結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2008−300971(T2008−300971/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4194641号商標(以下「本件商標」という。)は、「ダニキライ」の文字を標準文字で表してなり、平成9年5月12日に登録出願、第5類「芳香効果を有する防虫剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤,その他の防虫剤」を指定商品として、同10年10月2日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第8号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないからその登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
被請求人は、本件商標をその指定商品について使用しているとはいえず、被請求人の主張は失当であるといえる。以下、説明する。
(1)被請求人の使用している商品は「芳香剤」であること
ア 被請求人が、乙第38号証、検乙第1号証及び乙第8号証として提出した本件商標を付して使用していると主張する商品(以下「本件商品」という。)は、芳香剤であって、防虫剤ではない。
イ まず、商標は自他商品識別標識として需要者に認識されることから、その商標がどの区分に属する商品について使用されているかは、取引において需要者が商品をどのように捉え認識するかという観点から判断されるべきである。そして、需要者はその商品に表示された記載をみて、商品を認識するのであるから、その表示がどうなっているのかが重要といえる。
ウ そこで、乙第38号証及び検乙第1号証に示された本件商品の包装容器についてみると、その表面上部には大きく白抜きで「芳香剤『ダニキライ』」と明記されている。
また、本件商品の裏面においてもその上部に他の文字よりも大きくかつ太字で「芳香剤」、そしてさらに大きな青字で商標「ダニキライ」と並記されている。そして、右下部における商品の内容を示す部分においても、品名として「芳香剤」と明記され、成分、用途、内容量の記載とともに四角い枠で囲まれている。その他にも特徴の欄に「アロマテック芳香剤」との記載があり、使用方法の欄にも「芳香剤」という記載がある。
さらに、検乙第1号証の本件商品の現品をみると正面、背面の他、平面、底面、両側面にも大きく「芳香剤 ダニキライ」と記載されている(甲第1号証の1ないし同6)。
乙第8号証のパンフレットに掲載されている商品にも表面上部に芳香剤と明記されている。
これらの記載は、本件商品が「芳香剤」であることを明らかに示しており、これに接した需要者もこの記載をみて本件商品は「ダニキライ」という商標の芳香剤であると認識するのが自然であると断言できるものである。また、これらの記載から被請求人の意図、すなわち本件商品を芳香剤として販売しようとしていることも客観的に認識できるといえる。
したがって、本件商品はその使用態様から明らかに「芳香剤」であるといえる。
エ 一方、被請求人は、「『ダニキライ』の商標からは、商品が『ダニを防ぐ』防虫剤であることが明確に示されている。需要者も、防虫剤として本件商品を認識し、手にする。」と主張するが、「芳香剤」とはっきり明記されている包装容器をみて、どうして需要者が「防虫剤」と認識するのか全く理解できない。その商品「芳香剤」との関係で、せいぜい「ダニがきらう」匂い程の意味合いを暗示させるにすぎないものである。
また、表面の「香料の主成分は植物性なのでデリケートな赤ちゃんにも安心です。」、「アロマコロジー効果」、「ほのかなやさしい香り」といった記載はあくまでも芳香剤の品質を表示するものであるし、背面の「赤ちゃんのベッドまわり」、「お布団の押入れ」、「洋服ダンス」、「子供部屋」といった記載も一般的に芳香剤が使用される場所を表示しているものであるといえる。「香りの持続時間は、環境により異なりますが約1〜1ヶ月半です。香りが弱くなったら、安心のためにも替えをお買い求めください。」とする記載も単に芳香剤の替えどきを示しているにすぎない。
その他の記載も本件商品「芳香剤」の品質、使用方法を示すにすぎず、本件商品が防虫剤であることを示す記載は全く見当たらない。
被請求人は、本件商品における本件商標「ダニキライ」の記載から、「防虫剤」が観念され、本件商品における他の記載も防虫剤と関連づけて主張するが、これらは全て商品「芳香剤」についての記載であって、「防虫剤」についての記載とするのは無理があるといえる。
