Trademark Appeal Case
周知商標と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900358(T2008−900358/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5142259号商標(以下「本件商標」という。)は、「シルミー加工」の文字を標準文字で書してなり、平成18年5月23日に登録出願、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」を指定役務として、同20年6月20日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立ての理由
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の所有にかかる登録第1357151号商標は、「シルミー」及び「SILMIE」の文字を二段に書してなり、昭和50年12月26日に登録出願、第15類「糸」を指定商品として、同53年11月28日に設定登録されたものである。
同じく登録第2108120号商標は、「シルミー」及び「SILMIE」の文字を二段に書してなり、昭和56年4月3日に登録出願、第21類「カバン類、袋物、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成元年1月23日に設定登録されたものである。
同じく登録第4779568号商標は、「SILMIE」及び「シルミー」の文字を二段に書してなり、平成15年11月10日に登録出願、第18類、第23類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同16年6月18日に設定登録されたものである(以下、これらを「シルミー商標」という。)。
2 理由の要点
(1)ポリエステルの持つ「シルキー調」を的確に暗示させた「シルミー」シリーズの商標は、申立人の技術開発努力と卓越したマーケッティングによって、我が国の衣料用ポリエステル繊維の分野で多数の取引者・需要者らから熱狂的ともいえる支持を受け、シルキー合繊といえば「シルミー5」と言われるようになった。
そして、申立人の「シルミー商標」及び「シルミー5」商標は、本件商標の出願日の相当以前から現在に至るまで、我が国繊維業界にあって、申立人の生産・販売するシルキー合繊を示す識別標識として広く知られ、かつ、独占的に使用されたことにより、繊維業界の需要者・取引者の間で、周知・著名なことは明確な事実である。
本件商標の指定役務が「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」であることから、「加工」部分は単に提供する役務を記述的に示すものであり、需要者・取引者が本件商標を「シルミー」と認識するのは明らかである。
また、「シルミー」が申立人の創造した言葉であることと、「シルミー商標」や「シルミー5」商標の著名性のため、「シルミー加工」という言葉を聴いた需要者が、本件商標にかかる役務は申立人の商品の絹調素材の特性を実現する加工であると認識し、そのような加工役務を提供する者は、申立人と営業的に何等かの関係を有する者と考え、若しくは許可を得た者の提供する役務と間違う可能性が高く、商品の出所につき混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきである。
(2)申立人は、証拠方法として、甲第1ないし第19号証(枝番号を含む。)を提出している。
第3 本件商標に対する取消理由の要旨
1 申立人の提出した甲第5ないし第19号証(枝番を含む。)によれば、申立人は、我が国有数の繊維製品製造会社であること、申立人の製造に係る商品「異収縮混繊糸(シルキー合繊)」及びこれを使用した繊維(これらをまとめて、以下「申立人製品」という。)は、ポリエステル繊維を独自の技術により、天然の絹の風合いに近い糸・繊維として加工したものであって、その発売当初の1977年より我が国の繊維業界で注目され、その後、約30年にわたり被服をはじめとする繊維製品の分野で定着し続けていること、申立人製品には、販売当初より「シルミー5」の文字よりなる商標(以下「申立人商標」という。)が使用され、申立人商標は、申立人製品の品質に対する評価の高まりと共に、本件商標の登録出願時にはすでに、申立人製品を表示するためのものとして、その需要者の間に広く認識されていたこと、などを認めることができる。
2 本件商標は、上記第1のとおり、「シルミー加工」の文字を書してなるものであるところ、構成文字全体として親しまれた成語を表すものではなく、また、その構成中の「加工」の文字部分は、指定役務との関係から自他役務の識別機能を有しない部分であるから、本件商標にあっては、「シルミー」の文字部分が自他役務の識別機能を発揮する部分であるといえる。
一方、申立人商標は、前記1のとおり、「シルミー5」の文字よりなるものであるところ、1桁又は2桁の数字は、一般的には、商品の種別、品番等を表す記号・符合等、あるいは、後発のシリーズ商品に付される記号・符合等として理解されている場合が多く、このような商取引の実情からすると、申立人商標にあっても、その構成中、末尾の「5」は、「シルミー」の文字部分に比べ自他商品の識別機能が弱いものとして把握、認識されるというのが相当である。
そうすると、申立人商標に接する需要者は、その構成中の「シルミー」の文字部分に強く印象づけられ、該文字部分を記憶する場合が多いとみるべきである。
してみれば、本件商標は、その登録出願前より我が国の繊維製品の業界で広く認識されていた申立人商標の要部をその構成中に含むものといわなければならない。
3 ところで、申立人製品に関して、甲第6号証の「『シルミー5』の開発のコンセプト」の項目によれば、「ポリエステル繊維がレギュラーから異型断面、仮撚糸と衣料用途での差別化に向かう中で、新しい技術として注目されていた混繊技術を使ったシルキー素材は、すでに『シルミー5』以前にも登場していましたが、それらは熱収縮率が3〜6%の水準にありました。『シルミー5』は、そのレベルを超えた“ふくらみ”を表現する素材を作るという目的で開発が始まりました。『シルミー5』の最大の特徴である“ぬくもり”と“ふくらみ”の秘密は、8%という高収縮率差にありますが、異収縮を求めるためには(1)ポリマーを変える、(2)太さを変える、(3)断面形状を変える、などさまざまな方法が考えられました。・・・収縮率の異なる単糸の集まりで、天然シルクの“ふくらみ”を表現するため、ユニチカが最終的にとったのは2本の糸を合わせるという方法で、フィラメント数、デニール、形状や製糸条件を決め別々に紡糸した糸を合糸するというもの。このようにして得られた『シルミー5』の高い収縮率の差は8%であり、他社製品が3〜6%ということからもその高収縮率が際だっていました。ここで生まれた異収縮混繊技術は、この絹の“ふくらみ”にいかに近づくかという技術開発でもあったのです。」との記載が認められるところ、申立人製品の開発をするために駆使された技術等と本件商標の指定役務である「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」とは、糸や繊維等に加工をするという点において、きわめて密接な関係を有するものと認めることができる。
4 そうすると、我が国の繊維製品等の分野において、本件商標の登録出願前より広く認識されていた申立人商標の要部を含む本件商標を、その指定役務について使用するときは、これに接する需要者をして、「申立人製品の特性である、天然の絹の風合いに近い布地等に加工する」などの意味合いを理解させ、該役務が申立人又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認める。
第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由に対し、商標権者は、指定した期間内に何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
平成21年4月27日付けで商標登録の取消の理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。そして、本件商標についてした先の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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