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Trademark Appeal Case

多数使用による識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2009−900345(T2009−900345/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5240411号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5240411号商標(以下「本件商標」という。)は、「アイ薬局」の文字を標準文字で表してなり、平成19年4月16日に登録出願、第35類「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第44類「医療情報の提供,調剤」を指定役務として、同21年4月22日に登録査定、同年6月19日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要点)

本件商標は、「アイ薬局」の文字を普通に用いられる方法で表示したものであり、薬局薬店などの業界において、「アイ薬局」や「あい薬局」は、薬局の名称として多数使用されている実情が見られるから、本件商標をその指定役務「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「医療情報の提供,調剤」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであり、かつ、該文字は、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1項の規定により、取り消されるべきである。

3 当審が通知した取消理由

当審において、商標権者に対し、平成21年12月2日付け取消理由通知書をもって通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。

本件商標は、上記のとおり、「アイ薬局」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものと認められるものである。

ところで、登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、「アイ薬局」の名称又は本件商標中自他役務識別力を有する部分である片仮名「アイ」部分を平仮名にしたものである「あい薬局」の名称は、全国33都道府県において178店舗有することが認められる。

そして、本件商標に係る役務は、通常、薬局において行われているものである。

そうとすると、本件商標をその指定役務に使用しても、取引者、需要者が特定の者の業務に係る「アイ薬局」のみを認識させるものとはいえず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというべきである。

なお、商標権者は、本件商標の出願の審査時において、兵庫、奈良、神奈川等において薬局を開局し、本件商標に係る役務を行っている旨主張しているが、「アイ薬局」若しくは「あい薬局」が、上記のとおり、商標権者以外の多数の者により全国各地で使用されていることよりすると、本件商標が商標権者に係る役務を表示するものとして、自他役務の識別標識としての機能を有するものとはいうことができない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見

(1)本件商標については、商標権者の子会社であるヤツデ株式会社が平成9年に神戸市三宮において薬局を開設し、その後、神戸、奈良、神奈川において本件指定役務について継続使用している。

(2)取消理由では、「登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、『アイ薬局』の名称又は本件商標中自他役務識別力を有する部分である片仮名『アイ』部分を平仮名にしたものである「あい薬局」の名称は、全国33都道府県において178店舗有することが認められる。」とされている。

しかしながら、甲第1号証を単純に計数すれば、179店舗掲載されているが、このうちデータが重複しているものが6件有り、更に、6件は商標権者(ヤツデ株式会社)のものであるから、母集団の数は167件である。

そして、これらの母集団のうち、「アイ(あい)薬局○○店」と記載されているものが89件にも上り、これらは、同一の営業主体のチェーン店等であると理解できるので、営業主体の数としては、認定数の半数に満たない78件が日本全国に存在するにすぎない(乙第2号証及び乙第3号証)。

なお、単に店舗数の数だけで自他役務識別力の有無が判断されるとしたら、ファーストフードの「マクドナルド」やコンビニチェーンの「ローソン」なども商標登録できないこととなって不合理であり、単なる店舗数ではなく、営業主体の数をもって判断すべきことは明白である。

(3)商標法第3条第1項第6号は、自他役務識別力の一般的な意味を明らかにしているものであるが、商標審査基準では、特定の役務について多数使用されている店名は本号に該当するものとしている。

商標審査基準に「多数使用」の定義はないが、不服2001-9639号に係る審決では、「『わかば薬局』の店名が本件指定役務について多数使用されているとは認められない」と判断されているが、iタウンページを用いて「わかば薬局」を調査すると、「わかば薬局○○店」を除いても、前記した「アイ薬局」の数の78件より多い87件のものが見られることから(乙第5号証)、「アイ薬局」が多数使用には相当しないことは明らかである。

以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。

5 当審の判断

(1)本件商標は、「アイ薬局」の文字よりなるところ、甲第1号証によれば、「アイ薬局」及びその片仮名部分を平仮名にしたにすぎない「あい薬局」の名称を使用する薬局薬剤店は、全国33都道府県において172件あることが認められる(甲第1号証のリスト中、「有限会社愛薬局」の1件及び重複している6件を除いた。)。

そうとすると、「アイ薬局」の名称は、本件指定役務の分野において、多数使用されているというべきであるから、本件商標は、その指定役務に使用しても需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない商標であるというべきである。

(2)商標権者は、自他役務識別力の有無は、店舗数ではなく、営業主体の数で判断すべきであり、「アイ薬局」は、商標権者を除くと、甲第1号証を見ても、78件が存在するにすぎないとして、本件商標は商標法第3条第1項第6号に該当しないと主張する。

しかしながら、特定の者の業務に係る役務等を表示するものとして、需要者等に広く知られているというような事情がなければ、「アイ薬局」等の文字から、必ず特定の事業主体を認識するとはいえないから、需要者は、営業主体の数にかかわらず、多数使用されている事実があるならば、特定の者の業務に係る役務等を表示するものであることを認識し得ないというべきである。したがって、本件商標が使用された場合に同号に該当するかについての検討における取引者、需要者の認識は、「アイ薬局」及び「あい薬局」の名称を使用する店舗数をもとに判断すべきであり、営業主体の数で判断すべきとし、かつ、商標権者が本件商標を使用する店舗数を除外して判断すべきであるとする商標権者の主張は、採用できない。

また、商標権者は、「わかば薬局」が商標法第3条第1項第6号に該当しないとされた審決例を挙げて、本件商標は、多数使用に当たらないと主張しているが、上記審決時の取引の実情は不明であるだけでなく、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの取引の実情などを勘案して、個別具体的に判断されるべきものであって、本願商標は、前記認定のとおり判断するのが相当であるから、上記審決例の存在をもって、前記認定が左右されるものではない。

よって、上記請求人の主張はいずれも理由がない。

(3)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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