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Trademark Appeal Case

バイオマスハイドロジンの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2008−25562(T2008−25562/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「バイオマスハイドロジン」の文字を標準文字で表してなり、第1類、第4類、第40類及び第42類に属する願書記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成19年9月5日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、同20年3月5日付け手続補正書により、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類,肥料,高級脂肪酸,工業用粉類,原料プラスチック」、第4類「固形潤滑剤,靴油,保革油,燃料,工業用油,工業用油脂,ろう」、第40類「放射線の除洗,金属の加工,ゴムの加工,プラスチックの加工,セラミックの加工,木材の加工,映画用フィルムの現像,写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,廃棄物の再生」及び第42類「建築物の設計,測量,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『バイオマスハイドロジン』の文字を標準文字により書してなるところ、これよりは、『バイオマス(生物エネルギー)から生産されたハイドロジン(水素)』の意味合いを容易に認識させるものであるから、これをその指定商品中『水素』に使用するときは、取引者・需要者をして、その商品が上記の意味合いの商品であるという、単に商品の品質(内容)を表示したと理解するにとどまり、自他商品識別標識として機能し得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における拒絶の理由の要点

当審において、請求人に対し、平成21年2月12日付け拒絶理由通知書をもって、次の旨の拒絶の理由を通知した。

本願商標は、「バイオマスハイドロジン」の文字を標準文字で表してなるところ、これを構成する「バイオマス」の文字は、「生物体をエネルギー源または工業原料として利用すること」を意味する語であり、また、「ハイドロジン」の文字は、「水素」の意味を有する英語「hydrogen」の表音を片仮名表記したものとして使用されている。

そして、下記の事実によれば、「水素」の意味を有する「hydrogen」は「ハイドロジェン」とも表記されている事実が認められることから、「ハイドロジン」と「ハイドロジェン」とは、一般に同義の語として認識されているというのが相当であるところ、本願指定商品及び指定役務を取り扱う業界においては、バイオマスから生成される水素を原料とした燃料電池などの商品について、研究開発等が進められている現状にある。

そうすると、「バイオマス」及び水素の意味を有する「ハイドロジン」から構成される本願商標は、これを指定商品及び指定役務について使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、「生物体である有機廃棄物から生成された水素を原料とした商品」又は「生物体である有機廃棄物から生成された水素に関する役務」の意味合いを表したものと認識し、把握するというのが相当である。

したがって、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、第1類「生物体である有機廃棄物から生成された水素を原料とした化学品」、第4類「生物体である有機廃棄物から生成された水素を原料とした燃料」、第40類「生物体である有機廃棄物から生成された水素に関する廃棄物の再生」及び第42類「生物体である有機廃棄物から生成された水素に関する公害の防止に関する試験又は研究」に使用するときは、商品の品質又は役務の質を表したものと認識させるに止まるものであり、自他商品及び役務の識別標識としての機能を果たし得ないものと認められるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の第1類「化学品」、第4類「燃料」、第40類「廃棄物の再生」及び第42類「公害の防止に関する試験又は研究」に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。

1.「バイオマス」、「ハイドロジン」の語について

(1)「バイオマス」の項に、「○1(○の中に、算用数字を配してなる。以下、同様。)生態学の用語。ある時点で任意の空間内に存在する生物体の量。重量またはエネルギー量で示す。生物量。○2生物体をエネルギー源または工業原料として利用すること。また、その生物体。」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第六版」)、「○1一定空間を占める生物群の量.○2生物群をエネルギー源として利用する(メタン抽出など)方法.」(株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典 第3版」)、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」(「バイオマス・ニッポン総合戦略」平成18年3月31日 閣議決定(http://www.maff.go.jp/j/biomass/pdf/h18_senryaku.pdf))との記載がある。

(2)「Hydrogen:ハイドロジン=水素」(http://qa.padonavi.net/qa4668523.html)、「hydrogen ハイドロジン,水素(の元素記号)」(http://homepage2.nifty.com/t_hino/abb_h.html)、「H(水素ハイドロジン)」(http://blogs.yahoo.co.jp/haru2085nowget/6087514.html)との記載。なお、「ハイドロジェン[hydrogen]」の項に、「[化]水素.」(前掲「コンサイスカタカナ語辞典 第3版」)との記載がある。

「ハイドロジン」と「ハイドロジェン」の文字は、いずれも「水素」の意味を有する「hydrogen」の表音を片仮名表記したものと認められる。

2.新聞記事情報

(1)「釜山国際モーターショー、27日開幕[車輌]」の見出しのもと、「GM大宇は量産車とともに、水素燃料電池『ハイドロジン3』を公開する。」との記事。(2006.4.14 NNA 韓国)

(2)「海外エコノメール GMの燃料電池車 アメリカ 助成狙い?大規模試乗会」の見出しのもと、「GMは試乗会にミニバン『オペル・ザフィーラ』を改造した『ハイドロジン3』を六台投入した。・・・燃料電池車は、酸素と水素による化学反応で発生する電気でモーターを動かす。」との記事。(2003.5.29 中日新聞)

