結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2008−890137(T2008−890137/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5057642号商標(以下「本件商標」という。)は、「B.O.T.X.」及び「ビーオーティーエックス」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成18年11月28日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類,香料類」を指定商品として平成19年6月29日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第72号証を提出している。
(1)請求人「アラーガン インコーポレイテッド(Allergan,Inc.)」は、医療用医薬品メーカーとして世界的に周知かつ著名な存在である。
請求人の歴史は、1948年に世界有数の製薬会社であった「スミスクライン ベックマン」の子会社として設立されたことに始まり、1989年に、スミスクライン ベックマン社が「ビーチヤム グループ」と合併して世界最大級の製薬グループ「スミスクライン ビーチャム ピーエルシー」が設立された際に、株式分配により親会社から分離独立した(甲第2ないし第5号証)。
2002年には、コンタクトレンズ関連製品と眼科医療機器の製造・販売部門を分離し、「アドバンスド メディカル オプティクス インコーポレイテッド(Advanced Medical Optics,Inc.)」として分社した。
請求人は、スミスクライン ベックマン社の子会社当時から、神経や筋肉の障害治療用の薬品や眼科用薬品、眼鏡レンズ等に特化した事業を世界的規模で展開し、当該分野における主要企業の一角を占めるようになっていた。
分離独立した以降もその業績は順調に成長し、1989年度に8億700万米ドルだった売上高は、1996年度には11億4700万米ドルになり、2003年度には17億5500万米ドルに達している(甲第6号証)。
請求人の製品は100カ国以上で販売され、33力国に子会社や関連会社をおき、また世界最高水準の研究施設を4カ所に設け、世界中の顧客に商品を提供し続けている。
そして、請求人が現在製造・販売している商品は、神経や筋肉の障害の治療用薬品をはじめとした医療用薬品全般に及んでいることから、医療関係者だけでなく広く一般人をもその需要者としている。
このように、請求人は、世界的な規模で事業を展開する製薬企業であり、特に神経や筋肉の障害の治療用薬品及びその周辺・関連分野においては世界有数の規模を誇る存在となっており、世界中で広く一般にその存在が知悉されている。
(2)わが国においても、1973年に参天製薬を通じて眼科用薬品及びコンタクトレンズ用品の販売を開始したが、その製品の優秀さから瞬く間にわが国の市場において有力な存在となり、わが国に進出してからわずか3年後の1976年に参天製薬との合弁企業である「参天アラガン株式会社」を設立するに至った。
その後も業績は順調に伸び続け、1985年には新たに「株式会社ハンフリー インスツルメンツ エス・ケー・ビー」をも設立し、1992年にはその社名を「アラガン株式会社」に変更した。
1996年にはアラガン株式会社が参天アラガン株式会社を統合して新たな「アラガン株式会社」(以下「アラガン社」という。)となり、その業務の効率化を図ると共に一層の事業拡大を図った。
2002年には、請求人がアドバンスド メディカル オプティクス インコーポレイテッド社を分社したことに伴って、コンタクトレンズ関連製品と眼科医療機器の製造・販売部門を「エイエムオー・ジャパン株式会社」として分社した(以上、甲第7号証)。アラガン社は医療用薬品の製造・販売企業としてわが国の当該市場において確固たる地位を築き、特に神経や筋肉の障害の治療用薬品及びその周辺・関連分野においては極めて重要な存在となった。
今日においては、請求人と事業提携した英国のグラクソ・スミスクライン社の関連会社であるグラクソ・スミスクライン株式会社が請求人製造の「A型ボツリムス毒素治療薬」にかかる営業をアラガン社から承継し、継続して販売している。
