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Trademark Appeal Case

不使用取消と商品区分

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2008−300942(T2008−300942/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4284388号商標(以下「本件商標」という。)は、「養毛力」の文字を横書きしてなり、平成7年1月30日に登録出願、第3類「発毛効果を有する養毛料」を指定商品として、同11年6月18日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録はこれを取り消す、との審決を求め、その理由及び答弁書に対する弁駁並びに回答書に対する弁駁(第2回)を次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1ないし第19号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙第1号証について

ア 乙第1号証とヘアドクター発毛科学研究所のホームページとの比較

ヘアドクター発毛科学研究所のホームページ(甲第3号証)によれば、「髪と健康ショップ」の欄には、乙第1号証に記載された商品と同一の「育毛温泉キャップ」、「髪想いシャンプー」、「髪想いコンディショナー」、「通心育毛カウンセリング」、「通心毛髪診断」が記載されているが、被請求人が販売していると主張する商品「養毛力」についての記載は全くない。被請求人は、商品「養毛力」について「現在まで、・・通信販売で販売している」と述べているにもかかわらず、通販ルートのうちの一つである自社ホームページに商品「養毛力」を掲載していないのは疑問である。

そして、上記ホームページにおいて、商品「養毛力」の代わりに掲載されているのは商品「薬用発毛力」であり、その説明も「発毛の3大要素」であるのに対し、乙第1号証左下欄の説明文には「養毛の3大要素」との記載があり、両者の表現は似通っている。

イ 乙第1号証における記載内容の矛盾について

乙第1号証左下欄の「養毛力」の説明文において「“発毛力”は毛母細胞を活性化・・・」との記載がある。これは、乙第1号証左下欄が「養毛力」の説明文であることと矛盾する。

ウ 上記の事実を総合的に勘案すると、乙第1号証は、現実に存在する商品「薬用発毛力」の記事と、現実には存在しない商品「養毛力」の記事とを事後的に置き換えることにより意図的に作成されたものである可能性がある。

そうすると、乙第1号証は、登録商標の使用証拠としては認められない。

(2)使用に係る商品について

被請求人は、「発毛効果を有する養毛料」について本件商標を付して販売しているとし、これが「頭髪用化粧品」である旨述べている。

しかしながら、請求人は、使用に係る商品は、以下のとおり、第3類「頭髪用化粧品」に属する商品ではなく、第5類「薬剤」の「毛髪用剤」のうち、いわゆる「発毛促進剤」の範疇に属する商品と考える。

ア 本件商標の指定商品について

本件商標の指定商品は、商標登録原簿の記載によれば、第3類「発毛効果を有する養毛料」である。

本件商標の登録出願から登録審決に至るまでの経緯をみると、本件商標は、当初、第3類「せっけん類、合成香料、薫料、化粧品、つけまつ毛、かつら装着用接着剤、歯磨き、つや出し剤」を指定商品として、平成7年1月30日に登録出願された。そして、審査において、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶され、審判請求後、指定商品を「発毛効果を有する養毛料」と補正した結果、登録の審決がなされたものである。

そうすると、上記指定商品は、出願当初の第3類の商品範囲を超えて補正することはできないのであるから、当該指定商品は、第3類の「化粧品」の範疇に属する商品というべきである。

イ 特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」(甲第4号証)について

上記区分解説の第5類及び第3類には、以下のように記載されている。

「第5類『薬剤』中、<外皮用薬剤>」には、「『毛髪用剤』:医薬品として取引されるものだけで、頭髪用化粧品としてのヘアートニック等は含まれない。」

「第3類『化粧品』」には、「この概念には薬事法に規定する“化粧品”の大部分及び“医薬部外品”のうち、人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し・・・が含まれる。・・・ただし、薬事法にいう“医薬部外品”のうち、使用目的が医薬品的用途に使用されるものとして取引される『薬用ベビーオイル』『薬用ベビーパウダー』は第5類に属する。」

上記から言えることは、医薬品として取引される「毛髪用剤」は、第5類「薬剤」に属すること、したがって、「頭髪用化粧品」などは当然のことながら第5類には含まれないこと、また、第3類の「化粧品」には「医薬部外品」に属する商品も存在するが、あくまでも「人体に対する作用が緩和なものであること」である。

