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Trademark Appeal Case

称呼の近似性と音数の差異

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成1年審判第14653号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1. 本件登録第1945977号商標(以下「本件商標」という。)は、「VERRE」の欧文字と「フエレ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、昭和60年3月29日に登録出願され、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として昭和62年4月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2. 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1961483号商標(以下「引用商標」という。)は、「GIANFRANCO FERRE」の欧文字を横書きしてなり、昭和52年6月24日に登録出願され、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として昭和62年6月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3. 請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第21号証(枝番を含む。)を提出している。

(1) 本件商標は昭和60年3月29日に出願されたのに対し、引用商標は昭和52年6月24日に出願されたものであるから、引用商標は本件商標よりも先願である。

本件商標中の欧文字は、「ガラス、ガラス製品」等の意味を有する仏語であり、「ヴェ(べ)ール」の自然的称呼が生ずるものである。しかして、片仮名文字は欧文字の読みを無理なく特定するものとは認められないから、片仮名文字より独自の自然的称呼「フエレ」が生ずるものである。

被請求人は、本件商標中の片仮名文字が「フエレ」と「エ」が大きく表されているため、日本語の「増えれ」を想起させると主張しているが、本件商標は欧文字とその表音の片仮名文字とを二段に併記した態様であり、片仮名文字のみからなるものではない。かかる場合には飽くまでも欧文字にとらわれることとなるため、当該片仮名文字から何等かの意味内容を有する日本語を想起するとは到底認めることができない。蓋し、本件商標中には欧文字を重要な主要部として顕著に含んでいるため日本語「増えれ」との関わりが認められないからであり、また、「VERRE」は「ガラス、ガラス製品」を意味するフランス語であるから、これと二段に併記された片仮名文字「フエレ」は当該欧文字「VE」の読みを「フエ」として特定するためにわざわざ付記されたものと需要者・取引者に理解、認識されるから、フランス語とは全く異なる日本語の「(財産が)増えれ」が想起されなければならない合理的必然性はないからである。また、指定商品との関連において「増えれ」は何等の関連性をも認められないがゆえに、片仮名文字「フエレ」から日本語「増えれ」が看取されなければならない格別の事情、合理的な根拠も認められないからである。

したがって、片仮名文字「フエレ」から日本語「増えれ」が想起、観念されることはなく、一種の造語と認識されるに過ぎない。

一方、引用商標は本件審判請求人である、イタリア国の著名なデザイナー名、「ジャンフランコ フェレ」を欧文字表記したものであるから、「ジャンフランコ フェレ」又は単に「フェレ」の自然的称呼が生ずるものである。

被請求人は引用商標から「ジャンフランコフェレ」の称呼が生ずるとしているが、引用商標は明らかに人名である。しかも、イタリア国の世界的に著名なデザイナーの名前である。しかして、有名なデザイナーのデザインに係る第17類の商品「被服、布製身回品」等においては、「ピエールカルダン」を「カルダン」、「ピエールバルマン」を「バルマン」、「オッタビオミッソーニ」を「ミッソーニ」等々のように姓のみで略称し指称する慣習が存在している。つまり、姓のみによりそのデザイナー及び当該デザイナーのデザインに係る商品を指称表示しているのである。デザイナー「ジャンフランコフェレ」の場合も同様であり、単に「フェレ」といえば、デザイナー「ジャンフランコフェレ」を指称する略称として著名性を獲得するに至っているとともに、「フェレ」は該デザイナーのデザインに係る商品をも指称する略称としての著名性を獲得するに至っているのである。

したがって、第17類1の商品等を取り扱う慣習に従い、引用商標は「ジャンフランコフェレ」の自然的称呼の他に単に「フェレ」の自然的称呼をも生ずるものと認められる。

この「フエレ」及び「フェレ」の称呼は、前者が3音より構成されているのに対し、後者は2音より構成されているから、単純に構成音数が相違し、語頭部に「フエ」音と「フェ」音との差異が存していることは明らかである。しかし、「フエ」音と「フェ」音とは互いに近似する音であるために両称呼は類似するものである。

すなわち、「フエ」音は無声摩擦子音の「F」と母音「u」との結合音に母音「e」を連続せしめた音であり、母音が連続している音である。そして、母音「u」と「e」とは、音韻法則上「u」が母音中で最も弱い音であるために、「ue」が「e」に近い音として称呼され、聴取されるものである。殊に、「u」音が子音に付随する場合には母音「u」が一層弱く発音されるため、省略されることとなるのである。したがって、「フエ」の2音は「フェ」1音であるかのように称呼され、聴取されるものである。また、本件商標において、片仮名文字は、欧文字の無理のない読みを表すものではないから、欧文字の読みを特定するために併記されたというよりは、むしろ、何等関連のない語を並べたものと見倣されるものであるから、特別の意味は生じない。しかして、本件商標は、「フエレ」を「フ・エ・レ」のように1音づつ区切って称呼しなければならない合理的根拠はないから、上記の音韻法則に従い「フエ」音は「フェ」音のように称呼、聴取されることとなる。殊に、現実の商品取引裡において、簡易迅速を要求される取引の場合であって、電話連絡や店頭などで口頭により取引される場合には、本件商標の称呼「fuere」はより一層「fere」の如くに称呼され、聴取されることとなるのである。

したがって、本件商標は、これと類似する引用商標の後願であるにも拘わらず登録されたものであるから、明らかに商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。

