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Trademark Appeal Case

古代文字商標の称呼類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2009−890114(T2009−890114/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4812302号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成16年3月24日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同16年9月29日に登録査定、同年10月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)

1 請求の趣旨

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

2 請求の理由

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

(2)請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録の無効の理由に引用する登録第4758420号商標(以下「引用商標」という。)は、「つくも」の平仮名文字と「九十九」の和数字を二列に縦書きしてなり、平成15年5月12日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同16年3月26日に設定登録されたものである。

(3)商標法第4条第1項第11号について

(ア)本件商標について

本件商標は一見したところ、何らかの文字らしきものを毛筆書きしたものであることが認められるが、被請求人は、本件商標を被請求人が販売する麦焼酎に付して販売している。甲第3号証の1及び甲第3号証の2に示すように、麦焼酎の1800ml瓶の正面に貼付する表貼りラベルには、本件商標をそのまま表示しているが、背面に貼付する裏貼りラベルには、その上部に「麦焼酎 壱岐 九十九(いき つくも)」の文字を表示し、しかもその「九十九」の文字を殊更に大きく表示している。そして、表貼りラベルの文字の説明として「ラベルに使用している書は志村大流先生の手によるもので、三千五百年前の威厳ある書体です。」の解説を記載している。このことは、麦焼酎「壱岐 九十九」の720ml瓶や麦焼酎「かめ貯蔵 壱岐 九十九」の720ml瓶についても同様である(甲第4号証の1、甲第4号証の2、甲第5号証の1及び甲第5号証の2)。

上記の甲第3号証の1ないし甲第5号証の2に示す麦焼酎に貼付されたラベルの表示を見れば、本件商標は「九十九」の文字を古代文字の書体で、毛筆書きで書したものであることは明らかであり、その文字を被請求人は「ツクモ」と読ませていることも明らかである。

また、甲第6号証として提示する被請求人のインターネットのホームページには、「限定流通商品」として、甲第3号証の1ないし甲第5号証の2に示す3種類の麦焼酎の商品が掲載され、その商品の表示として「壱岐 九十九」、「壱岐 九十九 かめ貯蔵」が明確に表示されている。したがって、被請求人は、本件商標を表示した麦商標を「壱岐 九十九」、「壱岐 九十九 かめ貯蔵」として販売していることは明らかである。

これらの被請求人の行為に対し、請求人は、平成21年9月30日付の通告書(甲第7号証)により、引用商標の商標権に対する被請求人の侵害行為の中止を求めたが、これに対し、被請求人は、平成21年10月7日付の回答書(甲第8号証)で、被請求人の行為は、商標権を侵害する行為ではない旨反論した。

しかし、その回答書の1頁の下3行に、「弊組合は、古代の書体で毛筆書きされた『九十九』の文字を包装用酒瓶に付した商品『麦焼酎』を販売しています。」と記載し、本件商標が「九十九」の文字を古代文字で毛筆書きしたものであることを認めている。

また、同回答書の4頁11行ないし20行には、被請求人のホームページの「九十九」または「九十九かめ貯蔵」の記載は、「単に被請求人が販売する各種商品を紹介するための便宜上の記述である」と述べているが、本件商標を付した商品「麦焼酎」を市場で取引する際には、何らかの称呼が必要であり、本件商標が「九十九」の文字を古代文字の書体で毛筆書きしたものであるとして、これに「ツクモ」の称呼及び「九十九」の翻訳を付して取引していることは明らかである。

被請求人は、本件商標を商標登録出願するに際して、引用商標の登録が既に存在していたため、容易には「九十九(つくも)」とは読めない字体で出願し、登録を受けた後に、これを「九十九」の文字を古代の字体で書したものであるとして、「ツクモ」の称呼により販売を続けたものであり、本件商標の登録を到底容認することはできない。