ウ 特許庁の「商品・役務名リスト」の表示(甲第5号証)について

特許電子図書館(IPDL)における「商品・役務名リスト」によれば、第5類と第3類に属する商品は、以下のとおりである。

(ア)第5類の「薬剤」に属する商品:「養毛剤」(平11−073847)、「発毛促進剤」(平09−035111)

(イ)第3類の「頭髪用化粧品」に属する商品:「ポリフェノールを含む養毛料」(2007−032855)、「刺激性を有する頭髪用養毛料」(平10−049559)、「養毛料」(平11−019756)

一見すると、第5類「育毛剤」と第3類「育毛料」との区別はつきにくいが、その名称の如何に拘らず、現実に商品説明などを経て、前記イの区分解説に基づいて、第5類又は第3類の商品であるかを判断したものと思われる。

そして、上記「商品・役務名リスト」によると、「発毛促進剤」は、第5類に属する商品とされている。

エ パンフレット(乙第1号証)について

乙第1号証の本件商標「養毛力」の掲載欄に、「発毛促進剤」、「・・・一人三役の万能発毛促進剤」、「毛母細胞を活性化し、太さとハリのある髪を生えさせたい」等の記載のとおり、当該商品が「発毛促進剤」であることを明確に示している。

また、最下段の医師の説明には、「育毛剤というのは根気よく付けるというのが最も重要です。この養毛力は1本30mlという2回〜5回で使い切れる小分けタイプなので、開封後の変質や雑菌類による汚染もなく、毎日新鮮で効果の高い状態でいつでもどこでも付けられるという手軽さがポイントです。ホームケアにはもってこいの育毛剤ですね。」との記述がある。

これらの記述からすれば、使用に係る商品は、化粧品に属する「人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し・・・」の範疇を超える商品であることは明らかであり、「使用目的が医薬品的用途に使用される」商品といえるから、「医薬品」に属する商品というべきである。

なお、「医薬品」に属する同種の商品として、大正製薬の男性用発毛剤「リアップ」のインターネット情報(甲第6号証)によれば、当該商品は、医薬品であり、使用に係る商品と効能、効果がほとんど同一であるから、このことからも、使用に係る商品は、第5類の毛髪用剤に属する「発毛促進剤」といえるものである。

他方、使用に係る商品が「化粧品」に属する商品であるならば、化粧品の効能・効果については、「薬事法の施行について」による「承認を要しない化粧品についての効能効果の表現の範囲」(平成12年12月28日医薬発第1339号厚生省医薬安全局長通知)」に定められている効能効果以外の薬理作用による効能効果の表現はできないはずである(「日本化粧品工業連合会 化粧品等の適性広告ガイドライン 2008年版」17、18頁:甲第7号証)。

したがって、使用に係る商品は、第5類に属する「発毛促進剤」であって、第3類の商品ではないものと確信するが、仮にそうでないならば、被請求人はこれを明確にする必要がある。

具体的には、被請求人が販売していると主張する商品「養毛力」が「化粧品」なのか、「医薬部外品」なのか、あるいは「医薬品」なのか明確にすることを求める。すなわち、「化粧品」であるならば、「製造販売届」が、「医薬部外品、医薬品」であるならば、「製造販売承認」が必要であるから、これらの書面の提出を要求する。

オ 過去の出願例について

第3類「・・・発毛促進剤、薬用育毛剤、薬用養毛剤」等を指定商品として、商標登録出願した事案において、平成11年10月1日付けで、要旨以下の拒絶理由通知が送付された(甲第8号証の1)。

「指定商品は、商標とともに権利範囲を定めるものであるから、その内容及び範囲は明確でなければならないところ、本願の指定商品中『薬用育毛剤、薬用養毛剤』は、その内容及び範囲を明確にしたものとは認められない。また、本願指定商品中『発毛促進剤』は、商品及び役務の区分第5類に属するものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第6条第1項の要件を具備しない。(以下、省略)」

これに対し、当該商標登録出願の出願人は、平成11年11月11日付けで「意見書に代わる上申書」及び「手続補正書」を提出して、第3類の指定商品を「ヘアトニック、ヘアローション、薬用育毛料、薬用養毛料、その他の養毛料」と補正すると同時に、「発毛促進剤」については、同日付けで第5類に分割出願した(商願平11−103973)。その結果、第3類の指定商品については、登録査定がされた(甲第第8号証の2)。また、第5類「発毛促進剤」を指定商品とする分割出願については、登録第4441042号として登録された(甲第8号証の3)。