(3)「RITEとシャープ、植物から水素、効率的に、製造用の細菌を開発。」の見出しのもと、「地球環境産業技術研究機構(RITE)とシャープは、農作物や木材などバイオマスから水素を効率的に作る技術を開発した。取り出した糖を効率よく水素に変える細菌を使う。燃料電池に使えば、化石燃料から水素を取り出すのと違い、二酸化炭素(CO2)(注:「2」は下付文字。以下、同様。)をまったく出さない発電システムができる。」との記事。(2008.03.14 日本経済新聞朝刊)

(4)「京都市、バイオマスから水素を作り出すことに国内で初めて成功」の見出しのもと、「【京都】京都市は29日、生ゴミや紙類といったバイオマスから燃料電池の燃料である水素を作り出すことに国内で初めて成功したと発表した。プラントメーカー6社と大阪ガスで構成するバイオガス研究会や京都大学、環境省との共同研究。市では今回の成功を機に、2010年までにバイオマスを活用した燃料電池発電技術の実用化を目指す。実験(写真)では家庭からの生ゴミや紙類などと廃食用油燃料化施設で採集される廃グリセリンをメタン発酵槽で混合し、20日かけて発酵。発生したバイオガスを回収し、水蒸気や酸素と化学反応させる自己熱改質方式で水素に変換した。」との記事。(2007.01.30 日刊工業新聞)

(5)「エコネン、水素製造技術セミナーを09年1月開催(短信)」の見出しのもと、「水素製造技術セミナー エコネンが1月26日、津田ホール(東京・千駄ヶ谷)で新産業創出セミナー『バイオマスを用いた水素製造技術』を開く。」との記事。(2008.12.17 化学工業日報)

(6)「長崎総合科学大、バイオマス利活用で電力とメタノール併給」の見出しのもと、「長崎総合科学大学は、バイオマスのガス化発電によって得られる水素とCOを使いメタノールの合成を行う、小型高効率の電力・燃料併給プラントの技術開発にめどを得た。同大学では、九州沖縄農業研究センターと試作したバイオマスガス化発電プラントの実用化を進めており、これにメタノール合成装置を組み合わせた。すでに実証試験を行い、実用純度のメタノールを得ることに成功した。併せて移動式バイオメタノール製造プラント構想も立案しており、実用化されれば、バイオマス利活用でネックとされる設備・搬送コストの削減に貢献が期待される。」との記事。(2008.12.15 化学工業日報)

3.インターネット情報

(1)「NEDO海外レポート NO.1004, 2007.7.25」において、「バージニア工科大学、オークリッジ国立研究所(ORNL)およびジョージア大学の研究者達は、これから始まる水素経済を見据え、バイオマス中の多糖類(糖分を多く含む炭水化物)から安価な水素を直接生産することを提案している。」との記載。(http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1004/1004-10.pdf)

(2)「牛ふんバイオマスから水素を生産できる」の見出しのもと、「牛ふんには水素生産菌が元々含まれていると推測されるので、牛糞に内在する水素生産細菌群をそのまま水素発酵の種菌として利用した。種菌の添加なしに2Lの培養器を用いて、牛ふん尿スラリー(固形分18 g/L)を様々な温度で嫌気培養した結果を図1に示す。55-75°Cの温度で嫌気培養した場合、内在性の水素生産細菌群を活用して水素を生産できる。」との記載。(http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2006/nilgs/ch06029.html)

(3)「統合型水素生産システムによるバイオマスからの高収率水素変換のための基盤技術の開発」の標題のもと、「水素は燃焼により水のみを生成し、CO2を排出しないため、次世代クリーンエネルギーとして注目されている。水素社会を実現するため、米国や欧州において水素製造、貯蔵、輸送において様々な研究開発が行われている。その中でもバイオマスを原料とした水素生産は、太陽光や風力とともに再生可能なエネルギー資源であり、カーボンニュートラルであることからCO2削減に大きな効果があると期待されている。」との記載。(http://www.rite.or.jp/Japanese/kenki/seika/20shinpo-youshi/20shinpo-11.pdf)

(4)「バイオマスから水素を取り出す会社も」の見出しのもと、「このほか、注文住宅業界最大手の積水ハウスは、エネファームを設計プランに組み込んだ住宅商品『CO2オフ住宅』(2008年7月発表)を解説するパネルを展示。また、変わったところでは、日本計画機構がバイオマスをガス化し水素を取り出すプラント『BLUEタワーシステム』のパネル展示を行っていた。ドイツDM2社がライセンスを持つ技術とのことで、現在、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)共同研究事業となっている1号機(徳島県・阿南市)と、環境省補助事業となっている2号機(島根県・出雲市)が稼動している。燃料電池用水素市場を新規市場として見据えており、2カ所のプラントには諸外国からの視察が絶えないという。」との記載。(http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/12/13/fuelcell/index.html)

