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Trademark Appeal Case

称呼類似と商標の要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2008−27846(T2008−27846/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第9類「溶液中のコロイド粒子の表面電位(ゼータ電位)・粒径および粒径分布を測定するための測定装置」を指定商品として、平成19年7月30日に登録出願されたものである。

第2 引用商標

原査定において、本願の拒絶の理由に引用した国際登録第785690号(以下「引用商標」という。)は、「ELS」の欧文字を書してなり、2002年(平成14年)3月28日にドイツ連邦共和国においてした商標出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して同年7月25日に国際商標登録出願し、第9類「Measuring apparatus; monitoring apparatus; testing apparatus, not for medical purposes; automatic switching apparatus (for telecommunication).」を指定商品として、平成16年1月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 当審の判断

1 本願商標と引用商標の類否について

(1)本願商標は、別掲のとおり、「ELS」の欧文字を表し、その下部に「OTSUKA ELECTRONICS CO.,LTD.」の欧文字を配し、それらの文字の右側に「Z」の欧文字を書してなるものである。

そして、本願商標の構成中「ELS」の文字は、籠文字によりやや斜めに書してなり、その文字幅におさまるように「OTSUKA ELECTRONICS CO.,LTD.」の文字をごく小さく表してなり、両文字の右側に、両文字の横縦幅におさまる大きさで「Z」の文字をやや幅広のゴシック体の黒文字で大きく表してなるものである。

また、本願商標を構成する「ELS」の文字及び「Z」の文字の大きさは、「OTSUKA ELECTRONICS CO.,LTD.」の文字の大きさのそれぞれ約8倍、10倍で書してなるものである。

(2)そして、本願商標の構成中の「ELS」の文字部分は、上記のとおり、本願商標の構成中左側より中央部にかけて表してなるものであり、かつ、「ELS」及び「Z」の文字部分は、その文字の書体及び大きさ等を異にするものと認められるために、両文字を不可分一体にのみ認識されなければならない特段の理由も見出し得ないものと判断するのが相当である。

この点について、例えば「商標はその構成部分全体によつて他人の商標と識別すべく考察されているものであるから、みだりに、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定するがごときことが許されないのは、正に、所論のとおりである。しかし、簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によつて称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによつて簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである(昭和36年6月23日第二小法廷判決、民集15巻6号1689頁参照)。しかしてこの場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である。」(最高裁判所 昭和38年12月5日第一小法廷判決 昭和37年(オ)第953号)との判示がなされ、同旨の判例も存するところである。

よって、本願商標を構成する各文字部分は、その文字の書体、大きさ及び色を異にするものであるために、視覚上、分離して把握、認識されるものと認められ、それぞれの文字部分より称呼、観念が生じるものと判断される。

ところで、一般的に欧文字の1文字若しくは2文字は、各種商品の品番、規格等を表示するための記号・符号として、取引上普通に用いられている実情にあるということができるところ、このことは本願の指定商品の分野においても特段変わるところはないから、本願商標をその指定商品に使用した場合には、その構成文字中の「Z」の文字部分は、商品の品質、規格等を表示する記号・符号の一類型であるとして把握されるに止まり、自他商品の識別機能を有しない部分といえるものである。

以上を総合勘案すると、本願商標の自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「ELS」の文字部分より、「イイエルエス」及び「エルス」の称呼をも生ずるものとみるのが自然である。

他方、引用商標は、前記第2のとおり、「ELS」の欧文字を書してなるところ、これよりはその構成文字全体に相応して「イイエルエス」及び「エルス」の称呼を生ずるものである。

よって、本願商標と引用商標とは、「イイエルエス」及び「エルス」の称呼を共通にするものである。

(3)次に、本願商標及び引用商標の外観上の差異についてみると、本願商標は別掲のとおりの構成よりなり、引用商標は、前記認定のとおり「ELS」の欧文字を書してなる構成よりなるために、両商標は、その外観において明らかに異なるといえるが、他方、本願商標の構成中「ELS」の文字部分は、前記のとおり、本願商標の構成中、左側から中間部にあって顕著に表してなるものであり、その構成する綴り文字が同一であることから、外観上近似した印象を与えるものである。

