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Trademark Appeal Case

キャバリーノの周知性と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2009−890030(T2009−890030/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

登録第4762127号商標(以下,「本件商標」という。)は,「キャバリーノ」の片仮名文字を横書きしてなり,平成15(2003)年1月20日に登録出願,第16類「印刷物,書画,写真」及び第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),小型自動車競走の企画・運営又は開催,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影」を指定商品又は指定役務として,同16(2004)年2月27日に登録査定,同年4月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁の要旨を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第30号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求人及び請求人標章について

(1)請求人は,1947年にエンツォ・フェラーリ氏によってイタリア国に設立された世界有数のスポーツカー製造業者であり,1950年から世界最高峰の自動車レースである「フォーミュラ・ワン(F1)」に出走するなど,これまで自動車レース活動を積極的に行ってきた。また,市販用のスポーツカーやGTカーも製造し,世界各国にて販売する他,関連グッズとして,模型自動車などのおもちゃ,衣服,かばん,アクセサリー類など広く商品展開を行っている。請求人の名声は,F1への参加及びスポーツカーなどの販売活動を通じて,特定のモータースポーツ愛好家のみならず,広く一般人にも及んでいるということは顕著な事実である。

(2)請求人は,創始以来,「Ferrari」のロゴとともに,後足で立ち上がった馬(跳ね馬)をモチーフにした紋章(以下「跳ね馬紋章」という)をコーポレートシンボルとして採択使用している。

この跳ね馬紋章は,イタリア語で「cavallino rampante」という愛称で広く親しまれており,請求人は,当該愛称及びその略称「cavallino」(以下,合わせていうときには「請求人標章」という。)を,自動車の販売,自動車レース,関連グッズの販売といった請求人のあらゆる事業活動に用いている。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)請求人標章の周知・著名性

(ア)前記のとおり,請求人標章は,請求人の長年にわたる大規模な活動の結果,請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬紋章の愛称及びその略称として,広く認識されている。

オリンパス株式会社の製造する跳ね馬紋章を施したデジタルカメラが,2003年10月頃に世界で1万台,日本で1千台限定で販売され(甲第5号証の1ないし5),また,日本エイサー株式会社の製造する跳ね馬紋章を施した液晶ディスプレイモニターが日本国内で販売され,2005年9月にも跳ね馬紋章を付したノート型パソコンが販売された(甲第6号証の1及び2並びに甲第7号証)。

跳ね馬紋章をあしらったマグカップが,日本国内の需要者向けに販売され(甲第8号証及び甲第9号証),また,跳ね馬紋章をあしらったデニムシャツ,ロンパース(ベビー服),ポロシャツなども日本国内の需要者向けに販売され,これらの商品名中に「キャバリーノ」の文字が記載されている(甲第10号証ないし甲第12号証)。さらに,跳ね馬紋章をあしらったホイールキャップなどの自動車関連アクセサリーが日本国内の需要者向けに販売され,これらの商品名中に「カバリノ」「Cavallino」の文字が記載されている(甲第13号証)。

「CAVALLINO」を表題とする雑誌が米国において古くから発行され,日本にも輸入されている。これは,請求人のスポーツカーを専ら題材とした専門誌であって,「CAVALLINO」の文字単独であっても請求人の業務が連想され得るという推認をより強固にするものである。

以上のように,請求人標章は,請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬紋章の愛称及びその略称を意味するものとして広く知られており,イタリア語で「跳ね馬」を意味するとしても,イタリア語の普及度の低い日本においては,むしろ請求人固有の愛称として周知されている。跳ね馬紋章が請求人の業務全体の表示として認知されていることも合わせて考慮すると,請求人標章は,単なる愛称ではなく,請求人の業務全体に係る商品・役務を表示する商標として,需要者の間で,広く認知されるに至っているということができる。

(イ)被請求人は,請求人の使用例は,「Ferrari」の商品であることが明示されるか,「Ferrari」の表示とともに商品名の一部分として「キャバリーノ」が使用されているにすぎないと述べるが,請求人の商品にハウスマークかつ商号の要部である「Ferrari」の表示を伴って使用することは至極当然であり,甲第10号証ないし甲第13号証の使用態様を見ても,「Ferrari」の表示と外観的にも観念的にも一体不可分に使用されているとまでは言い難いことからすれば,これらの使用例やかかる被請求人の論拠は,「cavallino」「キャバリーノ」の表示が,独立した出所識別標識として認識され得る可能性を否定するものではない。