オ また、被請求人は、答弁書においても記載されているとおり「ダニキライ」を芳香剤としても出願し、登録を受けているが(登録第4330501号商標、甲第2号証)、「ダニキライ」から防虫剤が観念されるならば、芳香剤の登録は品質誤認を原因とする無効理由を含むことになる。
このことからしても、被請求人の主張がいかにその場しのぎの苦し紛れの答弁であるか、容易に推察できるものである。
さらに、被請求人は本件商品と同種の商品と思われる商品「ダニガード」(甲第3号証)についても商標権を有しているが(登録第4040480号商標、甲第4号証)、指定商品は第3類「防虫効果を有する芳香剤(薬剤に属するものを除く。)」のみである。そして、防虫剤の上位概念の第5類「薬剤」において、商標「ダニガード」は他社が登録を有している(登録第2703258号商標、甲第5号証)。
したがって、被請求人は、この種の商品を「芳香剤」であると認識し、販売しているものと推認できる。なぜならば、仮に、この商品が「薬剤」(防虫剤)に該当するならば、被請求人の商標「ダニガード」の使用は、他社商標権を侵害することになるからである。
以上から、本件商品は明らかに「芳香剤」といえるのであって、それを「防虫剤」とするのは、本件審判における登録取消を免れるためのその場しのぎの便法にすぎない。
(2)第3類「芳香剤」と第5類「防虫剤」について
ア 被請求人は、取引実情において、「芳香剤」にも「防虫剤」にも該当する商品が多数存在するとし、種々主張しているが、本件においては何等意味をなさない事情といえる。
イ 確かに、市場には「時計付きラジオ」と「ラジオ付き時計」のように、「時計」と「ラジオ」のどちらの商品に区別したらよいのか判断が難しい商品が存在する。
しかしながら、先に記載したとおり、商標は自他商品識別機能を有することから、需要者がその商品をどのように認識し把握するのかが重要であって、判断が難しい商品についても、まずはそこに記載された表示が考慮されるべきである。
本件に関しては、上記したとおり、その表示から明らかに商品は「芳香剤」であると認識できる。よって、仮に本件指定商品が判別が難しい商品であったとしても、本件商品が「芳香剤」であることは明らかなのである。
ウ 被請求人が乙第11号証ないし乙第14号証及び乙第17号証ないし乙第29号証において主張する他社の商標登録及び製品情報のうち、商標登録については今後使用する予定がある商品をも含めて出願している可能性があり、本件と必ずしも事情を同じくするとはいえない。そして、商標が商品に使用されているか否かは個別具体的に判断されるべきであって、他社製品の情報は、本件商標の使用を判断する際には必要のない情報であるといえる。
エ また、取消2004−30524号審決(乙第30号証)及び昭和57年(行ケ)第67号判決(乙第31号証)についても同様に、本件とは事案が異なるといえる。
乙第30号証として提出された取消2004−30524号審決では、「登録商標の使用されている当該商品の実質に則して、それが真に複数の商品区分に属する多面性を有する商品であれば、当該複数の商品区分に属する商品について登録商標が使用されているものと扱っても差し支えない」と記載されている一方(甲第6号証)、乙第31号証の昭和57年(行ケ)第67号判決においては、「商標法上の『石鹸』と『化粧品』の分類の限界線は、その商品の実質による区別とは必ずしも一致しないのである。」との記載があり(甲第7号証)、相矛盾する見解が示されている。すなわち、いずれの商品区分に属するか、判断が難しい商品についての統一された判断基準は存在せず、各々の事案ごとに個別具体的に判断されるべきものであるといえる。
本件商品は、その使用態様から芳香剤としか認識できず、その裏面に記載された商品名も芳香剤とされていることから、疑義が生ずるまでもなく芳香剤に使用されているものである。
したがって、本件商品を芳香剤に加え、防虫剤でもあるとする被請求人の主張は認められないといえる。
(3)取消に係る指定商品について使用証明する必要があること
ア 商標法第50条第1項の規定による商標登録取消審判の請求があった場合においては、原則、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等がその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない(商標法第50条第2項)。
