結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2009−300134(T2009−300134/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4921381号商標(以下「本件商標」という。)は、「シルバーヴィラ」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成12年11月1日に登録出願、第42類「老人の養護,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,はり,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導,衣服の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,タオルの貸与,布団の貸与」を指定役務として、同18年1月13日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
本件商標は、その指定役務について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
(1)被請求人が登録商標の使用証拠として提出した封筒類(乙第5号証〜第7号証)には、「シルバーヴィラ」の文字の右横隣に、直線で構成した特殊文字の「向山」という文字が印刷されている。また、これらの封筒類の最下部には、「株式会社さんわ」と住所の間に「シルバーヴィラ」と「向山」が前記と同じ字体で横一列に記載されている。被請求人が登録商標の使用証拠として提出した機関誌(乙第9号証、乙第10号証)には、表題に横一列に「シルバーヴィラ向山新聞」と標記され、発行欄には、横一列に「シルバーヴィラ向山」と記載されている。被請求人が登録商標の使用証拠として提出した看板(乙第11号証)には、「シルバーヴィラ」の右横隣に大文字で「向山」と記載されている。
(2)これらの証拠では、何れも「シルバーヴィラ」と「向山」は、横一連に、しかも乙第5号証〜第7号証、乙第11号証では、「向山」が「シルバーヴィラ」と比較して目立つように標記されており、したがって、これら証拠の外観上から被請求人の使用商標が「シルバーヴィラ」でなく、「シルバーヴィラ向山」であることは明白である。
(3)被請求人の使用商標「シルバーヴィラ向山」は、「シルバーヴィラ」に「向山」が付加して構成されるが、このうち、「シルバーヴィラ」については、取引者・需要者間において、被請求人のハウスマーク等被請求人の自他役務識別標識であるとの認識はない。
このことは、被請求人が有料老人ホームについて「シルバーヴィラ向山」しか営業しておらず、また、多角経営も行っていないことからも明らかであり、取引者・需要者間において、被請求人のハウスマーク等であると認識されるには、程遠い状態にある。
しかも、「シルバーヴィラ弘前」、「シルバーヴィラ城東」、「シルバーヴィラ大森」、「シルバーヴィラ岩井」等、「シルバーヴィラ」を冠した商標は、全国の介護施設で使用されており、「シルバーヴィラ」自体には、自他役務識別機能がないか、あるいは希釈化されている状態にある。このように、自他役務識別機能がないか、あるいは希釈化されている「シルバーヴィラ」について自他役務識別機能を発揮させるために、「弘前」、「城東」、「大森」、「岩井」等の文字を付加して自他役務識別機能を発揮させるようにしている。被請求人についても「シルバーヴィラ」に「向山」を付加させることにより自他役務識別機能を発揮させるようにしている。すなわち、被請求人の使用商標「シルバーヴィラ向山」は、取引者・需要者をして、単なる「シルバーヴィラ」と異なり、「向山にあるシルバーヴィラ」との観念を生じさせ、これにより自他役務識別機能を発揮させている。
(4)以上要するに、被請求人の使用商標「シルバーヴィラ向山」と登録商標「シルバーヴィラ」とは、外観上、観念上いずれを採用しても、商標法第50条第1項における社会通念上同一とすべきものでない。したがって、被請求人は、登録より3年以上登録商標を使用しておらず、その登録は、取り消されるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
答弁の理由
被請求人(商標権者)は、有料老人ホームの経営等を目的に昭和55年8月4日に設立した企業で、設立以来現在に至るまで継続して、東京都練馬区向山3−7−11において有料老人ホームを営業している(乙第3号証 会社登記簿謄本)。商標権者の有料老人ホームの名称は、乙第4号証の「1 施設の名称」のとおり、「シルバーヴィラ」と「向山」の間に一文字分の間隔をあけて表示した「シルバーヴィラ 向山」である(乙第4号証 有料老人ホーム設置届)。
「向山」は、地名で、老人ホームの所在地を表す。有料老人ホームは、本件商標の指定役務中の「老人の養護」に該当する。