被請求人は,「cavallino」は,イタリア語で「若駒」を意味し,請求人の「標章」を意味する単語ではない。一般的な伊和辞典において,「cavallino rampante」が,請求人の標章を意味する趣旨の例文や説明などは存在しないと述べるが,イタリア語の普及度の高くない日本においては,各語を単なるディクショナリーワードとして認識しないのが自然であり,イタリア語の熟語として存在しない以上,むしろ,「cavallino」「キャバリーノ」と略称されている事実からは,本件商標は,需要者をして請求人の代表的出所標識である跳ね馬紋章を優先的に想起させるというべきである。

被請求人は,「cavallino rampante」が周知,著名であればあるほど,本件商標と明瞭に識別され,出所が誤認,混同されることはないと述べるが,これは,被請求人の前提とする周知・著名な商標と,その一部と共通する商標とを対比する場面において用いられる理論ではなく,本件とは事案が全く異なるというべきである。また,「cavallino」「キャバリーノ」がイタリア語の「若駒」を意味することが,日本の需要者に浸透しているならまだしも,前記のとおり,そのような事実は存在しないのであるから,本件商標と「cavallino rampante」とは,依然として観念上相紛らわしいというべきである。

(2)請求人標章と本件商標との類似性

本件商標からは,「キャバリーノ」の称呼が生じる。

他方,「cavallino rampante」は,「キャバリーノ・ランパンテ」の称呼が比較的冗長であること,熟語として一般の日本人に比較的親しみのないイタリア語であることからすれば,「キャバリーノ・ランパンテ」の称呼以外に「キャバリーノ」と省略して称呼され得る。また,前記のとおり,実際に,請求人標章あるいは跳ね馬紋章が「キャバリーノ」「Cavallino」「カバリノ」と略称して取引に用いられている事情が存在する(甲第10号証ないし甲第13号証)。

したがって,本件商標と請求人標章の称呼は共通し,互いに聞き違えられるおそれがあり,外観,観念を比較するまでもなく,請求人標章と本件商標の類似性は極めて高いということができる。

(3)請求人の業務及び本件商標の指定商品・役務との関連性について

(ア)請求人標章は,前記のとおり,請求人の業務に係る商品・役務を表示する商標として,広く認知されているものである。

請求人の業務は,主に,スポーツカーに関連するものであるが,自動車産業のみならず,エンターテインメントとしての側面も備えており,幅広い分野に関連する。請求人は,多種多様な関連グッズを自ら,あるいはライセンシーを通じて販売しており,これは,多角的に商品・役務が展開される可能性を示している。

(イ)本件商標の指定商品中の第16類「印刷物,書画,写真」は,関連グッズとして,請求人自身あるいはそのライセンシーによって取り扱われる可能性の非常に高い商品である。

また,本件商標の指定役務中の第41類「スポーツの興行の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催」は,請求人のモータースポーツ業務に直接的に関連する役務であり,これ以外の第41類に属する役務も,いずれもエンターテインメント分野としての請求人のモータースポーツ事業と密接に関連するものである。

以上のとおり,本件商標の指定商品・役務は,いずれも請求人の業務に係る商品・役務と密接に関連するものである。

(4)まとめ

以上のように,1)請求人標章が請求人固有の愛称として広く認識されていること,2)請求人標章と本件商標との類似性が高いこと,3)請求人業務が多角的に展開されていること,4)請求人業務と本件商標の指定商品・役務とが重複,あるいは密接に関連性していることからすれば,本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合,これに接した需要者及び取引者は,請求人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは十分にあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 商標法第4条第1項第19号該当性について

(1)請求人標章の周知性について

前記のとおり,請求人標章は,請求人のコーポレートシンボルである跳ね馬紋章の愛称及びその略称として,請求人の大規模な活動の結果,広く一般の需要者及び取引者に認識されているということができる。