すなわち、本件においては、被請求人が本件商標を、指定商品中第5類「芳香効果を有する防虫剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤,その他の防虫剤」のいずれかについて審判の請求の登録前3年以内に使用していることを証明しなければ、その指定商品についての登録は取消されるものといえる。
イ 被請求人は、「芳香剤」と「防虫剤」について販売場所、需要者の範囲、使用場所等の共通点を諸々挙げ、類似する商品と主張するが、仮に両商品が類似する場合があるとしても、同一の商品ではない。
つまり、被請求人が使用している商品はあくまでも「芳香剤」であって、「防虫剤」ではないため、その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについて本件商標を使用しているとはいえず、被請求人の主張は認められないといえる。
(4)被請求人の提出した証拠の信憑性について
ア まず、被請求人が提出した本件商品を示す証拠、乙第8号証、乙第38号証及び検乙第1号証についてであるが、それらに記載された住所は、「本社〒203東京都東久留米市八幡町2−14−8」となっており、これは被請求人が平成10年7月18日に現住所に移転する前の住所である(甲第8号証)。
すなわち、本件商品には本件審判の請求の登録日である平成20年8月15日より10年以上も前の住所が記載されており、そのことから本件商品が審判請求の登録前3年以内に販売されたかどうか疑わしい。
イ 乙第1号証及び乙第2号証証の売上伝票の年月日はそれぞれ平成17年5月9日及び平成17年6月17日となっており、本件審判の請求の登録日よりも3年以前となっている。したがって、使用を証明する証拠とはなりえない。
ウ 乙第3号証ないし乙第5号証の売上伝票については、商品コードの欄に「ダニキライ」と記載されてはいるが、この資料のみでは現実に商品が取引されたか否かは不明であるといえる。証拠の信憑性を裏付ける資料がないため、証拠としては不十分である。
また、上記のとおり、乙第8号証、乙第38号証及び検乙第1号証の商品に記載された被請求人の住所は「〒203−0042東京都久留米市八幡町2−14−8」となっている一方、売上伝票に記載された住所は「小平市大沼町2−853−5」となっており、一致していない。そのことからも、乙第3号証ないし乙第5号証の信憑性は疑わしい。
エ 乙第6号証及び乙第7号証の売上リスト及び商品別売上実績表は、被請求人自身により作成されたものであり、如何にでも作成できることから、使用を証明する証拠とはなりえない。
(5)以上より、被請求人が使用証拠として提出した商品は、審判請求に係る指定商品のいずれにも該当するとはいえないため、被請求人の主張は失当であるといえる。
また、乙第1号証ないし乙第8号証、乙第38号証及び検乙第1号証は証拠としての信憑性を欠くものといえる。そして、その他の被請求人が提出した証拠については、本件商標の使用を証明しているとはいえない。
よって、被請求人は、本件商標を指定商品中「第5類 芳香効果を有する防虫剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤,その他の防虫剤」について本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用しているとはいえず、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものといえる。
被請求人は、「審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第38号証及び検乙第1号証を提出した。
(1)被請求人は、本件商標「ダニキライ」を付した防虫剤を、平成10年より販売している。
(2)証拠として、本件商標を付した商品の売上伝票(乙第1号証ないし乙第5号証)、売上リスト(乙第6号証)、商品別売上実績表(乙第7号証)、本件商標を付した商品を掲載したパンフレット(乙第8号証)、販売商品現品の写真(乙第38号証)を提出する。
(3)乙第1号証ないし乙第5号証は、平成17年5月9日から平成19年7月4日の間の売上伝票であり、乙第8号証は平成10年から頒布している商品カタログである。いずれも、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明するものである。
(4)また、被請求人が販売している商品である「芳香効果を有する防虫剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤,その他の防虫剤」の現品を検乙第1号証として提出する。
