Trademark Appeal Case
称呼・外観の類似性と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2008−685003(T2008−685003/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件国際登録第902212号商標(以下「本件商標」という。)は、「NATIX」の欧文字を横書きしてなり、2005年12月15日にEuropean Communityにおいてした商標登録に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して2006年(平成18年)6月2日に国際商標登録出願、第5類「Titanium granules for medical purposes.」を指定商品として、平成19年10月26日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の中立の理由(要旨)
1 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下のとおりであり、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。
(1)登録第1377956号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ナトリックス」の片仮名文字と「NATRIX」の欧文字を上下二段に書してなり、昭和47年11月18日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和54年4月27日に設定登録されたものである。その後、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成21年6月3日に第5類「薬剤」とする書換登録がなされたものである。
(2)登録第2041944号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和60年6月27日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和63年4月26日に設定登録されたものである。その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成20年8月20日に第1類「化学品」及び第5類「薬剤、歯科用材料」とする書換登録がなされたものである。
2 具体的理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第11号及び第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1項の規定により取り消されるべきものであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第56号証(枝番号を含む)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 商標「NATRIX」の周知・著名性
商標「NATRIX」は、「薬剤」について、本件商標の出願日である平成17年12月15日前から、わが国において周知・著名となっていたものである。
イ 本件商標と著名商標「NATRIX」との類否
本件商標「NATIX」は、著名商標「NATRIX」と、外観及び称呼上類似するものである。
著名商標「NATRIX」の使用に係る商品は、降圧利尿剤であり、第5類の「薬剤」の範躊に属する医療用医薬品である一方、本件商標に係る商品「Titanium granules for medical purpose.」も医療用医薬品として使用される薬剤の一つであり、第5類の「薬剤」の範躊に属するものである。
したがって、申立人の提供に係る商品と本件商品とが類似することは明らかであって、申立人の著名商標「NATRIX」に極めて近似する本件商標「NATIX」が、本件商品について使用されれば、それが申立人の提供に係るものとその商品の出所につき誤認混同を生じせしめるものであることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商品と申立人が製造販売する製品とは、共に医療用医薬品として、大学病院はじめ総合病院その他「歯科」と「循環器科」をもつ医院に納品されているものであるから、申立人が販売する医薬品と、本件商標に係る指定商品とは、需要者を共通にし流通経路を同一とするものである。
本件商標と申立人の使用に係る著名商標「NATRIX」との類似性については、すでに考察したとおり、その外観及び称呼が類似するものである。特に、両者が一見して外観上紛らわしいものであることは明白である。
両者が製造販売する製品は、需要者及び流通経路が同一となる場合があり、申立人又は披読求人と資本関係ないし業務提携関係にある者の業務に係る商品であるかのように混同するおそれがあることを否定することはできない。
したがって、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用した場合には、著名商標「NATRIX」と本件商標「NATIX」との間に出所の混同が生じる蓋然性は極めて高いというべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標との類似性については、上記のとおり、その外観及び称呼が類似するものである。また、引用商標の長期間の継続的使用を考慮すれば、引用商標と本件商標は、出所の混同が生じるおそれの高い類似の商標というべきである。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第11号の規定に該当し、同法第43条の3の規定により取り消されるべきものである。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「NATIX」の欧文字からなるところ、その構成文字に相応して「ナティックス」の称呼を生ずるものである。また、該文字は、既成の意味合いを有する成語を表したものではないから、特定の観念は生じないものである。
一方、引用商標1及び引用商標2は、前記したとおり、引用商標1は、「ナトリックス」及び「NATRIX」の文字からなるものであり、また、引用商標2は、中間部における「T」の文字がデザイン化されてはいるものの全体として「NATRIX」の文字を表したものと容易に認識できるものである。そして、これらの引用商標は、その構成文字に相応して「ナトリックス」の称呼を生ずるものである。
また、該文字は、既成の意味合いを有する成語を表したものではないから、特定の観念は生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、称呼においては、本件商標が「ナティックス」の称呼であるのに対し、引用商標は「ナトリックス」の称呼である。そして、両称呼の差異は、中間における「ティ」の音と「トリ」の音である。
しかして、この相違する雨音は、1音と2音であることに加え、全く異なる音質及び音調であるから、明瞭に区別して聴取され得る音であるということができる。
そうとすれば、この相違する雨音の音質及び音調の差が両称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者は、これをそれぞれ一連に称呼しても、称呼上十分に区別し得るものということができる。
また、外観においては、本件商標と引用商標とは、全体の外観において差異を有しており、本件商標と引用商標の欧文字部分とを比較してみても、両者は、その構成文字数も5文字及び6文字と比較的少なく、中間部分とはいえ、明らかに字形の目立つ「R」の有無に差異を有するものである。
しかも、本件商標と引用商標の欧文字部分を称呼する場合、この「R」の文字の有無は決定的な称呼の差異を生み出すものであるから、通常の注意力をもってすれば、その外観を見誤ることはないものというべきである。
その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき理由は、見出せない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
2 商標法第4条第1項第10号について
申立人の提出に係る甲各号証によれば、申立人が降圧利尿剤の薬の商標として使用しているのは、「ナトリックス」あるいは「NATRIX」若しくは「T」の文字がデザイン化されている「NATRIX」の商標(以下「使用商標」という。)であり、これらの商標は、引用商標と社会通念上同一のものであるから、前記1で認定したとおり、本件商標と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人が提出した甲各号証によれば、申立人の業務に係る商品「降圧利尿剤」(ナトリックス/NATRIX)は、1985年2月19日から継続的に販売されており、相当の数量が製造販売されているものとみられるものではあるが、当該商品の売上高、市場占有率、広告宣伝費等については明らかでなく、請求人の使用商標は、本件商標の登録出願時には医薬品に係る取引者及び需要者(主に医療従事者や当該疾病患者)間において広く認識され、申立人の業務に係る商品「降圧利尿剤」を表示する商標として、周知・著名な商標に至っていたものということができないものである。
そして、仮に、薬剤・医療業界における取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標と引用商標と社会通念上同一の使用商標とは、前記1のとおり、十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、他に混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。
なお、請求人は、「医薬品や医療機器の取り違えによる医療事故が頻繁に報道されているが、人間に対して投与される専門性の高い医薬品については、その使用あるいは処方の際には、取り間違い等に細心の注意を払わなければならないところ、外観上・称呼上類似する商品名の存在は、潜在的に、上記のような医療事故の発生の可能性をはらむものである。」旨述べている。
しかしながら、本件商標は、請求人の使用商標とは非類似の商標であって、本件商標の指定商品が需要者である患者の身体の安全性に深くかかわっている医薬品の商標であること等を考慮しても、これら両商標間に誤認混同を生ずる事由は見出せないといわざるを得ないから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接した取引者、需要者がこれより直ちに「ナトリックス/NATRIX」商標を連想、想起するものとは認められず、該商品が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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