Trademark Appeal Case
商品形状の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第17901号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲した構成からなり、第9類「火災報知機、ガス漏れ警報器、盗難警報器、消火栓、スプリンクラー消火装置、消火器、誘導灯、電気通信機械器具、電子応用機械器具」を指定商品として、平成9年12月2日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、『この商標登録出願に係る商標は、その指定商品中に、例えば、「火災報知機」や「スプリンクラー消火装置」などの商品を含んでいるが、その種の商品には、例えば、建築物の天井等に設置され、煙の感知により火災を知らせたり又は水を撒水するようなタイプもあるところ、この商標登録出願に係る商標は、このような商品のひとつの形状であろうと容易に認識し得るものであることから、これを指定商品中、例えば、「火災報知機」又は「スプリンクラー消火装置」などの商品に使用したときは、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、この登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1) 平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的に表された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入し、その中には商品若しくはその包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含まれるとしても、商品等の形状は、それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、この商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係ない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標は、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている形状について重ねて又はその権利消滅後商標登録することは知的財産制度全体に不合理な結果をもたらすこととなる。
(2) これを本願についてみれば、本願商標は、三種類のノズルを備えた建築物の側壁等に設置する方式のスプリンクラー消火装置のヘッド部分を表示するものと容易に理解されるものであるから、これを指定商品中、「スプリンクラー消火装置」に使用しても、取引者、需要者は、単に、同装置のヘッド部分を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
また、本願商標は、前記商品以外の指定商品に使用するときは、該商品がスプリンクラー消火装置又は同装置のヘッドの如く品質の誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
(3) 請求人は、本願商標に係る形状は、既存のスプリンクラーのヘッドの基本的な形状と比較して、(イ)水を供給するための配管を接続するネジ部がない、(ロ)上下左右対称でない、(ハ)フランジ部は一応あるがネジ部と一体でない、(ホ)下面が平らでないことから、機能上要求される通常のスプリンクラーヘッドの形状とは非常に異なる旨主張する。
しかしながら、本願商標に係る形状は、(ヘ)側壁等に設置することが可能なように円形状のコンパクトな形状であること、(ト)その中に撒水距離の異なる三種類のノズルを備えているものであること及び(チ)配管はフランジ部と結合が可能であることとみられるのに対して、請求人の主張する(イ)乃至(ホ)の特徴は必ずしも消火用スプリンクラーヘッドの基本的な形状に係るものとはいえないというべきものである。
してみれば、本願商標は、これを全体的に観察したときは、前示の(ヘ)乃至(チ)の特徴からして、指定商品「スプリンクラー消火装置のヘッド部分」を表示したものと容易に理解されるものであり、同装置に使用しても、自他商品の識別標識足り得ないというべきであるから、請求人の主張は採用することができない。
なお、立体的形状からなる商標であっても、商品又はその包装の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申P31参照)。
(4) 請求人は、発明の名称「消火ヘッド」に係る特許出願をしている(特開平7−222819)ところ、該消火ヘッドと本願商標に係る形状はほぼ同一とみられるものであるから、本願商標は専ら該装置の機能を発揮させるためにのみ採択された形状であり、かつ、取引者、需要者にはそのように認識されるものと認められることは先に判断したとおりである。そして、このような商品の形状について、商標登録を認めるべきでないことは前示のとおりである。
4 結論
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りでない。
よって結論のとおり審決する。
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