Trademark Appeal Case
鳴門わかめ周知性と地域団体商標
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−900188(T2008−900188/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5107435号商標(以下「本件商標」という。)は、「鳴門わかめ」の文字を標準文字で書してなり、平成18年10月11日に「地域団体商標」として登録出願され、第29類「徳島県産の塩蔵わかめ」を指定商品として、平成20年1月25日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同法第7条の2第1項に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1項により取り消されるべきである旨主張し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号ないし第169号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
商標「鳴門わかめ」は、本件商標の出願前より、申立人の組合及びその構成員の業務に係る商品「鳴門海峡及びその近接海域で採取・養殖されたわかめ,当該わかめを灰干し加工したワカメ,当該わかめを塩蔵加工したワカメ」を表示するものとして需要者の間に広く知られているところ、本件商標と申立人等の商標「鳴門わかめ」とは同一であって、その指定商品「徳島県産の塩蔵わかめ」は、申立人等の商品と同一又は類似する商品について使用するものであり、需要者に混同をもたらすおそれがある。
(2)商標法第7条の2第1項について
「鳴門わかめ」は、申立人等により長年に亘り使用された結果、本件商標権者と共同して周知にしたものと認められるところ、本件商標は、同一の商標を同一又は類似の商品に使用して周知性を獲得している団体が複数あるにも拘らず、ひとつの団体が出願して登録されたものである。
3 当審における取消理由
当審において、商標権者に対して平成21年4月24日付けの取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(1)本件商標は、前記1のとおりである。
(2)申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 甲第7号証の6「広辞苑第六版」によると、「なるとわかめ【鳴門若布】鳴門地方で採れるワカメ。特に灰干し糸ワカメを指し、色よく軟らかな良品として知られる。近年は塩蔵品が主流になっている。」との記載。
イ 甲第37号証「淡路の農林水産業/昭和のあゆみ」によると、「(2)わかめの養殖」の見出しの下、「わかめ養殖は昭和9年頃、大陸の旧関東州及び北海道で始められ・・・。従来、淡路のわかめ養殖は素干し、灰干加工製品が大部分であり、『鳴門わかめ』等で有名であったが、昭和47年頃から塩漬わかめ加工が普及し、塩漬加工業者へ販売する生わかめの出荷が多くなってきた。」との記載。
ウ 甲第38号証「兵庫県における水産試験研究75年の歩み」によると、「(2)わかめの養殖」の見出しの下、「本県は古くから南方型の、いわゆる『鳴門わかめ』の産地として知られ、特にこの伝統的な製品である灰干しわかめは全国的な名産品となっている。・・・昭和60年(1985)から平成元年には経営体数は288から237経営体まで僅減したものの、生産量は10,000トンから8,000トン台で安定し、いまや全国4位の生産県となっている。生産物は、従来は大半が素干しや灰干し加工にされていたが、塩蔵加工法が開発されてから大部分がこれにかわり、また塩蔵を専門とする加工業者への生ワカメの販売が主となっている。」との記載。
エ 甲第39号証「平成16年8月/近畿農政局神戸統計・情報センター編集」の「兵庫の三大養殖」によると、14頁「II 兵庫のわかめ」の見出しの下、「2 わかめ養殖の歴史」の小見出しの下に、「兵庫県のわかめ類養殖の中で約95%を占める鳴門わかめの歴史は古く、・・・昭和36年に淡路島の福良漁協の研究グループが自己採苗による養殖を開始したのが契機となって、その後生産が拡大し、現在、兵庫県のわかめ収穫量は全国第4位となっています。淡路島南西部の海岸は養殖わかめの生産の中心地であり、・・・昭和53年に加工業者間で申し合わせが成立し、淡路島の五色町、西淡町、南淡町、洲本市由良地区から産出されるわかめを『鳴門わかめ』と呼称することとなりました。」との記載。
オ 同号証18頁「(3)年次別県別収穫量」の見出しの下に、「平成14年の兵庫県のわかめの収穫量は3,017tで、全国の収穫量53,813tの6%を占めています。また、都道府県別にみると、1位は岩手県の21,775t、2位は宮城県の14,188t、3位は徳島県の7,782tと続き、4位に兵庫県となっています。兵庫県全体の収穫量のうち、9割強が兵庫の特産である『鳴門わかめ』の収穫量ですが、全国同様、経営体の減少に伴い、収穫量も年々減少傾向にあります。」との記載。
カ 同号証20頁「6 わかめの流通・消費」の見出しの下、「(1)わかめの需要」の小見出しの下に、「淡路の『鳴門わかめ』は、渦潮で有名な鳴門海峡の潮流ではぐくまれ、歯ごたえのよさを特長としています。また、『鳴門わかめ』が全国市場に好評を博している一つとして、独特の加工品である、『灰わかめ』があげられます。生わかめにシダ灰を塗布して乾かし、再度水洗い乾燥する製法により作り上げられ、この『灰わかめ』は、他産地の灰乾わかめに追従を許さない良質製品であります。他にも、生わかめに専用の塩を全体にまぶした塩蔵生わかめ。・・・葉の部分をさいて干したひものように細い糸わかめなど、地元や京阪神地方での需要が高くなっています。」との記載。