(5)本件商品は、黄色の包装容器上部の大半を占める大きさの青い太い手書き風の文字で「ダニキライ」との商標が付されている。「ダニキライ」の文字は、非常に目立つ態様で記載されているので本件商品の包装容器を見ると、まず商標「ダニキライ」が目に入る。「ダニキライ」の商標からは、商品が「ダニを防ぐ」防虫剤であることが明確に示されている。需要者も、防虫剤として本件商品を認識し、手にする。
(6)ハーブやヒノキなど植物の芳香にダニに対する防虫効果を持つことが発見されると(乙第9号証及び乙第10号証)、ハーブやヒノキ等を使用した防虫剤が販売されるようになってきた(乙第11号証ないし乙第14号証及び乙第17号証ないし乙第22号証)。化学薬品を使用しない天然成分を用いた防虫剤は、寝具、寝巻き、肌着など肌に密着する製品にも使用でき、居間や寝室など生活に密着した場所で日常的に使用できる。また、赤ちゃんやお年寄りなど体や皮膚の弱い人も安心して使用することができる。本件商品もまさにこうした防虫効果を持つ植物性の香料を使用している(乙第15号証ないし乙第16号証)。
さらに、本件商品の包装容器には「ダニキライ」「香料の主成分は植物性なのでデリケートな赤ちゃんにも安心です。」と防虫剤の用途・機能を示す記述を表示している。使用場所の「赤ちゃんのベッドのまわり」「お布団の押入れ」「洋服ダンス」「子供部屋」との記述のうち、特に「赤ちゃんのベッドのまわり」「お布団の押入れ」「洋服ダンス」はダニ等に対する防虫剤の特有の使用場所を示すものである。背面の「香りの持続期間は、環境により異なりますが約1カ月〜1ヶ月半です。香りが弱くなったら、安心のためにも替えをお買い求めください。」との記載からは、香りが防虫効果の効き目が持続する目安となり、「安心のために」使用する防虫剤であることが示されている。
したがって、本件商標が付された商品が、「芳香効果を有する防虫剤」、「通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤」、「その他の防虫剤」であることは明白である。
(7)本件商品のような防虫剤は、居間や寝室など生活に密着した場所で日常的に使用する。そのため、防虫剤特有の薬剤を使用することは臭いが鼻の粘膜を刺激し、使用に適さない。また、化学薬品を使用すると、赤ちゃんやお年寄りのいる家庭では特に安全に配慮されるため敬遠される。防虫効果を化学薬品によらずハーブやヒノキ等の植物性の香料によることで、小さな子供や、お年寄りのいる家庭でも安心して使用することができる。安全で、芳香効果を持つこのような防虫剤は、業界でも注目され大手メーカーからも多数の製品が販売されるようになった(乙第17号証ないし乙第29号証)。そして今日では、居間や寝室など生活に密着した場所で日常的に使用される防虫剤には、芳香効果も必須の機能となっている。
(8)芳香効果を持つ防虫剤で商標登録されているものには、乙第17号証ないし乙第29号証ようなものがある。いずれの商品も「香り」「消臭」と「虫よけ」「ダニよけ」という言葉を使用した同じ用途・機能の商品でありながらも、指定商品は第3類「芳香剤」等と第5類「薬剤」「防虫剤」等に分かれている。これは、ハーブの芳香効果を利用して防虫効果を発揮する商品の区分は、第3類及び第5類のいずれの区分にも該当する商品だからである。
このように、芳香効果を持つ防虫剤は、指定商品が第3類であったり、第5類であったりしている。
(9)登録取消審判2004−30524の審決で「商品によっては、いずれの商品区分に属するかについて、判断が極めて困難な商品も存するのが実情であり、特に、不使用取消審判の場においては、登録商標の使用されている当該商品の実質に則して、それが真に複数の商品区分に属する多面性を有する商品であれば、当該複数の商品区分に属する商品について登録商標が使用されているものと扱っても差支えないといえ、このように解しても、不使用取消審判制度の趣旨に反することにはならないものということができる。」とされた(乙第30号証)。
本件商標の商品についても、先の審決と同様、登録商標の使用されている当該商品の実質に則して、複数の商品区分に属する多面性を有する商品であるので、第3類及び第5類の商品区分に属する商品について登録商標が使用されているとするのが妥当である。
