Trademark Appeal Case
原材料名「シリコン」の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900064(T2008−900064/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5091991号商標(以下「本件商標」という。)は、「シリコン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成19年5月1日に登録出願、第5類「眼科用薬剤,その他の薬剤」を指定商品として、同年10月3日に登録査定、同年11月16日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の要点
本件商標は、指定商品の原材料を表すものとして使用されており、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきものである。
3 本件商標に対する取消理由の要点
(1)本件商標は、「シリコン」の文字からなるところ、「シリコン(silicon)」とは、「ケイ素」と呼ばれる非金属元素の一つであり、高純度のものはトランジスター、ダイオード、半導体、各種合金、ケイ素樹脂の原料として用いられているものである。また、ケイ素を構造に含む樹脂は、「シリコーン(silicone)」と称されており、有機ケイ素重合体の総称であって、電気絶縁性が高く、耐熱、耐酸性に優れており、一般に「シリコン樹脂」あるいは略されて「シリコン」とも呼ばれているが、単体のケイ素(silicon)とは別のものである。
このシリコン樹脂を加工して作られるシリコン樹脂オイルは、通常の油と違って燃えにくく、潤滑油や緩衝材などの用途に使用されており、また、シリコン樹脂は、その特性から、パソコンのキーボードや冷蔵庫のパッキン等に使用されるばかりでなく、人体に悪影響を及ぼしにくい性質を持っていることから、医療品などにも広く用いられており、例えば、絆創膏や火傷などの傷跡を保護するシートや整形手術での充填物など様々な形で医療に用いられているものである(三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典第3版、インターネット情報(http://www.material-march.com/siricon/siricon.html)、フリー百科事典「ウィキペディア」参照」)。
(2)そして、登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、以下のような使用例のあることを認めることができる。
ア smith&nephewが製造している皮膚科の薬として、「シカケア 傷痕シリコンジェルシート」なる商品があり、その商品説明には「高純度のシリコンを使用した皮膚の保護を目的とするシートです。」と記載されている(甲第7号証)。
イ ヤンセンファーマ株式会社が製造・販売して外用抗真菌剤「ニゾラールクリーム」には、その組成の一つとして「シリコン樹脂」が記載されている(甲第8号証)。
ウ ValeantPharmaceuticalsが販売している傷跡やニキビ跡、ケロイドの治療薬である「ダーマティクスシリコンジェル&スプレー」の商品紹介には、その成分の一つとして「silicon」が記載されている(甲第9号証及び甲第10号証)。
(3)以上の事実に照らしてみれば、「シリコン」は、「ケイ素」と呼ばれ、種々の用途を有する非金属元素を表す語であり、また、ケイ素を構造に含む樹脂「シリコーン(silicone)」のうち、高分子で合成樹脂として用いられるものも「シリコン樹脂」あるいは「シリコン」と称されており、いずれも各種商品の原材料として用いられ得る物質の名称と認められるものである。
そうとすれば、そもそも、「シリコン」の語は、取引者・需要者をして、自他商品の識別標識としての機能を果たす語として把握されるものとはいい難いばかりでなく、本件商標の指定商品である「薬剤」との関係においてみた場合においては、現に、傷痕治療薬や薬用クリームの原材料の一つとして用いられている事実が存在していることから、医療品の原材料を表したものとして理解・認識されるものということができる。
してみれば、本件商標をその指定商品中、「シリコンを原材料として含有している傷痕治療薬や薬用クリーム」等の商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、これを商品の原材料・品質を表示したものとして理解・認識するに止まり、自他商品の識別標識としては認識し得ないものというべきであり、また、本件商標をその指定商品中、「シリコン」を原材料に含まない薬剤に使用するときには、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから取消を免れない。
4 商標権者の意見
商標権者は、前記3の取消理由について、指定した期間内に意見を述べていない。
5 当審の判断
本件に関し、審判長は、商標権者に対し、平成20年12月4日付けで、前記3の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もなかった。
そして、前記3の取消理由は、妥当なものと認められるので、本件商標の登録は、この取消理由によって、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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