キ 甲第48号証「近畿農政局洲本統計・情報センター編集、兵庫農林統計協会淡路支部発行」の「淡路の農林水産業」中の「(3)漁業生産額」の見出しの下、「《参考》平成18年主要魚種別生産量全国順位」によると、区分「わかめ類」について、「1位岩手27,133t、2位宮城17,932t、3位徳島5,843t、4位兵庫2,762t、5位長崎1,251t」と記載されているところ、兵庫県の生産量がおよそ徳島県の半分弱あることが分かる。また、同ページ左側の「キ 海面養殖業収穫量(平.)18」によると、五色町、西淡町、南淡町の3町の合計が2,654tとなり、「鳴門わかめ」が兵庫県全体の96%を占めていることが分かる。
ク 甲第49号証「兵庫県淡路島南西部における養殖ワカメの収穫量(年別)」には、「五色町」、「西淡町」及び「南淡町」の3町合計の収穫量が、昭和50年から平成18年分まで記載されている。
ケ 甲第126号証「兵庫県/南あわじ市/観光ガイドブック」によると、「まだある自慢の特産品」の見出しの下、「鳴門わかめ/肉厚なのに歯あたりがとてもソフト。サラダにも最適です。」との記載。
コ 甲第131号証「全国旅そうだん/全国地域観光情報センター」によると、「観光情報検索」の見出しの下、「鳴門灰わかめ[ナルトハイワカメ]」の小見出しの下に、「鳴門ワカメを採ってわら灰にまぶし、浜で干したもの。・・・時期通年、所在地兵庫県南あわじ市」との記載。
サ 甲第137号証「ひょうごの旬のマガジン『ふるさと特産館』」によると、「旬の食材図鑑/わかめ」の見出しの下、「わかめの旬は春先/わかめは・・・全国のわかめの生産高は、7万トン前後で、9割は養殖物です。主な産地は、岩手県・宮城県・徳島県の3県で全体の80%以上を占めています。これに次ぐ生産量第4位の兵庫県は、淡路島を中心にナルトワカメの産地として全国的に知られており、近年は養殖が盛んに行われています。」との記載。
(3)上記の認定事実及び申立ての全趣旨によれば、現在、兵庫県のわかめ収穫量が全国第4位であること、兵庫県は古くから南方型の、いわゆる「鳴門わかめ」の産地として知られ、特に伝統的な製品である灰干しわかめが全国的な名産品となっていること、昭和53年の加工業者間の申し合わせにより、兵庫県産のうち、申立人が所在する淡路島の五色町、西淡町、南淡町、洲本市由良地区から産出された養殖ワカメが「鳴門わかめ」(以下「引用商標」ともいう。)と称されていること及び当該引用商標を付した加工品の「塩蔵わかめ」等が、地元や京阪神地方、全国市場で好評を博していたことが認められる。
また、甲第66号、第70号及び第71号証で示された引用商標は、本件商標と同一又は類似するものと認められ、かつ、収穫された淡路島産の「鳴門わかめ」の内、かなりの量が、近年、主流となっている塩蔵品(塩蔵わかめ)として加工され販売されているものと推認できるから、本件商標の指定商品「塩蔵わかめ」とは同一又は類似する商品であると認められるものである。
そして、淡路島の五色町、西淡町、南淡町の3町合計の「鳴門わかめ」だけでも、兵庫県全体の9割強を占めていることが認められるから、徳島県産の「鳴門わかめ」と合算した総収穫量に占める淡路島産の「鳴門わかめ」の割合も、常に総収穫量の30%前後を占めていたことになり、市場に流通する「鳴門わかめ」の約3品に1品が淡路島産の商品であったことになる。
そうすると、本件商標は、本件商標権者の使用によってのみ、その周知性が獲得されたものとは認め難く、また、申立人の引用商標は、商品「塩蔵わかめ」について相当程度の使用をした結果、周知性を獲得しているといえるから、むしろ、「鳴門わかめ」は、申立人と本件商標権者が共同して周知にしたものと認めるのが相当であり、したがって、本件商標は、同一又は類似の商標を同一又は類似の商品に使用して周知性を獲得している団体が複数あるにもかかわらず、一つの団体が出願して登録されたものといわざるを得ない。
(4)以上のとおりであるから、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前より需要者、取引者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似するものであって、かつ、引用商標の使用商品「塩蔵わかめ」等と類似する商品について使用されるものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものというべきである。
4 商標権者の意見
本件商標について、上記3の取消理由を通知し、相当な期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者は何ら意見を述べるところがない。
5 当審の判断
本件商標についてした前記3の取消理由は妥当なものと認められる。
そして、前記3を総合してみれば、本件商標が、他人の業務に係る商品「塩蔵わかめ」等を表示するものとして、本件商標の出願前より需要者、取引者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似するものであって、その周知性は、本件商標の登録査定時(平成20年1月4日)においても継続していたものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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