以上の経緯からみても、「発毛促進剤」は、第5類に属する商品であることは明らかである。

(3)まとめ

前記のとおり、乙各号証によれば、使用に係る商品は、第5類に属する「発毛促進剤」であるから、本件審判請求に係る指定商品のいずれについても、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標を使用しているものとは認められない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項に基づき、取り消されるべきものである。

3 審尋に対する「回答書」に対する弁駁(第2回)

(1)請求人が、弁駁において一貫して主張しているのは、本件商標の使用に係る商品が「医薬部外品」であるか否かということではなく、当該使用商品は、第5類「薬剤」中の「毛髪用剤」に属する商品ということである。

すなわち、使用商品は、被請求人の提出した証拠からみても、指定商品である第3類「発毛効果を有する養毛料」(「化粧品」中の「頭髪用化粧品」に属する商品)ではないから、指定商品について本件商標を使用しているものとは認められない、というものである。

ア 薬事法等の取扱い

(ア)本件指定商品について

本件指定商品の表示中「養毛料」は、化粧品業界の商品表示を規制する化粧品公正競争規約別表1「種類別名称」の中の「頭髪用化粧品」の1種として「トニック、ヘアローション、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアパック」を包括する概念として規定されている(甲第9号証)。

したがって、本件指定商品は、「養毛料」に「発毛効果を有する」の修飾語が付加されているものの、第3類「頭髪用化粧品」中の「養毛料」であることは明白であり、かつ、該「養毛料」の範囲を出ないものというべきである。

これに対し、修飾語である「発毛効果を有する」の部分は、薬事法では個別承認により「医薬品」のみに認められる効能であり、化粧品には医薬品成分を含むことは薬事法上許されていないから、「発毛効果を有する養毛料」は、現実には存在し得ない商品である(甲第10号証)。

(イ)本件使用商品について

「発毛促進剤」は、医薬品又は医薬部外品と認識され、「医薬品」であれば第5類の商品であることに疑いはない。

一方、「医薬部外品」であれば、

「この概念には薬事法に規定する“化粧品”の大部分及び“医薬部外品”のうち、人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し・・・が含まれる。・・・ただし、薬事法にいう“医薬部外品”のうち、使用目的が医薬品的用途に使用されるものとして取引される『薬用ベビーオイル』『薬用ベビーパウダー』は第5類に属する。」

したがって、医薬部外品であっても、個別具体的に判断して、第3類化粧品に属する場合と第5類薬剤に属する場合とがあることを示唆している。

そこで、乙第1号証が真正であると仮定し個別具体的に検討すると、その左下蘭には、「養毛の3大要素を劇的に改善」、「毛母細胞に刺激を与え細胞分裂を活発に促します。」との記載がある。

仮に被請求人の商標の使用商品が「医薬部外品」であったとしても、もはや第3類化粧品の概念である「人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つことを目的」とするとは到底いえず、「使用目的が医薬品的用途に使用されるもの」である第5類「薬剤」に該当するものというべきである。

(ウ)「製造販売承認」について

被請求人は、請求人が平成20年11月13日付弁駁書において要求した「製造販売届」又は「製造販売承認」を提出していない。当該書面の提出ができないのであれば、被請求人は「製造販売承認」を取得していないと考えられ、ひいては、商標の使用商品を製造販売していないものと考えられる。また、「発毛効果を有する」の部分は、薬事法では個別承認により医薬品のみに認められる効能であること、及び化粧品には医薬品成分を含むことは薬事法上許されないから、「発毛効果を有する養毛料」は、現実には存在しえない商品であるなどのために「製造販売承認」を提出できないと推察されても止むを得ないというべきである。

