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Trademark Appeal Case

品種名と識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2009−900186(T2009−900186/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5206174号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5206174号商標(以下「本件商標」という。)は、「しきみてんどう」の文字を標準文字で表してなり、平成20年8月25日に登録出願、第31類「生花,花の種子」を指定商品として、同21年2月20日に設定登録されたものである。

2 本件登録異議申立ての理由

本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)及び参考資料1ないし参考資料4を提出した。

(1)本件商標について

本件商標は、標準文字で「しきみてんどう」の平仮名文字を横書きしてなり、第31類「生花,花の種子」を指定商品として登録されたものである。

商品「しきみ」を取り扱う業界において、「てんどう」の語は、生花である「しきみ」の一品種を表示するものとして普通に使用されている事実がある。本件商標は、生花に含まれる「しきみ」とその品種名「てんどう」を一連に記載したものである。品種「てんどう」は、昭和62年頃に申立人が在来種から系統選抜を試み、約5〜6年かけて作りあげた新品種であり、栽培地域(浜松市天竜区)である「天竜」の「天(てん)」と作成者の氏である「伊藤」の「藤(とう)」をとり「てんどう」と命名したものである。

品種「てんどう」における在来種と比較した場合の特徴は、「しきみ(てんどう種)の説明書」(甲第2号証の1)に示したとおりであるが、「切花にした場合に3倍以上長持ちをする」点に顕著な特徴を有する。なお、「しきみ(てんどう種)の写真」を甲第2号証の2として添付する。

申立人は、平成7年頃より遠州中央農協の依頼に応えて、「しきみ(てんどう種)」を広めようと苗販売を始める。この際、「しきみ(てんどう種)」を販売するにあたって、「てんどう種」の苗を購入し、栽培すること、購入した苗の転売及び自家増殖等の行為をしないこと、出荷の際に「てんどう」のラベルを使用することを条件とし、農協を介して150軒前後の農家と誓約書を交わすことにより「しきみ(てんどう種)」の品質の保護を図った。この際の植栽本数は、約5万3千本である。なお、「誓約書の用紙」を甲第3号証として添付する。

上記農協は、以後現在に至るまで「てんどう」の品種名を優良系統選抜品としてPRし差別化商品としての位置を図り、その品質管理をしている。また、上記農協は、組合員である栽培者(25軒)の生産したものを全量当該組合を介して出荷している。このことは、甲第4号証の1の証明書及び甲第4号証の2の出荷状態の写真から明確である。

なお、出荷先は、全て京都市花き地方卸売市場京都生花株式会社である。

平成20年度(平成20年1月1日から同12月31日まで)の出荷量は、甲第4号証の3から明確なように、合計売立数量2,254ケース、売立金額14,854,931円である。この出荷量は、苗の育った平成16年ころより大体同じである。各年度の「てんどう出荷実績一覧表」を追って提出する。また、「てんどう種」の作成者である申立人は、別途に、平成8年12月より現在に至るまで、品種「てんどう」である「しきみ」を株式会社浜松生花地方卸売市場に出荷している。このことは、甲第5号証の証明書から明確である。なお、平成20年度の出荷量は、ほぼ500ケースであり、毎年ほぼ同じである。

さらに、申立人は、「てんどう種」作成時に、商品「しきみ」について「てんどう」なる商標を登録し、その品種名の保護を図ったが、長年使用した結果、取引業界において「てんどう」が「しきみ」の品種名を表す語として広く知れわたったため、登録状態を維持する必要はないと判断し、更新登録申請をしないで本商標権を消滅させたものである(甲第6号証を参照のこと。)。このように、「てんどう」は、静岡県の西部(浜松市天竜区)である天竜地方で新品種として作成され、長年にわたって栽培され現在に至っている。

以上説明したように、商品「しきみ」を取り扱う業界においては、「てんどう」の語は生花である「しきみ」の一品種を表示するものとして普通に使用されているものである。本件商標は、生花に含まれる「しきみ」とその品種名「てんどう」とを一連に記載したものであることに相違ない。