また,これは,日本国内に限らず,スポーツカーの販売やF1レースヘの参戦を通じた請求人の世界的な活動の結果,国外の需要者及び取引者にも同様に認識されていることは容易に推測できる。

(2)請求人標章と本件商標の類似性について

前記のとおり,本件商標と請求人標章とは,称呼が共通し,互いに類似するというべきである。

(3)不正の目的について

(ア)被請求人は,雑誌,書籍の出版を業とする法人である。被請求人の発行する雑誌には,自動車やモータースポーツに関するものが多く,そのうち「SCUDERIA」なる雑誌は,請求人のスポーツカー及びレーシングチームを主題とするものである。

以上の事実を考慮すると,被請求人は,請求人標章が請求人を示すものとして認知されていることを本件商標の出願時点において知悉していたことは明らかであって,偶然の一致とは考えがたい。また,被請求人は,常習的に著名な自動車製造業者の所有する商標を,第16類,第41類及びその他の商品区分で取得している。すなわち,本件商標は,著名な請求人標章,あるいはその略称の表音である「キャバリーノ」の文字が,本件商標の指定商品及び指定役務について登録されていないことを奇貨として,先取り的に出願したものであるといえ,請求人標章の有する出所表示機能を希釈化させる目的で出願したものである。

(イ)乙第3号証によれば,前記の「SCUDERIA」に,ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼモロ氏の氏名,写真とともに「A warm greeting to all Japanese”Ferrarisil”」の文字が掲載されたことが窺えるが,この掲載内容の真偽は不明であるし,被請求人の述べるように「SCUDERIA」の発行を歓迎して寄せられたものであるか否かも,乙第3号証のみでは明確ではなく,少なくとも「SCUDERIA」という表題の使用を被請求人に対して承諾した事実まで認めることはできない。また,この事実は,本件商標の出願登録を是認した事実を証明するものではない。むしろ,乙第3号証は,被請求人が,請求人に関する深い知識を有しているのみならず,請求人関係者と一定の関係を有していたことを,被請求人自身が自認するものであり,これは,本件商標の出願が,請求人と全く無関係に請求人標章に依拠せずになされたものではないことを確信させるものである。

乙第13号証及び第14号証は,請求人のスポーツカーを専ら題材とする専門誌である。被請求人が,請求人を題材とする雑誌に「CAVALLINO」の文字が実際に用いられていることを本件商標の出願時において認識していたことは明らかであり,「CAVALLINO」が跳ね馬紋章の愛称に依拠したものであることは明らかであり,少なくとも被請求人がそれを知らないはずはない。以上の被請求人の認識は,本件商標と跳ね馬紋章の愛称「cavallino rampante」とは異なるものであるとする被請求人の主張と全く矛盾するものである。

以上のことから,仮に,本件商標が請求人業務との関係で出所混同を生じさせないとしても,被請求人の出願時での認識,知識を考慮すると,本件商標の登録出願に関する被請求人の不正の目的は明らかである。

(4)まとめ

前記のとおり,本件商標は,請求人の業務に係る商品または役務を表示するものとして日本国内または外国における需要者の間に広く認識されている請求人標章と類似し,また,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 商標法第4条第1項第7号該当性について

被請求人は,請求人標章が,請求人を示すものとして認知されていることを本件商標の出願時点において知悉しながら,本件商標を請求人の承諾を得ることなく登録出願したものである。かかる出願は,その経緯に社会的相当性を欠くものであって,また,指定役務に関する本件商標の使用は,社会公共の利益に反するものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

5 結語

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由の要旨を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第14号証(枝番を含む。)を提出した。

1 商標法4条1項15号の該当性について

本件商標が跳ね馬紋章の愛称「キャバリーノ・ランパンテ」「cavallino rampante」の略称である旨の請求人の主張は事実に反し,前提を欠くというべきであり,本件商標が他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはない。

請求人が跳ね馬紋章を使用しており,これに跳ね馬,イタリア語で「cavallino rampante」(キャバリーノ・ランパンテ)という愛称があるとしても,愛称はあくまでも「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」であり,「キャバリーノ」がその略称として広く認識されている事実はない。

