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Trademark Appeal Case

著名芸名の商標登録無効

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2009−890101(T2009−890101/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5046485号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5046485号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成18年11月13日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成19年3月20日に登録査定、同年5月11日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第73号証を提出した。

(1)請求人適格について

請求人は、「三代目彫よし」ないし「HORIYOSHI III」として世界的に著名なカリスマ・タトゥー・デザイナーである中野義仁が、そのデザインに係るタトゥー・デザインを利用したアパレル製品等を製造・販売するため、平成20年に設立された法人であり、中野義仁がその取締役を務めている(甲3)。

請求人は、中野義仁の承諾を得たうえで、平成20年9月26日に、「HORIYOSHI III」の文字よりなる商標を出願したところ(甲4)、平成21年4月9日に、本件商標を含む登録商標を引用した拒絶理由通知を受けた(甲5)。そこで、請求人は、かかる拒絶理由を解消すべく、本件商標の登録について、無効審判を請求するに至ったのである。

したがって、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有する。

(2)商標法第4条第1項第8号該当性について

ア 「三代目彫よし」が他人の著名な芸名であること

(ア)「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、世界的に著名なカリスマ・タトゥー・デザイナーである中野義仁の芸名として著名である。

中野義仁は、1946年(昭和21年)に静岡県島田市で生まれ、21歳の時、横浜の伝説的な刺青師であった「初代彫よし(村松致次)」によって背に天女と龍の刺青を彫り、1971年に「初代彫よし」の息子である「二代目彫よし」の弟子となり、刺青師・彫師としての自己研鎖に励んだ。8年後の1979年、中野義仁は、その「二代目彫よし」の後を継いで「三代目彫よし/HORIYOSHI III」を襲名し、1985年にはローマで開催された「タトゥーコンベンション」に招待され、その力強い作品は世界中のタトゥーファン・刺青愛好家にセンセーションを巻き起こした。また、同年、スウェーデンの国立東洋博物館において、刺青を日本の文化遺産の一つであることを提示した「三代目彫よし日本伝統刺青展」も開催された。以降、中野義仁は、日本のタトゥー・デザイナー「三代目彫よし/HORIYOSHI III」として世界中に広く知られるようになり、その後も欧米各国での各種「タトゥーコンベンション」に参加し、優勝経験を持つほか、世界各国のタトゥーファン・刺青愛好家と積極的に交流を図り、これら世界中のファンや愛好家からは、日本の伝説の刺青師・彫師、タトゥー・デザイナーとして、広く知られるに至っている(甲10)。

中野義仁は、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」として30年以上も刺青師・彫師として活動する傍ら、現在も、欧米やアジアのタトゥーファン・刺青愛好家と交流し、また、世界の刺青に関する風俗、文化などの情報収集や研究資料を収集し、刺青に関する歴史的資料を展示する「文身歴史資料館」を開設するなど、日本の伝統的な刺青の文化を後世に残す活動も積極的に行っている(甲11)。

1999年に開設された上記「文身歴史資料館」では、20世紀中期より欧・米各国、香港などで活躍した刺青師達の使用した刺青機を始めとして、現在各地で使用されている様々な刺青機や、サモア、ボルネオ、タイ等の国で行われている伝統的刺青手彫り道具、日本の伝統技法による手彫り用具一式、及び顔料や墨などのほか、江戸時代(幕末期)より明治にかけての入墨刑及文身禁止令等に関する司法刑罰資料や、かつて南洋各地で行われていた伝統的刺青風俗資料、戦前から戦後にかけての日本刺青風俗資料など、歴史的にも価値の高い貴重な資料を展示している。同「文身歴史資料館」は、近年では外国人向けの日本の観光ガイドブックにも掲載され、2008年には、アメリカ政府観光協会から資料館情報の提供の依頼もあるなど、世界的に見ても価値の高い資料が展示された資料館として貴重な存在となっている(甲9)。

