Trademark Appeal Case
地名と普通名称の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−4173(T2009−4173/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「中津川モンブラン」の文字を標準文字により表してなり、第30類に属する「和菓子,洋菓子,パン,コーヒー及びココア,茶」を指定商品として、平成19年6月19日に登録出願されたものである。そして、指定商品については、原審における同20年4月14日差出しの手続補正書によって、第30類「モンブランケーキ,モンブランケーキ風洋菓子」に補正され、さらに、当審における同21年2月26日付け提出の手続補正書によって、最終的に、第30類「岐阜県産の栗あんを使用したモンブランケーキ,岐阜県産の栗あんを使用したモンブランケーキ風洋菓子」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、岐阜県南東部に位置し、栗の産地としても知られている都市の名称であり、商品に使用した場合には、その産地、販売地を表すものと認められる『中津川』の文字と、本願指定商品との関係では、栗のピューレを使用した菓子名を表すものと認められる『モンブラン』の文字とを、標準文字により一連に『中津川モンブラン』と書してなるものであるから、これをその指定商品中『モンブランケーキ』に使用しても、『岐阜県中津川市で製造、販売されたモンブランケーキ,岐阜県中津川市産の栗を使用したモンブランケーキ』等であると認識するにすぎず、単に、その商品の産地、販売地、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。なお、出願人は、意見書において、本願商標が出願人の業務に係る商品を示すものとして周知である旨述べ、その補足資料として甲第38号証乃至第121号証を提出しているが、使用による識別性により商標法第3条第2項を適用して登録が認められるのは、原則として、出願人に係る商標及び指定商品と、使用に係る商標及び商品とが同一のものに限られるところ、提出された資料によると、本願の指定商品中には、使用に係る商品「モンブランケーキ」以外の商品が含まれているものと認められ、また、該商品は、出願人の名称である「レニエ」又は「REGNIE」の文字等により識別されているというべきであるから、本願商標それ自体が使用された結果、自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分といえず、出願人の主張は採用することができない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、前記のとおり、「中津川モンブラン」の文字を書してなるものであるところ、その構成中「中津川」の文字は、「広辞苑第六版(株式会社岩波書店)」には、「岐阜県南東部の市。もと中山道の宿駅で、木曾谷の入口。」と記載され、「大辞林第三版(株式会社三省堂)」にも、「岐阜県南東端、木曾川中流域にある市。もと中山道の宿場町。」と記載されている。
また、該構成中「モンブラン」の文字は、「広辞苑第六版(株式会社岩波書店)」には、「ケーキの一種。細いひも状に絞り出した栗のピューレと泡立てた生クリームで作る。」と記載され、その他の辞典類にも、「大辞林第三版(株式会社三省堂)」に「洋菓子の一。栗を裏濾ししたものを焼いたメレンゲなどの上に絞り出し、上に泡立てたクリームを飾ったもの。」と、「コンサイスカタカナ語辞典第3版(株式会社三省堂)」に「洋菓子の1。栗を裏濾ししたマロン-クリームを、焼いたメレンゲなどの上に絞りだし、泡立てたクリームを飾ったもの.」等と記載されている。
そして、岐阜県中津川市では栗の栽培が行われ、当該地域の特産品として位置づけられており、また、当該地域で収穫された栗を使用した菓子などが製造、販売されている事実が認められる。
このことは、例えば以下の新聞記事及びインターネットホームページ情報により、その一端をうかがい知ることができる。
(1)2009年10月15日付け 朝日新聞名古屋夕刊 7頁には、「(元気東海つくる)栗きんとん とろける秋味、素早く絞る 【名古屋】」の見出しのもと、「中山道の宿場町、岐阜県中津川市は、長野県小布施町や兵庫県の丹波地方に並ぶ栗の産地。栗きんとんの発祥の地でもある。・・中津川は、京都、金沢に並ぶ菓子処(どころ)でもある。」との記載がある。
(2)2008年11月9日付け 日本農業新聞 5頁 社会12版には、「栗殻使い堆肥開発 次は加齢臭抑制せっけん/恵那農高」の見出しのもと、「同校のある恵那市と隣接する中津川市は栗の一大産地。栗きんとんなどの製造工程で栗殻が大量に発生し、廃棄に頭を悩ませてきた。」との記載がある。
(3)2007年4月26日付け 中日新聞 朝刊20頁 東濃A版には、「東美濃協議会が45周年大会 クリ産地振興 誓い新た」の見出しのもと、「恵那、中津川両市のクリ栽培農家らで組織する東美濃栗振興協議会の四十五周年記念大会が二十五日、恵那市のホテルで開かれた。会員と行政、JA関係者ら計約百五十人が出席し、クリ産地としての地域振興への誓いを新たにした。東美濃地域では大正時代からクリの栽培が始まったとされ、農家らが一九六二(昭和三十七)年に協議会を設立。現在は約百七十人が計約九百ヘクタールの農地で栽培し、近年は地元の菓子業者に『超特選栗』を出荷している。」との記載がある。
(4)2003年9月2日付け 産経新聞大阪夕刊 7頁には、「【デパ地下 素通りできないこの一品】 ミルフィーユの『美濃栗のモンブラン』」の見出しのもと、「一見ごく普通のモンブランながら、つくりは手が込んでいる。カスタードと生クリームを巻き込んだロールケーキの台に、渋皮つきの栗のクランチを混ぜたクリームをしぼり、ドーム状にしたスポンジケーキをかぶせる。その上から栗のクリームをたっぷりしぼってトッピングした。岐阜・中津川周辺の和栗を使っているのがポイント。『美濃の栗は、ほっこりした味わいが豊かなんです』・・甘さ控えめで、栗の風味が満喫できる。」との記載がある。
