める「需要者が何人かに係る業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」というべきであるから、その登録を無効にすべきものである。

(2)無効原因

本件商標「アイピーファーム」は、「IP FIRM」の読みをカタカナの標準文字で表したものである。登録商標「IP FIRM」(登録第4783133号)は、東京地裁の平成17年6月21日の判決(平成17年(ワ)第768号(甲第2号証))で判示されたように、知的財産権を取り扱う事務所であることを一般的に説明しているにすぎず、本件需要者等において、本件指定役務について他人の同種役務と識別するための標識であるとは認識し得ないものであるから、本件指定役務について使用されるときには、自他役務の出所識別機能を有しないものと認められ、商標法第3条第1項第6号に定める「需要者が何人かに係る業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」というべきである。

本件商標は、登録商標「IP FIRM」に係る商標権(登録第4783133号)と、登録出願日、登録日及び指定役務を同一とするものであり、その商標が単に、「IP FIRM」の読みをカタカナの標準文字で表したものにすぎない以上、本件商標も同様に、商標法第3条第1項第6号に定める「需要者が何人かに係る業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当するというべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求を棄却する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証の1ないし3、乙第2号証ないし乙第9号証を提出した。

理由

1 請求人は、「本件商標『アイピーファーム』は、『IP FIRM』の読みをカタカナの標準文字で表したものである。」と主張している。

しかしながら、アイピーファームはそれ自身が独立した商標であって、「IP FIRM」に付随するものではないから、「本件商標『アイピーファーム』は、『IP FIRM』の読みをカタカナの標準文字で表したものである。」との請求人の主張は失当である。

実際、「IP FIRM」だけでなく、「IP FARM」の登録商標(登録第5083487号)も存在することが、何よりの証拠である。

2 請求人は、東京地裁、平成17年6月21日の判決(平成17年(ワ)768号)に基づいて縷々主張しているが、後述するように、この判決は、乙第1号証の1ないし3の控訴審における和解(乙第2号証)によって、法律的効果を何ら有することのできないものとなっている。したがって、上記判決に依拠する請求人の主張が失当であることは明らかである。

3 そもそも、請求人が甲第2号証(「乙第1号証」とあるが、誤り)で提出した証拠は、登録査定時に存在していた証拠であるといえるものでないうえ、日本国内における使用とはいえないものばかりであって、証拠能力がないものであった。何れにしても、法的根拠にはなり得ない判決であるから、その判決について論評することは無用であると思料する。

4 念のため申し添えれば、被請求人は、本件商標を登録後既に3年以上使用し続けており、甲第2号証に係る事件は、本業界で初めての、同業者同士の商標権侵害事件であったこともあり、業界の間では「IP FIRM」はもとより、「アイピー ファーム」が被請求人の登録商標であることは周知である。

なお、使用の事実を証明する証拠の例を、乙第3号証ないし乙第9号証として提出する。

ただし、業界内であっても、「アイピー ファーム」と言われれば、「何それ、農場でも始めたの」という人々が大半であり、業界を離れれば、本件商標はもとより、「IP FIRM」でさえ、知的財産を想起する人間は皆無であるといっても過言ではない。

この事は、例えば、請求人が提出した甲第3号証の17(Googleによる検索結果)の、第1頁冒頭に出力された「IP FIRM」が、InfoSphereという、知財とは全く関係のない分野のものであることからも立証される。因みに、第2番目の出力は被請求人のものである。

このように、「IP FIRM」が知財と関係あるとは思い至らない人々の間では、「 IP FIRM」が、当初から商標として機能し得るものであったことは疑う余地がない。

このように、仮に「アイピーファーム」を「IP FIRM」のカタカナ表記であると解したとしても、「IP FIRM」は使用によって確実に識別力を有するに至っているから、「アイピーファーム」を「需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」であるとすることができないことは明らかである。まして、被請求人が「IP FARM」の登録商標も有している現在、請求人の主張が失当であることは火を見るより明らかである。

5 以上詳述したとおり、請求人の主張に理由がないことは明らかである。

第4 当審の判断

1 本件商標と本件の指定役務について

本件商標は、前記第1のとおり、「アイピーファーム」の片仮名文字を標準文字で表してなるものであって、本件指定役務を「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」とするものである。

2 本件の指定役務の需要者等について

本件の指定役務は、前記1のとおり、弁理士が主体となって開設する特許事務所や、いわゆる知的財産事件を担当する弁護士が開設する法律事務所が提供する役務であるので、本件の指定役務の需要者等は、工業所有権の取得又は著作権の利用を希望するか、あるいはこれらの権利に関する紛争解決を希望する個人又は法人であり、これらの個人又は法人の担当者は、知的財産権に関しては相応の関心と知識を有している者であることは明らかである。

