Trademark Appeal Case
出願経緯の公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900280(T2009−900280/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
登録第5224486号商標(以下「本件商標」という。)は、「千葉市調理師会」の漢字を標準文字により書してなり、平成20年4月24日に登録出願され、第41類「調理に関する知識の教授,調理に関する研修会・講演会・講習会の企画・運営又は開催,調理に関する検定試験及びそれに関する模擬試験の企画及び実施,食環境及び食文化に関する知識の教授,食環境及び食文化に関する研修会・講演会・講習会の企画・運営又は開催」を指定役務として、平成21年4月17日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第3号証を提出した。
(1)理由の根拠
平成21年1月16日付け拒絶理由通知書(甲第1号証)で引例された千葉市調理師会(会長「戸塚雄三」、以下「引用調理師会」という。)は存続しており、同通知書にあるとおりの理由から取り消されるべきである。
(2)引用調理師会の存否について
出願人(以下「商標権者」という。)は、平成21年3月2日付け意見書の中で、平成18年6月1日に引用調理師会が千葉県調理師会を退会した旨を記述しているが、引用調理師会の運営継続の有無には言及せず、あたかも退会時に引用調理師会が消滅したかの印象を与えている。
しかしながら、引用調理師会は現在も活動を継続している(甲第2号証及び第3号証)。
また、商標権者は、平成20年6月12日の財団法人千葉県調理師会千葉支部の総会において、千葉支部を干葉市調理師会に名称を変更して商標権者が会長に就いたと述べ、それによって商標権者が、前記拒絶理由通知書のただし書きにみられる「千葉市調理師会」と何らかの関係を有し、商標権を取得する法的な地位を有することを証明したときは、この限りではない。」の項目を満たす目的でるる述べているのであろうが、その前段に「商標権者が上記住所に所在する」と記載されており、上記住所とは千葉市花見川区南花園2−2−13にあり、商標権者が名称を変更したとうそぶいている「千葉市調理師会」は別の会であり、ただし書きの要件は満たされていない。
(3)引用調理師会の周知性について
引例された千葉市調理師会(引用調理師会)は、昭和40年以来44年間にわたり調理師会としての活動を続けてきた団体であり、県内外に知れ渡っている。
NTTの電話番号案内104に問い合わせても、ハローページを検索しても、社団法人千葉県調理師会と引用調理師会は存在するが、千葉県調理師会干葉支部と商標権者主張の千葉市調理師会は見当たらない。その証拠としてNTT発行のハローページの該当部分をコピーし、甲第3号証として提出する。
(4)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号の趣旨について
東京高裁平成14年(行ケ)第616号判決において、「商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。」と判示されているので、上記の観点を踏まえて本件を検討する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 本件商標自体の公序良俗について
本件商標は、前記1のとおり、「千葉市調理師会」の文字のみからなる商標であるが、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与える文字からなるものでなく、また、本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものでもなく、さらに、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められないものである。
イ 本件商標の登録出願の経緯について
(ア)申立人は、「商標権者が平成21年3月2日付け意見書の中で、平成18年6月1日に引用調理師会が千葉県調理師会を退会した旨を記述し、引用調理師会の運営継続の有無には言及せず、あたかも退会時に引用調理師会が消滅したかの印象を与えている。」と主張している。
しかしながら、同意見書及び同時に提出された各証拠によれば、「千葉支部は、平成18年6月1日に千葉県調理師会を退会する旨決議し、6月15日付けで千葉県調理師会大塚理事長に退会届(第10号証)を提出し、・・これに対し6月17日、千葉県調理師会は千葉市調理師会あてに前記退会届を受理した旨を通知するとともに、同日前記千葉県調理師会千葉支部代表増渕安彦あてに前記千葉支部設置についての届けを6月3日に受理した旨を通知した。・・そして、同年7月25日付で、千葉市保健福祉局健康部長および千葉市保健所長あてに新千葉支部設置についての報告書を提出し、その旨受理されている(第14号証)。」ものであるから、引用調理師会は、本件商標の出願日(平成21年4月24日)前、約3年前にはすでに消滅していたものと認められるものである。
そうすると、商標権者が、本件商標が登録されていないことを奇貨として、先取り的に引用調理師会の名称と同一の商標を登録出願し、登録を得たものと認めることはできない。
(イ)また、申立人は、「引用調理師会は、昭和40年以来、44年間にわたり調理師会としての活動を続けてきた団体であり、県内外に知れ渡っている。」と主張している。
しかしながら、申立人提出の全証拠及び申立の全趣旨を検討しても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用調理師会が、申立人の業務に係る役務を示す商標として、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認めるに足る証左はない。
そうとすれば、本件商標の商標権者が剽窃的に出願行為を行ったとすることは認められないものである。
その他、商標権者が、不正の目的をもって出願したものであると断じる証拠の提出もない。
(ウ)以上のとおりであるから、本件商標の登録出願の経緯について、著しく社会的妥当性を欠くものがあったとは認めることができないものであり、かつ、本件商標の指定役務についての本件商標の使用が、社会公共の利益に反するものであるともいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものでない。
(3)申立人の主張
ア 申立人は、甲第1号証で引例された引用調理師会は、存続しており、同号証にあるとおりの理由によって、本件商標は取り消されるべきであると主張している。
すなわち、申立人の主張は、本件商標と同一名称の団体が登録出願前から存続していることを理由とするものであるが、しかし、商標権者が本件商標を登録出願し、商標登録を得た経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあったといえないことは、前記(2)のとおりである。
イ むしろ、本件の場合、商標法第4条第1項第8号の該当性の有無の問題として検討されるべきものであるが、申立人は、明示的にその旨を主張していないところ、その主張内容は実質的に同第8号の主張を含むと解されるので、当審では念のため、その該当性について検討する。
(ア)該規定の内容は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く 。)」であるが、申立人の主張する理由は、「他人の名称」に該当するか否かの問題である。
(イ)団体が「他人」として保護を受けるためには、「法人格」を有する団体でなければならず、かつ、「法人の登記簿謄本又は抄本」などにより法人格を有する団体であることを立証しなければならないところ、本件においては、この点について、何ら立証するところがない。なお、NTT発行のハローページの掲載をもって法人証明とすることはできない。
(ウ)ただし、団体が権利能力なき社団であって、全国的な著名性を有する場合には、商標法第4条第1項第8号の規定により、その名称を含む商標の登録を阻止することができる。そして、ある団体が権利能力なき社団として保護されるには、団体としての組織を備え、多数原理が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体が存続し、その組織において、代表の方法、総会の運営、財産の管理など団体としての主要な点が確定しているものでなければならないものである。
(エ)しかしながら、本件については、その団体(引用調理師会)の周知・著名性の立証や、その団体に関する必要な情報・証拠などが一切提出されていない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号にも該当しない。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第8号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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