結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2009−890037(T2009−890037/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5079632号商標(以下、「本件商標」という。)は、「クレデンシャル」の片仮名文字を標準文字で書してなり、第9類「電子出版物」を指定商品とするほか同類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、平成18年11月10日に登録出願、同19年9月28日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出している。
なお、弁駁書の証拠方法に付した符号は、審判請求書の証拠方法に付した符合と一部重複するので、弁駁書の証拠方法に付した符号「甲第1号証の1」を「甲第2号証の1」とし、以下同様に順次番号を繰り下げることとする。
(1)引用商標
請求人の引用する登録第4775913号商標(以下「引用商標」という。)は、件外株式会社教育科学研究所が商標権者であって、「クレデンシャル」の片仮名文字を標準文字で書してなり、第41類「電子出版物の提供」を指定役務とするほか第35類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載の役務を指定役務として、平成14年4月4日に登録出願、同16年6月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)本件商標と引用商標との類否
(ア)両商標の類否
本件商標は、標準文字で「クレデンシャル」を片仮名で横書きにしている。そして、引用商標も標準文字で「クレデンシャル」を片仮名で横書きにしている。
したがって、本件商標と引用商標とは、商標が同一である。
(イ)指定商品及び役務について
本件商標の指定商品中第9類「電子出版物」と、引用商標の第41類の指定役務中「電子出版物の提供」とは、類似商品・役務審査基準、国際分類第9版対応の54ページ「電子出版物」の(備考)に、「電子出版物」は第41類の「電子出版物の提供」に類似すると記載され、191ページ「電子出版物の提供図書及び記録の供覧」の(備考)に、「電子出版物の提供」は第9類の「電子出版物」に類似すると記載されているように、類似関係にある商品と役務である。
(ウ)結論
本件商標と引用商標とは、商標が同一であり、その指定商品と役務とが類似するものである。
(1)「電子出版物」と「電子出版物の提供」に関する具体的な取引の実情と、それらの類否
被請求人は、具体的な取引実情を勘案した場合、「電子出版物」と「電子出版物の提供」は類似しないと主張している。
しかし、同一の者が「電子出版物」および「電子出版物の提供」の両方にかかわっている場合が多いが、この点は、インターネットから収集した甲第2号証ないし甲第6号証からも明らかである。
例えば、甲第2号証は、出版社である講談社の商品に関する情報を、インターネットから入手したものであるが、甲第2号証の1は、講談社のCD−ROMによる本の紹介に関する情報であり、甲第2号証の2は、同じく講談社のコンテンツの提供に関する情報である。いずれにしても、出版社の講談社は、「電子出版物」と「電子出版物の提供」の両方を手掛けていることは明らかである。
甲第3号証は、出版社である三省堂の商品に関する情報を、インターネットから入手したものであるが、甲第3号証の1は、三省堂のCD−ROMによる本の紹介に関する情報であり、甲第3号証の2は、同じく三省堂のコンテンツの提供に関する情報である。いずれにしても、出版社の三省堂は、「電子出版物」と「電子出版物の提供」の両方を手掛けていることは明らかである。
なお、甲第3号証の2には、「Web Dictionary」という表示があり、辞書の配信サービスであることが明らかである。
甲第4号証は、出版社である小学館の商品に関する情報を、インターネットから入手したものであるが、甲第4号証の1は、小学館のCD−ROMによる本の紹介に関する情報であり、甲第4号証の2は、同じく小学館のコンテンツの提供に関する情報である。いずれにしても、出版社の小学館は、「電子出版物」と「電子出版物の提供」の両方を手掛けていることは明らかである。
甲第5号証は、出版社である研究社の商品に関する情報を、インターネットから入手したものであるが、甲第5号証の1は、研究者のCD−ROMによる本の紹介に関する情報であり、甲第5号証の2は、同じく研究社のコンテンツの提供に関する情報である。いずれにしても、出版社の研究社は、「電子出版物」と「電子出版物の提供」の両方を手掛けていることは明らかである。
