Trademark Appeal Case
「ドクター」の修飾語性と要部
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900441(T2009−900441/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5261868号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成21年1月21日に登録出願、第10類「家庭用のマット状電気式温灸器具,業務用のマット状電気式温灸器具,温灸具,家庭用電気温灸器」を指定商品として、同年7月23日に登録査定、同年9月4日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は以下のとおりである。
(1)登録第4516912号商標(以下「引用商標1」という。)は、「キューマット」の片仮名文字を標準文字で横書きしてなり、平成12年8月16日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同13年10月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第5118483号商標(以下「引用商標2」という。)は、「キューマット−エース」の片仮名文字を標準文字で横書きしてなり、平成19年7月18日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同20年3月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標は、「ドクターキューマット」の文字と「ドクターQマット」の文字とを二段に組み合わせ左横書きしてなるのに対して、引用商標1は、「キューマット」と左横書きしてなるものである。
本件商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して「ドクターキューマット」の称呼が、引用商標1からは「キューマット」の称呼が生じるものである。
その上で、本件商標と引用商標1とを対比すると、本件商標は「ドクターキューマット」の文字と「ドクターQマット」の文字とを二段に組み合わせ左横書きにしてなり、このうち「ドクター」は、一般的に「博士、医師」等の意味であって広く親しまれた外来語であり、本件商標の指定商品のような商品に付す場合には、商品の権威付けのために修飾語として付し、各種商品の品質品位を誇称する文字として使用されることが多い。
してみれば、本件商標の識別力を発揮する要部は、「キューマット」あるいは「Qマット」の部分にあるものと解される。
一方、引用商標1は「キューマット」と片仮名左横書きして構成される造語である。
そうすると、本件商標と引用商標1は、本件商標の要部である「キューマット」あるいは「Qマット」と引用商標1の「キューマット」とは、その称呼・外観において同一あるいは近似するものであり、また、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものといえる。
イ 本件商標と引用商標2との類否について
本件商標の構成は、上述したとおりであるが、引用商標2は「キューマット−エース」と左横書きしてなるものである。
また、本件商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に相応して「ドクターキューマット」の称呼が、引用商標2からは「キューマットエース」の称呼が生じるものである。
上述したとおり、本件商標の識別力を発揮する要部は「キューマット」あるいは「Qマット」の部分にあるものと解される。
一方、引用商標2「キューマット−エース」は、「キューマット」と「エース」をハイフンで結合して片仮名左横書きして構成される造語であって、「エース」の文字は広く親しまれた外来語であるから引用商標2の識別力を発揮する要部は「キューマット」といえる。
そうすると、本件商標と引用商標2は、本件商標の要部である「キューマット」あるいは「Qマット」と引用商標2の「キューマット」とは、その称呼・外観において同一あるいは近似するものであり、また、本件商標の指定商品は、引用商標2の指定商品と類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものといえる。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
申立人は、昭和53年頃から株式会社森晶(平成19年に破産)と共同で「温熱治療器」について「キューマット」という商標をもって製造販売を開始した。
平成12年8月16日には、株式会社森晶を商標登録出願人として、商標登録出願し、平成13年10月26日に商標登録を受けた(甲第2号証)。
その後、平成19年4月12日には、申立人である株式会社三幸ポライトヘ当該商標権(引用商標1)について特定承継による本権の移転がなされ現在に至る(甲第2号証)。
申立人は、昭和53年以来、商標「キューマット」を使用し「医療用機械器具」である「温熱治療器」或いは「温灸器」を約20万台(ここ5年の販売台数は約3万4千台)を、主に寝具販売元及び健康商材販売元に販売し、近年においてはインターネットによる通信販売サイトを利用し日本全国へ販売を展開している。
ここで例えば、インターネットの検索エンジンで一般的に広く利用され認知されている、Google(登録商標)及びYAHOO(登録商標)にて引用商標1の「キューマット」を検索すると、Googleでは「検索結果 約325,000件」(平成21年11月12日現在)あり(甲第7−1号証)、そのトップページの1番目のサイトに進むと、引用商標1に示す「キューマット」の商品広告サイトが表示される(甲第8−2号証)。トップページの4番目もまた同様である(甲第8−1号証)。
なお、全ての証拠を提示することは、その数が膨大であるため省略するが、甲第7−1号証には多くの「キューマット」の表示がみられ、これらの殆どが引用商標1の「キューマット」に関する記事である。
同様にYAHOOにて引用商標1の「キューマット」を検索すると、「検索結果 約2,260件」(平成21年11月20日現在)あり(甲第7−2号証)、そのトップページの1番目のサイトに進むと、引用商標1に示す「キューマット」の商品広告サイトが表示され(甲第8−1号証)、2番目、3番目、8番目もまた同様である(甲第8−2号証ないし甲第8−4号証)。