また、昭和57年(行ケ)第67号事件の判決で「ある商品がA分類に該当するから、B分類には該当しないという論理が成立するためには、AとBが択一関係にあり、両者の性格を兼ね備えることはありえないことが前提となるが、「石鹸」であるか「化粧品」であるかは、このような択一関係にはなく、かえつて、その複合的性格を指摘できるのであって、要するに、本件商品は、石鹸分を含有する化粧品なのである。旧商標法の下でも、石鹸と化粧品とが類別を異にするからといつて、一方に該当するものは他方に該当しないということにならないのは当然の事理である。二つの類のいずれにも該当する商品が出現したからといつて、その商品をいずれか一方の類に押し込めなければならないという理由はない。」とされた上で、「商標法上の『石鹸』と『化粧品』の分類の限界線は、その商品の実質による区別とは必ずしも一致しないのである。」と判断されている(乙第31号証)。
したがって、本件商標が付された商品は、ダニの嫌いな香りにより防虫効果を発揮させる「芳香効果を有する防虫剤」であり、ダニの嫌いな香りの「防虫効果を有する芳香剤」でもある。
(10)広辞苑によると、防虫剤とは「害虫を防ぐ薬剤。樟脳、ナフタレンの類。」、芳香剤とは「不快な臭いを消すための芳香を放つ薬剤。」とある(乙第32号証)。また、Wikipediaによると、防虫剤とは「害虫を忌避するために用いられる薬剤のこと」、芳香剤とは「果物や花卉、樹木などの匂いで悪臭をマスキングする、また単純に香りを付けるものである」とある(乙第33号証)。いずれも防虫剤は「薬剤」を意味するだけであるので、植物性香料を使用した本件商品の指定商品として、上記のような、「防虫剤」の意味範囲では狭すぎる。
本件商品は、単なる防虫剤ではなく赤ちゃんにも安心な香料を使用した芳香剤でもある。防虫剤と表記すると、化学薬品が連想され安全性に不安を感じさせてしまう。そこで、黄色の包装容器上部に赤地に白字で「芳香剤」と記載している。防虫剤であることは「ダニキライ」の商標から十分に消費者に伝わることができているからである。さらに、赤ちゃんにも安心であることを示すために包装容器に裸で寝そべる赤ちゃんの写真を使用している。こうして、商品の包装容器全体から、本件商品が芳香剤、防虫剤であって、赤ちゃんにも安心して使える商品であることを端的に示している。
(11)本件商標が付された商品は、ダニの嫌いな香りにより防虫効果を発揮させる芳香効果を有する「防虫剤」であり、ダニの嫌いな香りの防虫効果を有する「芳香剤」でもある。第5類及び第3類のいずれの区分にも該当し得るもので、どちらかの区分に限定してしまうことは適切ではない。そのため、被請求人は、本件商標と同一の商標について、同日に、第3類「防虫効果を有する芳香剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した防虫効果を有する家庭用芳香剤,その他の芳香剤」を指定した登録出願をし、平成11年10月29日に設定登録された登録第4330501号商標を有している。
(12)本件商品は、スーパーやドラッグストア、ホームセンター等の日用品売り場で販売される。スーパー等の売り場は、通路毎に商品が分類されて陳列されるが、日用品の同一の通路にこれらの商品は並んでいる。
例えば、乙第34号証のイオンのオンラインショッピングでは、「食品・家庭用品」の中で「部屋用・布用芳香消臭剤」と「防虫・除湿剤・殺虫剤」に分かれている。乙第35号証の楽天市場の店舗では、「芳香&消臭剤」と「殺虫&防虫剤」とされ、乙第36号証のイトーヨーカドーのオンライショッピングでは「防虫・芳香剤」の中で「虫よけ剤」と「芳香」に分かれている。乙第37号証のケンコーコムにおいては「虫よけ芳香剤」という分類がある。商品の分類は、販売店毎に用途・機能等や名称から総合的に勘案して決めているので、店舗によって「芳香剤」として扱われたり「防虫剤」として扱われたりします。業界の慣例として、芳香剤、防虫剤は明確に区別されず、販売されている。これは、防虫剤は化学薬品の不快な臭いをさせないように芳香を使用しているのが一般的であって、防虫剤と芳香剤を区別することができないからである。例えば、大日本除虫菊株式会社の「ダニよけハーブ」(大日本除虫菊株式会社の登録商標 乙第20号証)という商品は、指定商品が第5類「ハーブを配合したダニ忌避剤」であるが、販売元のHPでは芳香・消臭剤とされ、乙第35号証の楽天市場、乙第36号証のイトーヨーカドーのHPにおいては虫よけ剤として掲載されている。
このように、芳香効果と防虫効果を併せ持つ商品は用途・機能等や名称から総合的に勘案して「芳香」と「虫除け」、「防虫」のいずれをも用途・機能とすると判断できる商品は、現実の取引の現場においては「芳香剤」と「防虫剤」として取り扱われるのが実情である。したがって、本件商標の付された商品も、取引の実情において「芳香剤」と「防虫剤」のいずれとしても取り扱われている。