また、中野義仁は、後記(イ)のとおり、日本を代表する刺青師・彫師としての活動に留まらず、タトゥー・デザイナーとしての芸術活動にも精力を注いでおり、これまでに数多くの画集を発表し、いずれも高い評価を受けている。また、画廊での個展やライブ・ペインティングの開催や、映画の監修にも携わるなど、その活動の幅は広く、刺青師・彫師の枠にとどまらず、刺青文化を通じての自己表現を行うタトゥー・デザイナーとして、多方面で活躍し、何百年もの間培ってきた日本の刺青文化をネクストレベルヘ引き上げ、かつ、世界中へ日本の刺青文化を発信するための研鑽を怠らない。刺青師・彫師としての活動に留まらない中野義仁のかかる姿勢は、伝統の継続、固守をしつつ、新しい世界を展開する、という彼の座右の銘「守(しゅ)破(は)離(り)」(伝統をそのまま継承するを“守”、守に新しい方法や考えを加味するを“破”、破を更に発展させ独自の世界を創造するを“離”とする)に基づくものであり、かかる各方面での活動によって、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」の芸名は、需要者に広く知られたものとなっており、また、本件商標と同一の構成よりなる標章(以下「引用標章」という。)は、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」のロゴとして、需要者の間に広く知られている。

(イ)タトゥーデザイナーとしての多岐に渡る活動

中野義仁は、刺青師・彫師としての活動に加えて、以下のようなタトゥー・デザイナーとしての活動を行い、日本の刺青文化の発展に寄与してきた。

例えば、刺青のデザインとして使用するための「刺青画集」として、数年ごとに画集を出版し、これらの画集は、その高度な美術性と独特の世界観から、いずれも大変な人気となっており、特に1998年に刊行された第一弾刺青画集「百鬼図」は、完全オリジナルの刺青原画集という金字塔を打ちたてたものとして知られている(甲12〜甲17)。

そして、2009年3月18日から同年4月30日まで、銀座のヴァニラ画廊において、「三代目彫よし/HORIYOSHI III 刺青原画展」“稀代の刺青師・三代目彫よし初の大個展開催”が開かれ、大変な人気を博した。同個展開催期間中、「三代目彫よしライブペインティング&サイン会」が行われ、これらの様子は多数のブログ等で紹介された(甲9、甲18〜甲28)。

また、明治の名匠「彫千代」の軌跡を編纂した「Beauty and Violence HORICHIYO」(甲29)や、上記の刺青画集「百鬼図」「水滸列伝図譜」「生首図聚」「幽霊鬼斗卅六釁圖」の原画制作のために書かれたスケッチを一冊に収めた「THE SKETCHES OF HORIYOSHI III」(甲29)や、プリンセス・ビクトリア(スウェーデン皇太女)もご観覧されたという、ストックホルム国立東洋博物館で開催され、刺青を日本の文化遺産のひとつであることを提示した「三代目彫よし日本伝統刺青展」の図録をまとめた「The Art of Japanese Tattoo HORIYOSHI III」(甲30)などを出版し、日本の伝統的な刺青の文化を後世に残す活動も積極的に行っている。

さらに、中野義仁は、第58回毎日映画コンクール日本映画大賞、第46回ブルーリボン賞作品賞をはじめ数多の映画賞を勝ち取った名作映画「赤目四十八瀧心中未遂」の中で、俳優・内田裕也が演じた彫師「彫眉」の人物像や作業風景、刺青実技指導の監修も行うなど(甲31〜甲35)、従来の刺青師・彫師の枠を超えたタトゥー・デザイナーとしての中野義仁の活動は、以下の各種メディアにおいて高く評価されている。

(ウ)各種メディアでの紹介

従来の刺青師・彫師の枠を超えたタトゥー・デザイナーとしての中野義仁の活動は、国内はもちろんのこと、海外においても高く評価され、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」に関する多数の書籍・写真集が日本語・英語・イタリア語・ドイツ語等の各種言語で出版されている(甲36〜甲54)。

