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Trademark Appeal Case

歴史人物名の著名性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2008−9915(T2008−9915/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第8類「刀,模造刀剣」を指定商品として、平成19年5月2日に登録出願され、その後、指定商品については、当審における同20年5月7日付け手続補正書により、第8類「模造刀剣」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨

原査定は、「本願商標は、『伊勢千子村正』の文字と、その表音と認められる『いせせんじむらまさ』及び『いせせんごむらまさ』の平仮名文字を3段に書してなるところ、『千子村正』は、伊勢桑名(三重県桑名市)の刀工(刀鍛冶)であり、この村正の刀は徳川家に不幸をもたらす刀として家康から忌み嫌われたという逸話をもとに芝居などに妖刀として登場するようになったことで、その名を知られていることから、本願商標を一私人である出願人が自己の商標として独占使用することは、社会公共の利益に反するおそれがあり、穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)本願商標について

本願商標は、別掲のとおり、「いせせんじむらまさ」及び「いせせんごむらまさ」の平仮名文字並びに「伊勢千子村正」の漢字を上下三段に横書きしたものよりなるところ、その構成中の「伊勢」の語は、広辞苑(第六版、株式会社岩波書店発行)によれば「旧国名。今の三重県の大半。勢州。」の意味を有するものであり、「伊勢自動車道」、「伊勢志摩国立公園」及び「伊勢湾」など、広く一般に使用されているものである。そして、「村正」の語は、同書によれば「室町時代の刀工。美濃系と見られる。伝説多く、鎌倉の正宗に師事したが破門され、伊勢国桑名郡で刀剣を製作したという。徳川家康の祖父清康がこの刀で殺害され、また、嫡子信康がこの刀で介錯されたなどの伝えから、その作は徳川幕府の禁忌にあい、妖刀視された。同名が数人ある。」、大辞泉(増補・新装版、株式会社小学館発行)によれば「室町時代、伊勢の刀工。桑名郡千子(せんご)に住み、千子派とも称された。利刃をもって名高い。徳川家で、村正の刀による不祥事が相次いだことから、妖刀伝説が生まれた。同名の刀工はほかに数人いる。生没年未詳。」、コンサイス日本人名事典(第5版、株式会社三省堂発行)によれば「生没年不詳。室町時代の刀工。一説に相州正宗の弟子というが、正しくない。最も古い年紀ものは<文亀元年十月日>で、同名の刀工が3代あるとみられる。・・(中略)・・村正は徳川家にとって不吉であるというところから妖刀説が生まれた。そのため、銘を消したものや、村の字を消して宗を加え正宗に改鏨したものもある。」との記載がある。そして、同事典には「せんご むらまさ 千子村正 =村正 むらまさ」との記載もある。

以上の辞書などの記載からすれば、「千子村正」は、室町時代の伊勢の刀工で、歴史上の人物の名称である。

そして、これらのことから、本願商標は、「伊勢の国の千子村正」の意味合いを有する「伊勢千子村正」の漢字を書し、その上段にその読みとして「いせせんじむらまさ」及び「いせせんごむらまさ」の平仮名文字を併記したものであるとみることができる。

(2)本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性について

本願商標は、上記(1)のとおり、室町時代の伊勢の刀工であって、歴史上の人物の名称といえる「千子村正」を表したものとみることができるものである。

ところで、今日における歴史上の人物名を巡る諸事情につてみると、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、例えば、地方公共団体や商工会議所などの公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるところであり、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、当該地域においては強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。このような諸事情の下、周知・著名な歴史上の人物名についての商標登録に対しては、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するおそれがあるとの懸念が指摘されているところである。

このような観点から、本願商標に係る「千子村正」について検討するに、当該歴史上の人物の周知・著名性はさほど高いといえるものではない。さらに、当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識や利用状況についても高いという事実は発見し得なかった。

そうとすれば、本願商標は、歴史上の人物名として、商標の使用や登録が社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するようなものでないといえる。

また、本願商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものでないことは明らかであり、さらに、上記の認定判断のほか、本願商標をその指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとはいい難く、加えて、他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実も認められないものである。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。

その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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