Trademark Appeal Case
シャンパンの著名性と商標
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900015(T2009−900015/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5170631号商標(以下「本件商標」という。)は、「シャンパンクリスタル」の文字と「CHAMPAGNE CRYSTAL」の文字を二段に横書きしてなり、平成20年2月26日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同年8月22日に登録査定、同年10月3日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。
第3 本件商標に対する取消理由(要旨)
1 「Champagne(シャンパーニュ又はシャンパン)」の語の著名性について
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲第2号証ないし甲第49号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日、株式会社三省堂発行)の「シャンパン」〔champagne〕の項目(437頁)には、「発泡ワインの1種。フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。・・・シャンペンとも。・・・シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング−ワインと呼んで区別される。」との記載がある(甲第2号証)。
イ 「広辞苑 第5版」(1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)の「シャンパーニュ」(Champagne)の項目(1248頁)には、「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。」との記載があり、また、「シャンパン」(champagne)の項目には、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。」との記載がある(甲第3号証)。
ウ 「新版 世界の酒事典」(1982年5月20日、株式会社柴田書店発行)の「シャンパン」(Champagne)の項目(228頁)には、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にプルミュール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」との記載がある(甲第4号証)。
エ 「明治屋酒類辞典」(昭和63年8月1日、株式会社明治屋本社発行)の「Champagne(仏)(英)シャンパン」の項目(201、202頁)には、「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって、それを越えた部分には形容詞がつく。」との記載があり、「統制名称」(209ないし211頁)には、「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが、『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。・・・要するにシャンパンの条件は1(1は、○で囲まれている。)シャンパン地区の生産であること。2(2は、○で囲まれている。)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い、発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。3(3は、○で囲まれている。)白ワインであること。(省略)4(4は、○で囲まれている。)その年度の最高の生産高に制限があること、の4条件を具えなければならない。・・・戦前、わが国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが、敗戦の結果、サンフランシスコ講和条約の効果として、マドリッド協定に加入を余儀なくされ、以来フランスの国内法を尊重している。」との記載がある(甲第5号証)。
オ 「ワイン紀行」(1991年9月25日、株式会社文藝春秋発行)の「シャンパーニュの村」の項目には、シャンパンの歴史及び製造過程についての記載がある(甲第6号証)。
カ 「洋酒小事典」(昭和56年6月15日、株式会社柴田書店発行)の「シャンペン Champagne」の項目(95頁)には、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。」との記載がある(甲第7号証)。
キ 「フランスのワインとスピリッツ」(1987年、フランス食品振興会発行)の「シャンパーニュ(CHAMPAGNE)」の項目(26、27頁)には、シャンパーニュ地方及びシャンパンの歴史及び製造過程についての記載がある(甲第8号証)。
ク 「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年9月30日、日本経済新聞社発行)の「名醸地紀行」には、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味をもったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」との記載がある(甲第9号証)。
ケ 「最新版 The ワイン & コニャック アルマニャック」(昭和62年10月14日、読売新聞社発行)の「シャンパンでディナーを」の項目には、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」との記載がある(甲第10号証)。
コ 「世界の酒4 シャンパン」(1990年6月30日、株式会社角川書店発行)の「シャンパーニュの丘」の項目(6頁)には、「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性のワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」との記載があり、「シャンパーニュのぶどう畑」の項目(8頁)には、「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」との記載がある(甲第11号証)。
サ 「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(1991年5月27日、ネスコ(日本映像出版株式会社)発行)の「Champagne/シャンパーニュ」の項目(110頁)には、「シャンパーニュという名前は、ボルドーの呼称などのように、限定された区域に適用されるだけでなく、この名前を名乗るまでに1滴ずつのワインが経なければならない一連の手法をも指す。・・・シャンパンがどれも、世界中の他のどんな発泡性ワインにも勝るというのは言い過ぎだろう。さまざまなシャンパンがあるのだから。しかし、申し分ないシャンパーニュには、さわやかさと鋭敏さ、芳醇さ、混じりけのなさといったものの組み合わせ、それに優しく刺激してくれるアルコールの強さが見られ、他の追随を許さない。」との記載がある(甲第12号証)。
シ 「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(1998年12月1日、サントリー株式会社発行)の「シャンパーニュ」の項目(243頁)には、「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界的で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」との記載がある(甲第13号証)。
