Trademark Appeal Case
窒素水商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2008−19118(T2008−19118/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「窒素水」の文字を標準文字で表してなり、第30類「窒素ガスを含有させた調味加工水」及び第32類「窒素ガスを含有させたミネラルウォーター」を指定商品として、平成19年5月28日に登録出願され、その後、指定商品については、同年12月25日付け手続補正書により、第30類「窒素ガスを含有させた調味用の塩水」及び第32類「窒素ガスを含有させた加工した飲料水,窒素ガスを含有させたミネラルウォーター」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『非金属元素の一。』を意味する『窒素』の文字と、『酸素と水素との化合物。』を意味する『水』の文字とを一連に『窒素水』と標準文字で書してなるから、全体として、『窒素を含有させた水』程の意味合いを理解させるにとどまり、これをその指定商品に使用するときは、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを行ったところ、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成21年8月12日付けで証拠調べの結果を通知した。
4 職権証拠調べに対する請求人の意見(要点)
「酸素水」「水素水」については、「酸素を含有した水」「水素を含有した水」の意を有する根拠が存在するが、「窒素水」についてはそのような意を想起させる根拠が存在しない。「酸素水」についてはもともと「高濃度酸素水」「酸素強化水」というものが存在し、これらは通常の空気中に置かれた水に含まれているよりも多い量の酸素を溶かし込んだ水を意味するもので、これが今日「酸素水」と呼ばれるようになったという背景がある。これにより、単に「酸素水」と表記した場合にも「酸素を含有した水」の意が容易に認識できるようになる。一方「水素水」に関しても、活性水素が溶けている水の呼称である「活性水素水」というものがあらかじめ存在し、これにより単に「水素水」と記しても「水素を含有した水」の意を想起させ得るものとなっている。このような背景から、近年になってこれらの「酸素水」「水素水」などの表現が飲料水等に多く用いられるようになったという経緯がある。
しかしながら、「窒素水」の語は以上のような事情は有しておらず、「窒素含有水」「窒素封入水」又は「窒素強化水」等のような表現を経由してからでなければ「窒素水」という語が「窒素を含有した水」の意を想起させるということは無いと考えられ、「窒素水」という語は記述的機能を有さない一種の造語であると考えられる。
インターネット等に数件存在すると指摘された「窒素水」「オゾン水」「アンモニア水」等の語も、あくまで生鮮物における雑菌の繁殖の抑制や酸化防止等に用いられる水について使用されたものであり、飲料水やミネラルウォーター等について使用されたものではないところを見ると、本件商標とは商品が異なる点で事情が異なっており、「窒素水」の語を本件指定商品について使用した際に「窒素を含有させた調味用の塩水,窒素を含有させた飲料水,窒素を含有させたミネラルウォーター」の意を想起させるとする根拠とはいえない。むしろ、本来は飲料水や調味用水について用いられることがない「窒素水」の語を飲料水等について使用しているという事実は、本願商標が飲料水等の品質等を直接表現する記述的機能を発揮していないということの根拠となり、本願商標「窒素水」は、指定商品との関係を考慮すると、比喩的な性質を持った一種の造語であるというのが相当である。
以上のように、本願商標における「窒素水」の語は、「酸素水」「水素水」及びインターネット上の「窒素水」その他の語とは使用されている商品及び背景事情が異なり、上述のように記述的な機能を有さない造語であるといえるため、商標法第3条第1項第3号には該当しない。
5 当審の判断
(1)本願商標は、上記1のとおり、「窒素水」の標準文字よりなるところ、前記3で示した証拠調べ通知に記載のとおり、その構成中「窒素」の文字は、「非金属元素の一種。」、「水」の文字は、「酸素と水素との化合物。」の意味をそれぞれ有する語(いずれも「広辞苑第6版」)として一般に親しまれているものであり、本願商標はこれらの語を結合してなるから、窒素に関連した水の意味を極めて容易に想起させるものと認められる。
また、「窒素酸化物」「窒素族元素」「窒素肥料」「アンモニア水」「飲料水」「塩水」「温水」「硬水」「鉱水」「重水」「臭素水」「純水」「浄水」「蒸留水」「ソーダ水」「炭酸水」「淡水」「軟水」「冷水」「レモン水」(いずれも「広辞苑第6版」)等の語が記載されており、さらに「自然水」「天然水」「炭酸水」「酸素水」「水素水」「イオン水」等の文字は、ミネラルウォーター等の一般名称又は商品の品質、原材料等を表示するものとして前記のとおり使用されているものである。
そして、「窒素水」の文字についても、前記のとおり使用されているものである。
そうとすれば、本願商標は、「窒素水」の文字を書してなるにすぎないものであり、これよりは「窒素を含有させた水」の意味を極めて容易に理解、認識させるものであり、また、上記のとおり一般に使用されているものであるから、これをその指定商品「窒素ガスを含有させた調味用の塩水,窒素ガスを含有させた加工した飲料水,窒素ガスを含有させたミネラルウォーター」について使用しても、これに接する取引者・需要者は、その商品が「窒素を含有させた塩水,窒素を含有させた飲料水,窒素を含有させたミネラルウォーター」であると理解、認識するにとどまるというのが相当である。
してみれば、本願商標は、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきであるから、単に商品の品質、原材料等を表示するにすぎないものといわざるを得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するというのが相当である。
(2)なお、請求人は、「酸素水」「水素水」については、「酸素を含有した水」「水素を含有した水」の意を有する根拠が存在するが、「窒素水」についてはそのような意を想起させる根拠が存在しない。「窒素水」「オゾン水」「アンモニア水」等の語も、飲料水やミネラルウォーター等について使用されたものではなく、本願商標は、造語であるといえるため、商標法第3条第1項第3号には該当しない旨主張する。
