Trademark Appeal Case
地名と普通名称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−5012(T2009−5012/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「麻布テーラー」の文字を標準文字により表してなり、別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成20年3月12日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、東京都港区にある地名として、全国的に広く知られた『麻布』の文字と『洋服の仕立て屋』の意を有する『テーラー』の文字を結合して標準文字で書してなるものであるから、これを本願記載の指定商品・指定役務に使用しても、全体として『麻布にある洋服屋』程度の意味合いを理解させるに止まり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、前記のとおり、「麻布テーラー」の文字を書してなるものである。
そして、当該構成中の「麻布」の文字は、「広辞苑第六版(株式会社岩波書店)」によれば、「東京都港区の一地区。」を指す語であって、「もと東京市35区の一つ。江戸時代からの名称。高級住宅地で外国大公使館などが多い。」と記載されている。また、「日本地名百科事典(株式会社小学館)」によれば、「麻布」は、麻布十番通りを中心とする商店街では江戸期からの老舗がみられ、特にフランス(南麻布)、ロシア(麻布台)、中国(元麻布)などの外国公館が数多く存在する特色を持つ東京都港区中西部の地区であると記載されている。さらに、その他の辞典類、例えば、「大辞林第3版(株式会社三省堂)」及び「コンサイス日本地名事典第5版(株式会社三省堂)」にも同様の記載がされている。加えて、麻布地区には、2000年9月26日に営団地下鉄南北線「麻布十番駅」が、同年12月12日に都営地下鉄大江戸線「麻布十番駅」がそれぞれ開業、運転を始めた事実が認められる。
そうすると、「麻布」の文字は、東京都区内にある地区名として、全国的に広く知られ親しまれたものとみるのが相当である。
また、当該構成中の「テーラー」の文字は、「広辞苑第六版(株式会社岩波書店)」によれば、「洋服、特に男子服の仕立屋。」の意味を有する語であるところ、たとえば、業種名を表示するものとして、「NTT タウンページ職業別」に、「テーラー→〔洋服店(注文服)〕」との記載、インターネット上の「iタウンページ」(http://itp.ne.jp/)に、「テーラーショップ」との記載が、それぞれなされている。そして、「NTT タウンページ職業別」や「iタウンページ」において、「テーラー」の文字が、氏姓あるいは地理的名称等を表した文字とともに多数掲載されていることが認められる。
さらに、地理的名称を表した文字と「テーラー」の文字とが組み合わせて使用されていることは、たとえば、以下の事例からも十分に裏付けられるところである。
(1)「Yahoo!地域情報」のホームページにおいて、「錦糸テーラー−東京都墨田区の洋服店(注文服)−Yahoo!地域情報」の見出しのもと、「錦糸テーラー」、「カテゴリ 洋服店(注文服)」、「住所 東京都墨田区錦糸4丁目12−4」の記載。
(http://local.yahoo.co.jp/detail/spot/5779cf25c7851c44e7417f18564d759b/)
(2)「Yahoo!地域情報」のホームページにおいて、「有限会社北沢テーラー−東京都世田谷区の洋裁店 洋服店(注文服)−Yahoo!地域情報」の見出しのもと、「有限会社北沢テーラー」、「カテゴリ 洋裁店 洋服店(注文服)」、「住所 東京都世田谷区北沢1丁目21-1」の記載。
(http://local.yahoo.co.jp/detail/spot/987e5eec1b6fef85971ae79aad212cf8/)
(3)「Yahoo!地域情報」のホームページにおいて、「テーラー日の出−茨城県潮来市の洋服店(注文服) −Yahoo!地域情報」の見出しのもと、「テーラー日の出」、「カテゴリ 洋服店(注文服)」、「住所 茨城県潮来市日の出7丁目4-22」の記載。
(http://local.yahoo.co.jp/detail/spot/96596e4ca1478680b357990dfe0d33c9/)
(4)「goo地域」のホームページにおいて、「[紳士服店/洋服店(学生服)/洋服店(注文服)] 釧路テーラー − 北海道 − goo 地域」の見出しのもと、「[紳士服店/洋服店(学生服)/洋服店(注文服)] 釧路テーラー − 北海道」、「住所 北海道釧路市緑ケ岡6丁目8−2」の記載。
(http://local.goo.ne.jp/hokkaido/shopID_nttbis-01-38945/)
以上の事実より、注文服を取り扱う店について、地理的名称等を表した文字と業種名を表示するものとしての「テーラー」の文字とを組み合わせた標章が一般的に採択、使用されているとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、その商品の製造、販売地や役務の提供の場所を表す「麻布」の文字と、業種名の一つであり注文洋服店程の意味合いを認識、理解させる「テーラー」の文字とを組み合わせてなるにすぎないものであり、特別顕著な構成ともいえないものであるから、これに接する取引者、需要者をして、全体として「麻布にある洋服屋」程度の意味合いを理解、把握させるに止まり、何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができないものである。
なお、請求人は、本願商標について周知性を主張し、本願商標が全体として識別力を有していると主張するとともに、使用実績に関する証拠を提出しているが、提出された証拠に係る商標は、その多くが、本願商標「麻布テーラー」の文字のみを表示したものではなく、四角図形と文字(「麻」「azabu」「布」「tailor」「テーラー」)との組み合わせからなる商標や、「azabu tailor」の文字からなる商標も併せて表示したものである。また、提出された証拠に係る商品及び役務は、本願の指定商品及び指定役務と同一のものとはいえず、請求人(出願人)の提出にかかる資料を総合的にみるに、本願商標並びにその指定商品及び指定役務についての使用期間、使用地域、営業の規模、広告宣伝の方法、回数及び内容等の使用状況に関する事実及び商標の周知性を客観的に示すものとして十分なものと認めるに足りるものではない。そうとすると、本願商標は、その指定商品及び指定役務について使用された結果、請求人の業務に係る商品及び役務であることが、取引者、需要者間に広く認識されるに至ったものであるとは認めることはできないものであるから、本願商標が使用により識別力を獲得したものとは認めることができない。
また、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も識別力を有する旨も述べているが、請求人が主張する過去の登録例に係る商標は、本願商標とは、その構成文字等が相違するものであって、本願とは事案を異にするものであるところ、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、それらの登録例に前記認定が左右されるものではない。
さらに、請求人は、紳士服を取り扱う業界において、地理的名称などを表した文字と「テーラー(tailor)」の文字を組み合わせた標章が一般的に使用されているとはいえず、「麻布テーラー」を他者が使用している事実はない旨も述べているが、前記認定のとおり、地理的名称等を表した文字と業種名を表示するものとしての「テーラー」の文字とを組み合わせた標章が一般的に採択、使用されているものであるから、たとえ「麻布テーラー」の文字が他人によって使用されていないとしても、容易に「麻布にある洋服屋」程度の意味合いが理解されるものというべきである。
以上のとおり、請求人のいずれの主張も採用することができない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第6号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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