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Trademark Appeal Case

著名商標の類否と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2009−900070(T2009−900070/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5180507号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件登録第5180507号商標(以下「本件商標」という。)は、「AIRCARD」の文字を標準文字で書してなり、平成20年3月31日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,電子出版物」を指定商品として、平成20年10月16日に登録査定、同年11月14日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、結論同旨の決定を求めると主張し、その理由として要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第83号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、申立人が使用する著名な引用商標と社会通念上同一と認められる類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品とは相互に一部類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

引用商標と社会通念上同一と認められる程に類似する本件商標が、その指定商品に使用されれば、本件商標に接する需要者及び取引者は、本件商標から直に著名な引用商標を連想・想起し、その商品が、申立人と直接、若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生じるおそれがあるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号について

本件商標「AIRCARD」は、申立人の著名な引用商標を剽窃したものにほかならず、数ヶ国において著名となった引用商標「AirCard」に化体した莫大な顧客吸引力と業務上の信用にフリーライドするものであり、不正の目的をもって採択・使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号 にも該当する。

(4)むすび

本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号に該当するものであり、同法43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。

3 本件商標の取消理由

商標権者に対して、平成21年9月2日付けで通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。

(1)引用商標の著名性について

甲第2号証ないし甲第35号証、甲第37号証ないし甲第53号証、甲第67号証、甲第68号証及び甲第70号証ないし甲第81号証によれば、以下の事実を認めることができる。

ア 申立人は、1993年にカナダで設立されたモデム、ソフトウエア製品の製造、販売を手がける企業であり、1997年より製造、販売された商品「モデム」について、「AirCard」の欧文字からなる商標(以下「引用商標」という。)を、「AirCard210」、「AirCard300」、「AirCard510」、「AirCard555」、「AirCard860」などのように使用してきた(甲第2号証ないし甲第9号証)。

イ 引用商標を使用したモデム(以下「申立人商品」という。)は、2002年の時点において、世界27カ国に供給されたこと(なお、アジア太平洋地域における供給先は、中国、シンガポール、香港、タイ、ニュージーランド、オーストラリアである(甲第8号証)、申立人の総収益は、2007年が439,903,000米ドルであり、申立人商品は、そのうちの71%を占め、また、本件商標の登録出願及び登録査定の時点である2008年の申立人の総収益は、567,308,000ドルであり、申立人商品は、そのうちの73%を占めた(甲第10号証ないし甲第12号証)。また、申立人商品の出荷台数は、2007年が2,540,000台(北アメリカ地域が1,570,000台、西ヨーロッパ地域が810,000台、アジア太平洋地域が160,000台)であり、2008年が1,450,000台(北アメリカ地域が1,110,000台、西ヨーロッパ地域が220,000台、アジア太平洋地域が120,000台)であった(甲第13号証)。

ウ 申立人商品は、2005年及び本件商標の登録査定前である2008年5月から10月にかけて、米国で発行された新聞や雑誌に相当程度掲載され、また、2005年にカナダで発行された新聞や雑誌にも掲載された(甲第16号証ないし甲第53号証)。

エ 申立人商品は、我が国において、インターネットを介して、以下のように紹介された。

(ア)「Tech−On」と称するウェブページに「ついに始まる『3.5世代』、Sierra WirelessがHSDPA用カードを米国で発売」のタイトルの下、「AirCard860」に関する記事が2005年12月12日付けで掲載され(甲第67号証)、また、「米Sierra社、米Casio社のPDAに無線カードを独占供給へ」のタイトルの下、「AirCard」に関する記事が掲載されたが、文末には、「今回の合意は、Casio社が北米で販売する2機種の端末に限られている」旨の記事が2001年10月26日付けで掲載された(甲第68号証)。

(イ)「PRWire/共同通信PRワイヤー」と称するウェブページに「富士通PCに広域無線通信機能 シエラワイヤレスのエアカード」のタイトルの下、「広域無線通信製品メーカーであるカナダのシエラワイヤレス社は6日、同社のエンベデッド・モジュールでエアカード・イネーブルド(AirCard Enabled、商標)を搭載する富士通製ノートブックPCが、日本のNTTドコモに認定され、同社ネットワークで利用可能になったと発表した。富士通の新製品FMV−BIBLO・LOOX・T70XNXノートブックは、シエラワイヤレスのMC8780統合エンベデッド・モジュールによって、モバイル・ブロードバンド・ネットワークの最新技術を提供し、どこに旅行しようとも顧客が必要とする情報への接続ができるようになる。これは日本で提供される初のエアカード・イネーブルド(商標)搭載ノートブックPCであり、この利用開始はNTTドコモが新しいHSDPA(高速通信規格のハイスピード・ダウンリンク・パケット・アクセス)で、顧客が月間定額契約でデータサービスを購入できる『定額データプランHIGH−SPEED』の商用利用と時期を合わせている。」旨の記事が2007年11月6日付けで掲載された(甲第70号証)。

(ウ)「マイコミジャーナル」と称するウェブページに、SonyElectronicsが、CLIE PEG−S320及びノートPC向けの向けのワイヤレスサービス「MYLO(My Life Online)」を米国で開始するに当たり、ワイヤレスモデムに申立人製の「AirCard」を使用する旨の記事が2001年9月11日付けで掲載され(甲第71号証)、また、英国大手携帯電話事業者O2の子会社であるManx Telecomは、英国マン島で欧州初のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の商用サービスを開始するに当たり、HSDPAデータ通信カードに申立人製の「AirCard850」を使用する旨の記事が2005年11月10日付けで掲載された(甲第72号証)。