これらの事実に鑑みると、請求人の存在及びその商品は、わが国においても遅くとも1990年代初頭には一般の需要者・取引者の間で広く知られていたということができる。
(1)請求人は、商品の改良や需要者の声に耳を傾けることを怠らず、常により良い商品の開発・販売を志向しており、そのような姿勢もまた、広く知られている。
そして、研究開発にも多額の投資を行っており、その開発力が極めて優秀であることも広く知られている。
特に、分社以前に手がけていた視力矯正等に関連する眼科関連薬品・製品は生活に深く密着し、需要者にとって必要性も高い分野であったことから、請求人の動向に寄せる一般の関心も高かった。
さらに、神経や筋肉の障害は、顔面麻痺等の症状にみられるように老若男女を問うことなく生じるものであり、その症状の大小はあるものの、わが国においても罹患している人はかなり多数存在している。
したがって、請求人が新たに発売する商品の動向は常に注視されており、新商品はいずれも発売と同時に医療関係者及び需要者の間に広く知れ渡っている。
1989年、請求人は眼瞼の痙攣等の顔面痙攣症状を治療するための画期的な商品(以下「請求人商品」という。)を開発し、アメリカ合衆国において承認を得た。
この商品は、ボツリヌス毒素を有効成分とする薬剤であり、直接注射して患部に投与するという方法で使用され、筋肉を弛緩することによって患部の痙攣状態を解くという効果をもたらすものであった(甲第8号証)。
そして、請求人商品は、その有効成分の特異性もさることながら、何よりもその絶大な効果によって瞬く間に医療関係者の間に知れ渡っていった。
この商品の商品名として請求人が創作し採用したのが商標「BOTOX」である。これは、ボツリヌス毒素(botulinum toxin)に由来するものであることを取り入れつつも、簡潔でかつ訴求性の高い商標として吟味を重ねた上に創造された、請求人による全くの造語であり、如何なる辞書等にも掲載されていない語である。
前述のとおり、請求人商品は、1989年にアメリカ合衆国で承認されて以来、世界各国で続々と承認されていき、1995年1月末迄に37カ国で、現在では70カ国以上で承認されるに至っている(甲第9及び第10号証)。
(2)請求人商品は、その絶大な効果により、発売開始と同時に大ヒット商品となり、請求人の代表ブランドの一つとして位置付けられるようになり、その売上高が全体の売上高に占める割合も段々と高くなっていき、1996年には約6%であったものが、2003年には約31%を占めるまでになっている(前出甲第3及び第7号証参照)。
わが国においては、請求人商品は、1995年2月に当時の厚生省により承認され、1997年4月15日から市場において販売が開始された。
請求人商品の全世界における売上額及び我が国における売上額は、本件商標の登録出願が行われた平成18(2006)年の前年の2005年だけでも全世界で8億4000万億ドル、我が国で46億4500万円にも上っている(甲第11号証)。
また、その使用医療機関や主要顧客も、全国各地の大学病院や総合病院等2500余りの施設に及んでいる(甲第12号証)。
甲第24ないし第26号証は、現在我が国で「BOTOX」に係る商品の輸入販売を行っているグラクソ・スミスクライン株式会社の経営企画部長であるH氏が作成した「BOTOX」に係る商品の「新聞記事に基づく報告書」、「新聞・雑誌以外の文献に基づく報告書」及び「雑誌記事に基づく報告書」である。
これらのいずれの媒体においても、「BOTOX」又は「ボトックス」の文字からなる標章(以下「引用商標」という。)が固有特定の商品名として摘示されており、また当然ながら記載される際には「ボトックス」が表音として普通に使用されている。
(1)請求人商品は、当初は眼瞼や顔面の痙攣、痙性斜頸等の治療に用いられていたが、それだけでなく、筋弛緩作用の応用により「しわやたるみの除去などの美容整形」にも適応することが判明した結果、しだいに一般の美容整形目的でも使用されるようになった。また、請求人商品は、2002年にFDA(米国食品医学薬品局)から、医療用途のみでなく、美容用途についても許可が下りた結果、アメリカ合衆国ではシワの改善などの効果も宣伝できるようになった。さらに、美容整形ブームとも相侯って一層広く一般に、とりわけ女性に知悉された存在となった。すなわち、アメリカ合衆国についてみると、2003年には全米でおよそ643万2000件行われた非外科手術的方法による美容整形のなかで、請求人商品が使用されたのはおよそ227万2000件に達しており、これは他を圧倒して非外科手術的方法による美容整形の第1位を占めている(甲第13号証)。
