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Trademark Appeal Case

著名商標の類否と不正目的

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2009−900422(T2009−900422/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5255220号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5255220号商標(以下「本件商標」という。)は、「American&Ficth」の文字を標準文字で表してなり、平成20年3月3日に登録出願、第25類「アメリカ製の被服,アメリカ製のガーター,アメリカ製の靴下止め,アメリカ製のズボンつり,アメリカ製のバンド,アメリカ製のベルト,アメリカ製の仮装用衣服,アメリカ製の運動用特殊衣服」を指定商品として、同21年7月13日に登録査定、同年8月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由

(1)商標法第4条第1項第15号について

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、世界的に有名な衣料品企業であるAbercrombie&Fitch Co.(以下「アバクロ社」という。)の子会社である。

アバクロ社は、その業務に係る「被服、かばん、ベルト、履物、身装品、香水等の化粧品」等について、「Abercrombie&Fitch」の文字よりなる商標(以下「申立人商標」という。)を1990年代より使用し、申立人商標は、アバクロ社の上記商品を表示するものとして、我が国の取引者・需要者の間において、本件商標の登録出願時はもとより、その設定登録時においても著名なものとなっていた。

本件商標は、申立人商標と外観上類似する商標である。

また、本件商標の指定商品は、申立人商標が使用される商品と消費者及び製造者が共通し、極めて近似した商品である。

したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、該商品がアバクロ社又はアバクロ社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標である。

(2)商標法第4条第1項第19号について

前記(1)のとおり、申立人商標は、アバクロ社の業務に係る商標として、日本国内のみならず、少なくとも米国において本件商標の登録出願時及び登録時において、需要者に広く知られていたものであり、本件商標は、申立人商標と外観上類似するものである。

したがって、本件商標は、申立人商標の著名性ないしは名声にただ乗りする意図を持ってなされた出願であり、「不正の目的をもって使用するもの」に該当する商標である。

(3)商標法第8条第1項について

申立人の引用する国際登録第941384号商標(以下「引用商標」という。)は、「Abercrombie&Fitch」の文字を横書きしてなり、第18類、第25類及び第35類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2007年9月5日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、同年9月18日に国際登録されたものである。

本件商標は、申立人商標と同一の構成よりなる引用商標とは、前記(1)のとおり、外観において互いに紛らわしい類似の商標である。

また、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品中、第25類に属する商品と同一又は類似の商品といえる。

(4)むすび

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号、同第19号又は同法第8条第1項に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第15号について

ア 申立人商標の周知著名性

(ア)甲第1号証ないし甲第7号証によれば、以下の事実を認めることができる。

アバクロ社は、1892年に、米国ニューヨーク州に創業されたアウトドア用品及びスポーツ用品を取り扱う企業であった。

その後、1988年にリミテッド社(現リミテッド・ブランズ社)に買収され、1992年ころから、20代前半の需要者を対象としたカジュアル衣服の販売へと事業の転換をし、申立人商標を使用した被服等は、米国において若い世代を中心とした需要者層に人気のある商品となり、2007年(平成19年)12月末現在、全米で約360店舗を展開している。

一方、申立人商標を付したカジュアル衣料は、日本においても、2004年(平成16年)ころより、若者を中心に購読される雑誌等で盛んに宣伝され、「アバクロ」の略称をもって、通信販売等により日本の市場に浸透していった。

そして、アバクロ社の年間純売上高は、2004年は約20億USドル、2005年は約27億8400万USドル、2006年は約33億1800万USドル、2007年は約37億4900万USドル、2008年は約35億4000万USドルに達するものであった。

また、日本における直営店の営業は、2009年(平成21年)12月15日であったが、それ以前の2007年(平成19年)8月には既に新聞に掲載されていた。

(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、申立人商標は、本件商標の登録出願時である平成20年3月3日の時点及びその査定時である平成21年7月13日の時点において、アバクロ社の業務に係る被服等を表示するものとして、我が国の若者を中心とした需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。

イ 本件商標と申立人商標との類似性

本件商標は、前記1のとおり、「American&Ficth」の文字を標準文字で書してなるものである。

これに対して、申立人商標は、「Abercrombie&Fitch」の文字よりなるものである。

そうすると、本件商標と申立人商標は、その後半部における「&Ficth」と「&Fitch」のみを抽出して観察すれば、いずれも「&」、「F」、「i」、「c」、「t」及び「h」の文字及び記号から構成されており、単に「c」と「t」の位置を変更しただけにすぎないものであるから、両者は外観上相紛らわしいものということができる。

しかし、本件商標と申立人商標は、いずれも構成全体が一体的に表されているものであり、加えて、申立人商標が「Fitch」と略称され、これが周知著名性を獲得したという事実を認めるに足る証拠の提出はないから、両商標中の後半部の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではない。 さらに、両商標の前半部における「American」の文字部分と「Abercrombie」の文字部分は、前者が「アメリカの、アメリカ人」等を意味する英語として、我が国においてよく知られているものであり、また、後者の「Abercrombie」は、「アバクロ」とも略称され、申立人の使用する商標の一部として、我が国の若者を中心とした需要者の間に広く知られているものである。

以上の事情を考慮すれば、看者の注意を強く引く前半部において、「American」と「Abercrombie」の明らかな差異を有する本件商標と申立人商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上互いに紛れるおそれはないというのが相当である。

したがって、本件商標と申立人商標は、外観上類似する商標ということはできない。

また、本件商標から生ずると認められる「アメリカンアンドフィックス」の称呼と申立人商標から生ずると認められる「アバクロンビーアンドフィッチ」とは、語調、語感が明らかに相違しており、これらをそれぞれ一連に称呼するときは、判然と区別し得るものである。

したがって、本件商標と申立人商標は、称呼上類似する商標ということはできない。

さらに、本件商標と申立人商標とは、いずれも特定の観念を生じない造語と認められるから、観念上は比較することができない。

以上によれば、本件商標と申立人商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

ウ 出所の混同

前記イ認定のとおり、本件商標は、申立人商標とは、商標において非類似のものというべきである。

そうすると、申立人商標がアバクロ社の業務に係る被服等を表示するものとして、本件商標の登録出願時には既に、我が国の若者を中心とした需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標に接する需要者が直ちに申立人商標を想起、連想することはないとみるのが相当である。

してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品がアバクロ社又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標と認めることはできない。

この点について、申立人は、甲第10号証及び甲第11号証を提出し、申立人商標中の「Fitch」が「Ficth」と間違えて表示された事例及び「American&Ficth」が「Abercrombie&Fitch」と混同する表示と批判した事例を挙げるが、これらの事例は、商取引全体からみれば、極めてわずかな事例といえるものであり、これら事例のみをもって、我が国の被服の分野の需要者全般の認識と推認することはできない。

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ということはできないから、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。

(2)商標法第4条第1項第19号について

前記(1)イ認定のとおり、本件商標は、申立人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違する非類似の商標である。

そうすると、本件商標は、申立人商標の周知著名性にフリーライドするなどの不正の目的をもって使用をする商標ということもできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しないものと認める。

(3)商標法第8条第1項について

引用商標は、前記2(3)のとおり、「Abercrombie&Fitch」の文字を横書きしてなるものであるから、申立人商標と実質的に同一

の商標ということができる。

そうすると、前記(1)イで認定した理由と同様の理由により、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に該当しないものと認める。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号並びに同法第8条第1項の規定のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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