Trademark Appeal Case
簡単・ありふれた記号図形の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2008−650025(T2008−650025/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第25類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2006年(平成18年)4月25日に国際商標登録出願されたものである。
そして、指定商品については、当審における2008年(同20年)8月22日に国際登録簿に記録された限定の通報の結果、第25類「Men’s and women’s apparel,namely,shirts,t−shirts,knit tops,skirts,pants,trousers,shorts,sweaters,jeans,vests,jackets.」となった。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、輪郭として普通に用いられる円の中に、欧文字の2文字『AG』を表したものであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であると認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。また出願人は、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものである旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出しているが、本願商標と同一の商標の使用例が少ないこと、及び指定商品中の一部の商品(「ジーンズ」)のみの使用証明しか提出されていないことよりすれば、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができるに至ったものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第5号について
本願商標は、別掲のとおり、円形の輪郭図形内にローマ文字の2字「AG」を普通に用いられる方法で書してなるところ、一般にローマ文字の2文字及びこれに数字やローマ文字をハイフンで連結させた表示は、本願の指定商品を含む各種の商品を取り合う業界において、商品の規格・型式及び品番を表示する記号・符号として、取引上普通に採択・使用されているという実情からすると、本願商標構成中のローマ文字部分は、商品の規格・型式及び品番を表示する記号・符号の一類型として理解、認識させるものとみるのが相当である。
そして、円、三角、四角等の図形は、一般に標章の輪郭を表す装飾図形として、商品のラベル等にしばしば採択・使用されるものであり、本願商標中の円形の輪郭図形部分も、商品のレベル等に採択・使用される、ありふれた円形の輪郭にすぎないといえる。
そうとすると、本願商標は、全体としてみても特殊な構成態様からなるものとはいえず、本願商標に接する取引者・需要者は、ありふれた円の輪郭内に商品の規格・型式、品番を表すための記号・符号の一類型を表示したものとして理解、認識するにすぎないとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本願商標は原審説示のとおり、商標法第3条第1項第5号に該当するものである。
2 商標法第3条第2項について
請求人は、原審及び当審において本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができるものであるから、商標法第3条第2項に該当する旨主張し、証拠方法として、原審において甲第1号証ないし甲第第24号証を、当審において甲第1号証ないし甲第3号証をそれぞれ提出している。
そこで、請求人の提出した証拠に基づき、本願商標が同法第3条第2項の要件を具備するか否かにつき検討するに、商標が使用により識別力を有するに至ったかどうかは、例えば、(1)実際に使用している商標並びに商品、(2)使用開始時期、使用期間、使用地域、(3)生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)、(4)広告宣伝の方法、回数及び内容、(5)一般紙、業界紙、雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容、(6)需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果等の事実を総合勘案して判断すべきものである。
かかる観点から、請求人の提出した甲各号証について以下検討する。
(1)実際に使用している商標並びに商品
商標法第3条第2項により使用による識別力を有するに至ったものとして商標登録を受けることができるのは、使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解されるところ、請求人の提出した甲各号証に示されている使用商標は、本願商標が単独で使用されているものは少なく、ほとんどが請求人の社名の略称と認められる「ADRIANO GOLDSCHMIED」の文字とともに使用されているものであるから、該文字と本願商標とを併せた、これらの使用商標の使用状況をもって、本願商標のみが独立して自他商品の識別標識としての機能を備えるに至ったものと認めるに足りるということは困難である。
また、同じく提出に係る甲各号証において、「AG」もしくは「エージー」の文字のみの使用例も見うけられるところ、これらの使用商標と本願商標は、その構成態様を異にするものであり、本願商標と同一のものとはいえない。