(2)まとめ

以上のとおり、本件商標の使用に係る商品は、被請求人の提出した乙第1号証(パンフレット)中に「養毛剤」、「育毛剤」、「発毛促進剤」と表示され、当該表示からも第5類「薬剤」中、「毛髪用剤」に属する商品と認められること、及び当該商品を紹介する文言も「養毛の3大要素を劇的に改善」、「毛母細胞に刺激を与え細胞分裂を活発に促します。」との記載から、これが、第3類の「化粧品」の概念に属する「人体に対する作用が緩和なものであって・・すこやかに保つことを目的とする」に該当するものとは到底いえず、第5類「薬剤」に属する「使用目的が医薬品的用途に使用されるもの」ということができるから、結局、本件商標は、指定商品である第3類「発毛効果を有する養毛料」について使用しているものとは認められないというべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し及び審尋に対する回答を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1ないし第7号証(枝番を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

(1)使用の事実

ア 本件商標の商標権者と「ヘアドクター株式会社」(以下「ヘアドクター」という。)は、本件商標の商標権(以下「本件商標権」という。)に関し、平成11年7月28日に商標使用権許諾契約を締結した(乙第4号証の1ないし3)。

イ ヘアドクターは、その業務に係る商品を掲載したパンフレットに、本件商標の指定商品である「発毛効果を有する養毛料」に本件商標と同一の商標を付して、少なくとも平成17年12月6日から現在まで、ヘアドクターが運営する店舗(新潟県長岡市城内町3丁目8−25)及び通信販売で販売している(乙第1号証)。

上記パンフレットは、平成19年9月14日に、株式会社誠晃舎の「総合チラシ」として、5,000部作成したものである(乙第3号証)。

ウ 頭髪用化粧品は、平成17年12月6日に、スノーデン株式会社よりヘアドクターに1,900本納品された(乙第2号証)。

(2)むすび

以上のように、本件商標は、その通常使用権者であるヘアドクターにより、少なくとも平成17年12月6日よりその指定商品について使用されているものであるから、請求人の主張は成り立たない。

2 審尋に対する回答書

(1)本件商標の指定商品中「養毛料」なる表現が、薬事法に規定する「医薬部外品」を含む表現であることについて

ア 当業界における商慣習

当業界では、医薬部外品の頭髪用商品に「養毛料」、「薬用養毛料」、「養毛剤」、「薬用養毛剤」、「育毛料」、「薬用育毛料」、「育毛剤」、「薬用育毛剤」、「発毛促進剤」、「薬用トニック」などと、その時々のおいて表現を使い分けるのが通例であり、即ち、薬事法の規定する「医薬部外品」であっても「養毛料」なる表現は、以前から一般的に使用されている事実がある。「養毛料」の文字のみであっても医薬部外品が含まれている場合がある。

イ 薬事法の「化粧品」について

薬事法で定める「化粧品」は「頭皮、毛髪をすこやかに保つ」等の表現のみ許され、その中に「養毛」なる表現は一切認められておらず、医薬部外品又は医薬品でしか表現できない。また、「養毛」なる効能効果を有することは「化粧品」には認められておらず、「医薬部外品」あるいは「医薬品」のみに認められるものである。

したがって、本件商標の指定商品中の「養毛料」を「養毛」の効能効果・標榜が認められていないはずの「化粧品」と限定するのは、このことからも不可解であり「化粧品」だけでなく「医薬部外品」を含む得る表現であると解するのが自然である。

(2)本件商標の指定商品である「発毛効果を有する養毛料」、薬事法に規定する「医薬部外品」を含む表現であることについて

ア 発毛効能を付した表現であること

本件商標の指定商品は、誤解を生じやすい単なる「養毛料」ではなく効能効果を有することをあえて明確に表記した「発毛効果を有する養毛料」であれば、なおのこと医薬部外品を含むと解するべきと考える。なぜならば、上述のとおり薬事法において医薬部外品あるいは医薬品のみが効能効果(例えば、「発毛促進、育毛、養毛」など)を有することが認められ、それを標榜することも認められており、「発毛効果を有する養毛料」と表現すれば、同法において化粧品とはみなされず、医薬部外品扱いとしてみなされるからである。

これは、発毛効果を有することを意味する「薬用」を冠した「薬用トニック」、「薬用養毛料」との表現と同等であり、薬用効能を有するが故にはじめて発毛効果を有する「医薬部外品」と認識されるのである。