(13)防虫剤と芳香剤は、いずれも日用品で、同一店舗の同一売り場(例えば、スーパーの日用品売り場)で販売される。需要者の範囲は、家庭内で使用する日用品であるために主に家事を行う家庭の主婦である。使用場所も、家庭内の居間、寝室など同一です。植物性の香料を使用した芳香剤、防虫剤は、ハーブ等を使用し原材料が一致する。両商品の類似群コードは「04D02」と「01B01」とで異なるが、上記のように一致点の多い極めて類似する商品である。仮に同一の商標「ダニキライ」について、指定商品が第3類の芳香剤と第5類の防虫剤で異なる権利者の商品が存在する場合には、スーパー等の店頭で隣り合う程のごく近い場所に両商品が並び、需要者が出所の誤認・混同を生じる恐れが極めて高くなる。このような特徴を持つ本商品は第5類及び第3類の両区分で登録商標としての保護を受けることによって、混同を防止し需要者の利益を守ることにつながるものと思料する。
(14)上記の証拠により、被請求人が本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標を第5類の中の指定商品「芳香効果を有する防虫剤,通気用の孔又はスリットを備える容器に充填した芳香効果を有する家庭用防虫剤,その他の防虫剤」について使用していることは明白である。
ア 乙第3号証は、得意先を「DM事業部」とし、届先コードを「000286」とする平成18年5月15日付けの被請求人の売上伝票と認められるところ、発注日の欄に「180515」、実納品日の欄に「1805016」と記載され、品名欄に「ダニキライ 詰替 6ml」、数量「15」、金額等の記載がされている。
イ 乙第4号証は、得意先を「DM事業部」とし、届先コードを「004183」とする平成19年7月3日付けの被請求人の売上伝票と認められるところ、発注日の欄に「190703」、実納品日の欄に「190704」と記載され、品名欄に「ダニキライ 詰替3P 6ml」、数量「10」、金額等の記載がされている。
ウ 乙第5号証は、得意先を「DM事業部」とし、届先コードを「000286」とする平成19年7月4日付けの被請求人の売上伝票と認められるところ、発注日の欄に「190704」、実納品日の欄に「190705」、品名欄に「ダニキライ 詰替 6ml」、数量「20」、金額等の記載がされている。
エ 乙第6号証は、平成20年8月25に被請求人によって作成された平成17年1月〜平成20年3月の売上リストと認められるところ、平成17年5月9日の欄に「ダニキライ 詰替 6ml」、売上数量「10」、同6月17日の欄に「ダニキライ 本体 6ml」、売上数量「3」、平成18年5月15日の欄に「ダニキライ 詰替 6ml」、売上数量「15」、平成19年7月3日の欄に「ダニキライ 詰替3P 6ml」、売上数量「10」、同4日の欄に「ダニキライ 詰替 6ml」、売上数量「20」がいずれも得意先を「DM事業部」とし、数量、金額等とともに記載されている。
オ 乙第7号証は、平成20年8月25に被請求人によって作成された平成17年1月〜平成20年8月の商品別売上実績表と認められるところ、「ダニキライ 本体 6」は、売上数量に「3」、「ダニキライ 詰替 6」は、売上数量に「45」、「ダニキライ 詰替3P 6」は、売上数量に「10」の記載がある。
カ 乙第8号証は、「TO‐PLAN 商品カタログ Vo1.1 Spring & Summer」と題する被請求人の商品カタログの抜粋と認められるが、作成時期、使用時期等を示すような記載は見あたらず、記載されている被請求人の本社住所として、「東京都東久留米市八幡町2−14−8」と記載されている。
該カタログの第6頁には、「ダニキライ」の表示の下に乙第38号証及び検乙第1号証の商品と同一の商品と認められる商品(「以下「本件商品(本体)」という。)の正面写真、「優しい香りでしっかりガード。デリケートな赤ちゃんも安心。ダニのキライな芳香剤」、「容量 6ml」、価格等の記載がある。
また、上記商品の右に「ダニキライ(詰替)」の表示の下に商品の写真、
、「容量 6ml」、価格等の記載がある。そして、写真の商品(以下「本件商品(詰替用)」という。なお、本件商品(本体)と本件商品(詰替用)をあわせているときは「本件商品」という。)には、赤ちゃんの写真、「ダニのキライな芳香剤」、「つめ替用」、「安心効果1カ月以上」等の記載がある。
キ 乙第38号証は、本件商品(本体)の表面及び裏面の写真と認められ、検乙第1号証は、該商品の現物であるところ、これらの証拠よりは、本件商品(本体)に以下の記載があることが認められる。