さらに、この画期的な効果、つまり、請求人商品が筋弛緩作用の応用によりしわやたるみの除去などの美容整形にも適応することができ、一般の美容整形目的でも使用できるという情報が、またたくまに日本国内にももたらされるようになった。
請求人商品は、アメリカ合衆国では1990年代から広がっていったと言われ、また、上述のとおり、少なくとも2002年から2003年には、引用商標は、アメリカ合衆国内において周知・著名な商標となったということができる。日本国内では、1999年に美容雑誌「VoCE」(講談社発行)が請求人商品について特集し、その際に問い合わせが殺到したと言われている(甲第52号証)。
このように、引用商標は、今日においては日本又は外国において美容業界において著名な商標であるということができる。
なお、請求人は、現時点において日本では直接的に美容目的の請求人商品を製造・販売してはいないが、請求人がそのような商品を日本国内で直接的に製造・販売しなくとも、そのすぐれた商品の品質と効果から、請求人が提供する美容目的の商品と引用商標「BOTOX」及び「ボトックス」の情報は日本国内にも多く流入し、また、個人輸入等を通じて海外から請求人の美容目的の請求人商品が日本国内に入り、実際にそれを入手し、使用する需要者も現れているのが事実である(甲第53ないし第60号証)。
請求人が提供する美容目的の請求人商品は、上述のとおり、しわ・たるみの除去を目的としており、かかる商品に興味を示す需要者は、しわ・たるみの除去・改善などといった主に顔に関する美容に興味をもつ者である。また、上記のように、美容雑誌「VoCE」が請求人商品について特集した際に問い合わせが殺到したことからみて、請求人商品の需要者層は年配の女性に限らず、若い女性も含む、美顔や美容全般に興味を有する者というべきであろう。
また、しわ・たるみ対策やしわ・たるみ改善や美容を目的とした多種類の化粧品、食品が市場が出回っており、さらにこれに関係した様々な役務が提供されていることは周知の事実であり、請求人自身も、他社との共同開発により、薬用化粧品、シワ専用の美容液も販売している(甲第61及第62号証)。
このように、請求人は、実際に化粧品を開発・販売している。また、当該化粧品の商品紹介の欄には「ボトックスのメーカーである大手製薬会社アラガン社と」、「あのボトックスで有名なアラガン社と」といったコメントが記載されていることからも、化粧品、美容、医療に関係した商品や役務の分野においても引用商標が著名であることは明らかである(前掲甲第61及び第62号証)。
本件商標の指定商品は、特に「化粧品、せっけん類、香料類」であり、美容に関係したものである。前述したように、引用商標は、請求人が創作した造語商標であり、極めて強い出所表示力を有する商標である。したがって、本件商標と同一又は類似する商標が請求人と関係のない者によって、偶然、創作され、美容に関係する商品について商標として採用されるようなことはありえない。
(2)以上のような請求人の精力的な企業活動及び努力の結果、さらには商品の優秀性により、「BOTOX」及び「ボトックス」の語は、請求人の商標として、本件商標の出願日である平成18年11月28日のはるか以前からわが国はもとより世界中で、米国アラーガン社が製造し、アラガン社ないいグラスソ・スミスクライン株式会社が日本で輸入販売している医療用ないし美容外科用医薬品の商標として、全国各地の需要者・取引者を始め広く一般人の間に知悉された、極めて周知かつ著名なものとなっていたことは明らかである。
しかも、「BOTOX」及び「ボトックス」は、上述の通り完全な造語であり、請求人の製造・販売に係る商品を指称する以外に使用されることのない語であるから、これが商品や役務に使用された場合、引用商標は極めて強い指標力で請求人との関連を表示する。
したがって、ある商品に「BOTOX」又は「ボトックス」の語が使用されている場合、現実の商品流通・取引の場で需要者あるいは取引者として「BOTOX」の語に接する者は誰でも、それを請求人の商標であると認識するのであり、それ以外の認識を生じる余地はない。