イ 薬事法、社会通念との矛盾

当業界においても「発毛効果を有する養毛料」との文字を当業者が見れば、「医薬部外品」であると認識されるのが通常である。それにも関わらず本件商標の指定商品「発毛効果を有する養毛料」が薬事法で規定する発毛効果の有効性が認められていないはずの「化粧品」に限定するとすれば、「発毛効果を有する」の文字は全く意義をなさなくなり、また、そのような商品は存在しえないことになる。そればかりか、薬事法はもちろんのこと一般社会通念とも著しい矛盾を生ずることとなる。

ウ 「養毛」と「育毛」について

そもそも「養毛」というのは「毛を養う」の意であり、「育てる」と同義である。一般的な医薬部外品育毛剤が持つ効果効能のひとつを現しているに過ぎず「育毛」と「養毛」に明確な違いはなく、かつては「養毛」が現在より一般的に使用されていた。このことを示す根拠のひとつとして、当業界の社団法人「毛髪科学協会」理事長監修の「毛髪医科学辞典」(1987年2月16日発行)による「養毛剤」の定義がある(乙第6号証)。それを見れば「養毛剤」は「発毛促進剤」と同義であり、「育毛剤・養毛剤とも呼ばれる」との記述があり、さらに化粧品は発毛促進剤と違い、「養毛」なる表現はできない旨もしっかりと記述されている。このことは現在でも変わりはない。

エ 過去の審決について

被請求人が入手した平成15年10月21日の事例によれば、指定商品「医薬部外品たる頭皮用育毛料」は3類「頭髪用化粧品」に属するとの審決が送付されている(乙第7号証)。これは「育毛料」という表現には医薬部外品も含まれることを認めている見解でもあり、少なくとも「医薬部外品は絶対に含まれない」とはしないものと理解する。したがって、「育毛料」と同義である「養毛料」だけが、効能効果を有することをあえて明記しているにも関わらず、薬事法上の「化粧品」のみに限定されるはずがなく、「医薬部外品」を含んでいると解するのは至極当然のことと考える。

以上のことから、本件商標の指定商品である「発毛効果を有する養毛料」は薬事法でいうところの「化粧品」のみならず「医薬部外品」をも含むものと認識し、現在まで使用してきた次第である。

(3)次に請求人が提出した、平成20年11月13日付け弁駁書について

乙第一号証の説明を「医師の説明」としているが、「医師である」との記述はどこにもなく、どこから医師が出てきたのか甚だ疑問であり、恣意的に主張されたとしか思えない。また仮に医師が説明していたとしても、直ちに「医薬品」であるとの根拠にはなり得ない。また請求人は本件商標の使用に係る商品(以下、「本件使用商品」という)が「医薬品」である発毛剤、リアップと同種としているが、通常、当業界において「医薬品」であれば、「発毛促進剤」ではなく「発毛剤」と表記、あるいは「医薬品」と付するのが普通で、請求人の提出した甲第6号証の文中にあるようにリアップが「日本でただ1つの男性用発毛剤」というコピーは文字通りその通例を表しており、当業者ならず一般消費者にも広く認識されているところでもある。

(4)同甲第3号証について

販売ルートのひとつとして「ヘアドクター発毛科学研究所」のホームページを掲げ、その中に本件使用商品「養毛力」が掲載されていないことが疑問であると主張しているが、この「ヘアドクター発毛科学研究所」とはヘアドクター株式会社が「ヘアドクター」としてサロンを展開している事業部とは全く別の事業部であり、通信販売および研究所として運営している。現在はこの2事業部を別法人とする計画中である。したがって、管理系統、住所・電話番号・従業員・システム等も異なり、取り扱う商品も一部異なり、「ヘアドクター」と「ヘアドクター発毛科学研究所」とあえてわざわざ名称まで変えているのはこのためである。

取り扱う商品が異なるかについては、ヘアドクター株式会社はあくまでも実店舗であるサロン等を主軸として展開している企業であり、当社では通常、一部商品を除いて「通信販売用商品」と「サロン専売商品等」とを区別し、分けて販売している。

サロンでは会員制をとっており、オーダーメイドで一人一人によって違う髪の性質・状態に即した専門的な施術を行っており、そのようなサロンで扱う商品には販売戦略上、同様の商品でも別名称を付して販売することがある。このような手法はオーダーメイドでサービスや商品提供を行う当業界を含め、どのメーカーでも行っていることでもある。