(1)乙第5号証は、商標権者の使用済み封筒で、練馬郵便局の平成19年1月26日の消印がある。乙第6号証及び第7号証は、商標権者の未使用封筒で、乙第8号証は、これらの封筒の印刷会社が作成した発注証明書である。乙第8号証において、「スカイ」は、封筒の用紙の色を、「角2」は、角型2号の乙第5号証の封筒を、「長3」は、乙第6号証の封筒を、また、「長4」は、乙第7号証の封筒を、それぞれ意味する。このことから、乙第5号証〜第7号証の封筒が平成18年1月1日から20年1月31日の2年1か月間に印刷され被請求人に納品されたことが明らかである。また、この2年1か月の間に「角2」は、2回、「長3」は、3回納品されていることから、乙第5号証の封筒は、合計で1500枚前後、また、乙第6号証の封筒は、合計で6000枚前後の枚数がそれぞれ使用された事実が推定できる。
(2)乙第5号証〜第7号証の各封筒には、横長の黒い楕円形の中に白抜きで「長期滞在型ホテル」という文字が印刷され、その下方に「アプランドル」と「シルバーヴィラ」の文字が上下二段に並べて印刷され、さらに、その右横隣に、直線で構成した特殊字体の「向山」という文字が印刷されている。「アプランドル」は、被請求人が経営する自立型の有料老人ホームの名称であるが、介護主体の有料老人ホームの「シルバーヴィラ」と併せて、商標権者は、これらを長期滞在型ホテルと呼んでいる。これは、ホテルのような食事付きの快適な施設という意味を込めることにより、旧来の老人ホームから受ける暗いイメージを払拭したいという被請求人の老人介護に対する心意気を表したものである。また、これらの封筒の最下部には、発信人(商標権者)の「株式会社さんわ」の名称と住所「東京都練馬区向山3−7−11」が記載され、「株式会社さんわ」と住所の間には、「シルバーヴィラ」と「向山」が前記と同じ字体で横一列に記載されている。
(3)これらの封筒に印刷された「シルバーヴィラ」という標章は、標準文字とはやや異なる特徴的な書体ではあるが、本件商標とは、同一の文字から構成されているから、社会的通念上本件商標とは、同一の商標である(商標法50条1項)。また、これらの封筒は、老人ホームという「老人の養護」の役務を営む商標権者が自社の老人ホームの広告を兼ねて作成したものである。これらから、商標権者本人が自身の「老人の養護」の役務に関する広告に、本件商標と同一の商標を付して頒布した事実が明らかである。しかも、封筒を頒布したのは、日本国内であり、頒布の時期も乙第5号証の消印や乙第8の証明書から、本件審判請求の登録(平成21年2月10日)前より3年以内であることが明らかである。
(1)被請求人は、自社の老人ホームの入居者及びその家族を主な読者対象として、機関紙「シルバーヴィラ向山新聞 銀杏」を発行している。この機関紙は、1ページの大きさがA4版で全体が8〜12頁あり、過去3年の発行回数は、2006年が新春号、新緑号、盛夏号及び爽秋号の計4回、2007年が新春号、新緑号及び爽秋号の計3回、そして、2008年が新春号、新緑号及び爽秋号の計3回である。
そのうち、2006年新春号及び2007年爽秋号の第1頁及び最終頁をそれぞれ乙第9号証及び第10号証として提出する。乙第9号証及び第10号証の第1頁の最上段には、「70才以上の機関紙 シルバーヴィラ向山新聞」の文字が表示されている。
このことから、本件審判請求の登録前より3年以内に、老人ホームという老人の介護に関する広告に、本件商標と同一の「シルバーヴィラ」という標章を付して頒布した事実が明らかである。
また、頒布先は、入居者又はその家族であるから、当然ながら日本国内である。
(2)また、乙第9号証の第1頁には、「シルバーヴィラ」商標問題解決するとの記載があり、被請求人が「シルバーヴィラ」を昭和56年開設時に商標として命名した事実が記載されている。
さらに、乙第10号証の最終頁(第8頁)右上に、(於 シルバーヴィラ 向山1号館前)という写真があるが、これは、商標権者の老人ホームの玄関前で撮影したものである。この写真の中央に見学者の間に隠れながらも「シルバーヴィラ 向山」の看板が見える。
(3)乙第11号証は、「シルバーヴィラ 向山」の看板の写真で、前記の乙第10号証の写真と同じ看板を撮影したものである。なお乙第11号証の2枚の写真は撮影者の立ち位置が多少違うが、被写体の看板は、同じである。
このことから、乙第11号証の看板は、乙第10号証が発行された2007年秋の時点すなわち本件審判請求の登録前より3年以内に、被請求人の老人ホームの玄関前に実際に設置されていたことが明らかである。看板には、乙第5号証〜第7号証の封筒と同じ書体で「シルバーヴィラ」という文字が表示されている。
これらから、商標権者が本件商標と同一の「シルバーヴィラ」という標章を付した看板を自社の玄関前に設置して展示したこと、前記展示が商標権者の営む老人ホームという「老人の養護」の役務に関するものであること、及び、前記展示の時期が本件審判請求の登録前より3年以内であることが明らかである。ちなみに、乙第11号証の看板の「高令者専用長期滞在ホテル」とは、前記の長期滞在型ホテルと同様に、ホテルのような快適な老人ホームを理想とする被請求人の造語である。
被請求人(商標権者)は、本件審判請求の登録前より3年以内に、本件登録商標と同一の「シルバーヴィラ」を、「老人の養護」という役務に関する広告に付して、頒布し又は展示した事実が明らかである。
本件審判請求の取消対象役務は、本件登録商標の指定役務の全部であり、「老人の養護」という役務はそれに含まれるから、指定役務全部について不使用を理由に取消を求める本件審判請求は、理由がないことになる。
よって、本件審判請求は、成り立たない。