(3)さらに、他の異議申立事件(異議2004−90287号)においても、引用商標は、請求人の取り扱いに係る「眼瞼痙攣治療薬」を表示するものとしてその異議申立事件にかかる商標の登録日(平成15年7月10日)にはその需要者に広く認識されていた旨が認定されている(甲第27号証)。
(4)また、他者が出願した商標登録出願(商願2006−1861号)について、その商標登録出願に対する拒絶理由通知の中で、引用商標は、請求人の商品「神経筋治療薬」等に使用して広く一般に知られている旨が述べられ、これを根拠として当該商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶されている(甲第28ないし第30号証)。
(5)無効審判事件(無効2007−890069号)においても、請求人の商品は、美容整形において適応するものとされ、「ボトックス注射」、「ボトックス注」などとして美容医学や美容に関わる分野においても浸透していることが認められる。以上よりすれば、引用商標(「BOTOX」、「ボトックス」)は本件商標の登録時(平成16年9月17日)及び出願時(平成16年1月30日)には既に、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国に取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものというべきである、との認定がされている(甲第31号証)。
(1)本件商標は、欧文字「B.O.T.X.」及び片仮名文字「ビーオーティーエックス」を上下二段に横書きした構成からなるものである。他方、引用商標は、欧文字「BOTOX」及び片仮名「ボトックス」である。
本件商標及び引用商標の欧文字は、それぞれ「B.O.T.X.」及び「BOTOX」であり、上記のとおり構成の大部分を占める前半の3文字「BOT」と語尾の「X」を共通にし、本件商標には、引用商標の第4文字目に存在する「O」が存在しないに過ぎないものである。したがって、本件商標と引用商標の欧文字部分は外観上極めて近似するものである。
しかも前述したように、引用商標「BOTOX」は、米国及び我が国を初め世界的に著名な商標であるから、単に第4文字目の「O」が存在しないに過ぎない本件商標に接するものは、それを請求人の著名商標である引用商標「BOTOX」と外観上混同する可能性が高いというべきである。
したがって、本件商標と引用商標「BOTOX」は外観上類似する商標である。
(2)本件商標からは、その構成に照らして、片仮名文字の「ビーオーティーエックス」の称呼が生じる。さらに、欧文字部分から「ボトックス」の称呼が生じる、というべきである。
すなわち、本件商標は、その構成に片仮名文字の「ビーオーティーエックス」を含むから、「ビーオーティーエックス」の称呼が生じることを請求人は否定しない。しかしながら、「ビーオーティーエックス」の称呼は全体で9音ないし10音の構成音数からなるから、これを一息で称呼するには冗長である。しかも、4文字の英文字からなる欧文字をそれぞれの文字の読み方で読むと称呼しずらく、その結果、それを記憶するのは困難であるから、容易に読みやすく、記憶しやすい読み方が存在する場合は、読みやすい方法で読んで称呼することが一般的である。しかして、本件商標は、欧文字を含みその欧文字の「B」に続く「O」は母音であるから、「BO」は容易に「ボ」と称呼できる。次にそれに続く「T」は母音がその後に続いてなくても、「HIT」を「ヒット」と「BUT」を「バット」と称呼するように、「T」が日本語式に発音された場合「ト」と発音される。そして、語尾の「X」は、「BOX」を「ボックス」、「SIX」を「シックス」と発音するように、言葉の最後に置かれた「X」は、「ックス」と発音されるのが一般的である。このように、本件商標を構成する英文字部分の「B.O.T.X.」は容易に「ボトックス」と称呼することができる綴りである。したがって、本件商標中の欧文字部分からは「ボトックス」の自然的な称呼が生じる、というべきである。