請求人は,甲第5号証の1ないし5,甲第6号証の1及び2,甲第7号証ないし甲第13号証を提出しているが,いずれも,跳ね馬紋章を使用していることが明瞭であって,商品そのものに「cavallino」「キャバリーノ」の文字が請求人の標章の略称として使用されていない。

また,甲第10号証ないし甲第13号証に記載の各商品は,いずれも「Ferrari フェラーリ」「Ferrari Store〔フェラーリ純正アイテム〕」「Ferrari Other!」との表示のもとに,Ferrariの商品であることが明示された上で,Ferrari,跳ね馬紋章が表示されているものであり,商品名の一部分として「キャバリーノ」が使用されているに過ぎない。しかも,商品名の一部分に「キャバリーノ」が使用されている場合であっても,多くは「Ferrari Cavallino」のように「Ferrari」が結合されていることに留意すべきであるから,請求人標章が「キャバリーノ」と省略して称呼され得るとする根拠は存在しない。

本件商標は,イタリア語の普通名詞で「若駒」を意味する「cavallino」を片仮名で表記した標章であるが,「cavallino」が請求人の標章を意味している単語でないことはいうまでもない。一般的な伊和辞典においては,「cavallino rampante」が請求人の標章を意味しているなどとする趣旨の例文や説明などが存在しないことも明瞭であり,これらがイタリア語において,「キャバリーノ」「cavallino」「カバリーノ」と略称されることがないばかりでなく,日本においてそのような略称が称呼され得るとする根拠は存在しない。

請求人は,跳ね馬紋章の愛称として「cavallino rampante」「キャバリーノ・ランパンテ」が広く認識されていると主張するが,仮に,そうであるならば,跳ね馬紋章の愛称が単に「cavallino」,「キャバリーノ」と称呼されることはない。すなわち,東京高裁平成4年3月10日判決,判時1413号114頁の判示に照らしても,「cavallino rampante」,「キャバリーノ・ランパンテ」が周知,著名であればあるほど,本件商標と明瞭に識別され,出所が誤認,混同されることはない。

2 商標法4条1項19号に関する主張について

請求人は,本件商標が跳ね馬紋章の愛称の略称であるとの誤った事実を前提として,本件商標をあたかも不正の目的をもって使用するものであるかのように論難しているが,以下のとおり,事実を誤っているばかりでなく,意図的に歪曲したうえでなされた誠実さを欠く主張であって失当である。

請求人は,被請求人が1995年以降フェラーリをテーマとする雑誌「SCUDERIA」を刊行していることについて,不正の目的があるかのように主張しているが,請求人自身が被請求人が発行する雑誌「SCUDERIA」の発刊を歓迎していたことを没却して,不当に非難するものであるといわざるをえず,遺憾であるというほかはない。

乙第3号証は,雑誌「SCUDERIA」創刊号であるが,冒頭に「Ferrari S.p.A.社長 ルカ・コルデロ・デイ・モンテゼモロ」氏が当該雑誌の発刊を歓迎する挨拶を寄せている(乙第4号証)。

請求人は,本件商標は著名な請求人標章,あるいはその略称の表音である「キャバリーノ」の文字が登録されていないことを奇貨として,先取り的に出願したものであるといえるなどと主張しているが,「cavallino」が「cavallino rampante」とは異なっていることを無視している立論であるというほかはない。

アメリカ合衆国においては,「CAVALLINO」を表題とする雑誌が古くから刊行されているが(乙第13号証及び第14号証),同国においても「CAVALLINO」は,「cavallino rampante」とは明瞭に識別されていることが銘記されなければならない。

3 商標法4条1項7号の該当性について

請求人は,前記のとおり,誤った前提に立脚して独善的な主張を重ねるものであって,本件商標が商標法4条1項7号に該当するなどという請求人の主張は,根拠を欠いており,失当である。

4 以上のとおり,請求人の主張はいずれも事実に反しており,本件商標に無効理由は存在しない。

第4 当審の判断

1 請求人標章の著名性について

(1)請求人は,請求人標章は請求人が自動車の販売,自動車レース,関連グッズの販売といった請求人のあらゆる事業活動に使用していることにより,需要者の間に広く認識されていることを前提に,本件商標が商標法第4条第1項第15号,第19号及び第7号に該当する旨主張する。