(イ)本件商標と引用商標との類否について

上記したとおり、本件商標は、「九十九」の漢字を中国の古代文字の書体で毛筆書きしてなるものである。

一方、引用商標は、「つくも」及び「九十九」の文字を明朝体の活字体で2行に縦書きにしてなるものである。

両商標から生ずる称呼を比較すると、本件商標からは「ツクモ」の称呼を生じ、引用商標からも「ツクモ」の称呼を生ずるから、両商標は、称呼上類似する商標である。

また、両商標から生ずる観念を比較すると、本件商標からは「九十九」の観念を生ずるのに対し、引用商標からも「九十九」の観念を生ずるから、両商標は観念上互いに類似する商標である。

そして、本件商標及び引用商標の指定商品は、ともに第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」であって、指定商品は同一である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

(4)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、請求人のホームページに開設する「KIKUSUI ONLINE SHOP(菊水オンラインショップ)」(甲第9号証)に示すとおり、「米焼酎 九十九」を平成15年9月に販売を開始し、現在に至るまで、継続して販売を行っている。

したがって、本件商標の登録査定時には、既に、請求人は、引用商標を付した「米焼酎」を販売しており、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

(5)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

3 答弁に対する弁駁

請求人は、被請求人の答弁に対し弁駁していない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、別掲のとおり、毛筆で表されているとは認識できるが、一見して如何なる文字を書したか不明であり、本件商標に係る指定商品の一般的取引者、需要者が本件商標を漢字の草書体のような崩した文字として判読することは困難というべきである。

そうすると、本件商標は、全体としては、毛筆で書かれた特異な線の塊のような印象を有する特定の称呼及び観念を生じない商標とみるのが自然である。

一方、引用商標は、「九十九」の和数字と「つくも」の平仮名文字を二列に縦書きしてなるものであり、「つくも」の平仮名は「九十九」の和数字の読みを表したものと自然に把握できるものであるから、これより「ツクモ」の称呼を生ずる。「九十九」は、植物「フトイ」の異称の意味を有し、「九十九」に「髪」を付加した「九十九髪」は「老女の白髪」の意味を有するものとされているが(広辞苑第五版:乙第5号証)、特定の観念が直ちに生ずるとまでは言えないものであるというのが相当である。

そうとすると、両者は、その外観の構成全体を著しく異にするものであって、全く印象の異なる外観上非類似の商標であり、称呼及び観念上は比較すべきものではないものである。

したがって、本件商標と引用商標とは、指定商品が「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」で同一の商品であることは認められるが、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しても誤認混同を生ずるおそれのないものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号判決参照)。

2 商標法第4条第1項第15号について

請求人の提出に係る周知・著名性に関する甲第9号証をみると、請求人の商品に関するインターネットによる紹介のみであって、該商品に引用商標を付していつ頃から製造販売し、どの程度の売り上げがあるのか、宣伝、広告をインターネット以外の如何なる媒体で行ったか等については、何ら提出されていないし言及されていないものであるから、この程度の証拠のみをもってしては、引用商標が商品「焼酎」に使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知・著名性を獲得していたとは認め難いものである。

そして、上記したとおり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても区別し得る商標として明らかに別異のものであり、しかも、引用商標は、取り立てて独創性を有する商標とはいえないものである。

そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起して、請求人若しくは請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである(平成10年(行ヒ)第85号判決参照)。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

3 請求人の主張について

請求人は、甲第3号証ないし甲第8号証を挙げて、本件商標の称呼が「ツクモ」である旨主張している。

しかしながら、通常、商標の称呼及び観念は、商品の取引界において、取引者、需要者の間から自然に生ずるものである。特に、本件商標のように、直ちに特定の称呼が生じない商標にあっては、一般の需要者によって称呼が徐々に定まっていくのであって、商標を採択する者の意図によって恣意的に特定の称呼が生じるものではないと考えるのが普通である。

そして、商品「焼酎」のラベル等に、産地、製造販売地ならびに商品の品質、その他の記述的な表示を誇称的に付すことは、実際の取引において通常に行われていることであり、その行為をもって直ちに本件商標が「ツクモ」の称呼を生じると考えることはできないというべきである。

そしてまた、本件審判の無効理由は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号であって、被請求人の上記商標の実際の使用方法とは直接的には関係がないものである。