ス 「料理王国1月号別冊(季刊ワイン王国 NO.5)」(2000年1月20日、株式会社料理王国社発行)の「シャンパン味わいの多様性チャート」の項目(80頁)には、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」との記載がある(甲第14号証)。
セ 「世界の名酒事典’80改訂版」(1980年、株式会社講談社発行)の「スパークリング・ワイン」の項目(248頁)には、シャンパンの産地、シャンパンの製法等、シャンパンについての紹介の記載がある(甲第15号証)。また、同誌「’82−’83年度版」、「’84−’85年度版」、「’87−’88年版」、「’90年版」ないし「2000年版」、「2002年版」ないし「2004年版」においてもほぼ同様の記載がある(甲第16号証ないし甲第32号証)。
ソ 「The 一流品 決定版」(1986年4月17日、読売新聞社発行)には、「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のぶどう畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。」(甲第33号証)の記載のほか、同誌PART3には、「エレガントな泡立ちをもち、お祝いの席には欠かせないこのワインは、シャンパーニュ地方で産するものだけに、名称を使うことができる。」(甲第35号証)の記載及びPART4に「エレガントな泡立ちをもち、お祝いの席には欠かせないこのワインは、シャンパーニュ地方産。」の記載がある(甲第36号証)。
タ 「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(昭和57年11月1日、株式会社世界文化社発行)の「“女性を美しくする唯一の飲み物”シャンパン」の項目(198頁)には、「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」との記載がある(甲第37号証)。
チ 「家庭画報編女性版 世界の特選品’84」(昭和58年11月1日、株式会社世界文化社発行)の「CHAMPAGNE シャンパン」の項目(217頁)には、「パリから170キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」との記載がある(甲第38号証)。
ツ 「男の一流品大図鑑’86年版」(昭和61年5月20日、株式会社講談社発行)には、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており(甲第39号証、191頁)、同誌「’87年版」及び「’88年版」にも、同様の紹介がされている(甲第40号証及び甲第41号証)。
テ 「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年、株式会社宙出版発行)の「一目で分かるシャンパンのデータ」の項目(132頁)には、フランスからの総出荷量は、1993年が22909万本(1本当たりの容量は750ml、以下同じ。)、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載があること、1998年におけるフランスからの国別出荷量、上位10カ国のうち、我が国への出荷量は、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで298万本であること、等の記載がある(甲第42号証)。
ト 昭和64年1月5日付け日本経済新聞(夕刊)には、「シャンパン(産地)」の見出しの下に、「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。」との記載がある(甲第43号証)。
ナ 平成元年6月13日付け日本経済新聞(夕刊)には、「シャンパン人気急上昇」の見出しの下に、「結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具・・・これまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。」との記事があり、また、「発泡性ワイン輸入量5割増」との見出しの下に、「現在ではフランスの原産地名称国立研究所(INAO)により、『シャンパン』と名のれるのはその“生誕地”シャンパーニュ地方の発泡性ワインのみと規定されている。」との記載がある(甲第44号証)。
ニ 平成2年1月11日付け日本経済新聞(夕刊)には、「シャンパン/値下げで人気も上々」の見出しの下に、「はじける泡や優雅な味と香りが魅力のシャンパン。結婚披露宴やクリスマスパーティーだけでなく、入学式や誕生日などにも登場することが多くなった。炭酸ガスを含む発泡性ワインは各国にあるが、『シャンパン』を名乗れるのはフランスのシャンパーニュ地方産だけ。・・・最近のパーティーブームに加えて、昨年4月の酒税改正で2割程度価格が下がったことから人気急上昇。」との記載がある(甲第45号証)。
ヌ 平成2年1月27日付け朝日新聞には、「日本の昨年のシャンパン輸入が初めて百万本を突破し、前年に比べて実に六六・六五%増の百二十八万本に達した・・・日本の輸入の伸び率は世界一。輸入量も、カナダの百四十七万本に次いで世界第十位にのし上がった。」との記載がある(甲第46号証)。
ネ 平成2年11月16日付け朝日新聞には、「商品の外国地名使用ご用心」の見出しの下に、「祝賀パーティーの乾杯に欠かせないシャンパンといっても、厳密には『シャンパン』と『スパークリング(発泡性)ワイン』の区別がある。どちらも泡の立つ白ワインに違いはないが、前者はフランスのシャンパーニュ地方産、後者はそれ以外の国や地域で醸造されたものをさす。・・・欧州共同体(EC)は、『スパークリング・ワイン』を勝手に『シャンパン』として売るな、と主張している。」との記載がある(甲第47号証)。
ノ 平成3年4月27日付け朝日新聞(夕刊)には、「スパークリングワイン」の見出しの下に、「・・・スパークリングワインが最近、人気を集めています。お祝いの席の乾杯の酒から、友人たちといつでも気軽に楽しめる飲み物に変わってきているようです。代表的な銘柄であるシャンパンの高級品は一本数万円しますが、・・・」との記載があり、「シャンパンはシャンパーニュ地方で、瓶内発酵法によってつくるなど、法律で基準が細かく決まっており、この地方以外でつくられるスパークリングワインをシャンパンと呼ぶのは禁止されている。」との記載がある(甲第48号証)。
ハ 平成4年7月27日付け毎日新聞(夕刊)によれば、「ワインの里を疾走」の見出しの下に、「『シャンパン』はフランスのシャンパーニュ地方だけで作られるワインの発泡酒の名称。」との記載がある(甲第49号証)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、「Champagne」の語は、フランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であって、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、「Champagne」を表す日本語として「シャンパーニュ」、「シャンパン」が普通に使用されていること(我が国では、地名を指称するときは「シャンパーニュ」と呼び、発泡性ぶどう酒を指称するときは「シャンパン」と呼ぶことが多いが、「シャンパーニュ」の呼称をもって発泡性ぶどう酒を指称することも少なくない。)、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいて、シャンパーニュ、シャンパンの語についての説明がされ、また、世界の名酒事典などにおいてもシャンパンの具体的製品が紹介されていること、乾杯用としてシャンパンが用いられることが多いこと、及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本と多いことなどが認められ、これらを総合すると、「Champagne(シャンパーニュ又はシャンパン)」の語は、我が国において、本件商標の登録出願時である平成20年(2008年)2月26日はもとより、その登録査定時である平成20年8月22日においても、「フランスのシャンパーニュ地方、及び当該地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られていたというのが相当である。