ところで,商標法第4条第1項第15号及び第19号を適用するには,その商標登録出願が,出願時,かつ,査定時において各号の規定に該当しなければならないものと解される(商標法第4条第3項)。そこで,請求人が提出した甲各号証が出願時(平成15(2003)年1月20日)及び査定時(同16(2004)年2月27日)における事実を立証するものであるか否かを踏まえ,請求人の主張について以下のとおり検討する。

甲第3号証は,フェラーリに関するフリー百科事典「ウィキペディア」の記事と認められる。これには,「請求人(フェラーリ)は,現在フィアットグループの傘下にあり,高級GTカー及び高級スポーツカーのみを製造している,イタリア,モデナ県マラネッロに本社を置く自動車メーカーである。」との記載のほか,請求人の「沿革」や「日本における販売」などに関する記載がなされている中,「カヴァッリーノ・ランパンテ」の項が設けられ,その説明として「イタリア語で後足で立ち上がった馬の紋章を使用するため,『跳ね馬』の愛称をもつ[9]。...」→「[9]この紋章はイタリア語で『カヴァッリーノ・ランパンテ』(Cavallino Rampante)といい,直訳では『立ち馬』であるが,英訳でも『跳ねる馬』(Prancing Horse)となっている。」などの記載がなされている。しかし,これらの記事のウェブサイトへの掲載日を特定する記載はない。

甲第4号証の1ないし4は,「カヴァリーノ・ランパンテ(キャバリーノ・ランパンテ)」の語義を説明したブログと認められる。甲第4号証の1には「Published On:7 10,2004」の記載及び2004年7月のカレンダーの表示がある。甲第4号証の4には掲載日を特定する記載はなく,記事中に「2008.02/04[Mon]ディーノさんのお誕生日」の記載がある。そして,甲第4号証の2及び3には掲載日などを特定する記載はない。

甲第5号証の1ないし5は,オリンパス株式会社が販売した跳ね馬紋章が施されたデジタルカメラに関するウェブサイトの記事と認められる。そのそれぞれの説明文中に,デジタルカメラに「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」のロゴが施されている旨の記載がある。また,甲第5号証の1には「2003年9月17日」の記載及び説明文中に「ご購入予約開始日(日本国内)として,2003年10月10日」の記載,甲第5号証の2には「2004年3月4日」の記載,甲第5号証の3及び4には2003年9月26日の記載,甲第5号証の5には同月17日の記載がある。

甲第6号証の1及び2並びに甲第7号証は,日本エイサーが販売した跳ね馬紋章が施された液晶ディスプレイなどに関するウェブサイトの記事と認められる。その各々の説明文中に,製品に「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」のロゴ又は「はね馬」のエンブレムが施されている旨の記載がある。また,甲第6号証の2には「2005/11/10更新」の記載及び説明文中に「...2005年11月下旬より発売すると発表した。...」の記載があり,甲第7号証には「2005年8月31日更新」の記載及び説明文中に「...2005年度モデル『Ferrari4000』を発表した。9月22日発売で,...」の記載がある。そして,甲第6号証の1には掲載日などを特定する記載はない。

甲第8号証及び甲第9号証は,跳ね馬紋章が施されたマグカップに関するウェブサイトの記事と認められる。それぞれの説明文中に「キャバリーノ・ランパンテ(はね馬)」の記載はあるが,甲第8号証には掲載日を特定する記載はなく,記事中に営業カレンダーとして,2009年4月及び同年5月のカレンダーの表示があり,甲第9号証には登録情報として,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2008/9/22」の記載がある。

甲第10号証ないし甲第13号証は,跳ね馬紋章が施されたデニムシャツ,ジャケットなどの商品に関するウェブサイトの記事と認められる。それらの商品の説明として「キャバリーノ」,「カバリノ」,「Cavallino」などの文字が使用されていることは認められるが,いずれにも掲載された商品の販売年月日及び当該記事のウェブサイトへの掲載日などを特定する記載はない。