(エ)「nikkei BP net」のウェブページに「加シエラなど、企業向け無線セキュリティ・ソリューション」のタイトルの下、申立人とイスラエルの企業が企業向け無線セキュリティ・ソリューションに関しての協力体制を敷くに当たり、「AirCard750」を用いる旨の記事が2002年12月12日付けで掲載された(甲第73号証)。

(オ)「ITpro」と称するウェブページに「米Dell、米AT&T Wirelessとの提携で携帯ネットを利用したインターネット接続を提供」のタイトルの下、「AirCard750」に関する記事が2003年6月25日付けで掲載された(甲第74号証)。

(カ)「japan.internet.com」と称するウェブページに「Webビジネス」のタイトルの下、Verizon Wirelessが商用3G移動体通信サービスを米国北東部において開始するにあたり、「AirCard555」を使用する旨の記事が2002年1月29日付けで、また、「携帯・ワイヤレス」の項に、申立人とIntelとが、統合ワイヤレスソリューションを開発するに当たり、「AirCard」を使用する旨の記事が2004年9月13日付けで掲載された(甲第75号証及び甲第76号証)。

(キ)「ITmediaニュース」と称するウェブページに、「Sprint、EV−DOサービスの提供開始」のタイトルの下、米携帯キャリアのSpritが米国主要60都市で、EV−DOでの高速無線サービスを開始するにあたり、「AirCard580」を使って利用できる旨の記事が2005年7月8日付けで掲載された(甲第77号証)。

(ク)「InfoCom Newsletter/海外情報」と称するウェブページに「世界の移動パーソナル通信T&S」のタイトルの下、「ベライゾン・ワイヤレス、米国初の1XRTTの商用サービス『Express Network』を開始」、米国北東部を対象とするサービスの対応端末として、他社製品と申立人製の「AirCard555」の2機種が提供された旨の記事が2002年3月号に掲載された(甲第78号証)。

(ケ)「redbend software」と称するウェブページに、申立人についての記事の掲載があり、申立人は、携帯ブロードバンド・ネットワークに接続できる「AirCard」モデムのメーカーである旨の記事が2008年3月31日付けで掲載された(甲第79号証)。

(2)前記(1)で認定した事実によれば、申立人は、その業務に係る商品「モデム」について、「AirCard」(引用商標)の文字を基幹とした商標を1997年より使用し、2002年の時点においては、世界27カ国で販売され、特に本件商標の登録出願前の2007年、2008年の北米での販売台数は突出しており、その売上高も高額に上ること(甲第11号証及び甲第12号証)、本件商標の登録出願前から登録査定前にかけて、米国やカナダで発行された新聞、雑誌に、申立人商品に関する記事が相当程度掲載されていること(甲第16号証ないし甲第53号証)、及び我が国においても、上記のように、インターネットを介して申立人商品が日本語で紹介されていること(甲第67号証、甲第68号証、甲第70号証ないし甲第79号証)が認められる。

そうとすれば、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の時には、既に、我が国をはじめ米国及びカナダにおいて、電気通信機械器具、電子応用機械器具等の商品並びにインターネット関連の役務の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものとみるのが相当である。

(3)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、「AIRCARD」の欧文字を横書きしてなり、その構成文字に相応して「エアカード」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

引用商標は、「AirCard」の欧文字を横書きしてなり、その構成文字に相応して「エアカード」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

そこで、本件商標と引用商標を比較すると、両者は、一部に大文字と小文字の差異を有するとしても、同一の綴り文字よりなる点において、外観上類似するものであり、「エアカード」の称呼を共通にするものであって、いずれも特定の観念を生じないものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、観念においては比較し得ないものの、称呼を共通にし、外観を類似にする互いに相紛れるおそれのある商標といわなければならない。

そして、本件商標の指定商品中「電子通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」は、申立人商品と同一又は類似するものである。

また、引用商標が、申立人商品を表示する商標として、本件商標の登録出願(平成20年10月16日)の前より、取引者・需要者の間に広く認識されていたものであること上述のとおりである。

したがって、本件商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、その登録出願前から、需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品に類似する商品について使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第15号について

引用商標が本件商標の登録出願時より前に申立人の商品を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていたことは前記2の認定のとおりであり、また、本件商標と引用商標とが類似することは前記3の認定のとおりである。

そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品中「電子通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」以外の商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、引用商標を連想又は想起し、その商品が申立人又は同人と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(5)商標法第4条第1項第19号ついて

引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、我が国をはじめ米国及びカナダにおいて、電気通信機械器具、電子応用機械器具等の商品並びにインターネット関連の役務の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであることは、前記2の認定のとおりであり、また、本件商標と引用商標が類似であることは前記3の認定のとおりである。

そして、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具等の商品の製造、販売及びこれらに関連する役務の提供を行う我が国有数の企業であって、申立人とは、いわば同業者といえる企業である。

そうとすれば、本件商標権者は、引用商標の存在を十分に知り得る立場にあったとみるのが自然である。

してみれば、本件商標権者は、本件商標の登録出願前より、申立人の商品を表示するものとして、我が国はじめ米国、カナダにおいて、電気通信機械器具、電子応用機械器具等の商品並びにインターネット関連の役務の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていた引用商標の存在を知りつつ、これが日本で登録されていないことを奇貨として、引用商標と類似する本件商標を先取り的に登録出願し、登録を得たものといわざるを得ないから、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標というべきである。

したがって、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(6)まとめ

以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号に違反してされたものである。

4 商標権者の意見

商標権者は、上記3の取消理由に対して所定の期間を経過するも、何ら意見を述べていない。

5 当審の判断

そして、上記3の取消理由中(3)、(4)の理由は妥当なものと認められるので、本件商標の登録は、この取消理由により、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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