しかして、欧文字部分の「B」「O」「T」「X」の間にはそれぞれ「.」(ピリオド)がおかれているが、「B.O.T.X.」の文字が大きく際立って表されているから、下段の「ビーオーティーエックス」とは外観上分離して認識される。よって、簡易、迅速を尊ぶ今日の取引においては、容易に「ボトックス」と読むことができる綴りからなる英文字を、ただ、ピリオドがあることを理由にこれを常に「ビーオーティーエックス」と読むことはありえず、本件商標に接する者は、ピリオドの有無にとらわれることなく、本件商標を最も称呼し易い「ボトックス」と称呼する可能性が高い、というべきである。
(3)さらに、以下のように、商標が、英文字と片仮名文字あるいは、漢字と平仮名文字の二段書きの構成からなる商標において、当該英文字あるいは漢字の部分から、平仮名及び片仮名の読み方と異なる称呼が生じる、とした審決例が存在している(甲第63ないし第72号証)。
(a)平成3年審判第14143号(甲第63号証)
商標:「おおとり」と「大鵬」の二段書き
審決:該構成中の「おおとり」の平仮名文字に相応して「オオトリ」の称呼を生じるばかりでなく、漢字の「大鵬」が「たいほう」とも読まれ、・・・、「大鵬」の漢字に相応して「夕イホウ」の称呼も生じるとするのが相当である。
(b)平成3年審判18851号(甲第64号証)
商標:「EOS」と「イオス」及び「EOS」と「エーオス」の二段書き
審決:本願商標は、「EOS」の欧文字と「イオス」の片仮名文字よりなるものであり、該片仮名文字に相応して「イオス」の称呼を生じるものといえる他に、・・・・「EOS」の文字に相応して「イーオス」の称呼をも生じるものとみるのが相当である。
(c)平成2年審判12341号、平成5年審判10198号(甲第65及び第66号証)
商標:「ACCURACE」と「アキュラス」の二段書き
審決:本件商標は、欧文字部分が常に「アキュレース」を称呼しても不自然でないものといえる。そうとすれば、本件商標は、欧文字部分が常に「アキュラス」と称呼されるとする根拠に乏しく、必ずしも片仮名文字部分が欧文字部分の読みを特定したものとは言い得ないものである。してみれば、本件商標は、その欧文字部分に相応して「アキュレース」の称呼をも生ずるといわなければならない。
(d)平成10年審判35052号(甲第67号証)
商標:「こめぞう」と「米蔵」の二段書き
審決:本件商標は、平仮名「こめぞう」から「コメゾウ」の称呼が生ずるとしても、漢字「米蔵」の最も自然な呼び方である「コメグラ」の称呼をも生ずるものである。
(e)平成10年審判8015号(甲第68号証)
商標:「NUANCE」と「ヌアンセ」の二段書き
審決:本願商標は、たとえ、「ヌアンセ」の文字を併記してなるとしても、前記の事情により、上段の「NUANCE」の文字に着目し、該文字より「ニュアンス」の自然の称呼、観念を生ずるものといわなければならない。
(f)無効2000−35156号(甲第69号証)
商標:「ASKA」と「エーエスケイエー」の二段書き
審決:本件商標に接する需要者、取引者は、4文字の構成からなる上段の「ASKA」の文字部分に注目し、英語風読みの「アスカ」の称呼をもって、取引に資する場合も少なくないというのが相当である。したがって、本件商標は「アスカ」の称呼も生ずる。
(g)平成11年審判6436号(甲第70号証)
商標:「ビオン」と「BION」の二段書き
審決:引用商標中の「BION」の文字に接した取引者、需要者は、わが国で最も親しまれている英語読みで発音することが多いものと考えられ、その時には該文字に相応して、「バイオン」の称呼をも自然に生ずるものといわなければならない。
(h)無効2003−35081号(甲第71号証)
商標:「Xmail」と「キスメール」の二段書き
審決:この商標に接する取引者、需要者をして、「キスメール」の片仮名文字に相応して、「キスメール」と称呼される場合があるとしても、「Xmail」の欧文字に相応して「エックスメール」の称呼をも生じるものと認められる。
(i)平成10年審判1905号(甲第72号証)
商標:「メイトリックス」と「MATRIX」の二段書き
審決:本件商標と引用商標は、・・・・共に「MATRIX」の文字より「マトリックス」の称呼を生ずる称呼上類似の商標であり、・・・・。
上記審決に係る商標は、商標の構成中に含まれる片仮名文字又は平仮名文字が、英文字又は漢字の読み方から生じる称呼を表示するものである。しかしながら、英文字又は漢字から生じる他の称呼が不自然でない場合に、片仮名文字又は平仮名文字以外の読み方による称呼が生じると判断したものである。
