Trademark Appeal Case
著名商標と外観・称呼の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900486(T2008−900486/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5165960号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成20年3月24日登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同年9月12日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである旨主張し、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第2号証ないし甲第65号証を提出した。
(1)引用商標について
ア 申立人は、1989年に眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状を治療する薬剤を開発した。該商品は、アメリカ合衆国で承認されて以来、現在では70カ国以上で承認された。該商品の商品名が「BOTOX」の商標である(甲第8号証ないし第10号証)。
イ 我が国では1995年2月に厚生省(当時)より承認され、1997年から販売開始された。2005年だけでも、全世界の売上は8億4000万ドル、我が国で46億4500万円となっている。また、その使用医療機関や主要顧客は、全国各地の大学病院や総合病院等、2500余の施設に及んでいる(甲第11号証)。
(2)引用商標の美容分野における著名性について
ア 「BOTOX」「ボトックス」商品は、「しわやたるみの除去などの美容整形」にも適応することが判明し、次第に一般の美容整形目的でも使用されるようになった。2002年にFDA(米国食品医学薬品局)から、美容用途についても許可が下りた結果、アメリカ合衆国ではシワの改善などの効果を宣伝することができるようになり、美容整形ブームとも相俟って一層広く一般にとりわけ女性に知悉された。日本国内では、1999年に美容雑誌「VoCE」(講談社)が「BOTOX」について特集した(甲第52号証)。
イ 現時点で日本においては直接的に美容目的の「BOTOX」「ボトックス」商品は製造・販売していないが、該商品の情報は日本国内にも多く流入し、美容目的で、個人輸入等を通じて海外から該商品が日本国内に入り、実際に入手して使用する需要者も現れている(甲第53号証ないし甲第60号証)。
ウ 美容目的の「BOTOX」「ボトックス」商品は、しわ・たるみの除去を目的としている。かかる商品に興味を示す需要者は、しわ・たるみの除去・改善などといった主に顔に関する美容に興味をもつ者である。また、該商品の需要者層は年配の女性に限らず、若い女性も含む、美顔や美容全般に興味を有する者といえる。
また、しわ・たるみ対策及び改善、美容を目的とした多種類の化粧品、食品が市場に出回っており、これに関係した様々な役務が提供されていることは周知の事実であるところ、申立人は、実際に化粧品、シワ専用の美容液を開発・販売している。
したがって、化粧品、美容、医療に関係した商品や役務の分野のおいても、申立人の商標「BOTAX」「ボトックス」が著名であることは明らかである。
エ 以上のように「BOTOX」「ボトックス」商標は、本件商標の出願日である平成20年3月24日のはるか以前から、申立人の医療用ないし美容外科用医薬品の商標として、全国各地の需要者・取引者をはじめ、一般人の間に知悉された極めて周知で、かつ、著名なものとなっていたことは明らかである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観
本件商標は、「NO−TOX」「NOEVIR」「REVITALIZER」及び「GINZATOKYO」の欧文字と図形とを表面に表示したチューブ状の容器の外観を写した構成となっている。
このうち、「NO−TOX」の文字は本件商標の中央に全角の大きめの文字ではっきりと表示されて視覚的に明確に看取できるが、「NOEVIR」の文字はかろうじて読み取ることができる程度で、「REVITALIZER」及び「GINZATOKYO」の文字は極めて看取しづらい外観となっている。
他方、引用商標は、「BOTOX」及び「ボトックス」の文字よりなるものである。
本件商標の視覚的に明確に看取できる「NO−TOX」は、引用商標を構成する「BOTOX」の5文字中の4文字がその構成中に使用されており、両商標を構成する文字の差異は「N」と「B」のたった1文字である。
引用商標は、造語であって世界的に著名な商標である。すると、構成するほとんどの文字を共通にし、後半3文字については構成文字及びその語順が完全に同一という構成にあっては、取引者・需要者は、「NO−TOX」から「BOTOX」を想起するというべきであり、本件商標と引用商標とは外観上混同して認識される可能性が高い。
イ 称呼
本件商標は、各構成文字から「ノトックス」、「ノートックス」、「ノエビア」、「リバイタライザー」、「ギンザトウキョウ」の称呼が生じ得るところ、構成中「NO−TOX」の文字は極めて明確に看取されるから、本件商標から「ノトックス」あるいは「ノートックス」の称呼が生じること明白である。
他方、申立人の引用商標「BOTOX」及び「ボトックス」からは「ボトックス」の称呼が生じる。
そこで両者を対比するに、両称呼は「トックス」の音を同一にし、しかも共通部分の「トックス」の「ト」は促音を伴って強く発音される音であるから、「トックス」が特に強調されて発音される。また、本件商標から生じる称呼については、「ノックス」及び「ノートックス」の「ノ」及び「ノー」の音は、促音を伴う「トックス」の音の前にあっては比較的弱く、明瞭ではない音として聴取される。
したがって、両商標から生じる称呼においては、「トックス」が強く聴覚され、全体としても似通った称呼として聞き取られる。また、「ノトックス」「ノートックス」は、語頭音の母音が「オ(o)」である点においても「ボトックス」と共通し、称呼が近似する。
したがって、本件商標は引用商標と称呼上類似する。
ウ さらに上述のとおり「BOTOX」商標は著名であることから、本件商標はその構成中の「トックス」の部分に着目して認識され、本件商標の外観、称呼及び観念上、取引者・需要者に強い印象を与えるということができ、本件商標と引用商標とは類似する商標である。
(4)申立人の業務に係る商品との混同を生ずるおそれ
「BOTOX」「ボトックス」商標は、申立人の著名な商標であるから、本件商標に接する一般の需要者及び取引者は、容易にかつほぼ確実に申立人の商標を認識する。そして、申立人の製造・販売に係る商品の需要者層は、神経や筋肉の障害が老若男女を問うことなく生じるものであるから、極めて幅広く、医療関係者等のみに限定されることはない。
また、「BOTOX」商標を付した商品は、美容整形の分野においても一大ヒット商品となっており、該分野の需要者及びそれに関心を寄せている層は、今や一部の女性に限らず、性別・年齢を問わなくなっている。