以上の甲各号証における記載及び請求人の主張から,請求人が1947年に設立されたイタリア国のスポーツカー製造業者であり,創始以来,跳ね馬紋章をコーポレートシンボルとして使用し,その跳ね馬紋章は,請求人又は請求人が参戦するFIレースにおける請求人チームの象徴として,請求人の取り扱うスポーツカーの需要者やFIレースの観戦者の間に広く認識されていたであろうことが推認される。

そして,その跳ね馬紋章が,イタリア語で「cavallino rampante」と称されること,また,それが「キャバリーノ・ランパンテ」「カヴァリーノ・ランパンテ」などの表記で日本にも紹介され,請求人又はその関係者が取り扱う跳ね馬紋章が施された商品の説明に,「キャバリーノ」,「カバリノ」,「Cavallino」などの文字が使用されていることが認められる。

しかし,甲第3号証ないし甲第13号証によっては,「cavallino rampante」,「cavallino」又はその表音と認められる「キャバリーノ・ランパンテ」,「カヴァリーノ・ランパンテ」,「キャバリーノ」などの文字の日本における使用開始時期を特定することができないか,また,特定できるとしても,その日にちはいずれも本件商標の出願日以降のものである。

そうすると,前記の甲第3号証ないし甲第13号証によっては,請求人標章が本件商標の出願時に跳ね馬紋章の愛称又は略称,もしくは,請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)請求人は,請求人標章がイタリア国を含む外国で使用されている事実を示すものとして,甲第24号証ないし甲第29号証を提出したので,前記(1)と同様に,これらが出願時及び査定時における事実を立証するものであるか否かを踏まえ,以下のとおり検討する。

甲第24号証及び甲第25号証は,英国法人TSS&P社が1999年,2000年に発行した請求人のオフィシャルグッズカタログと認められる。これらには,跳ね馬紋章が施された帽子とTシャツなどの商品が掲載され,「Cavallino cap」,「CavallinoV T−shirt」のように,商品名又は説明文中に「Cavallino」の文字が使用されていることが認められる。

甲第26号証及び甲第27号証は,請求人に関連する商品のカタログと認められる。そのそれぞれのカタログの商品の説明文中に「Cavallino」の文字が使用されていることが認められるが,カタログの発行日などを特定する記載はない。

甲第28号証は,請求人のウェブサイトの商品紹介ページと認められる。これには商品名として「Cavallino neck scarf」などの記載はあるが,「Scuderia Ferrari Spring/Summer 2009 Collection」と記載され,その掲載日は2009年であることが推認される。

甲第29号証の1ないし20は,イタリアの雑誌記事と認められる。そのそれぞれの記事中に「Cavallino rampante」又は「Cavallino」などの文字が記載され,そのうちの1ないし6及び20には,年表示と認められる箇所に,本件商標の出願日以前と認められる「Maggio 1998」又は「Aprile 1998」の記載がある。しかし,甲第29号証の7ないし19には,年表示と認められる箇所に,いずれも2006と記載されている。

以上のとおり,前記各号証には,いずれも「Cavallino rampante」又は「Cavallino」の文字が記載されていることが認められる。しかし,これらの証拠のうち,甲第26号証,甲第27号証及び甲第29号証の7ないし19は,本件商標の出願時の使用の事実を証明するものではない。そして,これら以外の出願日前の使用が確認できる証拠にしても,そのほとんどが「Cavallino rampante」又は「Cavallino」文字が跳ね馬紋章と共にその紋章の説明として用いられているものであり,かつ,当該文字の商品を表すものとして使用が確認できるものは,甲第24号証と甲第25号証のみである。

さらに,請求人は,アメリカ合衆国において,「CAVALLINO」を表題とする雑誌(乙第13号証)が古くから刊行されていることから,同国において,「Cavallino」が「Cavallino rampante」と明瞭に識別されている旨主張するが,当該雑誌には「JUNE/JULY2009」と記載され,2009年発行のものと認められ,これが本件商標の出願時における「Cavallino」の著名性を立証するものとはいえない。