また、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、タトゥー専門情報誌である「TATTOO BURST」に頻繁に登場しているほか(甲55)、最新号では、「TATTOO BURST 10周年記念特別企画」として、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」が大々的に特集されている(甲9)。さらに、かかる「TATTOO BURST」において連載されていた漫画「文身百華艶」の単行本の巻末では、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」によるエッセイが掲載されている(甲56)。

その他、2002年10月に出された「三代目彫よし/HORIYOSHI III」のドキュメンタリーフィルム「日本伝統刺 青彫もの」は、海外国際映画祭へ出品されたほか(甲57)、英語名である「HORIYOSHI III」は、英語版ウィキペディア(甲58)、「The Japan Times」(甲59)の英語メディアでも紹介され、さらには、2005年7月の雑誌「TIME」における特集「Best of Asia」の中で、「Best Tattoo Parlor」を受賞するなど(甲60)、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、世界中から注目されている日本を代表するタトゥー・デザイナーである。

かかるタトゥー・デザイナーとしての中野義仁の幅広い活動とその人柄から、彼のデザインしたタトゥーを求めて、彼のスタジオがある横浜に通うタトゥーファン・刺青愛好家は国内・海外を問わず、その後を絶たない。このことは、2億人が使う世界最大級SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)である「MySpace(マイスペース)」上における「三代目彫よし/HORIYOSHI III」のページにおいて、主に外国人を中心として6000人以上のフレンド登録がされていることからも明らかであるが(甲61)、そのほか、様々な世界中のウェブサイトやブログ等においても「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、尊敬を持って紹介され、世界中のタトゥーファン・刺青愛好家の間で伝説的な存在として知られている(甲61〜甲72)。

さらに、中野義仁は、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」のデザインした刺青画をもとにした「バッグ、トートバッグ、ロングスリーブシャツ、タンクトップ、手彫り用キット、オイルライター、ポスター、缶バッジ、キャップ、灰皿、Tシャツ、ニット帽、財布、ボーリングバッグ、手拭い、ガスライター、キーホルダー、携帯ストラップ、スケートボード」を販売し、これらについてもそのデザイン性の高さから大変な人気商品となっている(甲73)。

(エ)以上のことから、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、日本を代表する刺青師・彫師の芸名として、本件商標の出願日である2006(平成18)年11月において、需要者に広く知られた著名な芸名となっていたといえる。

イ 本件商標の構成中に他人の著名な芸名が含まれること

本件商標は、その構成中に他人の著名な芸名「三代目彫よし」を書してなるものであり、また、本件商標を出願するにつき、中野義仁の承諾を得ているものではない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

前記(2)で述べたとおり、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、日本を代表する刺青師・彫師である中野義仁の芸名として、本件商標の出願日において、需要者に広く知られたものとなっていたから、かかる著名な芸名であり、また、著名な引用標章と全く同一の構成からなる本件商標が、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」がデザインした刺青画をもとにして販売する各種商品「ロングスリーブシャツ、タンクトップ、キャップ、Tシャツ、ニット帽」等と同一の指定商品を含むその指定商品について使用された場合、これに接する需要者・取引者は、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」又はこれと経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれが極めて高いものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第19号について

前記(2)で述べたとおり、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、日本を代表する刺青師・彫師である中野義仁の芸名として、本件商標の出願日において、需要者に広く知られていたものであるところ、本件商標は、かかる著名な芸名であり、また、著名な引用標章と全く同一の構成からなるものであり、かかる著名な芸名に化体した業務上の信用にフリーライドするという不正な目的を持って使用するものというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(5)商標法第4条第1項第7号について

前記(2)で述べたとおり、「三代目彫よし/HORIYOSHI III」は、日本を代表する刺青師・彫師である中野義仁の芸名として、本件商標の出願日において、需要者に広く知られていたものであるところ、本件商標は、かかる著名な芸名であり、また、著名な引用標章と全く同一の構成からなるものであるから、「三代目彫よし」に化体した高い信用・評判・名声にフリーライドし、その稀釈化を引き起こすおそれがあるというべきであって、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものといえる。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきものである。