(5)2003年6月10日付け 百歳元気新聞には、「らいらっく人生学:食の黄昏」の見出しのもと、「たまたま吉田健一氏の『私の食物誌』を再読した。思いつくまま日本各地の『旨いもの』を、『長浜の鴨』『神戸のパン』『飛島の貝』『近江の鮒鮨』......『中津川の栗』『高崎のハム』といった風に、格別に調べたり、考証したりせず、記憶と印象だけを頼りに記している。」との記載がある。
(6)インターネット上の「岐阜県中津川市」のホームページにおいて、「特産品の振興について−中津川市」の見出しの下、「栗」、「中津川市では、栗きんとんなどの栗を使った和菓子が有名ですが、栗の栽培も盛んに行われています。東美濃栗振興協議会が中心となり、超低樹高栽培などをとりいれた栽培を行うとともに、超特選栗を栽培し、地元菓子業者等へ出荷しています。また、今後新規に栽培する人を支援するための講習会等も開催されています。 」との記載がある。
(http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/wiki/%E7%89%B9%E7%94%A3%E5%93%81%E3%81%AE%E6%8C%AF%E8%88%88%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6#.E6.A0.97)
(7)インターネット上の「岐阜県中津川市」のホームページにおいて、「栗・トマト・なす栽培 見学ツアー参加者募集−中津川市」の見出しの下、「地域特産の栗・夏秋トマト・夏秋なすを栽培してみようと思う方を対象として『栽培見学ツアー』を開催します。」との記載がある。
(http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/news/003802.php)
(8)インターネット上の「岐阜県中津川市」のホームページにおいて、「創作『中津川料理』募集−中津川市」の見出しの下、「中津川市には、栗、蕎麦、川魚、きのこなど、全国に誇る多彩な食材があります。こうした食材を活用し、健康・癒しのニーズにマッチした『創作料理』やアレンジした『伝統料理』を募集します。」との記載がある。
(http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/news/003335.php)
(9)インターネット上の「環境goo」のホームページにおいて、「中津川観光栗園いが栗の里−岐阜−観光農園・農場−日本の農業−伝統を体験−日本の農業−環境goo」の見出しの下、「毎年1か月のみ開催する味覚狩り。丹沢、出雲、筑波など、約300本の木の栗拾いが楽しめる。生栗のみやげも付き、自宅でも中津川の栗を満喫できる。栗おこわの予約販売も行う。」との記載がある。
(http://eco.goo.ne.jp/local/spots/agri/detail.html?cat=l2&iPref=21&doc_id=21011107&sPref=%B4%F4%C9%EC)
(10)インターネット上の「岐阜県中津川ちこり村」のホームページにおいて、「岐阜県中津川ちこり村−中津川市の観光案内」の見出しの下、「県内有数の栗の産地として知られ、特に栗きんとんなどの栗菓子が有名な中津川。」との記載がある。
(http://chicory.saladcosmo.co.jp/showplace.html)
そうとすれば、「中津川」と「モンブラン」を組み合わせた「中津川モンブラン」の文字よりなる本願商標は、その指定商品との関係において、「岐阜県中津川市産の栗を使用したモンブランケーキ,岐阜県中津川市で製造又は販売されたモンブランケーキ」程の意味合いを容易に理解、認識させるものである。
してみれば、本願商標をその補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が例えば「岐阜県中津川産の栗あんを使用したモンブランケーキ,岐阜県中津川市で製造又は販売されたモンブランケーキ」等であること、すなわち、商品の産地、販売地、品質を表示したものと認識するにとどまるものであって、自他商品の識別標識としては認識し得ないものというべきである。
なお、請求人は、モンブランケーキ等の原材料の中で栗を特別に扱う理由はないと主張しているが、例えば「お菓子の基本大図鑑 ガトー・マルシェ(株式会社講談社発行)」におけるモンブランの作り方の紹介(168頁)で、「栗のペーストは旬の生栗を使い、洋酒や香料などは加えず、栗本来の風味を最大限に生かします。」と記載されているほか、請求人が取り扱うモンブランケーキについても、「新栗で楽しめるのは、旬のこの時期だけです。」、「仏産の焼栗のペーストをシェフが気に入り、パリのモンブランに仕上げた・・」(いずれも原審での提出に係る甲第48号証)などと紹介するなど、モンブランケーキの原材料として栗を重要視している実情がある。
また、請求人は、「中津川」について、川の名称でもあることや、栗きんとんの産地として知られているもので栗の産地として知られているものではないことも主張している。しかしながら、「中津川」は、上述のとおり、岐阜県南東部に位置する中津川市を指す語であって、江戸時代から中山道の宿場として栄えたことで知られ、恵那山の麓に広がる自然に恵まれた土地から産出された「栗」を使った食文化の一つとして「栗きんとん」の発祥の地としても知られている。そうとすれば、栗を使用した菓子に「中津川」の文字を使用した場合、むしろ、栗の産地である中津川市を認識するものとみるのが相当である。
さらに、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標も識別力を有する旨述べているが、請求人が主張する過去の登録例に係る商標は、本願商標とは、その構成態様や指定商品、判断時期が相違するものであって、本願とは事案を異にするものであるところ、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項の規定に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであるから、それらの登録例に前記認定が左右されるものではない。