しかして、本件も上記審決にかかる商標と同様に、「B.O.T.X.」は容易に「ボトックス」と称呼することができるものである。よって、上記審決に照らしても、本件商標からは、「B.O.T.X.」の文字に相応して「ボトックス」の称呼が生じる、というべきである。
よって、本件商標と引用商標は称呼上類似する商標である。
(4)しかも、本件商標の指定商品は「化粧品,せっけん類,香料類」であって、引用商標「BOTOX」を付した商品と近似した商品である。しかして、本件商標の欧文字は、請求人の著名商標「BOTOX」から「O」を削除したに過ぎないものであり、さらにこの「BOTX」からは容易に「ボトックス」の称呼が生じるのである。言い換えれば、本件商標の商標権者は、請求人の著名商標である「BOTOX」の顧客吸引力を利用するために請求人の「BOTOX」と綴りをほとんど同じくする外観上極めて近似し、同一の称呼が生じる欧文字「BOTX」を採用した。そして、引用商標との類似性を回避する必要があり、これらの文字の間に意図的に「.」を挿入し、冗長で、称呼しずらい「ビーティーオーエックス」なる片仮名をわざわざ付して登録を取得したものである。これは、単に「.」と片仮名文字を付することで、引用商標との類似性を回避することを試み、請求人の著名商標の有する顧客吸引力にただ乗りし、不当な利益を得ることを目的としていることは明らかである。したがって、本件商標の構成及び指定商品に照らせば、商標権者は、不当な利益を得る目的で本件商標を採用し、出願し、登録を得た事は明らかである。
(1)既述のとおり、引用商標は請求人の著名な商標であるから、本件商標に接する一般の需要者及び取引者は、そこから容易に、かつほぼ確実に、わが国はもとより世界において周知著名で強い自他商品識別力を有する引用商標を認識する。
そして、請求人の製造・販売に係る商品の需要者層は、前述のとおり神経や筋肉の障害が老若男女を問うことなく生じるものであることから、極めて幅広く、医療関係者等のみに限定されることはない。
また、引用商標を付した商品は美容整形の分野においても一大ヒット商品となっており、当該分野の需要者及びそれに関心を寄せる層は、近年の「プチ整形」ブーム、「エステ」ブームに端的に現れているように、いまや一部の女性に限らず、性別・年齢を間わなくなっている。
さらに、請求人商品に関する宣伝広告は、一般の各種媒体を通じて展開され、生活の各場面でそれらに接する機会は数限りない。
特に、本件商標の指定商品は「化粧品」を含むものであるところ、これら「化粧品」はまさしく引用商標を付した商品と近似した商品である。
以上の実情を勘案すると、本件商標と請求人の著名商標「BOTOX」が一般の需要者・取引者において混同して認識される可能性が極めて高いことは、合理的かつ明白な事実というべきである。
この点、前述の異議申立事件(異議2004−90287)においても、商品「化粧品」と「眼瞼痙攣治療薬」とは、その使用者において少なからず関連性を有するものと認められる旨認定されている(甲第27号証)。また、前述の無効審判事件(無効2007−890069号)においても、引用商標の使用に係る商品と本件商標の指定商品である化粧品との関係についてみると、前者が前記1のとおり医療用医薬品であるけれども、美容整形にも適応する薬剤(美容医科用医薬品)としても用いられているものであるのに対して、後者の化粧品の中には、美容、殊に、目尻のしわ等の除去や緩和を目途に使用される商品があり、その用途や用法、品質等からすれば、両商品の関連性の程度は決して低いものとはいえない。また、それらの需要者には、美容や整形等の効果について深い関心を寄せる者(主として女性や患者)が含まれるから、両者は、その需要者を共通にすることが多いというべきである、と認定されている(甲第31号証)。
また、本件商標の指定商品「せっけん類」も、顔を含む肌の手入れや肌の状態の改善を目的として使用される商品が多く存在し、これらの商品も、請求人の商標を付した商品と強い関連性がある商品である。実際の取引の場においても、主に顔の皮膚・肌の状態の改善を目的とした商品は、その効果を高めるために、皮膚・肌の手入れのプロセスに必要な複数の種類の商品を一連のシリーズ商品として製造・販売していることは多くみられるところである。たとえば、化粧落とし(クレンジング)、洗顔料・せっけん、化粧水、美容液、乳液、クリーム、薬用の化粧水・美容液・クリーム等を一つのブランドの下で製造し、シリーズにして販売している。