甲第6号証は、出版社である岩波書店の商品として著名な「広辞苑」に関する情報を、インターネットから入手したものであるが、甲第6号証の1は、「広辞苑」をDVD−ROM版として発売していることを示すもので、甲第6号証の2は、同じ「広辞苑」を携帯電話に配信していることを示すものである。
なお、このような資料は、インターネットを調べれば、枚挙に暇がないほどたくさん入手することができる。
以上甲第2号証ないし甲第6号証による事実から、出版業界において、同一の出版社が、例えばCD−ROM化した電子出版物の販売と、デジタル化したコンテンツを配信する電子出版物の提供業務との両方を手掛けていることは、特別なことではなく、ごく通常のこととであると考えることができる。
また、上記甲第2号証ないし甲第6号証から、上記のことは、一般の需要者が認識できる程度に一般化しているし、一般需要者もそのように認識しているものと考えられる。
このような業界の状況を考慮したとき、指定商品である「電子出版物」と指定役務である「電子出版物の提供」とを非類似扱いにして、それらに同一もしくは類似の商標の登録を認めた場合には、一般需要者は彼此混同を生じることは明らかである。
したがって、類似商品・役務審査基準において、「電子出版物」と「電子出版物の提供」を類似として扱うのは正当であるとともに、取引の実情を勘案したとき、それらを非類似として扱う方が例外的であるといわざるをえない。
(2)公定力に関する反論
公定力とは、行政行為にみとめられる力で、たとえ瑕疵があったとしても、正式に取り消されるまでは、有効なものとして効力を有するというもので、無効の主張まで禁止するものではない。
したがって、請求人が、公定力の存在を根拠に「審査官の判断は尊重されてしかるべきである。」との主張は容認されない。
したがって、本件商標登録の指定商品中「電子出版物」は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べている。
(ア)商標について
本件商標と引用商標とは両者とも標準文字により「クレデンシャル」と書してなるため、商標が同一である点は認める。
(イ)指定商品・指定役務について
類似商品・役務審査基準における備考の記述を根拠として、本件指定商品と引用指定役務とが類似するとの請求人の主張に対しては認容できず、下記のとおり反論する。
類似商品・役務審査基準は、指定商品・指定役務間の類似に関し、あくまで「類似と推定する」の意味であることは同基準の「本審査基準の運用について」(iiiページ)に記載されている。
その趣旨は、具体的な取引実情に基づいて指定商品・指定役務間の類否を判断するものと解せられる。
これを本件についてみるに、本件商標の第9類の指定商品たる「電子出版物」は、電子化された出版物として、DVDやCD−ROMなどの媒体に書物の内容がデジタル記録され書店等で販売され、それに付された本件商標を目印として取引者・需要者が購入するものである。これに対し、引用商標の第41類に属する指定役務たる「電子出版物の提供」はダウンロードされない電子出版物を対象としており、これら「電子出版物」と「電子出版物の提供」は、具体的な取引実情を勘案した場合、類似しないものである。
(ウ)しこうして、商品と役務とは、取り扱い対象が異なるため類似しないものとみるのが原則である。しかし、例外的に商品と役務とが類似する場合もあるので、かかる例外的取り扱いがあることを確認的に規定すべく、商標法は平成3年の法改正により同法第2条第6項を規定しているものである。
このように、原則的には、本件商標の第9類に属する指定商品と、引用商標の第41類に属する指定役務とは非類似とみるのが相当であり、原査定の審査官もかような判断の下、本件商標につき登録査定されたものと推察される。
(エ)さらに、商標法は審査主義を採用し(商標法第14条)、審査官が行った本件登録処分に対しては公定力が働く。すなわち、上記のとおり商標法第4条第1項第11号に該当するとの明白な無効理由も存せず、今般の審査官の登録処分に重大かつ明白な違法性はなく、審査官の判断は尊重されてしかるべきである。
以上、詳述したとおり、本件商標登録に瑕疵はなく、商標法第4条第1項第11号違反の無効理由に該当しない。
よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。
