Trademark Appeal Case
商標法4条1項7号該当性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900420(T2009−900420/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5253521号商標(以下「本件商標」という。)は、「高校24hour」の文字を標準文字で表してなり、平成20年12月26日に登録出願、第36類「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」を指定役務として、同21年7月7日に登録査定され、同年7月31日に設定登録されたものである。
2 本件登録異議の申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標権者について
商標権者は、申立人の保険代理店であるところ、平成20年12月、諸般の事情により、申立人から、保険「高校24hour」についての新規募集を中止された(甲第3号証及び甲第4号証)。
(2)保険「高校24」及び「高校24hour」について
保険「高校24」及び「高校24hour」のネーミングは、申立人の代理店11店によるミーテングにおいて決めた経緯があり(ただし、当時の資料は存在しない。)、10年以上前からパンフレット等において使用している。
このことは、例えば、過去のパンフレットのいずれも「高校24保険」、「高校24hour保険」の記載がなされていることからも明らかである。 すなわち、平成11年度版の「高校24保険」(甲第5号証)の記載、及び、同13年度版(明示はないが「募集期間平成13年4月8日〜」の表示から13年度であることは、明白である。)の「高校24hour保険」(甲第6号証)の記載からもうかがうことができる。
また、平成20年度版の「高校24hour保険」(甲第7号証)及び同21年度版の「高校24hour保険」(甲第8号証)の記載から、申立人が、「高校24hour保険」を現在も継続して使用していることがわかる。
なお、上記平成13年度版(甲第6号証)及び同20年度版(甲第7号証)には、いずれも保険代理店として商標権者の名称が記載されていることから、少なくとも同20年度までは、商標権者が募集業務を行っていたことが裏付けられるものである。
「高校24」及び「高校24hour」のネーミングの発案者は商標権者の代表者であったが、代理店全員で採択、決定したのであるから、商標権者には、「高校24hour」、「高校24」、「高校24hour保険」、パンフレットのデザイン等を独占的に使用する権利がないことはもちろんである。
(3)申立人に無断で商標登録出願したこと
上記(1)及び(2)で述べたとおり、商標権者は申立人の代理店であること、保険「高校24」及び「高校24hour保険」を長年取扱っていたこと、平成20年12月に諸般の事情により申立人から新規募集を中止されたこと、その直後の平成20年12月26日に、第36類「保険の引受け等」を指定役務として、本件商標を商標登録出願したことは明らかである。
そうすると、商標権者は、「高校24」及び「高校24hour保険」が申立人の保険の名称であることを知りながら、これらが登録出願されていないことを奇貨として、申立人に無断で自ら登録出願し、商標登録を得たといわざるを得ないものである。
また、仮に、本件商標の登録が維持されるならば、申立人の登録出願に係る商標「高校24」及び「東京海上日動 高校24」は本件商標を引用商標とする拒絶理由通知(甲第9号証の1及び2)により拒絶されることとなり、申立人は、長年正当に使用してきた「高校24」、「高校24hour保険」等の商標を使用できないことになりかねない。そのようなことは、到底許されるものではない。
(4)まとめ
商標権者が申立人に無断で自ら登録出願し、商標登録を得た行為は、剽窃行為にあたることは明らかであり、また、当該行為は、商道徳にも反する行為である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、その登録は取消されるべきである.
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については商標登録を受けることができないと規定する。
ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所、平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決参照)。
そこで、上記の観点を前提として、以下検討する。
(2)本件商標は、前記1で認定した構成よりなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字でないことは明らかである。また、本件商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできない。さらに、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合にも当たらない。加えて、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。
そこで、次に、商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるか否か検討する。
(3)申立人が提出した証拠によれば、以下の事実を認定することができる。
ア 甲第3号証は、申立人が作成し、「高校24」取扱い代理店を名宛人とする、平成19年11月19日付けの文書と認められるところ、「『高校24』08年度募集対応説明会のご案内」、「08年度募集全体会議」等の記載があり、参加対象代理店として、他の代理店と共に商標権者の名称が掲載されている。
イ 甲第4号証は、高校24募集代理店担当各位(岐阜東、岐阜西、高山、東濃)を名宛人とする、平成20年12月3日付けの文書と認められるところ、「2009年度募集会議の案内メール」、「参加者:下記の代理店(除くワイズ・まつだ事務所)」等の記載がある。
ウ 甲第5号証は、商標権者の平成11年度の保険「高校24保険」に関するパンフレットである。
エ 甲第6号証は、商標権者の平成13年度の保険に関するパンフレットであり、また、甲第7号証は、商標権者の平成20年度の保険に関するパンフレットであり、さらに、甲第8号証は、商標権者の平成21年度の保険に関するパンフレットである(以下、甲第6号証ないし甲第8号証のパンフレットを「当該パンフレット」という。)。
そして、甲第6号証は、保険期間として「平成13年4月8日〜平成16年4月8日」と記載されていることから、同号証は、遅くとも平成13年4月には頒布されたものとみることができる。
ところで、当該パンフレットの表題には、保険の名称として「高校24保険」の文字及び「hour」の文字からなる標章が表示されているが、当該パンフレットの表題以外の箇所では、「高校24保険」の標章が保険の名称として表示されている。そのため、当該パンフレットに掲載されている保険の名称が「高校24保険」なのか「高校24hour保険」なのか判然としない。
そこで、「高校24保険」及び「高校24hour保険」のいずれも、当該パンフレットに掲載されている保険の名称であると解することとする。
(3)上記(2)で、認定した事実から、申立人が、平成11年度、同13年度、同20年度及び同21年度に保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の募集を行ったことを推認することができる。
ところで、申立人は、10年以上前から保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の募集を行っていたと主張している。
しかし、そうあれば、申立人は、本件商標が登録出願された平成20年12月26日前に、自らすみやかに、「高校24保険」及び「高校24hour保険」について商標登録出願することが充分可能であったというべきである。それにもかかわらず、登録出願を行わなかったのは登録出願を怠っていたといわざるを得ない。
このような場合、商標法は、出願人からされた商標登録出願について,当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、同法第4条各号で個別的具体的に定めていることに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り、当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえ、同法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきであるところ、申立人と商標権者との間の商標権の帰属をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当ではない(知財高裁平成19年(行ケ)第10392号判決)。
また、上記(2)で認定した事実から、商標権者が、申立人の平成20年度の保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の平成20年度の参加対象代理店であったこと、商標権者が、申立人の平成21年度の保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の参加対象代理店から外れたこと、商標権者が本件商標の登録出願前に申立人の保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の存在を知っていたこと並びに商標権者が申立人の保険代理店であったことを認めることができる。
しかしながら、商標権者が平成21年度の保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の参加対象代理店から外れた理由について、申立人は、諸般の事情によるとしか主張していないところ、当該主張のみでは、申立人と商標権者との間に具体的にどのような経緯があったのか全く把握することができない。
さらに、先願主義を採用している我が国の商標法の制度趣旨からすれば、申立人は、前記したとおり「高校24保険」及び「高校24hour保険」の標章を本件商標の登録出願日(平成20年12月26日)の約7年前から使用しており、その間に当該標章について登録出願をすることができなかった合理的事情も認められないものであるから、商標権者が本件商標の登録出願前に申立人の保険「高校24保険」及び「高校24hour保険」の存在を知っていたという事実及び商標権者が申立人の保険代理店であったという事実のみで、直ちに、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるということはできないというべきである。
(4)むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しないから、同項の規定に違反して登録されたものということができず、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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