3 被請求人の主張

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

2005年に、知人に中野義仁を紹介にあたり、300万円の借用を求められ、結果紹介料となる。

商標権者は、平成元年に設立した有限会社ガレージ・ラッツを経て、平成11年に設立された会社であり、通算200億円以上の売上高を誇り、その旨を中野義仁に伝えて、アメリカでの販売及び日本での製造の許可を中野義仁にもらった。多額の投資が必要なため、商標登録の許可をもらい、その後、「三代目彫よし」、「HORIYOSHI III」の洋服の商標の申請をした。

契約は、全て口約束で、許可の内容は、こちらで商品のイメージを中野義仁に伝えて、一デザインにつき絵を描いてもらう名目で、一枚あたり10万円〜15万円で買い上げで商品化して、販売後は10%のロイヤリティを支払うものであった。

中野義仁に描いてもらった絵と一部10%のコミッションを含め、支払った金額は、わかっているだけで3,616,821円(決算報告書8期資料コピー:乙3)であり、当初、当方のプランは、アメリカに彫よしブランドを浸透させ、次に日本で販売をする目的であった。アメリカ、ラスベガスで2月と8月に世界3万社から集結する洋服の祭典、通称マジックショーと少し規模の小さいプロジェクトショーがあるが、2006年に、この大きなラスベガスマジックショーに出展させるために、44,661,201円(乙3)の投資をして、日本式の家にみたて大きなブースを作り、日本企業としては初めてのベストブースアワードを受賞して、もともと有名である中野義仁の面目や反響を得て、2007年には、ラスベガス、ニューヨークプロジェクトショーにて有名店からオーダーをもらったが、会社の億による赤字から生産をしたものの、販売には至らなかった。

生産に投資した金額は、32,824,758円(決算報告書7期資料コピー:乙2)である。少なくとも当社は、彫よしブランドに、81,102,780円を投資しており、刺青には縁のなかった商標権者の代表者もこのプロジェクトを成功させるためにも、中野義仁に背中に刺青を未完成であるが彫ってもらった。現在は、8億円の赤字の影響で商標権者の稼動は出来ていない現状である。

4 当審の判断

(1)請求人が本件審判を請求する法律上正当な利益を有することについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。

(2)「三代目 彫よし」の語について

ア 請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。

刺青師である中野義仁は、1979年(昭和54年)に、師事していた「彫よし」を襲名し、「三代目 彫よし」となった。1985年(昭和60年)にローマで開催された「タトゥーコンベンション」に招待されて以来、欧米各国で開催された「タトゥーコンベンション」に参加した。1999年(平成11年)には、「文身歴史博物館」を横浜に開設、2005年(平成17年)には、スウェーデンの国立東洋博物館で「三代目彫よし日本伝統刺青展」を開催し、日本文化の一つとしての刺青を紹介した。また、2009年(平成21年)3月に、上記「文身歴史博物館」の開設10周年を記念して、銀座「ヴァニラ画廊」で、初の個展「刺青原画展」を開催した(甲9、甲10など)。

さらに、中野義仁は、1998年(平成10年)から2007年(平成19年)にかけて、「三代目彫よし[刺青]画集」として、「百鬼図」(1998年3月13日発行)、「水滸列伝図譜」(2001年10月20日発行)、「生首図聚」(2004年5月20日発行)、「幽霊鬼斗卅六釁圖」(2007年8月10日発行)などを日本出版社より出版した。これらの画集の表紙には、「三代目彫よし」の文字も表示された(甲12〜甲15)。そして、これらの画集や中野義仁の著書は、「三代目 彫よし/HORIYOSHI III」の表示をもって、インターネットなどで紹介されたほか、中野義仁は、刺青師「HORIYOSHI III」として、本件商標の登録出願日までに、国内外の著者による書籍においても紹介され、これらの書籍は様々な言語で数多く出版されている(甲39〜甲51)。その他、中野義仁に関する記事は、刺青師「三代目 彫よし/HORIYOSHI III」として、本件商標の登録出願日までに、刺青(タトゥー)専門誌である「TATTOO BURST」に2002年7月ころから頻繁に掲載されたのをはじめ、刺青関連の雑誌等に掲載された(甲55、甲56、甲60、甲62、甲72等)。また、中野義仁は、1950年に創設された日本の映画賞であるブルーリボン賞を2003年度(平成15年度)に獲得した映画において、刺青実技指導をしたり(甲31〜甲35)、2002年(平成14年)10月に出版されたドキュメンタリーフィルム「日本伝統刺青彫りもの」を海外国際映画祭へ出展する(甲57)など、刺青師として様々な活動を行った。さらに、本件商標と同一の構成よりなる引用標章は、中野義仁の手がけた刺青と共に体の一部に表示されることもあるほか、中野義仁の制作に係るスケッチ集などにも表示され、刺青師である中野義仁のロゴマークといえる(甲42、甲44、甲49、甲51など)。(なお、インターネットにおける「三代目彫よし[刺青]画集」などの広告は、その掲載日が不明なものが多く、プリントアウトされた日付は、ほとんどのものが本件商標の登録出願後及び査定後のものである。)