ホームページや通信販売など、一般のどんな消費者でも購入しやすい、あるいは入門しやすいという性質の「通信販売用商品」と違い、症状に合った緻密な商品組み立てが可能な対面販売を主軸とする「サロン専売商品等」は、その商品の性質、品質、適正価格帯、仕様上の都合(多量の使用に適するかなど)、その他諸事情と販売戦略上の理由で一般商品とは区別し、そうすることで様々な顧客の属性ごとに最適な販売促進活動が可能になり、顧客にとっては最大の効果を得ることができる。

本件使用商品「養毛力」は、主にサロンに入会されている会員への対面販売、もしくはサロン入会会員を対象とする会員専用の優待DM(乙第1号証)などを利用した通信販売などで展開するために開発された商品である。

当社では、かつてはサロン事業部によるサロン入会会員へのDM発送について、当時はまだサロン事業部の通信販売システムがまだ備わっていなかったために、スポット的に通販事業部に発行を依頼し、サロン入会会員へのDM発送を依託していたが、現在ではサロン事業部でも全く別のシステムを導入し、顧客および扱い商品の一部が異なっている。そのため、「ヘアドクター発毛科学研究所」のホームページにヘアドクターのサロン専売品が掲載されていないのは当然であり、ネットでこれらの商品を購入することはできない。

(5)以上のように、本件使用商品は本件商標の指定商品として適正に使用され、何ら問題がないと考える。

第4 当審の判断

1 被請求人は、本件商標権の通常使用権者であるヘアドクターが本件商標をその指定商品である「発毛効果を有する養毛料」について使用している旨主張し、乙第1ないし第7号証(枝番を含む。)を提出している。

そこで、「ヘアドクター」が本件商標権の通常使用権者であることについては、当事者間に争いはないので、ヘアドクターが本件商標を本件請求に係る指定商品に使用している否かについて検討する。

(1)乙第1ないし第3号証によれば、以下の事実が認められる。

ア 乙第1号証 パンフレット(写し)は、左右の頁の間に、「髪を育てる総合情報誌」、「会員向け特別優待号」、「2007.9」、「ヘアドクター発毛科学研究所発行/新潟県長岡市城内町3−8−7」などの文字が記載されている。

左頁の上段には、やや大きく「本物の育毛ってなんだろう?」と記載され、その下に「生える体質に変える!HD発毛理論」及び「プロの目で厳選したヘアケア商品」の文字が上下2段に記載されている。また、「HD発毛理論で元気な髪を作る!」に続く記載中には「またヘアドクターが開発した商品を使ってホームケアをされている方・・」等の記載があり、商品「養毛力」のほか、「育毛温泉キャップ」及び「髪想いシャンプー/コンディショナー」が紹介されている。

左頁の下段には、「毛母細胞を活性化し、太さとハリのある髪を生えさせたい!」及び「養毛力」の記載とともに商品が紹介されている。

「養毛剤/人気No.1」の各文字の下に商品「養毛力」の写真が掲載され、その下の細線枠内には、「発毛促進剤『養毛力』」、「日本製 内容量:1本約30ml×15本入」、「会員価格9,800円」などの文字が記載されている。

そして、「養毛の3大要素を劇的に改善する一人三役の万能発毛促進剤」の記述のほか、「養毛の3大要素」として「1 毛母細胞を活性化 毛母細胞に刺激を与え細胞分裂を活発に促します。」、「2 過剰な皮脂の抑制 毛母細胞の働きを低下させ発毛や育毛の妨げとなる余分な皮脂分泌を抑制します。」及び「3 適度な潤いを保つ 髪を育てる大地である頭皮を、常に適度な潤いと弾力のある状態に保ちます。」との商品説明等がある。

イ 乙第2号証は、スノーデン株式会社がヘアドクター(新潟県長岡市城内町3−8−25アオシビル4F)に宛てた「05年12月16日」付け納品書(写し)であり、その「コード・商品名」欄には、「1194602/養毛力」と記載され、その「数量」、「単位」の各欄には「1,900」、「本」と記載されている。

ウ 乙第3号証は、株式会社誠晃舎がヘアドクター(新潟県長岡市城内町3−8−7)に宛てた「07年9月14日」付け納品書(写し)であり、その「品番・品名」欄には「総合チラシ」と、「数量」欄には「5,000」と記載されている。