なお、ここでも引用商標1に示す「キューマット」の全てのサイト情報の証拠としての提示は省略するが、甲第7−4号証にも多くの「キューマット」の表示がみられるが、これらの殆どが引用商標1の「キューマット」に関する記事である。
次に、インターネットの検索エンジンで「家庭用温灸器」を検索してみると、Googleでは「検索結果 約26,700件」(平成21年11月20日現在)あり、そのトップページの11番目、12番目のサイト(甲第7−3号証)に進むと、引用商標1に示す「キューマット」の商品広告サイトが表示される(甲第8−1号証及び甲第8−4号証)。
同様にしてYAHOOにて「家庭用温灸器」を検索してみると「検索結果 約129,000件」(平成21年11月20日現在)あり(甲第7−4号証)、そのトップページの2番目、9番目のサイトに進むと、引用商標1に示す「キューマット」の商品広告サイトが表示される(甲第8−2号証及び甲第8−4号証)。
このように申立人の30余年にわたる広告、宣伝、販売実績から、引用商標1に係る指定商品の分野の需要者、取引業者間においては、「医療用機械器具」である「温熱治療器」あるいは「温灸器」といえば申立人の「キューマット」(引用商標1)としての著名性が確認できる。
なお、上記検索結果の中で「キューマット株式会社」という商号が何件かヒットするが、これは申立人が販売業務を委託している会社でキューマット製品の販売企画会社である。
さらに、ここで特に問題となるのは、本件商標「ドクターキューマット」を検索した場合、Googleでは「検索結果 約807、000件」(平成21年11月17日現在)あり(甲第7−5号証)、そのトップページの1番目、2番目のサイトに進むと、甲第2号証(引用商標1)に示す「キューマット」の商品広告サイトが表示される(甲第8−1号証及び甲第8−2号証)のである。
同様にしてYAHOOで検索すると「検索結果 約0件」(平成21年11月20日現在)であるが(甲第7−7号証)、「ドクターキューマット」と「ドクター」と「キューマット」の間にスペースを入れて検索すると「検索結果 約528件」(平成21年11月20日現在)あり(甲第7−6号証)、そのトップページに表示される「キューマット」のそれぞれのサイトに進むと、引用商標1に示す「キューマット」の商品広告サイトが多く表示される(例えば、甲第8−1号証、甲第8−2号証及び甲第8−4号証)。
つまりこのことは、今後、本件商標の商標権者が本件商標「ドクターキューマット」を、甲第1号証の指定商品に係る「家庭用のマット状電気式温灸器具、業務用のマット状電気式温灸器具、温灸具、家庭用電気温灸器」について使用し、広告、宣伝、販売活動を行なった場合、インターネットの検索エンジンの検索結果においては、引用商標1に示す「キューマット」と、本件商標の商標権者の「ドクターキューマット」とが混在して表示されることが予想される。
その結果、本件商標「ドクターキューマット」の当該指定商品が甲第4号証に示す本件商標権者のホームページ内の開発商品情報に掲載される商品からして、甲第5号証に示す引用商標1の「キューマット」のその製品と形状ないし使用方法が類似することは明らかであるから、殊に、本件商標の商標権者の「ドクターキューマット」をこれら商品に使用した場合、当該指定商品の分野に属する取引者及び需要者は、申立人が製造販売する、引用商標1に示す「キューマット」のその製品の新たな新製品であると誤認し、商品の出所について混同を生じるおそれが十分にある。
(4)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり「ドクターキューマット」及び「ドクターQマット」の各文字を上下二段に横書きした構成からなるところ、上段に表された「ドクターキューマット」と下段に表された「ドクターQマット」とは、上段の各文字が小さく、下段の各文字が大きく、上段と下段の文字の大きさは異なるが、各段の文字はそれぞれ同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔でまとまりよく表されており、また上段の文字は下段の文字の読みを表すものであり、その称呼「ドクターキューマット」も一連に称呼し得るものであり、これらの一部分のみを分離抽出して認識しなければならない特段の理由は発見できないから、その構成全体は特定の意味を有しない一連の造語とみるべきものであり、その構成文字に相応し、構成全体として「ドクターキューマット」の称呼のみを生じ、観念を有しないものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、「キューマット」の片仮名文字を標準文字で横書きした構成からなるところ、その構成文字は特定の意味を有しない造語と認められるものであるから、「キューマット」の称呼を生じ、観念を有しないものである。
ウ 引用商標2
引用商標2は、「キューマット−エース」の片仮名文字を標準文字で横書きした構成からなるところ、その構成文字は特定の意味を有しない造語と認められるものであるから、構成全体として「キューマットエース」の称呼を生じ、観念を有しないものである。
エ 本件商標と引用商標1及び2との類否について
本件商標と引用商標1及び2との外観を比較すると、その構成文字が顕著に相違するものであるから、外観において互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
本件商標から生ずる「ドクターキューマット」の称呼と引用商標1から生ずる「キューマット」の称呼を比較すると、称呼における識別上重要な要素を占める語頭において「ドクター」の音の有無に顕著な差異を有し、明確に聴別し得るものであるから、称呼において互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、引用商標2から「キューマット」の称呼を生じるとしても、同様の理由により、本件商標と引用商標2とは、称呼上、非類似の商標である。