イ 前記アで認定した事実を総合すると、「三代目 彫よし」は、刺青師である中野義仁を表示する雅号ないし芸名として、本件商標の登録出願日である平成18年11月13日及びその査定日である平成19年3月20日の時点において、国内外の刺青に関連する取引者、需要者は言うに及ばず、映画、絵画等の芸術に関連する分野においても、著名性を獲得していたものとみるのが相当である(この点に関し、被請求人は争うことを明らかにしていない。)。

(3)商標法第4条第1項第8号該当性について

本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、その構成中に、刺青師としての中野義仁の著名な雅号ないし芸名である「三代目 彫よし」の文字を含むものである。そして、被請求人は、商標権者が本件商標を登録出願するについて、中野義仁の承諾を得たことを明らかにする証拠の提出をしていない。

上記に関し、被請求人は、本件商標を登録出願するにあたり、中野義仁の許可をもらった旨主張し、乙第1号証ないし乙第4号証を提出する。

そこで、乙各号証を検討するに、乙第1号証は、商標権者が2006年2月及び同年8月に、米国ラスベガスで開催されたマジックショーに出展した際のブースの画像である。

乙第2号証は、商標権者の決算報告書(第7期/平成17年4月1日〜平成18年3月1日)であり、その10枚目(表紙を含む。)の「仮払金等の内訳書」には、「仮払金/イベント準備金」として「32,824,758」の記載がある。

乙第3号証は、商標権者の決算報告書(第8期/平成18年4月1日〜平成19年3月1日)であり、その7枚目(表紙を含む。)の「仮払金等の内訳書」には、「前払費用/彫りよし」として「3,616,821」の記載があり、また、後ろから4枚目の「販売費及び一般管理費」には、「マジックショー」として「44,661,201」の記載がある。

乙第4号証は、米国用のカタログと認められるところ、表紙には、引用標章が大きく表示され、2枚目には、「OGRENIZE JEANS CULTURE/HORIYOSHI III」の文字が大きく表示されており、他の頁には、「三代目 彫よし」のサインと共に三代目彫よしが描いたと認められる鬼などの絵やこれらの絵を図柄に用いたジーンズ、Tシャツ、キャップなどが掲載されている。

以上の乙第1号証ないし乙第4号証を総合すると、2005年(平成17年)から2006年(平成18年)にかけて、商標権者と「三代目 彫よし」たる中野義仁との間には、中野義仁が描いた絵を、商標権者の販売に係る被服に使用することについて、何らかの取り決めがあったことを窺うことができる。しかし、その取り決めが具体的にどのようなものであったかは、これに関するいかなる証拠の提出もないから明らかではない。そして、上記証拠をもって、商標権者が本件商標を登録出願するについて、中野義仁の承諾を得たものと認めることは到底できない。また、他に商標権者が本件商標を登録出願するについて、中野義仁の承諾があったという事実を裏付ける証拠は見出せない。したがって、被請求人の上記主張を認めることはできない。

以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものといわざるを得ないから、その他の無効の理由について検討するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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