3 「IP」、「FIRM」及び「IP FIRM」等の語の状況と前記2の需要者等の認識について

(1)辞書類における「IP」及び「FIRM」の語の掲載状況は、次のとおりである(甲第3号証の22ないし24、甲第3号証の25、26)

ア インターネットにおける英単語検索サイト「スペースアルク:英辞郎」(甲第3号証の25)では、「IP」は、「intellectual property」、すなわち、「知的財産」の略称であるとされている。

イ 「新英和中辞典(第6版)」(研究社)(甲第3号証の22ないし24)では、「intellectual property right」は、「知的所有権≪特許、実用新案、商標、著作権など≫」を意味する英熟語とされている。また、「firm」は、「(二人以上の合資で経営される)商会、商店、会社」を意味する英単語とされている。

ウ 二村隆章、岸宣仁著「知的財産会計」(平成14年2月20日発行、株式会社文藝春秋)(甲第3号証の26)においては、「知的財産権(Intellectual Property Rights=通常、IPと略す)」と記載されている。

(2)証拠(甲第3号証の16ないし21)によると、インターネットにおいて、「IP FIRM」を検索語として検索すると、各検索エンジンにより相違はあるものの、多数の情報(約509万件、334万件、約146万件、約38万件、約36万件)が検出される。そのうち、「IP」が、「インターネットプロトコル」を意味する等、「知的財産」を意味しないものも検出されるものの、わが国及び諸外国において、「IP」が「知的財産」を、「FIRM」が「事務所」を表すものとして用いられている例が多数見られる。

(3)証拠(甲第3号証の1ないし4)によると、わが国においても、「IP FIRM」又は「IP LAW FIRM」を英語表記に用いる複数の特許事務所(明成国際特許事務所〔Meisei IP Firm〕〔甲第3号証の1〕、プレシオ国際特許事務所〔Prezio IP Firm〕〔甲第3号証の2〕、神原特許事務所〔IP FIRM KAMBARA&ASSOCIATES〕〔甲第3号証の3〕、龍華国際特許事務所〔RYUKA IP LAW FIRM〕〔甲第3号証の4〕)が存在する。

(4)証拠(甲第3号証の5ないし14、甲第3号証の16ないし21)によると、諸外国においては、「IP FIRM」を「特許事務所」あるいは「知的財産権を取り扱う法律事務所」を表す名称として使用する事務所が、インターネットにホームページを開設しているものだけでも複数存在する(IGOE IP FIRM〔甲第3号証の5〕、BUSTAMAN IP FIRM MALAYSIA〔甲第3号証の18〕、Jordan IP Firms〔甲第3号証の20〕)。なお、「IP LAW FIRM」を「知的財産権を取り扱う法律事務所」の名称として使用している事務所も複数存在する(Malta Intellectual Property Law Firm〔甲第3号証の17〕、Shahani IP Law Firm、JFK IP Law Firm、vietnam ip law firm〔甲第3号証の18〕)。また、諸外国においては、「特許事務所」あるいは「知的財産権を取り扱う事務所」を表す記述的な表現として、「IP FIRM」又は「IP LAW FIRM」との語が極めて多数使用されている(甲第3号証の6ないし14、甲第3号証の15、甲第3号証の16ないし21)。

以上のとおりであるから、「IP FIRM」の語が、本件商標の査定時(平成16年6月14日)には、前記2の需要者等において、知的財産を意味する「IP」と、事務所を意味する「FIRM」が単純に結合された2語からなる標章であって、これらの語句の意味を結合させた、「知的財産権を取り扱う事務所」を意味するものであると認識されていたものというべきである。

4 本件商標「アイピーファーム」の前記2の需要者等の認識等について

前記3のとおり、「IP FIRM」の語が、本件商標の査定時(平成16年6月14日)には、前記2の需要者等において、知的財産を意味する「IP」と、事務所を意味する「FIRM」が単純に結合された2語からなる標章であって、これらの語句の意味を結合させた、「知的財産権を取り扱う事務所」を意味するものであると認識されていたものというべきであるから、本件商標「アイピーファーム」に接した前記2の需要者等は、「IP FIRM」を片仮名文字で表したものと理解すること明らかであり、「アイピーファーム」の片仮名文字についても「知的財産を取り扱う事務所」を指称するものと認識されていたものというべきである。

したがって、「アイピーファーム」の語は、本件商標の指定役務を提供する事務所であることを一般的に説明しているにすぎず、本件需要者等において、指定役務について他人の同種役務と識別するための標識としての機能を果たし得ないものであるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標である。

5 結論

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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