したがって、「スキンケア用せっけん類,その他のせっけん類」も、請求人に係る商品とは、その使用者において関連性を有するものである。
(2)請求人は自己のブランドイメージを維持し、より一層の発展をさせるため、世界中で展開するあらゆる事業においてその製造に係る商品について厳重な品質管理を行っている。
すなわち、引用商標「BOTOX」は、請求人に係る商品を表示するものとして、わが国はもとより世界中で一般の需要者・取引者の間に広く認識されている著名商標であり、請求人の提供する商品に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。
現に、請求人は「BOTOX」の文字からなる商標を世界各国で出願し、160件を超える登録を得ている(甲第32ないし第51号証)。
したがって、万が一、本件商標の登録が維持されると、請求人と何ら関係のない者により、請求人の意図と無関係に、請求人が現にその商標を付して使用している商品とその需要者層等を同一にする商品について、引用商標「BOTOX」と類似する商標である本件商標が自由に使用されてしまうことになり、その結果として劣悪な品質の商品が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。
このような事態が生じた場合、請求人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきた引用商標のブランドイメージは著しく毀損され、請求人が多大な損害を被ることは明白である。
すなわち、かかる見地からも本件商標の登録が維持されるべきではない。
以上より、本件商標がその指定商品について使用された場合には、当該商品は、請求人の業務に係る商品であるかのごとく認識され、あるいは請求人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認され、その出所について混同を生じるおそれのあることは明らかである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきである。
被請求人は、何ら答弁していない。
(1)請求人の提出に係る証拠及びその主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、世界有数の製薬会社「スミスクライン ベックマン」の子会社として1948年に設立され、1989年に独立した在米国の会社であって、眼鏡レンズ、眼科用薬品、皮膚治療用薬等に特化した事業を世界的規模で展開しており、請求人の製品は100カ国以上で販売され、その売上高は2003年度には17億5500万ドルに達している。
我が国では1973年に参天製薬株式会社を通じて眼科治療薬、コンタクトレンズケア用品の販売を開始し、1976年には合弁会社「参天アラガン株式会社」を発足、さらに1996年には日本法人のアラガン株式会社となり、医療用医薬品、医療用具、コンタクトレンズ用品等一層の事業拡大を図っている(以上、甲第2ないし第7号証)。
(イ)請求人は、1989年にボツリヌス毒素を有効成分とする眼瞼の痙攣等の顔面痙攣治療薬(請求人商品)を開発し、「BOTOX」と命名し米国で承認を受けて以来、1995年1月末までに37ヶ国、現在は70ヶ国以上で承認を受けている(甲第8ないし第10号証)。請求人商品は、絶大な効果により大ヒット商品となり、請求人の代表商品の一つに位置付けられ、2003年には請求人の全売上の31%に達している(甲第3及び第6号証)。
(ウ)請求人商品は、我が国では1995年2月に当時の厚生省により承認され、1997年から販売開始、その後順調に売上を伸ばし、2005年には46憶4500万円の販売高を記録するに至り、その顧客は全国各地の大学病院や総合病院等2500余の施設に及んでいる(甲第10ないし第12号証)。