本件商品(本体)の正面には、「ダニキライ」の文字が大きく記載されているほか、「芳香剤『ダニキライ』」、「香料の成分は植物性なのでデリケートな赤ちゃんにも安心です。」、「●アロマコロジー効果 ●ほのかなやさしい香り」、赤ちゃんの写真、「安心効果1カ月以上」、芳香剤を入れる四角形状の容器の写真、等の各記載と写真が表示されている。
また、本件商品(本体)の背面には、「芳香剤ダニキライ」「赤ちゃんのベットまわり お布団の押し入れ 洋服ダンス 子供部屋」、特徴として、「植物性香料配合 香料の主成分は、赤ちゃんにも安心な植物成分です。」、「アロマテック芳香剤 アラマコロジー効果(香りによる精神作用)のやさしい香りが気分を落ち着かせます。」等の記載、「使用方法として容器上面の三角部を開け、中の吸収剤に芳香剤をゆっくりしみこませてください。」等の記載、使用上の注意として「香料が目に入った時は水で十分に洗い流してください」、「香りの持続時間は、環境により異なりますが、約1〜1カ月半です。香りが弱くなったら、安心のためにも替えをお買い求めください。」等の記載、「品名:芳香剤 用途:室内用 成分:香料 内容量:6ml」及び発売元及びその住所として「株式会社 東京企画販売」、「東京都東久留米市八幡町2−14−8」の記載等がある。
さらに、上面、底面及び左右側面には、「芳香剤ダニキライ」、「安心効果1カ月以上」、「ベッドまわり 押入に・・・」「赤ちゃんのベットまわり お布団の押し入れ 洋服ダンス 子供部屋」の記載がある。
請求人は、本件商品に記載された請求人住所が平成10年7月18日に移転する前の住所であることから、本件商品が審判請求の登録前3年以内に販売されたかどうか疑わしい旨主張し、また、上記記載の住所は、甲第4号証及び甲第5号証の売上伝票に記載の被請求人の住所と異なることから、該売上伝票の信憑性は疑わしい旨主張している。
本件商品(詰替)に記載された被請求人の住所は定かではないが、乙第2号証によれば、平成17年6月17日に本件商品(本体)が3個販売されたことが認められ(乙第2号証及び乙第6号証)、当該本件商品(本体)の住所が移転前であることから、本件商品(詰替)に記載の住所も請求人が平成10年に移転する前の住所が記載されているとしても、本件商品は、平成17年1月から平成20年8月の売上げ実績が「ダニキライ本体」が3個、「ダニキライ6ml入り詰替用」が45個、「ダニキライ6ml入り詰替用3個パック」が10個というように販売実績が極めて少ないものであるから、仮にその商品に記載の住所が移転前の住所であるとしても、取引の事実を否定するものとはいえず、その主張は採用できない。
(1)本件商品は、前記1で認定のとおり、「芳香剤ダニキライ」、「品名:芳香剤」と明記され、商品の効果、特徴についても「アロマコロジー効果 ほのかなやさしい香り」「植物性香料配合」「アロマテック芳香剤」と記載されているものであって、本件商品が防虫剤であることを表示するような何らの記載もないものである。
そうとすると、本件商品は、芳香剤であり、かつ、需要者は、芳香剤としてのみ認識するというべきである。
(2)被請求人の主張について
被請求人は、本件商品は、取引の実情において、「芳香剤」と「防虫剤」のいずれとしても取り扱われるとして、以下のように主張している。
ア 本件商品に表示されている「ダニキライ」の文字が非常に目立つ態様で記載されているから、「ダニを防ぐ」防虫剤であることが明確に示されていると主張し、また、「ダニキライ」「香料の主成分は植物性なのでデリケートな赤ちゃんにも安心です。」の記載は、防虫剤の用途・機能を示す記述を表示するものであり、記載の使用場所のうち特に「赤ちゃんのベットまわり」、「お布団の押し入れ」、「洋服ダンス」は、ダニ等に対する防虫剤の特有の使用場所を示すものであり、「香りの持続時間は、環境により異なりますが、約1〜1カ月半です。香りが弱くなったら、安心のためにも替えをお買い求めください。」との記載からは、香りが防虫効果の効き目が持続する目安になり、「安心のために」使用する防虫剤であることが示されている旨主張し、需要者も防虫剤として本件商品を認識する旨主張している。
しかしながら、「ダニキライ」が防虫剤であることを示すものとは到底いうことができないし、被請求人の挙げる「香料の主成分は植物性なのでデリケートな赤ちゃんにも安心です。」、「香りの持続時間は、環境により異なりますが、約1〜1カ月半です。香りが弱くなったら、安心のためにも替えをお買い求めください。」及び使用場所の記載は、芳香剤の記載としても当てはまらないものではない。そして、防虫剤を購入しようとする需要者は、通常、どのような防虫剤であるかを確認して購入するというべきであるが、本件商品について、防虫剤であることを示す記載が何らされていないものであるから、被請求人の上記主張は採用できない。、