さらに、申立人の商品に関する宣伝広告は、一般の各種媒体を通じて展開され、生活の各場面でそれらに接する機会は数限りない。特に、本件商標の指定商品は「化粧品」を含むが、「化粧品」は「BOTOX」商標を付した商品と近似した商品である。
以上により、本件商標がその指定商品に使用された場合には、当該商品は申立人の業務に係る商品であるかのごとく認識され、あるいは申立人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認され、その出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 当審の判断
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記1のとおり、チューブ状の容器とおぼしき形状の図形の中央に「REVITALIZER」及び「NO−TOX」の文字を上下二段に横書きし、その下部に「NOEVIR」及び「GINZA TOKYO」の文字を上下二段に横書きしてなるものである。
そして、その構成中央に表された文字部分と下段に表された文字部分とは、これらを常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の理由は見いだせないから、両者は分離して看取されるというべきである。
しかして、前者の「REVITALIZER」及び「NO−TOX」の文字部分は、その構成文字全体に相応して「リバイタライザーノトックス」又は「リバイタライザーノートックス」の一連の称呼を生ずるものであるところ、両文字部分は、上下二段に表され、該「NO−TOX」が該「REVITALIZER」よりも大きな文字で顕著に表されていることからすると、看者をして、「NO−TOX」の文字部分のみに着目することもあるとみるのが相当であるから、本件商標は、該文字部分に相応して「ノトックス」又は「ノートックス」の称呼をも生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、前記2のとおり「BOTOX」又は「ボトックス」の文字よりなるものであるから、各構成文字に相応して「ボトックス」の称呼を生ずるものである。
そこで、まず、本件商標から生ずる「リバイタライザーノトックス」及び「リバイタライザーノートックス」の称呼と、引用商標から生ずる「ボトックス」の称呼を比較するに、両称呼は、音構成、構成音数において顕著な差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼するときには、互いに聞き誤るおそれはない。
次に、本件商標から生ずる「ノトックス」の称呼と、引用商標から生ずる「ボトックス」の称呼とを比較するに、両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭部分において、音質の異なる「ノ」と「ボ」の音に明らかな差異を有するものであり、該差異音が両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえないから、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、その語調、語感が異なるものとなり、互いに聞き誤るおそれはないと判断するのが相当である。
また、本件商標から生ずる「ノートックス」の称呼と、引用商標から生ずる「ボトックス」の称呼も、前記のとおり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭部分において、音質の異なる「ノ」と「ボ」の音の明らかな差異を有しているばかりでなく、両音は、長音の有無においての差異も有するものであるから、これらの差異が両称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼するも、語調、語感が異なり、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。
申立人は、両称呼中「トックス」の音部分が特に強調されて発音されること、及び第一音目の「ノ」と「ボ」の音が母音「o」を共通にし、称呼が近似する旨主張している。
確かに「ト」の音は、促音を伴っていることから、やゝ強めに発音されることを否定するものではないが、上記の語頭音部分における顕著な差異こそが聴者に強い印象を与えるというべきであり、かつ、「ノ」と「ボ」の音についても、たとえ母音「o」を共通にするとしても、「ノ」の音がナ行に属する鼻音で弱く発音されるのに対し、「ボ」がバ行に属する破裂音で強く発音されるもので、音の性質を著しく異にするから、該差異音は明確に聴取されると判断するのが相当である。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
次に外観についてみるに、本件商標を構成する「NO−TOX」の文字部分と引用商標の「BOTOX」の文字とは、第一文字目において「N」と「B」の差異を有し、かつ、本件商標には「ハイフン(−)」を有するものであるから、本件商標と引用商標「BOTOX」とは、通常の注意力をもってすれば、両商標の外観を見誤ることはないというのが相当である。
さらに、本件商標を構成する「NO−TOX」の文字部分と、引用商標の「ボトックス」とは、その構成文字を異にするものであるから、その外観において何ら相紛れるおそれはない。
そうとすると、本件商標と引用商標とは、外観において何ら相紛れるおそれはないものといわなければならない。
また観念においても、本件商標を構成する「NO−TOX」と引用商標の「BOTOX」「ボトックス」はいずれも特定の観念を生じない造語であるから、これらを比較することはできない。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(2)出所の混同のおそれについて
申立人の提出に係る証拠及びその主張を総合勘案すれば、引用商標は、眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状の治療薬(引用商品)に使用する商標として医療又は美容整形等の関連分野の取引者・需要者の間に相当程度広く認識されていたものと認められる。
一方、本件商標の指定商品には、目尻のしわ等の除去や緩和等のために使用される化粧品ないしせっけん類等の美容に関連する商品が含まれていることからすると、これらの商品と引用商品とは、需要者を共通にする場合も少なくないといえる。
しかしながら、上記事情を考慮しても、本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであり、本件商標がその構成中に引用商標を含むものとして認識し把握されることもないから、本件商標をその指定商品について使用をしても、これに接する取引者・需要者は、引用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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