したがって、請求人の主張は失当である。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反して登録されたものではないから、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標は、別掲に示したとおりの構成からなるところ、毛筆をもって何らかの文字の如き形象を表したものとはいえるとしても、その態様は極めて特異なものであって、如何なる文字を表したものか明らかではなく、一般的な取引者、需要者が特定の文字として判読することは困難なことといわなければならない。

そうとすれば、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生ずることはないものとみるのが自然である。

他方、引用商標は、前記のとおり、「つくも」の平仮名文字と「九十九」の和数字とを二列に縦書きしてなるものであり、「つくも」の平仮名文字は「九十九」の和数字の読みを表したものと把握できるから、これより「ツクモ」の称呼を生ずるものということができる。

また、「九十九」の語義としては、一般に広く知られているものとはいえないが、「植物のフトイの異称」あるいは「九十九髪として老女の白髪」の意味合いを有していることが認められる(広辞苑第五版 乙第5号証)。

(2)そこで、本件商標と引用商標との類否についてみるに、上記したとおり、本件商標からは特定の称呼及び観念を生ずることはないものと認められるから、引用商標から「ツクモ」の称呼を生じ、「植物のフトイの異称」あるいは「九十九髪として老女の白髪」の意味合い(観念)を生ずるとしても、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念については比較すべくもないものである。

また、両商標の外観についてみても、本件商標は、別掲に示したとおり、その態様は極めて特異なものであり、引用商標とはその外観において全く別異のものであって、この差異から受ける視覚的印象も明らかに異なるものであるから、これらを時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において紛れるおそれはないものといわなければならない。

(3)請求人の主張について

請求人は、被請求人の麦焼酎に貼付されている裏貼りラベルには「壱岐 九十九(いき つくも)」の文字が表示されており、しかも、その「九十九」の文字は殊更に大きく表示されており、ラベルの説明からみれば、被請求人は本件商標を「ツクモ」と読ませていることは明らかである旨主張している。

確かに、商標の認定・判断にあたっては、商標法第27条の規定によって判断すべきものではあるが、取引の実情をも踏まえて判断することも必要であり、例えば、称呼の認定にあたって、本件商標が付された麦焼酎がその出願前から「ツクモ」と称呼されて取引者、需要者の間に広く認識されていたというような実情があれば、そのような取引の実情を斟酌することも必要なことということができる。

しかしながら、請求人の提出に係る甲第3号証ないし甲第5号証等は、麦焼酎の説明やラベルに使用されている文字の由来等が記載されているにすぎないものであって、本件商標の出願前から、本件商標に係る麦焼酎が「ツクモ」の称呼をもって取引者、需要者の間に広く認識されていたというような実情を示すものではなく、このような単に、商標権者が商標の使用に際して作成したラベルや商標についての説明によって、本件商標の構成態様等を認定・判断することは適切なこととはいえない。

したがって、この点についての請求人の主張は採用できない。

(4)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

そして、本件商標が取引の場において「ツクモ」の称呼によって取引されている場合があるとしても、上記した外観における顕著な差異を考慮すれば、本件商標と引用商標とは、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。

2 商標法第4条第1項第15号について

請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも該当する旨主張して、インターネットのホームページである「KIKUSUI ONLINE SHOP(菊水オンラインショップ)」の1頁を印刷(甲第9号証)して提出している。

しかしながら、甲第9号証は、請求人のオンラインショップにおける「米焼酎 九十九 720ml」に関する商品販売用の記事であり、製造方法についての簡単な説明や価格等が記載されているにすぎないものであって、引用商標の著名性を裏付ける証拠となり得るものではない。そして、請求人は、他に、引用商標に係る商品の売上高や販売地域あるいは新聞や雑誌・TVコマーシャル等の広告宣伝の回数・内容等、引用商標の著名性を認めるに足る証拠を何ら提出しておらず、引用商標の著名性についての具体的な主張もしていない。

そうとすれば、引用商標に係る「米焼酎九十九」が請求人の主張しているように、平成15年9月に販売を開始し現在に至るまで継続して販売されているとしても、請求人の提出に係る甲第9号証のみをもってしては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されていたものとは認められない。

しかも、前記したとおり、本件商標と引用商標とは十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、他に混同を生ずるとみるべき格別の事情も見出し得ないから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものということはできない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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