(2) 引用商標及びその片仮名表記「ジャンフランコ フェレ」は、現在は勿論、本件商標の出願時及び査定時には既に我が国において、「イタリア国の著名なデザイナー」の名前として知られていた。

すなわち、デザイナーたる請求人及びその製作に係る服が昭和55年5月16日付けの読売新聞で取り上げられ、昭和59年6月1日発行の「メイド・イン・イタリア大図鑑」、昭和60年4月の時点における有名なブランド品が掲載されている「世界の一流品大図鑑’85」等に紹介されているからである。

引用商標が登録されたのは、本件商標と同一の登録第1112041号商標と非類似と判断されたためではなく、当該登録商標が存続期間の満了により消滅したゆえ抵触関係を脱した(類似関係は否定されていない。)からである。これは請求人の独善的な主張なのではなく、特許庁の商標類否判断の実務に照らしても正当なものである。そして、引用商標が世界的に著名なデザイナーの名称を指称表示し、該デザイナーの名称は単に「フェレ」と略称されることに関しては、特許庁における顕著な事実と認めることができる。

したがって、本件商標の出願時及び査定時に、本件商標と類似する未登録周知標章が存在していたことが明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

(3) 本件商標の出願時及び査定時において、引用商標及びその片仮名表記が、商品「被服」等に関し「イタリア国のデザイナー」の名前として我が国の需要者・取引者を含む一般人に広く知られていたものであることは上記の通りである。

しかして、被請求人が本件商標を使用するときは請求人の業務に係る商品と出所について誤認、混同を生ずる虞が多分にあったのである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも違反して登録されたものである。

(4) よって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。

4. 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。

本件登録商標と引用登録商標とを称呼上から比較すると、本件商標からはその要部である「フエレ」の文字より「フエレ」の称呼が生ずるということができる。

すなわち、本件商標の要部である「フエレ」の中、「エ」の文字は他の文字と同一の大きさのものであるから、これから生ずる称呼は「フエレ」であって「フェレ」ではない。「フエレ」は「財産が増えれ」を想起させるものであるから、これをみる日本の需要者は正確に和音を「フエレ」と発音し、また、これを聴く者にも「増えれ」の「フエレ」と聴きとられるものである。そして、「フエレ」の称呼は、3音というように極めて少数の音から構成されているため、需要者がこれを称呼するときも、明確に発音するものである。

これに対し、引用商標は[GIANFRANC

く、一体不可分に結合されたものであるため、これより「ジャンフランコフェレ」の称呼が生じ、したがって、本件商標の「フエレ」の称呼とは明確に区別することができる。

したがって、両商標は称呼上類似しないというべきである。

また、両商標が外観及び観念の点においても類似しないことは明らかである。

このように本件商標と引用商標とは互いに類似しないから、本件商標は商標法第8条第1項、第4条第1項第10号、第4条第1項第15号のいずれにも該当せず、したがって、本件商標の登録は無効にされるべきでない。

5. よって判断するに、本件商標と引用商標との類否についてみると、それぞれの構成態様に徴して両商標は外観上判然と区別し得る差異を有するものといえる。

次に称呼及び観念上よりこれをみるに、本件商標は、「ガラス、ガラス製品」等の意味を有し、「ヴェ(べ)ール」と発音されるフランス語「VERRE」の欧文字を小さく書し、その下部に大きく圧倒的顕著に「フェレ」の片仮名文字を書してなるところ、欧文字部分は、わが国におけるフランス語の普及度を勘案すれば前記意味合いを直ちに理解せしめる程に親しまれた語を表したものともいえず、また、片仮名文字部分も欧文字の読みを特定したものというよりは、むしろ、何等関連のない語を併記したものとみるのが相当であるから、本件商標は全体として特定の観念を有しない造語よりなるものというのが相当である。かかる事情にあっては、本件商標はそれぞれの構成文字部分に相応して「フエレ」及び「ヴェール」の称呼を生ずるというのが自然であり、しかも、片仮名文字部分から生ずる「フエレ」の称呼は1音づつ区切るように明瞭に称呼され、聴取されるものといえる。

他方、引用商標は、請求人の提出に係る各甲号証によれば、イタリア国のデザイナーとして知られる「ジャンフランコ フェレ」の欧文字表記であることが認められるから、これより「ジャンフランコフェレ」の称呼が1生ずるものといわなければならない。

そして、請求人の提出に係る各甲号証を徴するも、デザイナー「ジャンフランコ フェレ」(G

に係る被服等に使用する「GIANFRANCO

において広く認識されていることが窺われるとし

称されて著名になっているものとは認められず、他に引用商標が単に「フェレ」と称呼されると認めるに足りる証拠もないから、引用商標から単に「フェレ」の称呼をも生ずるということはできない。そうとすれば、引用商標は「ジャンフランコフェレ」の一連の称呼のみを生ずるというのが相当である。

しかして、本件商標から生ずる「フエレ」及び「ヴェール」の称呼と引用商標から生ずる「ジャンフランコフェレ」の称呼とは、その構成音及び音数を著しく異にし、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感音調1が相違し彼此相紛れるおそれはないものといわなければならない。

さらに、本件商標が前記のように一種の造語とみられる以上、その観念について引用商標と比較することもできない。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼、観念のいずれよりみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

また、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起するようなことはなく、両商標を別異のものとして認識するというのが自然であるから、これが請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くに商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は商標法第8条第1項、同法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反して登録されたものとはいえないから、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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