さらに、本件商標から生ずる「ドクターキューマット」の称呼と引用商標2から生ずる「キューマットエース」の称呼を比較すると、称呼における識別上重要な要素を占める語頭において「ドクター」の音の有無の差異を有するばかりでなく、語尾において「エース」の音の有無の差異を有し、より一層明確に聴別し得るものであるから、称呼において互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
本件商標と引用商標1及び2とは、観念においては比較することができない。
したがって、本件商標は、引用商標1及び2とは、外観及び称呼において非類似の商標であり、観念においては比較することができないものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
なお、本件商標について、申立人は、本件商標はその構成中の「ドクター」の文字部分が一般的に「博士、医師」等の意味であって広く親しまれた外来語であり、本件商標の指定商品のような商品に付す場合には、商品の権威付けのために修飾語として付し各種商品の品質品位を誇称する文字として使用されることが多く自他商品の識別力を有しないから、要部は「キューマット」又は「Qマット」の部分にあり、これより「キューマット」の称呼を生ずる旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成中の「ドクター」の文字が、「博士、医師」の意味を有し広く親しまれた外来語であるとしても、この理由によっては、なぜ識別力を有しないのか未だ明らかにされておらず、むしろ上述したとおり、本件商標は、その構成の一部分のみを分離抽出して認識しなければならない特段の理由は発見できず、その構成全体を一連の造語とみるべきものである。
また、本件商標の指定商品のような商品に付す場合には商品の権威付けのために修飾語として付し各種商品の品質品位を誇称する文字として使用されることが多く自他商品の識別力を有しない旨の主張については、この主張事実を裏付ける証拠資料を何ら提出していないことから、前記申立人の主張はいずれも採用するに足りない。
引用商標2について、申立人は、「エース」の文字が広く親しまれた外来語であるから要部は「キューマット」といえ、これより「キューマット」の称呼を生じる旨主張するが、広く親しまれた外来語であれば自他商品の識別力はないとすべき理由はなく、この点に関する申立人の主張も採用することができない。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 引用商標1の著名性について
申立人は、昭和53年以来、引用商標1を「温灸器」について、30余年にわたる広告、宣伝、販売実績から、同商品の分野の需要者、取引業者間において著名である旨主張し、甲第5号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出している。そして、登録商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断基準時は、登録出願時及び登録査定時である(同法第4条第3項)。
甲第5号証は、申立人の製品パンフレットであり、「皆様方に愛されつづけお蔭様で30年」、「家庭用温灸器」及び引用商標1の「キューマット」の表示などが記載されているが、パンフレットの作成日は記載されていない。
甲第6号証は、申立人の製品パンフレットであり、1枚目上部左には「キューマット/SINCE1979」、上部中央に「皆様方に愛されつづけお蔭様で30年」、下部中央に「QMAT ACE/家庭用温熱治療器/キューマットエース」などが記載され、4枚目末尾に「080411−5000」の表示がなされているが、パンフレットの作成日を明確に確認できる記載はされていない。
甲第7号証(枝番号を含む。)は、引用商標1などのインターネットの検索結果の見出しページを2009年(平成21年)11月12日、同年11月20日及び同年11月17日に印刷したものである。
甲第8号証(枝番号を含む。)は、インターネットウェブサイトを2009年(平成21年)11月20日及び同年10月29日に印刷したものである。
上記甲第5号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)によれば、以下の事実が認められる。
申立人の製品パンフレット(甲第5号証及び甲第6号証)は、作成日が記載されていないものである。
申立人の製品パンフレット(甲第6号証)に「080411−5000」の表示がなされていることから、仮に、この表示が、2008年4月11日に作成されたことを表すとしても、本件商標の登録出願時までの配布期間は、短期間であるばかりでなく、申立人の製品パンフレットの配布部数や配布地域は不明である。
インターネットの検索結果の見出しページを2009年(平成21年)11月に印刷した甲第7号証(枝番号を含む。)は、見出しに相応する内容が不明であるばかりでなく、掲載時期も不明であり、登録出願時及び登録査定時における引用商標1の著名性を立証するものとしては適切でない。
また、インターネットウェブサイトを2009年(平成21年)10月及び11月に印刷した甲第8号証(枝番号を含む。)は、申立人の製品などの販売店の使用と解されるもので、内容は把握できるとしても、インターネットへの掲載時期が不明である。
そうすると、これら甲各号証を総合しても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標1が商品「温灸器」について同商品を取り扱う業界において著名であったと認定するに足りないものである。
イ 出所の混同のおそれについて
本件商標が引用商標1とは別異の商標であることは、上述したとおりであり、引用商標1が本件商標の登録出願時及び登録査定時において「温灸器」について著名であったとは認められないものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても申立人の業務に係る商品と商品の出所について誤認をを生じさせるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
(3)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号の規定に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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