Trademark Appeal Case
著名商標の類否と公益性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900080(T2009−900080/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5182025号商標(以下「本件商標」という。)は、「Photolympics」の欧文字と「フォトリンピック」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成19年8月20日に登録出願され、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同20年10月22日に登録査定、同年11月21日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同第7号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである。
第3 本件商標に対する取消理由(要旨)
1 登録異議申立人「コミテ アンテルナショナル オリンピック」(IOC、国際オリンピック委員会)の提出に係る甲各号証によれば、「Olympic(オリンピック)」の語(文字)は、オリンピック憲章に基づき開催されるオリンピック競技大会を組織・運営するIOC及びその承認のもとに大会を運営する各国オリンピック委員会(NOC)が営利を目的としない事業活動を表示するための標章であり、各国オリンピック委員会にその厳格な管理が委ねられているものである(甲第6号証)。IOCは、我が国においても、第41類の役務を中心に、「オリンピック」の文字からなる商標(登録第3275674号)、「OLYMPIC」の文字からなる商標(登録第4117280号)及び「THE OLYMPICS」の文字からなる商標(国際登録第787298号)を登録している(甲第2号証ないし甲第4号証)。
そしてまた、オリンピック憲章では、IOCの使命として、「スポーツを文化や教育と融合させる試みを奨励、支援する」ことが規定されており(甲第6号証)、IOCは、かかる規定に基づき、オリンピック競技大会に関連する様々な教育・文化活動を、オリンピック・ムーブメント(オリンピックの理念を具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動)の一環として世界的規模で行っており、「Olympic(オリンピック)」に係る各標章は、オリンピック競技大会に関連して行われる各種教育・文化活動においても広く用いられている。
我が国においても、オリンピック憲章第4章28の2.1(甲第6号証)におけるNOCの役割に関する規定に基づき、日本オリンピック委員会(JOC)は、オリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業の一環として、オリンピック競技大会に関連する各種教育・文化活動を日本国内で精力的に行っており、平成12年(2000年)から3回に亘り、全国各地の小・中学生や高校生を対象に、スポーツをテーマとする「写真コンテスト」である「JOCジュニアフォトオリンピック(JOC JUNIOR PHOTO OLYMPlC)」を開催している(甲第78号証ないし甲第99号証)。
2 しかして、本件商標は、前記第1のとおり、「Photolympics」の欧文字と「フォトリンピック」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるところ、その構成中の欧文字部分は、「Photo」と「olympics」の語を組み合わせ、ネーミングにおいて一般的に行われている表現手法(減量造語法)により、組合せ部分において重複する「o」の文字を省略したものと容易に理解されるところであって、全体として「写真に係るオリンピック」程の意味合いを認識させるものであり、「Photo」の文字部分は、単に「olympics(オリンピック)」に係る活動の対象を表したものと把握されるにすぎないものである。
加えて、上記1のとおり、日本オリンピック委員会(JOC)が開催する全国各地の小・中学生や高校生を対象に、スポーツをテーマとする「写真コンテスト」を、「JOCジュニアフォトオリンピック(JOC JUNIOR PHOTO OLYMPlC)」と称している事実がある。
そうとすれば、本件商標は、「olympics」の文字部分に格段に強い出所表示力があるものと認められるから、これに接する需要者は、「olympics」の文字部分から、オリンピック憲章に基づく著名な標章である「OLYMPIC」を想起し、記憶にとどめるものというべきであり、著名な「OLYMPIC」の標章と類似する商標といわなければならない。
3 以上のとおり、本件商標は、IOC及びJOCを含む各国オリンピック委員会が営利を目的としない事業活動を表示するための著名な標章である「OLYMPIC」の標章と類似するものであるから、本件商標が一私人の商標として営利のために使用されることは、IOCの権威を損ねるとともに、国際信義上からみても好ましくないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第6号に違反してされたものである。
第4 商標権者の意見 (要旨)
商標権者は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第6号に違反してされたものではないと申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、提出書類1ないし5を提出した。
1 株式会社丸冨士の代表取締役 久万重仁は、特定非営利活動団体 全日本福祉写真協会の代表者(理事長)である。当NPO法人は「ひきこもりよ、さようなら」「目指せ!世界のフォトリンピック」のスローガンのもと、障害者・高齢者の方を対象とした写真コンテスト等を実施している。
2 「フォトリンピック」の名称が、我々の目指す目的以外に使用されることを望まなかったゆえ、商標登録を実施した。ここで、特定非営利活動法人全日本福祉写真協会においては財産、収支の厳しい状況から商標登録の費用を、理事長久万重仁の経営する株式会社丸冨士にて負担することとした。その結果、商標権者は株式会社丸冨士となっている。
3 本件商標の構成は、「フォトリン―ピック:Photolym―pic」イメージであり、「OLYMPIC」の商標と類似することはないと考える。同様の使用方法は「ねんりんピック」などである。
4 特定非営利活動法人全日本福祉写真協会の行なっている、フォトコンテスト(本年度で第4回まで実施中)において「フォトリンピック」は、「JOC JUNIOR PHOTO OLYMPIC」と混同はまったく生じることはないと考えられる。
5 本件商標が一私人の商標として営利のために使用されることは、IOCの権威を損ねるとともに、国際信義上からみても好ましくないもの、との記述がなされているが、上記のように非営利特定活動法人の活動においての使用であり、仮にオリンピックを想起するようなことがあったとしても、この障害者・高齢者向けの写真コンテストは、IOCの権威を損ねるどころか評価されるべきものと考えられ、国際信義上もまったく問題ないといえる。
第5 当審の判断
1 本件商標についてした取消理由の通知(前記第3)は妥当であって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に違反して登録されたものである。
2 商標権者の主な意見について
商標権者は、「本件商標の構成は、『フォトリン―ピック:Photolym―pic』イメージであり、『OLYMPIC』の商標と類似することはない。また、商標権者の代表取締役が特定非営利活動団体である『全日本福祉写真協会』の代表者を務めているところ、当該協会が行なっている『フォトリンピック』は、JOCが開催する『JOC JUNIOR PHOTO OLYMPIC』と混同はまったく生じることはなく、仮にオリンピックを想起するようなことがあったとしても、この障害者・高齢者向けの写真コンテストは、IOCの権威を損ねるどころか評価されるものであって、国際信義上もまったく問題ない」旨主張する。
しかしながら、商標権者による本件商標の出願に至る経緯があり、そして、「全日本福祉写真協会」が「フォトリンピック」を行っているとしても、その構成態様からして、本件商標は、前記第3で認定したとおりであって、また、IOCの権威を損ねるか否か、あるいは、国際信義上の問題があるか否かは、その構成態様に照らし客観的に判断されるべきものである。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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