(5)「木材チップなどバイオマスの粉砕と加熱による高純度水素の発生 〜温室効果ガスの削減対策の一環としてのバイオマスの利活用〜 (直接,燃料電池用として活用可能な高純度水素が発生)」の標題のもと、「水素は、燃料電池などで利用が拡大することが期待されており、それを再生可能なエネルギー源であるバイオマスから、簡単にかつ高純度・高収率で製造できる手法の開発が望まれていた。」との記載。(http://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_release/pdf2007/20070723_moku.pdf)

(6)「2006年01月23日『バイオマス水素の展望』東大・堤助教授」の見出しのもと、「バイオマス水素と普通言われているのは、二つのちょっと違った意味があると思います。一つは光触媒、バイオマス発生菌のようなバイオマスを分解させながら水素を出す菌などを使った水素精製品のような、生物的手法でやるのがひとつ『バイオマス水素』と言われています。一方、私などが言っている『バイオマス水素』は、バイオマスをガス化する、あるいはメタン発酵でもアルコール発酵でもいいのですが、そこから『水素』に転じます。特にガス化というのはCO水素ですから、COと水素ができますから、これは簡単に水素に転換できる。もっとラフに言えば、ガス化というのは水素にすることなのです。そういった意味で、石油、灯油、あるいは天然ガスから水素を作るより、化学的にはバイオマスからガス化、水素にするほうが簡単なのです。」との記載。(http://new-energy.jp/blog/archives/2006/01/post_304.html)

(7)「水素はメタンや天然ガスからつくることもできますが、バクテリアのなかには水素を発生するものがいます。このようなバクテリアを培養して水素を発生させ、これを集めて燃料電池などに利用しようという研究も進められています。ただ、残念ながら、現状では化学的な方法で水素を作るのに比べて効率が悪いという問題があります。しかし、バクテリアを利用すると、培養によってバイオマスから直接水素を製造できるので、将来の技術革新によって実用化される可能性は十分にあります。」との記載。(http://www2s.biglobe.ne.jp/~yamabio/biomas/BIOMAS.html)

(8)「シンポジウム『バイオマス水素、廃棄物水素の可能性』開催案内」の見出しのもと、「燃焼時に水しか放出せず、クリーンなエネルギーといわれる水素は実はその製造工程においては多くの炭酸ガス排出を伴う。そのため従来の化石燃料由来の水素はブラック水素と区別され、バイオマスや廃棄物由来の炭酸ガス排出を伴わない水素がにわかに注目されている。」との記載。(http://www.isij.or.jp/News/BackNumber/2006/052701.htm)

(9)「バイオマスから例えば水素をつくる技術はどの程度進んでいるのかという話ですが、これは世界中で各社が今実験を続けています。その中で日本は最先端を進んでいるのではないかと思います。上図は私たちがつくっているシステムですが、現在部分的に運転しています。おそらく来年には完成すると思いますが、いろいろな木質系廃棄物、動物糞、農業産廃、家庭ゴミ、都市ゴミ、工場産廃など何でもバイオマスと呼ばれるものは全てこのガス炉に投入することができます。」との記載。(http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/SFC/speech03/sp0304a.html)

(10)「Kvarz社製 水素メーザー周波数標準器」の見出しのもと、「能動型水素メーザー(アクティブ・ハイドロジンメーザー)モデルCH1-75 受動型水素メーザー(パッシブ・ハイドロジンメーザー) モデルCH1-76」との記載。(http://www.rsdynamics.co.jp/Kvarz.htm)

(11)「水素は、自然界にそのままエネルギーとして利用できる形では存在しません。そのため、熱や電気などのエネルギーを投入して、化石燃料や水、バイオマス等から製造する必要があります。」との記載。(http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/evm/ev05/index.html)

第4 当審における拒絶理由に対する意見

前記第3の「拒絶理由通知」に対して、請求人からは何らの意見、応答もない。

第5 当審の判断

当審において、請求人に対し前記第3の拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは未だに何らの意見、応答もないものである。

そして、本願商標について行った当審の前記第3の拒絶の理由は、妥当であって、本願商標をその指定商品及び指定役務中、第1類「生物体である有機廃棄物から生成された水素を原料とした化学品」、第4類「生物体である有機廃棄物から生成された水素を原料とした燃料」、第40類「生物体である有機廃棄物から生成された水素に関する廃棄物の再生」及び第42類「生物体である有機廃棄物から生成された水素に関する公害の防止に関する試験又は研究」に使用するときは、商品の品質又は役務の質を表したものと認識させるに止まるものであり、自他商品及び役務の識別標識としては認識しないというのが相当であり、かつ、前記商品又は役務以外の第1類「化学品」、第4類「燃料」、第40類「廃棄物の再生」及び第42類「公害の防止に関する試験又は研究」に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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