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Trademark Appeal Case

原産地名称と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2008−900381(T2008−900381/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5147029号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5147029号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボルドーマジック」の片仮名文字を横書きしてなり、平成19年12月26日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料類,つけまつ毛」を指定商品として、同20年5月12日登録査定、同年6月27日に設定登録されたものである。

2 本件登録異議申立ての理由(要点)

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第68号証を提出した。

本件商標は、「ボルドーマジック」の片仮名文字からなるところ、その構成中「ボルドー」の文字は、ワインの著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されている世界的に著名な地名である。本件商標は、厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「ボルドー」の高い名声・信用・評判にフリーライドし、前記原産地統制名称の高い名声・信用・評判の希釈化を引き起こすものであるところ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するのに適さないというべきであり、また、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するから、商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由の要旨

当審において、平成21年5月12日付けで商標権者に対して通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

(1)「ボルドー」及び「BORDEAUX」の著名性について

申立人の提出に係る証拠(甲第2号証及び甲第3号証、甲第5号証ないし甲第10号証、甲第12号証ないし甲第29号証、及び甲第32号証ないし甲第35号証)に記載された事実によれば、「ボルドー」及び「BORDEAUX」の各語は、フランス南西部の地名であり、フランスの代表的なぶどう酒の産地であって同地で作られるぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、ぶどう酒について世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍及び雑誌などにおいてボルドーについての説明がなされていること、世界の名酒事典及び一流品を紹介する雑誌などにおいてボルドー産の具体的製品が紹介されていること、我が国の2001年における「ボルドー地方で作られるぶどう酒」の輸入量が世界第7位で13万hl(ヘクトリットル)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願時はもとより登録をすべき旨の査定時を含むその後においても、「ボルドー」及び「BORDEAUX」の各語は、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていたというのが相当である。

(2)商標法第4条第1項第7号の該当性について

フランスにおける「ボルドー」及び「BORDEAUX」の名称の保護に関しては、上記認定事実のほか、「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会(SOPEXA)発行)(甲第4号証)には、その18頁及び19頁に、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(ア)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(イ)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)(ウ)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(エ)ヴァン・ド・ペイをのぞいたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法、及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、また、20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「フランス西南部(ボルドーを含む)」が記載されていることが認められる。

さらに、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット(甲第11号証)、フランス国原産地統制名称の国際的保護のためのINAO(Institut National des Appellation d'Origine:原産地名称国立研究所)のアクションに関するメモ及びその訳文(甲第30号証)、1935年7月30日付けフランス国政令「原産地統制呼称法」及びその抄訳(甲第31号証)には、フランスでは、1935年に原産地統制名称法を制定し、上記INAOは、原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産区域、ブドウ品種、生産高、最低天然アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること、INAOは、フランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていることの各事実が認められる。

一方、本件商標は、「ボルドーマジック」の片仮名文字を横書きしてなるところ、その構成中の「マジック」の文字は、「魔術。手品。」等(「コンサイス外来語辞典第3版」1982年12月1日株式会社三省堂発行)の意味を有する外来語であるものの、本件商標全体として特定の観念を有する一連の熟語として親しまれているものとはいえないことから、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情は見当たらない。

以上を総合勘案すると、本件商標は、「ボルドー」と「マジック」の二語からなるものと容易に認識し把握され、しかも、「ボルドー」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味する語として登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の気候、風土を利用して優れた品質のぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランス国が国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、原産地表示である「BORDEAUX」の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、著名な「BORDEAUX」及び「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。

(3)むすび

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

4 商標権者の意見

商標権者は、前記3の取消理由について、指定した期間内に意見を述べていない。

5 当審の判断

前記3のとおり、取消理由を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何らの応答もない。

そして、前記3の取消理由は妥当なものであって、本件商標は、その理由に示すとおり、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものと認められるので、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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