乙第3号証は、平成20年2月28日付け東京法務局練馬出張所発行の商標権者の「会社登記簿謄本」であり、昭和55年8月4日に被請求人会社が成立し、その業務目的に「有料老人ホームの経営」と記載されている。
乙第4号証は、東京都福祉局高齢福祉部福祉課長による平成8年9月5日付けの「有料老人ホーム設置届受理確認の証明書(写し)」であり、施設の名称として「シルバーヴィラ 向山」、届出日昭和56年12月28日との記載があり、該有料老人ホーム設置届が、同日に受理されたと証明されている。
乙第6号証及び乙第7号証は、商標権者の未使用封筒であるが、「長期滞在型ホテル」「アプランドル 向山」「シルバーヴィラ 向山」の文字とともに、商標権者の商号、各住所が記載されている。
乙第8号証は、印刷会社の「封筒出荷証明書」であるが、商標権者の発注明細(平成18年1月1日〜20年1月31日)により、スカイ長3、スカイ角2、スカイ長4の各封筒が発注されたことが確認できる。
乙第9号証及び乙第10号証は、機関誌「シルバーヴィラ向山新聞 銀杏」2006年新春号及び2007年爽秋号の写しである。
乙第11号証は、建物の玄関前の看板の写真2葉であり、「シルバーヴィラ 向山」の文字と、その下に「高齢者専用長期滞在ホテル」の文字が併記されている。
以上乙号証を総合すれば、商標権者は、遅くとも昭和56年12月28日付けで「有料老人ホーム設置届」を東京都福祉局に受理され、以降、東京都練馬区向山3−7−11において、「有料老人ホーム シルバーヴィラ 向山」の経営を開始し、本件審判請求の登録3年以内においても継続営業していると認められる。
そして、かかる「有料老人ホーム」の経営は、本件取消しにかかる「老人の養護」の役務を含むものと認められる。
次に、被請求人が「有料老人ホーム」の看板、封筒等に使用する「シルバーヴィラ 向山」(以下「使用商標」という。)は、本件商標と社会通念上同一であるか否かについて判断する。
使用商標は、「銀」等を意味し、本件の取り消しに係る役務との関係では「シルバー産業」「シルバーシート」等「老人」を指称する語として親しまれている「シルバー」と、「郊外の邸宅、屋敷、別荘」を意味するイタリア語「villa」から派生し「別邸、別荘」の意味で一般に使用されている「ビラ/ヴィラ」の文字とを結合し、全体として「銀(老人)の邸宅」程の意味合いを有する造語と認められる「シルバーヴィラ」の文字と、東京都文京区に位置する地名であって、「老人の養護」の役務を提供する施設の所在地を示す「向山」の文字からなるものである。
そうとすると、使用商標の構成中の自他役務の識別機能を果たしている部分は、「シルバーヴィラ」の文字部分であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一のものといわなければならない。
してみれば、商標権者は、本件商標と社会通念上同一の商標を、昭和56年12月から遅くとも平成20年2月に至るまで、「老人の養護」について、日本国内において、継続使用しているものと認められる。
なお、請求人は、「被請求人の提出した封筒類や看板には、『シルバーヴィラ』よりも『向山』が特殊文字や大きな文字で表示されており、機関誌にも『シルバーヴィラ向山新聞』と表示されていることからすれば、使用商標は『シルバーヴィラ向山』であることは明白であること、取引者、需要者においても「シルバーヴィラ」を被請求人のハウスマークと認識していないし、このことは、被請求人は『シルバーヴィラ向山』の経営のみで、多角的経営も行っていないことからも明らかであること、全国の介護施設において、『シルバーヴィラ弘前』、『シルバーヴィラ城東』、『シルバーヴィラ大森』、『シルバーヴィラ岩井』等『シルバーヴィラ』を冠した商標が使用されており、『シルバーヴィラ』自体には自他役務の識別機能がないか、希釈化されている状態にあることからすれば、本件商標と使用商標は社会通念上同一の商標とはいえない。」旨主張している。
しかしながら、使用商標の構成中「向山」の文字部分が顕著に表示され、また一体的に使用されているとしても、「向山」は「老人の養護」を提供する施設の実際の所在地を表示したものであり、「シルバーヴィラ」が造語であって、自他役務の識別機能を有すること前記のとおりである。
さらに、「シルバーヴィラ○○」のように「シルバーヴィラ」の片仮名文字に地名を表示した名称の老人の養護施設が「シルバーヴィラ 向山」の他に全国で十数カ所存在することは認められるが、これによって、「シルバーヴィラ」が「老人の養護施設」を表示するものとして一般に認識されているとはいえないばかりでなく、全国の老人の養護施設の総数を考慮すれば、かかる例を以て「シルバーヴィラ」が希釈化されているとまではいえない。
以上のとおり、請求人の主張は何れも採用できない。
したがって、被請求人は、その指定役務中の「老人の養護」について、本件審判請求前3年以内に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを証明したものと認められるから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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