しかしながら、一般の需要者は、本願商標「窒素水」の文字に接し、これを指定商品に使用した時、単に窒素に関連した水の意味を想起するものであって、「窒素水」の語に「酸素を含有した水」「水素を含有した水」のような事情を有していないからといって、本願商標が識別力を有していることにはならない。
また、「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである。」(東京高裁平成12年(行ケ)第76号 平成12年9月4日判決言渡)旨判示されており、本願商標が登録されるべきであるかどうかは、その指定商品の取引者、需要者等において、これがどのような意味を有するものとして認識され用いられているかによって判断されなければならないところ、本願商標を構成する「窒素」及び「水」の各文字は、一般に親しまれているものであり、また、「窒素酸化物」「窒素族元素」「窒素肥料」「アンモニア水」「飲料水」「塩水」「温水」「硬水」「鉱水」「重水」「臭素水」「純水」「浄水」「蒸留水」「ソーダ水」「炭酸水」「淡水」「軟水」「冷水」「レモン水」等の語が辞書に記載されており、さらに「自然水」「天然水」「炭酸水」「酸素水」「水素水」「イオン水」等の文字は、ミネラルウォーター等の一般名称又は商品の品質、原材料等を表示するものとして前記のとおり多数使用されているものである。
してみれば、本願商標は、「窒素水」の文字を書してなるにすぎないものであり、これよりは「窒素を含有させた水」の意味を極めて容易に理解、認識させるものである。
さらにまた、「窒素水」の文字についても、前記のとおり使用されている実情もあることから、本願商標は、商品の品質、原材料等を表示するにすぎないことは、前記認定のとおりである。
そして、同号の適用において、現実に使用されている等の事実は、必ずしも要求されないと判示されていることからすれば、「窒素水」の文字が造語であるとか、新聞、インターネットにおける記載がわずかであるとしても、それを理由に同号の適用を免れるということにはならないというべきである。
そうとすれば、本願商標は、指定商品の品質、原材料等を示すものとして認識され得る商標といわざるを得ず、このような商標を特定人に独占させることは適切ではないといわなければならない。
(3)さらに、請求人は、原審及び当審において「本件商標『窒素水』は、株式会社昭和冷凍プラントの商品に係る商標として取引需要者に広く知られており、使用による識別性も獲得しているため、登録適格性を有するものである。」旨主張し、証拠方法として、資料1ないし資料16及び平成20年7月28日付け甲第1号証ないし甲第19号証並びに平成21年9月16日付け甲第1号証ないし甲第10号証を提出しているので、この点について検討する。
なお、資料1ないし資料16は証拠と認め甲号証として取り扱う。
また、平成20年7月28日付け甲第1号証ないし甲第19号証と平成21年9月16日付け甲第1号証ないし甲第10号証は、甲号証の番号が重複しているので、資料1ないし資料16及び平成20年7月28日付け甲第1号証ないし甲第19号証並びに平成21年9月16日付け甲第1号証ないし甲第10号証は、職権により、連続番号に付け直した。
したがって、資料1ないし資料16は甲第1号証ないし甲第16号証、 平成20年7月28日付け甲第1号証ないし甲第19号証は甲第17号証ないし甲第35号証、平成21年9月16日付け甲第1号証ないし甲第10号証は甲第36号証ないし甲第45号証とした。
甲第2号証、甲第5号証、甲第9号証、甲第11号証、甲第13号証、甲第17号証、甲第22号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第26号証、甲第27号証、甲第29号証、甲第30号証、甲第31号証、甲第36号証、甲第37号証、甲第38号証、甲第40号証、甲第41号証、甲第42号証、甲第44号証及び甲第45号証に「窒素水」の表示がある。(なお、甲第2号証と甲第30号証、甲第9号証と甲第22号証、甲第11号証と甲第26号証と甲第37号証、甲第13号証と甲第23号証、甲第27号証と甲第36号証及び甲第31号証と甲第44号証は同じ証拠である。)
しかしながら、これらの証拠のほとんどは、生鮮食品の鮮度保持に使用するものであって、本願指定商品「窒素ガスを含有させた調味用の塩水,窒素ガスを含有させた加工した飲料水,窒素ガスを含有させたミネラルウォーター」との関係が不明確であり、本願商標をその指定商品に使用しているとは認め難い。
そして、これらのうち、甲第5号証、甲第29号証、甲第31号証と同じ甲第42号証及び甲第44号証の新聞については、北海道を中心とした新聞であり、本願商標が全国的に取引者、需要者に広く知られているとまで認めることはできない。
甲第2号証と同じ甲第30号証及び甲第45号証の新聞は、一般の需要者には馴染みの薄い専門紙であり、一般の需要者の関心は低いと考えるのが相当である。
甲第9号証、甲第22号証、甲第40号証及び甲第41号証のウェブサイト、インターネット記事については、本願商標「窒素水」と異なる記載がされているもの(例えば、甲第9号証、甲第22号証及び甲第40号証には「窒素水製造システム」「窒素水生成装置」の使用例)や、業務が冷却用の製造システムや生成装置であって、専門的なものであり、全国の一般の需要者が接する機会が多いとは認め難い。
甲第11号証、甲第13号証、甲第17号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第26号証、甲第37号証及び甲第38号証のパンフレット等については、これらのパンフレット等が配布された地域、数量、期間等が明らかにされていないものである。
甲第27号証と同じ甲第36号証は、認定通知であるから、取引者、需要者に広く知られている証拠にはならない。
してみると、請求人の提出に係る各証拠によっては、本願商標がその指定商品に使用をされた結果、全国的に取引者、需要者に広く知られているとまで認めることはできない。
(4)したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、これを登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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