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Trademark Appeal Case

一文字商標の使用識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2008−32900(T2008−32900/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成19年4月1日に登録出願、その後、指定役務については、原審における同20年1月30日付け手続補正書により、第35類「化粧品・歯磨き・せっけん類及び香料類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、商品・役務の種類・規格記号等として一般に使用される欧文字1字の『D』の文字を、普通に書してなる範囲を脱し得ない程度に書してなるにすぎないものであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 本願商標の商標法第3条第1項第5号の該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、アルファベットの一文字である「D」の文字を書してなるところ、該文字は、格別に特異な態様を用いて表されているものではなく、普通に用いられる方法の域を脱しない程度の態様で表されているものである。

そして、アルファベットの一文字は、それ自体簡単な構成の標章であり、商品の品番や役務の等級等を表す記号、符号として取引上普通に使用されるものであるところ、本願商標も、その一類型にすぎないものである。

してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標といわざるを得ないものである。

2 本願商標の商標法第3条第2項の該当性について

請求人は、平成20年8月4日付け上申書において、「本願商標は、請求人の子会社である株式会社ディシラ(以下『ディシラ』という)が、製造・販売している商品『化粧品、せっけん類』について、2005年7月の使用開始時から現在まで継続して使用し、かつ、本願商標を使用した商品の宣伝広告を継続的に行い、2004年度から2007年度における過去4年間の販売総額は、445億円に達している。してみれば、本願商標は、その使用により、取引者、需要者に広く知られるに至っているものであり、商標法第3条第2項の規定により、商標登録を受けることができる商標である。」旨主張し、その証拠資料として、資料1ないし資料6を提出している。

そこで、本願商標の同法第3条第2項の該当性についてみる。

(1)商標法第3条第2項について

商標法第3条は、同条第1項第一号ないし第六号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第三条第一項第三号から第五号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。

そして、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行 1173頁)によれば、「本条(商標法第3条)二項は、いわゆる使用による特別顕著性の発生の規定である。前述のように一項各号に掲げる商標は自他商品又は自他役務の識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが、三号から五号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をしうることにしたのである。」と説明されている。

また、知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)10441号判決(判決日 平成19年3月29日)(以下「判決例1」という。)において、「商標法3条2項は、商標法3条1項3号等に対する例外として、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』は商標登録を受けることができる旨を規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として長期間継続的かつ独占的に使用し、宣伝もしてきたような場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は乏しいということができるから、当該商標の登録を認めるというものであると解される。そして、このような商標法3条2項の趣旨からすると、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるための要件は、1.実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、2.出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、であると解される。」旨判示されている。

さらに、知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)10243号判決(判決日 平成20年3月27日)(以下「判決例2」という。)において、「商標法3条2項は、本来識別性がないものについて、現実の使用に基づいて例外的に商標登録を認めることから、その登録が認められる商標及び指定商品は、使用に係る商標及び商品と同一であることを要し、たとえ当該特定の商品の類似商品といえども使用されなかった商品についてまで同条同項の規定により登録を受けることができるというものではない。また、登録により発生する権利は、全国的に及ぶ独占権であることをも考慮すると、同条同項は、厳格に適用されるべきである。」旨判示されている。

そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。

(2)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて

判決例1で判示されているとおり、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるための要件は、1.実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、2.出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、である。

a 本願商標が、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であるかを認識することができるものであるかについて

請求人の提出による資料1ないし資料6について検討する。

資料1は、株式会社ディシラ「以下『ディシラ』という」のホームページの写しであり、その取り扱いに係る商品「化粧品」に、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

資料2(枝番を含む)は、ディシラの発行による商品「化粧品」に関するパンフレットの写しであり、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

資料3(枝番を含む)は、本願商標を使用した商品の「婦人画報」(アシェット婦人画報社発行)及び「きょうの料理」(NHK出版発行)に掲載された雑誌広告であり、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

資料4は、平成19年11月26日付け日本商業新聞に掲載された新聞広告であり、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

資料5(枝番を含む)は、ディシラの発行による商品「化粧品」のカタログであり、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

資料6(枝番を含む)は、報道関係者用に配布された商品「化粧品、せっけん類」に関するプレス資料であり、本願商標と同じ態様の標章が使用されている。

以上の資料を総合判断すると、本願商標は、ディシラがその取り扱いに係る商品「化粧品、せっけん類」に使用し、その商品に関する宣伝広告を雑誌や新聞により行っている事実は認められるものである。

すなわち、本願商標を実際に使用している者はディシラである。

そして、請求人とディシラは異なる法人であるところ、請求人とディシラが、同列会社である等に関し、なんら立証されていない。

してみれば、提出された資料からは、請求人が、本願商標を使用している事実については、認められないものである。

また、請求人は、本願商標を付した商品の販売額が2004年度から2007年度において、販売総額が445億円であることから、本願商標は、広く需要者等の間で知られている旨主張する。

しかしながら、商品の販売額について、客観的に把握できうる証拠の提出がない。

その上、請求人は、商品の販売額のみを提示し、商品の業界規模や、その販売額における市場占有率がどの程度であるのか等について、なんら証明し得る資料を提出していないことから、商品販売額のみをもってしては、本願商標が、需要者等の間に広く知られているものであるとは、判断し得ないものである。

そして、別掲2の新聞記事からすると、本願の指定役務に係る商品「化粧品」の2006年度における販売総額は1兆4992億円であるところ、前記上申書による、本願商標に係る同年度の商品販売額は112億円とされていることから、その市場占有率は、約0.7%程度であり、決して高いものとはいえない。

さらに、ディシラが、本願商標について、雑誌や新聞により広告を行っている事実は認められるものの、雑誌は、2誌程度にすぎず、かつ、新聞についても、業界紙にすぎないことから、提出された証拠資料からは、本願商標に係る商品について、需要者等に対し、広く宣伝広告を実施したものとは認めることはできない。

してみれば、本願商標が、取引者・需要者をして、請求人の業務に係る役務であることを認識することはできないものと判断するのが相当である。

b 出願商標と実際に使用している商標の同一性について

判決例2で判示されているとおり、商標法第3条第2項により、その登録が認められる商標及び指定商品は、使用に係る商標及び商品と同一であることを要するものであるところ、本願商標は、商品「化粧品、せっけん類」について、本願商標と同じ態様の標章が使用されていることは認めることができる。

しかしながら、請求人提出の証拠資料からは、本願の指定役務に係る商品のうち、「歯磨き,香料類,薬剤及び医療補助品」については、本願商標が使用されている事実について、なんら立証されていないことから、かかる商品については、本願商標の使用は、認められないものである。

してみれば、本願商標と同一の商標が、本願の指定役務中「歯磨き及び香料類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に実際に使用されているものとは認められないとみるのが相当である。

(3)まとめ

以上からすると、本願商標は、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であるかを認識することができるものとは認められず、かつ、その使用されている商標及びその使用に係る役務が同一とは認められないものである。

よって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。

3 結論

したがって、本願商標は商標法第3条第1項第5号に該当し、かつ、同

条第2項の要件を具備しないとした原査定は妥当であって、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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