(3)フランスにおける「CHAMPAGNE」の名称の保護について
フランスにおける「CHAMPAGNE」の名称の保護に関しては、前記(1)で認定した事実に加え、以下の事実を認めることができる。
ア 前出「フランスのワインとスピリッツ」(甲第8号証)の18頁ないし20頁には、「EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、1(1は、○で囲まれている。)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)2(2は、○で囲まれている。)V.D.Q.S.(上質限定ワイン)3(3は、○で囲まれている。)ヴァン・ド・ペイ(地酒)4(4は、○で囲まれている。)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられる」旨の記載があり、2(2は、○で囲まれている。)のV.D.Q.S.(上質限定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって、厳しく規制されパスしたものに限られ、製造の条件は、地域ごとに厳密に決定されており、法令化されていること、1(1は、○で囲まれている。)のA.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.S.ワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件などの基準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.S.ワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、A.O.C.の名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないこと、などの記載がある。また、同20頁の「産地別A.O.C.ワイン一覧表」には、「シャンパーニュ/CHAMPAGNE」の文字が記載されている。
イ 前出「世界の名酒事典’90年版」(甲第19号証)の「ワインの法律」の項目(15頁)には、「ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」との記載があり、「ECのワイン法にもとづく品質区分例」の一覧表には、フランスにおける指定地域優良ワインとして、「V.D.Q.S.ワイン」、「A.O.C.ワイン」があるとの記載がある。
ウ 「1985年、制定50周年を迎える原産地統制名称(AOC)」(フランス食品振興会発行のパンフレット、甲第52号証)、「フランス原産地統制名称の国際的保護のためのINAOのアクションに関するメモ」(甲第53号証)、「1936年6月29日付け原産地統制名称『CHAMPAGNE』に関するフランス国条例」(甲第54号証)、「1935年7月30日付けフランス国政令『原産地統制呼称法』」(甲第55号証)、「『フランス国農事法典』における原産地名称国立研究所(INAO)に関する記載」(甲第56号証)、「Sweet&Maxwell社刊 1994年第4号」における「European Intellectual Property Review」(甲第57号証)、「Butterworths刊 1997年」における「FAMOUS AND WELL−KNOWN MARKS」(甲第58号証)には、フランスでは、1935年7月30日に原産地統制呼称についての政令を制定し、INAOは原産地統制呼称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、生産高、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、また、フランス国内及び国外で原産地統制呼称を保護することができる旨などを規定していること、原産地統制名称「CHAMPAGNE」の条件を定めていること、INAOは、申立人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていること、などの記載がある。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「シャンパンクリスタル」の文字と「CHAMPAGNE CRYSTAL」の文字を二段に横書きしてなるところ、その構成中の「シャンパン」、「CHAMPAGNE」の文字部分は、前記1で認定したとおり、「フランスのシャンパーニュ地方、及び当該地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているものである。
一方、「クリスタル」、「CRYSTAL」の語は、「水晶、クリスタルグラス」、あるいは「(水晶のように)透明な」等を意味する英語として、我が国においてよく知られているありふれた語であるが、これが「シャンパン」、「CHAMPAGNE」の文字と結合して、我が国において、親しまれた熟語的意味合いを表すものとして理解されているものとはいえない。
そうすると、本件商標に接する需要者は、「シャンパン」、「CHAMPAGNE」の語と「クリスタル」、「CRYSTAL」の語とを単に並列的に結合したものと把握、認識するばかりでなく、「フランスのシャンパーニュ地方、及び当該地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして広く知られている語頭部の「シャンパン」、「CHAMPAGNE」の文字部分に強く印象づけられるとみるのが相当である。
そして、前記1で認定したとおり、フランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、「CHAMPAGNE」の語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、著名な「CHAMPAGNE(シャンパーニュ又はシャンパン)」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
以上のとおりであるから、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標というのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。
第4 商標権者の意見
商標権者は、前記第3の取消理由の通知に対して、何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当であって、本件登録は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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