(エ)請求人商品は、眼瞼や顔面の痙攣、痙性斜頸等の治療に用いられるだけでなく、筋弛緩作用の応用により、しわやたるみの除去などの美容整形目的でも使用されるようになり、2003年には米国において非外科手術的方法による美容整形の第1位を占めている(甲第13号証)。そして、請求人商品は、「BOTOX」、「ボトックス」として医療専門誌はもとより、一般の各種媒体でも紹介されているほか、最近の美容整形ブームとも相俟って、インターネットにおいては美容整形の関連分野のサイトで紹介記事が多数検索される(甲第11号証添付資料、甲第14ないし第23号証、甲第24ないし第26号証添付資料)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、引用商標は、請求人の業務に係る請求人商品について使用する商標として、我が国において、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(3)次に、本件商標と引用商標との類否について検討する。
本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、上段に書された「B.O.T.X.」の文字は、大きく顕著に表されており、下段の「ビーオーティーエックス」の文字とは外観上分離して看取されること、下段の文字部分から生ずる称呼は比較的長い音構成であり、よどみなく一連には称呼しずらいこと、上段の欧文字部分は、ピリオドがあるものの、「BOTX」の綴りからなるものとして認識され得ること、一般に、欧文字と片仮名文字が併記された構成の商標においては、欧文字部分が称呼し易いときは、欧文字部分の綴りに従って称呼される場合が多いこと、などを総合すると、本件商標は、上段の「B.O.T.X.」の文字部分を「BOTX」として捉え、これより生ずる称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないものというべきである。
しかして、「BOTX」は英語辞典等には見られない綴りであり、かかる場合には、我が国において最も普及している外国語である英語の発音に倣い、「ボトックス」と発音されるとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「ビーオーティーエックス」の称呼のほか、「ボトックス」の称呼をも生ずるものというべきである。
他方、引用商標は、その構成に照らし、「ボトックス」の称呼を生ずること明らかである。また、引用商標の「BOTOX」と本件商標の欧文字部分とは、4文字目に「O」を有するか否かの差異にすぎず、看者に外観上近似した印象を与えるものといえる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にし、外観上も相紛らわしい類似の商標というべきである。
(4)また、本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品との関係について検討するに、上記(1)のとおり、引用商標が使用されている請求人商品は、医療用医薬品ではあるものの、しわやたるみの除去などの美容整形目的でも使用され、美容整形の分野においても広く知られていること、本件商標の指定商品である化粧品、せっけん類には、目尻のしわ等の除去や緩和、皮膚・肌の手入れや改善を目的に使用される商品が存在すること、両商品の需要者には美容や整形等の効果に深い関心を持つ者が含まれること、などを総合すると、本件商標の指定商品と請求人商品とは、その用途、目的、品質、需要者等を共通にすることが多く、少なからぬ関連性を有するものというべきである。
(5)以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「B.O.T.X.」の文字部分に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
請求人は、平成21年1月26日付けの上申書において、本件商標は商標法第4条第1項第19号にも該当するとして、追加主張を行っている。
しかしながら、上記主張は、本件審判請求の理由を補正するものであり、請求書の要旨を変更するものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項の規定により認めることができない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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