そして、本願商標と同一のもの(単独で使用されている)と認められるのは、以下の使用例である。
ア 原審提出甲第1号証は、トルコにおいて、2006年4月に発行された雑誌でAG製品が紹介された記事
イ 原審提出甲第3号証は、請求人のホームページ上のウェブページの写し(商品タグ)
ウ 原審提出甲第9号証は、英文雑誌でAG商品に関する記事
エ 原審提出甲第17号証は、インターネット上の通販ウェブページ
オ 原審提出甲第24号証は、インターネット上の楽天市場のウェブページ
カ 当審提出甲第2号証は、各商品の写真(商品タグ)
しかし、前記ア(原審提出甲第1号証)及びウ(原審提出甲第9号証)は、外国で発行された雑誌で外国語で記載されたものであって、我が国の一般需要者が容易に入手し購読できるとは考え難いものであるから、本願商標と同一の商標の使用状況を明確に把握することのできるものは、原審提出甲第3号証、同第17号証、同第24号証及び当審提出甲第2号証のみである。
(2)使用開始時期、使用期間、使用地域
請求人は、2000年に米国において、いわゆるAG製品の販売を開始(甲17号証)し、その後米国内及びヨーロッパ内のデパート・店舗において請求人の製品が販売されている旨述べている(甲1号証)が、我が国における本願商標の使用状況について確認できる資料はなく、本願商標と同一の商標の我が国における使用開始時期、使用期間、使用地域を把握することはできない。
(3)生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)
アラブ首長国連邦でのAG製品の販売記録(甲5号証)の他、我が国における売上高や営業の規模(店舗数、営業地域)についての資料はなく、我が国における本願商標と同一の商標を使用する商品の販売数、売上高、取り扱い店舗の数、営業の地域の内訳を把握することはできない。
(4)広告宣伝の方法、回数及び内容
請求人のホームページのウェブページの写し(商品タグ)以外に、本願商標と同一の商標を使用する商品に関する広告宣伝の方法、回数及び内容などを明確に確認できる資料はない。
(5)一般紙、業界紙、雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容
本願商標と同一の商標を使用する商品に関する一般紙、業界紙、雑誌等における記事掲載の回数及び内容などを明確に確認できる資料はない。
また、インターネットにおける記事の掲載は、通信販売業者による掲載例(原審における甲第17号証及び同第24号証)を確認することができたのみである。
以上を総合勘案すると、使用に係る商標は、本願商標と構成を異にするものが殆どで、同一と認められる商標の使用例は僅かなものであるとともに、本願商標を使用している商品の販売数量及び売上高、営業の規模(店舗数、営業地域)、商品の広告宣伝の方法、回数、内容等を具体的かつ客観的に把握できる証拠は何ら提出されていないといわざるを得ない。
そうとすると、請求人の提出に係る甲各号証をもってしては、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得したものとは認めることができず、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しているものとはいえない。
3 その他の請求人の主張について
(1)本願商標「AG」の識別性について
請求人は、本願商標の「AG」の文字部分は、通常の活字体で書したものでなく、全体的に丸みを帯びた特徴のある字体で書してなるもので、外周を囲む円輪郭と一体となって、ロゴとしてのデザイン上の顕著性が認められるべきである。特に、本願の指定商品であるジーンズ等のデニム製品は、ウエスト部分やポケットの縁に縫い付けられた小さなタグによって商品の出所を識別することが一般的で、商標以外の文字や模様等を付すことが少なく、本願商標のように単純なデザインの商標であっても商品の出所を識別することができる旨主張している。
しかし、本願商標の文字部分は、アルファベット「A」及び「G」の各文字のその特徴的な形象を脱しているものとはいえず、当該文字として認識される以上に、図案化されているものとは認められないから、いまだ普通に用いられる方法の域を脱しない程度の態様で表されているものと判断するのが相当である。
そうとすると、たとえデニム製品を取り扱う分野において、請求人の述べるような取引の実情があったとしても、本願商標は、極めて簡単、かつ、ありふれた標章のみからなるものであって、結局、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
(2)外国における登録例について
請求人は、本願商標と同一の商標が諸外国において自他商品識別力がないと判断されることなく登録となっている例(甲第3号証)をあげて、本願商標は、国際的に統一的に保護されるべきであると主張している。
しかし、各国の商標保護制度は、各国毎に独立しており、我が国と外国とでは法制度及び商取引の実情を異にするものであるから、外国の登録例があるからといって、そのことから我が国において直ちに本願商標を登録すべきとする根拠とはなり得ない。
以上のとおり、請求人の主張は、何れも採用できない。
4 結語
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するものとし、同法第3条第2項の要件を具備しないとした原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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