(2)第3条第1項第3号、第4条第1項第16号について

本件商標をその指定商品中「しきみの生花、しきみの花の種子」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質を表示した語と認識するにとどまるから、該文字は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、かつ、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。

(3)結び

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきものである。

3 当審の判断

本件商標は、「しきみ」の文字と「てんどう」の文字とを軽重の差がなく結合し、同じ書体、同じ大きさ、等間隔でバランスよく表してなる「しきみてんどう」の平仮名文字よりなるところ、構成中前半の「しきみ」は、漢字で「樒」と書き、「シキミ科」の常緑小高木(別名「シキビ、コウシバ、コウノキ」ともいう。)であって、墓地などに植えたり、仏前に供えるもの(広辞苑第六版)として、取引されているものであることは、認め得るところである。

そこで、申立人が提出した甲各号証及び参考資料1ないし4について以下に検討する。

甲第2号証の1によれば、「しきみ(てんどう種)の説明」には、「特徴(在来種との比較)」として「在来種に比べて3倍以上長持ち(切り花にして)」などと記載されているが、その証明者、出典等の記載がないものであって、「しきみ」の品種として、「てんどう種」が一般的にどういうものか定かでなく、また、種苗法の種苗登録がなされている事実の証左もない。

甲第2号証の2によれば、束ねられた樒の枝と段ボールに「JA遠州中央のしきみ」の表示は認められるが、「しきみてんどう」又は「てんどう」の表示は認められない。

甲第3号証によれば、「誓約書」(用紙)中には、「しきみ(てんどう)苗木購入にあたり苗木育成者の保護を図るため・・・私たちは、商標マークを利用し、・・・支払うことを誓います。」旨の記載が認められるが、誓約者等の記載がない未記入の用紙であるから、「しきみてんどう」の文字(語)が普通に採択使用されていることは認められない。

甲第4号証の1によれば、平成21年6月23日付け遠州中央農業組合代表理事理事長名が記名、捺印された「証明書」に「『しきみ(品種:てんどう)』(説明書添付)について品質管理しているとともに組合員である栽培者(25軒)の生産したものを・・・出荷している・・・」旨の記載が認められるが、添付の説明書は甲第2号証の1と同じものであるから、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が「樒」の品質(品種)等を表示するものとは認められない。

甲第4号証の2によれば、段ボールに「品名 しきみ」等の記載が認められ、楕円形状のラベルには、「しきみ」「てんどう」等の表示が認められるが、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が「樒」の品質(品種)等を表示するものとは認められない。

甲第4号証の3には、「てんどう出荷実績一覧表」には「天竜」「春野」「森」(地区)の平成20年1月1日から同年12月31日までの「てんどう」の売立数量及び売立金額の記載が認められるが、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が「樒」の品質(品種)等を表示するものとは認められない。

甲第5号証は、株式会社浜松生花地方卸売市場代表取締役社長による「出荷証明書」であり、「出荷されたしきみ(香花)は、品種『てんどう』であることを証明します。」との記載があるが、証明書はこれ1件のみであって「てんどう」が品種の名称であることを裏付ける客観的な資料は他にない。

その他、資料1ないし資料4によっても、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が「樒」の品質(品種)等を表示するものとは認められない。

以上のとおり、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が、「樒」の品質(品種)等を表示する記載は認められず、また、申立てに係る指定商品中「樒」に、普通に採択使用されている事実は見当たらない。

そうとすれば、本件商標は、申立てに係る指定商品との関係において、特定の商品の品質(品種)等を直接的かつ具体的に表示するものとは認識し得ないものとみるのが相当であるから、その構成に照らして、特定の観念の生じない造語よりなるものといい得るところである。

さらに、職権をもって調査したが、「しきみてんどう」又は「てんどう」の文字が、指定商品を取り扱う業界において、指定商品の品質(品種)等を表示するものとの証左は認められず、また、取引上普通に使用されている事実も発見することができなかった。

してみれば、本件商標は、その指定商品中の「しきみの生花、しきみの花の種子」に使用しても、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、また、その指定商品中のいずれの商品について使用しても、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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