エ 乙第4号証の1ないし3は、本件商標権者である平成興産株式会社が、ヘアドクター(新潟県長岡市城内町3−8−25)に対し、登録第4284388号商標の使用権を独占的に許諾する旨の「商標使用件許諾契約書」である。

(2)前記(1)の事実によれば、本件商標権の通常使用権者であるヘアドクターは、本件審判の請求の登録(平成20年8月11日)前3年以内である2007年(平成19年)9月発行に係る自社のパンフレットにヘアケア商品を紹介し、本件商標と同一と認められる商標を表示した「養毛剤」を掲載して広告をしたことが認められる。

(3)本件商標は、商品区分第3類「発毛効果を有する養毛料」を指定商品とするものである。

ところで、商標法の商品区分第3類に属する「化粧品」の概念には、薬事法(昭和35年法律第145号。以下同じ。)に規定する“化粧品”の大部分及び“医薬部外品”のうち、人体に対する作用が緩和なものであって、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用するものが含まれる(「商品及び役務区分解説」平成8年12月25日改訂3版参照)。

なお、第5類「薬剤」は、「主として、薬剤及び他の医療用剤を含むものであり、薬事法の規定に基づく”医薬品”の大部分、”医薬品”とは、次に掲げるものをいう。1 日本薬局方に収められている物 2 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、器具器械(歯科材料、医療品及び衛生用品を含む。以下同じ。)でないもの(医薬部外品を除く。)・・・」等、及び「同法にいう”医薬部外品”の一部」が含まれる(「商品及び役務区分解説」同上)。

そして、「〈外皮用薬剤〉」の概念に含まれる「毛髪用剤」は、例えば、円形脱毛症、脂漏性脱毛症、壮年性脱毛症などのように、特定の疾病の治療薬(医薬品)として取引されるものだけに限られると解される。

商標法上の商品分類は、商品の混同を防止し商標使用者の業務上の信用と需要者の利益を保護する法の目的に即し、取引の実情を考慮して分類されているものであり、いわゆる「養毛、育毛」を目的とする商品は、前記のとおり、特定の疾病の治療薬(医薬品)として取引されるもの」は、第5類「薬剤」に属するものであるが、そうではなく「人体に対する作用が緩和なものであって、・・・毛髪をすこやかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布等の方法で使用するもの」は、第3類「化粧品」の範疇に属するものである。

そうとすれば、その商品の用途、性質、効果、効能等を考慮し、仮に、「薬剤」に近い効果、効能を有する場合があるとしても、特定の疾病の治療を目的としない場合は、商標法上第3類「化粧品」に属するものと解して差し支えないものである。

(4)そこで、ヘアドクターが使用する上記ヘアケア商品の一つである「養毛力」が、本件請求に係る指定商品に含まれる商品であるか否かについて検討する。

上記(1)によれば、ヘアドクターは、「ヘアケア商品」及び「ヘアドクターが開発した商品」と記載して数種類の商品を紹介している。そしてそのひとつである「養毛力」の紹介には、「発毛育毛促進剤」、「養毛剤」及び「発毛促進剤」等の表示があるものの、特定の疾病の治療を目的する「医薬品」又は「医薬部外品」の表示はない。

そうとすれば、商品「養毛料」について、仮に、その効果、効能を強調するかのように「発毛育毛促進剤」、「養毛剤」及び「発毛促進剤」の文字を使用していたとしても、そもそも「ヘアケア商品」として該商品を紹介し販売していると認め得るものであるから、「発毛育毛促進剤」、「養毛剤」及び「発毛促進剤」の表示があるとしても、それをもって直ちに「薬剤である」ということはできない。

また、商標法第5類の「薬剤」は、上記(3)のとおり、特定の疾病の治療薬(医薬品)として取引されるものに限られるから、特定の疾病の治療を目的等を記載していない本件使用は、第3類に属する「化粧品」の範疇に含まれる商品「発毛効果を有する養毛料」の使用と認めて差しつかえないというべきである。

2 むすび

したがって、本件商標は、被請求人によって、本件審判請求の登録前3年以内に取消請求に係る本件商標の指定商品について使用していたものと認められるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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