そうすると,前記の甲第23号証ないし甲第27号証及び乙第13号証は,「Cavallino rampante」又は「Cavallino」の文字の本件商標の出願時以前の使用を立証するには十分なものとはいえず,請求人標章が,本件商標の出願時に,跳ね馬紋章の愛称又は略称,もしくは,請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,イタリア国を始めとする外国における需要者の間に広く認識されている商標であると認めることはできない。

(3)以上のとおり,請求人及び被請求人の提出の証拠を精査しても,請求人標章が,本件商標の出願時に,跳ね馬紋章の愛称又は略称,もしくは,請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標であるということはできない。

2 請求人標章と本件商標との類否について

請求人標章は,「Cavallino」及び「Cavallino rampante」の欧文字からなるところ,これらは,イタリア語を表したものであって,「Cavallino」は若駒の意味を,「Cavallino rampante」は,全体として「跳ね馬」の意味を有するものと認められる(乙第1号証及び乙第2号証)。そして,これらは,それぞれの構成文字から「キャバリーノ」又は「キャバリーノランパンテ」と無理なく称呼し得るものといえるが,日本におけるイタリア語の普及度からすると,双方とも特定の観念を生じない造語とみるのが相当である。

一方,本件商標は,「キャバリーノ」の片仮名文字からなるものであるから,「キャバリーノ」の称呼を生ずるものであり,また,これが我が国において特定の意味を持って親しまれた語とはいえないから,特定の観念を生じないものである。

そうすると,「Cavallino」と本件商標とは,「キャバリーノ」の称呼を共通にする類似の標章ということができる。

次に,「cavallino rampante」と本件商標とを比較すると,それぞれから生ずる「キャバリーノランパンテ」と「キャバリーノ」の称呼は,「ランパンテ」の音の有無という構成音数の差,音構成の差などにより明瞭に区別し得るものである。そして,両者は,それぞれの構成に照らし,外観上判然と区別し得るものであり,また,観念上は比較することができない。

これに対して,請求人は,跳ね馬紋章が「キャバリーノ」と略称して取引に用いられている事情があることなどから,「cavallino rampante」から「キャバリーノ」の称呼をも生ずる旨主張するが,前記のとおり,跳ね馬紋章が「キャバリーノ」と略称して需要者の間に広く認識されているとはいえないから,この点に関する請求人の主張は採用することができない。

そうすると,「cavallino rampante」と本件商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても互いに相紛れることのない非類似の標章である。

3 不正の意図について

請求人は,被請求人は請求人のスポーツカー及びレーシングチームを主題とする「SCUDERIA」を含む,著名な自動車製造業者の所有する商標を常習的に第16類,第41類などについて取得していることから,本件商標も,著名な請求人標章が本件商標の指定商品及び指定役務について登録されていないことを奇貨として,先取り的に出願したものであり,請求人標章の有する出所表示機能を希釈化させる目的で出願したものである旨主張するが,請求人の主張する被請求人所有の登録商標の出願経緯などについて,社会的妥当性を欠くなどとする不正な目的があったとする具体的な証左はなく,また,本件商標の出願についても,その出願経緯などについて社会的妥当性を欠くなどとする不正な目的があったとする事実は認められない。

4 商標法第4条第1項第15号,第19号及び第7号の該当性について

前記1ないし3において認定した事実を前提に,本件商標が商標法第4条第1項第15号,第19号及び第7号に該当するものであるか否かについて検討する。

前記2のとおり,請求人標章中の「Cavallino」は,本件商標と類似する標章である。

しかしながら,前記1のとおり,請求人標章は,本件商標の登録出願時に,跳ね馬紋章の愛称又は略称,もしくは,請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本国内における需要者の間に認識されていたものといえないから,本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合に,これに接する需要者が,直ちに請求人標章ないし請求人を連想し,想起するようなことはないというべきであり,該商品及び役務が申立人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく,その出所について混同を生ずるおそれはない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

また,前記1及び3のとおり,請求人標章は,請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして本件商標の登録出願時に日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標とはいえず,本件商標が不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の目的)で出願し,登録を受けたものともいえない。さらに,本件商標の出願が社会的妥当性を欠きその使用が社会公共の利益に反するものということもできない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び第7号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,第15号及び第19号に違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものではない。

よって,結論のとおり審決する。

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