(1)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは、いずれも「クレデンシャル」の片仮名文字を標準文字で書した構成よりなるものであるから、同一のものである。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定役務との類否
本件商標はその指定商品のうちに第9類「電子出版物」を含むのに対し、引用商標はその指定役務のうちに第41類「電子出版物の提供」を含むものである。
商品としての「電子出版物」と役務としての「電子出版物の提供」とは、電子出版物の内容が電子情報であるという点で共通しており、その提供方法のみが異なるだけであって、ダウンロード可能な電子出版物は商品であるが、ダウンロードできないオンラインでの電子出版は役務とされているものである。
そして、特許庁商標課編「商品及び役務区分解説〔国際分類第9版対応〕」(2007年11月30日発行)によれば、「『電子出版物』の概念には、ダウンロードによる電子出版物、記録媒体に格納した電子出版物が含まれる。『電子出版物の提供』は、電気通信回線を通じて電子出版物を供覧させる役務である。」と記載されている。
例えば、甲第3号証の1は、三省堂のホームページで「EPWING スーパー大辞林CD−ROM」の見出しの下に「CD−ROM1枚・・・税込10.290(本体9,800)円・・・収録データ『大辞林 第二版』『デイリーコンサイス英和辞典 第5版』・・・」との記載があり、甲第3号証の2は、同じく三省堂「WebDictionary」のサイトで、「『三省堂WebDictionary』は、“ことば”に関するさまざまな情報をお客様に提供する『ことばのポータルサイト』です。・・・有料会員になることで、数多くの便利なコンテンツが利用可能です。」と記載されている。
また、甲第6号証の1は、岩波書店のホームページで、「広辞苑 第六版 DVD−ROM版」の見出しの下に「価格10,500円 DVD−ROM1枚・・・最新版『広辞苑 第六版』・・・完全収録」と記載されており、甲第6号証の2は、同ホームページ「ケータイで、いつでもどこでも『広辞苑』ケータイでも『広辞苑 第六版』をお使いいただけます。・・・利用料105円(税込))」と記載されている。
このように、甲第3号証の1及び甲第4号証の1は、「電子出版物」に関する記事内容であり、甲第3号証の2及び甲第4号証の2は、「電子出版物の提供」に関する記事内容と認められるが、取引形態が近似しているばかりではなく、これらの取引業者はかなり重複して事業を行っているというのが実情である(甲第2号証ないし甲第6号証)。
したがって、「電子出版物」と「電子出版物の提供」とは、相互に類似するものの範囲に含まれるというのが相当である。
なお、類似商品・役務審査基準では、第9類「電子出版物」の類似群の備考として、「電子出版物」は第41類の「電子出版物の提供」に類似するものとされ、第41類「電子出版物の提供、図書及び記録の供覧」の類似群の備考として、「電子出版物の提供」は第9類「電子出版物」に類似するものとして規定されている。
(3)被請求人の引用商標譲受に伴う無効理由の解消について
被請求人は、平成21年6月8日付け上申書において、引用商標の商標権を譲り受け、本件商標の商標権者と引用商標の商標権者とは同一人になったので、請求人が主張する商標法第4条第1項第11号に該当するとの無効理由がなくなったことは明白であると主張する。
しかしながら、本件事案における無効理由存否の判断基準時は、本件商標の登録査定がなされた平成19年7月18日である。
そして、商標登録原簿によれば、引用商標について、特定承継による商標権の移転登録により、被請求人が商標権者となっていることが認められるのは、その移転登録の受付日である平成21年6月9日以降のことであるから、被請求人が引用商標を譲り受けたことに伴い無効理由が解消することにはならない。
よって、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
(4)小括
本件商標は、引用商標と商標が同一であり、その指定商品中の「電子出版物」と引用商標の指定役務中の「電子出版物の提供」とは類似すると認められるものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものである。
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、本件審判請求に係る指定商品である「電子出版物」について、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたと認められるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。