(4)次に、本願商標及び引用商標の観念上の差異についてみると、商標の類否判断の要素としての観念とは、多くの取引者、需要者がその商標自体から直ちに一定の意義を想起させるものであることを要するものというべきであるところ、両商標において自他商品の識別標識として機能を有するものと認められる「ELS」の文字よりは、特段の意味合いを認識させるものとは認めることはできないため、一種の造語と理解されるが、観念上での明確な違いを有するものではないから、その違いにより、両者が別異のものとして明確に区別されるとはいえないものである。

(5)してみれば、本願商標と引用商標とは、外観において相違するものであるとしても、「ELS」の文字部分について同一であり、観念においては明確な違いを有するものではなく、「イイエルエス」及び「エルス」の称呼を共通にする類似の商標というべきである。

また、指定商品についても、本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。

したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 請求人の主張について

(1)請求人は、「本願商標は、その構成全体として右斜めに傾斜した見えない平行四辺形の枠にきっちり収まるよう配されている感があり、外観上一体的に表されているものである。そして、『ELS』の文字部分は白抜き文字であり、『Z』の文字部分はそれより大きく表された黒文字であるものの、両者は同じ傾斜、書体で表され、外観上の統一感を損なっていないため、『ELS Z』の箇所から一連の『イーエルエスゼット』の称呼が生じる。さらに、需要者がこの『ELS』を見る際には必ず『Z』が目に飛び込んでくるものであり、この『Z』の部分を無視して、需要者が本願商標を『ELS』の部分だけで捉え『イーエルエス』と略称することはない。なお、本願商標における『Z』は、その表し方が特徴的であり、商品の品番等をこのように表すことはなく、『Z』部分を省略して本願商標を称呼しなければならない理由はない。」旨主張している。

しかしながら、前記判示のとおり、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあること、そして、そのような場合においては、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されると判断されるものである。

また、本願商標を構成する「Z」の文字部分も、前記認定のとおり太い黒文字により書してなる態様にすぎないため、商品の品質、規格等を表示する記号・符号の一類型にあたらないと判断するべき理由はないものと認められる。

よって、前記認定のとおり、本願商標を構成する各文字部分は、その文字の書体及び大きさ等を異にするものであるために、視覚上、分離して把握、認識されるものと判断するのが相当であり、それぞれの文字部分より称呼、観念は生じるものと判断される。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(2)次に、請求人は証拠方法として資料1ないし資料3を提出し、「取引の実情において『ELSZ』をひとまとまりのペットマークとして使用し、本願商標を付した商品を『ELSZ series』等の記載をすることにより、『ELSZ』の4文字からなるブランドとしてのみ使用している」旨主張している。

しかしながら、請求人による「ELSZ」の実際の使用の態様について、請求人が証拠方法として提出した資料1(商品パンフレット)、資料2(請求人の総合カタログ)、資料3(請求人のホームページ)及び資料4(売上高および日本市場における推定シェアに関する証明書)について考察するに、資料1の表紙及び資料3の2頁目における「ELS」の文字は籠文字により、「Z」の文字はゴシック体によりそれぞれ書してなるが、両文字は同じ大きさにより書されているものと認められ、さらには、該資料1ないし資料3における上記以外の「ELSZ」の4文字の使用の事実については、本願商標の構成とは異なり、各文字の書体、大きさ及び色は同一であるために、資料4の事実をも含めて勘案することによって請求人の製造販売に係る商品が「ELSZ」シリーズと称されて市場において取引されている事実は認められるとしても、本願商標の構成態様及び自他商品の識別機能を有する部分は前記認定のとおりであるから、本願商標構成中の「ELS」の文字部分より称呼、観念が生じることはないと判断することはできない。

したがって、請求人の上記主張も、採用することができない。

(3)そして、請求人は、過去の審決例及び海外における登録例を挙げて本願商標も登録されるべきである旨を主張し、証拠方法として資料5ないし資料19(枝番号を含む。但し、資料13ないし資料16は平成20年4月10日付け意見書に添付した資料1ないし資料4をそれぞれ援用している。)を提出しているが、請求人が挙げる過去の審決例は、対比する商標の構成態様において本願商標とは異なるものである。また、商標の類否の判断は、当該出願に係る商標と他人の登録商標との対比において、個別、具体的に判断すべきものであり、過去の登録例等の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。

したがって、請求人の上記主張も、採用することができない。

3 結語

以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、これを取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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