イ 被請求人は、ハーブやヒノキ等の植物の芳香にダニに対する防虫効果があり(乙第9号証、乙第10号証)、これを使用した防虫剤が販売され(乙第11号証ないし乙第14号証、乙第17号証ないし乙第22号証)、化学薬品を使用しない天然成分を用いた防虫剤は、寝具、寝巻き、肌着など肌に密着する製品にも使用でき、居間や寝室など生活に密着した場所で日常的に使用でき、また、赤ちゃんやお年寄りなど体や皮膚の弱い人も安心して使用することができるようになり、本件商品もこうした防虫効果を持つ植物性の香料を使用している(乙第15号証及び乙第16号証)旨主張している。
確かに、乙第9号証、乙第15号証及び乙第16号証によれば、香料の中には、防ダニ効果を有する香料の存在を示す書籍や試験結果があることは認められ、ひのきにはダニを抑制する成分が含まれていることは認められ(乙第10号証)、また、乙第11号証ないし乙第13号証によれば、芳香効果のある防虫剤が存することが認められるものの、香料がすべて防虫効果を有するものであるは認められない。そして、本件商品が、乙第15号証及び乙第16号証の試験結果により、防ダニ効果のあるとされた香料を使用しているとしても、例えば、乙第11号証の商品は、「虫よけ効果60日」、「虫除け剤」と明記され、香りは、ミント、ハーブ、ラベンダーの3種類」の記載があるが、製品の特徴として、虫が嫌がる植物精油(シトロネラールなど)の効果で、玄関に不快害虫をよせつけません」とし、成分として、防虫効果を有する成分であることが明記され、乙第12号証ないし乙第14号証の商品は、それぞれ「エッセンシャルオイル」、「樟脳」、「天然木材精油」を原材料として含んでいることが記載されているが、本件商品については、防虫剤であることや防虫効果を有する商品であることが何ら明記されているないものではないから、需要者が本件商品について防虫剤であるとして認識して取引するとはいうことができないというべきである。
ウ 被請求人は、芳香効果を持つ防虫剤が多数販売されるようになり、防虫剤には、芳香効果も必須の機能となっていると主張し、また、ハーブの芳香効果を利用して防虫効果を発揮する商品の区分は、第3類及び第5類のいずれの区分にも該当する商品であるとし、本件商品は、ダニの嫌いな香りにより防虫効果を発揮させる「芳香効果を有する防虫剤」であり、ダニの嫌いな香りの「防虫効果を有する芳香剤」でもあると主張している。
しかしながら、芳香効果と防虫効果を併せ持つ商品があるとしても本件商品については、前述のとおり、需要者は本件商品について防虫剤であると認識されるものではなく、本件商品が防虫剤の範疇の商品として取引されているものとはいうことができないから、被請求人の主張は採用できない。
エ 被請求人は、本件商品は、スーパーやドラッグストア、ホームセンター等の日用品売り場で販売され、インターネットの商品販売をみると、店舗によって「芳香剤」として扱われたり「防虫剤」として扱われたりしており、業界の慣例として、芳香剤、防虫剤は明確に区別されず、販売されていると主張し、また、防虫剤と芳香剤は一致点の多い極めて類似する商品であり、仮に同一の商標「ダニキライ」について、指定商品が第3類の芳香剤と第5類の防虫剤で異なる権利者の商品が存在する場合には、スーパー等の店頭で隣り合う程のごく近い場所に両商品が並び、需要者が出所の誤認・混同を生じる恐れが極めて高くなる。このような特徴を持つ本商品は第5類及び第3類の両区分で登録商標としての保護を受けることによって、混同を防止し需要者の利益を守ることにつながる旨主張している。
しかしながら、防虫剤と芳香剤は、販売場所や使用場所などが一致する場合があり、防虫効果と芳香効果を併せ持つ商品があるとしても、防虫剤と芳香剤は別異の商品であり、本件商品は、前述のとおり、防虫剤であるとは認められないものである。そして、商標法第50条第1項は、「指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは・・・」と規定しており、類似商品への使用をもって当該登録商標の使用とすることはできない。
したがって、被請求人の主張はいずれも採用できない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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