以上のとおり、請求人のいずれの主張も採用することができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、原審において、証拠方法として甲第38号証ないし甲第121号証を提出して、「中津川モンブラン」なる本願商標は、使用によって自他商品の識別性を獲得しているので、商標法第3条第2項に該当する旨主張している。
そこで、本願商標が当該条項の要件を具備するに至っているか否かについて、以下、検討する。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条は、同条第1項第1号ないし第6号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第3条第1項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けことができる。」とされている。
また、知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10441号判決(判決日 平成19年3月29日)において、「商標法3条2項は、商標法3条1項3号等に対する例外として、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』は商標登録を受けることができる旨を規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として長期間継続的かつ独占的に使用し、宣伝もしてきたような場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は乏しいということができるから、当該商標の登録を認めるというものであると解される。そして、このような商標法3条2項の趣旨からすると、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるための要件は、1.実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、2.出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、であると解される。」旨判示されている。
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。
(2)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
請求人により提出された証拠資料を総合判断するに、請求人は、愛知県名古屋市内に菓子店を出店し、本願商標を商品「モンブランケーキ」について使用していること、情報誌やウェブサイトの洋菓子に関する情報等に、本願商標に関する情報が掲載されていることが認められるものである(原審における平成20年4月16日付け提出の手続補足書に係る甲第38号証ないし甲第48号証、甲第50号証、甲第52号証ないし甲第62号証、甲第64号証ないし甲第67号証、甲第69号証、甲第72号証ないし甲第115号証。以下、単に「甲第○○号証」という。)。
また、本願商標に係る商品を百貨店で開催される催し物に出品している事実も認められ(甲第63号証、甲第68号証)、請求人に係る商品が地方へ配送されている事実も認められる(甲第116号証ないし甲第120号証)。
さらに、テレビ放送における洋菓子に関する情報等で、本願商標に関する情報が紹介されている事実も認められる(甲第70号証、甲第71号証、甲第121号証)。
しかしながら、証拠資料からすると、請求人が、本願商標を商品「モンブランケーキ」について使用し、販売を行っているのは、愛知県名古屋市内の店舗・催し物会場にすぎず、甲第116号証ないし甲第120号証によれば、請求人に係る商品が宅配によって販売されてもいるとはいえ、その数量は決して大きくはなく、配送先も主に愛知県及びその近県を中心とするものである。
また、原審における平成20年4月14日差出しの意見書に、12年程前に使用を開始し、当該ケーキが年間おおよそ10万個販売されている旨の記載、平成20年4月16日付け手続補足書の甲第38号証に「10年前の発売以来1日600個を販売することもある・・」との記載、及び同甲第41号証に「15年以上愛され続ける・・」との記載などはみられるものの、請求人の提出にかかる資料を総合的にみても、本願商標の使用開始時期及び使用期間が必ずしも明確でなく、当該商品の販売数量を裏付ける取引資料も充分でない。
さらに、本願商標に関する雑誌等での情報も、掲載雑誌の頒布地域・頒布数、テレビ放送の放映地域・放映時期等が明らかでなく、全国の一般需要者が接する機会が多いとは認定することができない。
さらにまた、請求人自らが、本願商標について、一般需要者が接する機会が多いと認められるテレビや一般紙等の大衆向けマスメディアにおいて、テレビCM等の宣伝・広告を行っている事実も認めることができない。
加えて、本願商標は、前記のとおり、「中津川モンブラン」の文字を書してなるものであるところ、請求人がその指定商品について使用した結果、使用により識別性を獲得しているとして原審において提出した甲第38号証ないし甲第121号証に表示された使用商標は、出願人に係る店舗「レニエ(REGNIE)」と共に「中津川モンブラン」が紹介されているものがほとんどであるから、「中津川モンブラン」のみで、使用による識別性を獲得しているとは認められない。
(3)まとめ
したがって、請求人が提出した証拠によっては、本願商標が、その指定商品に使用された結果、取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないものである。
第4 結語
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同条第2項の要件を具備しないものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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