Trademark Appeal Case
ORACの記述性と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900211(T2009−900211/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5211146号商標(以下「本件商標」という。)は、「オーラック」の片仮名文字と「ORAC」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成20年6月4日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同21年2月2日に登録査定され、同年3月6日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要点)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきである旨主張し、その理由を次のように述べ証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
「ORAC」の語は、1992年アメリカの国立老化研究所(National Institute on Aging)で開発された「Oxygen Radical Absorbance Capacity」(活性酸素吸収能力)の頭文字を綴ったもので、食品などに含まれる種々の抗酸化物質(カテキン、フラボノイド、ビタミンEなど)の抗酸化能力を分析する方法であり、親水性と親油性の抗酸化能力を分別定量でき、食品やサプリメントの抗酸化能力を科学的に分析する基準として、数値をORAC値で表記するものである(甲第1号証及び甲第3号証)。
日本においても、「Antioxidant Unit 研究会」が設立され、大手食品・薬品企業(2008年10月2日現在96社が加入)等を中心に、2007年から現在に至るまで研究会・発表会等を数多く行っており(甲第1号証及び甲第2号証)、また、「財団法人食品分析開発センターSUNATEC」により、詳細な説明等も行われ(甲第6号証)、さらに、大学での講座(甲第4号証)や受託研究に関する記事(甲第5号証)もインターネットに掲載される状況に至っている。
また、企業の「Q&A」(甲第7号証)や、その他の個人的ブログ(甲第8号証ないし甲第13号証)にも取り上げられ、特にこれらに記載されている食品のORAC値に関するデーター(甲第6号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第15号証)をみても、本件商標の指定商品の原材料と直接関連する食品に対する基準値の測定法であることが理解できる。
さらに、サプリメント中心とはいえ、数多くの商品が日本国内で既に上記基準値が付されて販売されており(甲第14号証ないし甲第22号証)、アメリカではORAC値を表示した飲料も普及し始めている(甲第12号証)状況であって、数ケ月単位で日本国内にも蔓延することが十分推認できるものである。
菓子や飲料関連メーカーが、このような分析方法で分析された商品に、「ORAC」の文字を中心にORAC値を併記して表記することは必然であり、取引者・需要者は、そのような説明語句と認識することも必然と考えられる。
そこで、本件商標の存続を認めることは、取引市場の安全を阻害し、一般の商業活動を妨害することになること明らかであるため、この登録は取り消されるべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
第3 本件商標の取消理由
商標権者に対して、平成22年2月18日付け取消理由通知書で通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 申立人の提出した甲各号証によれば、「オーラック」及び「ORAC」の語について、以下の事実が認められる。
(1)甲第1号証は、2009年(平成21年)6月9日にプリントアウトされた「Antioxidant Unit」と称するウェブページであり、その2枚目上段の「Antioxidant Unit設定の経緯」の項に「ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能力)は1992年に米国農務省(USDA)と国立老化研究所(National Institute on Aging)の研究者らにより開発された抗酸化力の新しい指標で、食品中の抗酸化力を分析する方法として優れており、現在、野菜・果物などの食品素材や加工食品に至るまで最もデータベースが充実した分析法です。そのため米国での認知度は高く、既にORAC値を表記したサプリメントや飲料の上市が進んでおり、消費者にその食品がどれだけ活性酸素を吸収する能力(抗酸化力)があるかを具体的数値で示しています。」の記載がある。
(2)甲第3号証の4枚目ないし6枚目は、「日本農芸化学会2008年度大会講演要旨」を表題とする資料で、「一般講演」の項に「講演日:2008年3月27日」、「食品のAntioxidant Unit測定法の確立(1)市販飲料のDPPHラジカル消去活性とORACとの比較」の説明として、「アメリカではORACが表示された商品が市販されており、またORAC測定法はAOACに採用されるべく妥当性の検証が実施されている。」の記載、「食品のAntioxidant Unit測定法の確立(2)ORACと他の良く知られている抗酸化アッセイ法の比較」に「食品中に含まれる抗酸化物質に大きな関心が寄せられており、食品の抗酸化力を測定する多くの方法が考案されている。その中でも、ペルオキシルラジカルに対する捕捉力を測定するORAC法」の記載がある。
また、「ランチョンセミナー」の項には、「講演日:2008年3月27日」、「抗酸化評価に関する最新の話題」の説明として、「ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能力)は、1992年に米国農務省(USDA)と国立老化研究所(National Institute on Aging)の研究者らにより開発された抗酸化力の新しい指標で、食品中の抗酸化力を分析する方法として優れており、現在、野菜・果物などの食品素材から加工食品に至るまで最もデータベースが充実した分析法である。そのため米国での認知度は高く、既にORAC値を表記したサプリメントや飲料の上市が進んでおり、その数は100種類以上にもなっている。しかしながら、ORAC法だけで抗酸化機能評価をカバーすることは難しいのが現状で、ORAC分析法の公定法化(分析値の妥当性確認)の研究を行うプロジェクトが発足、進行中である。特に、カロテノイド類は、ORAC法では低い値しか得られないので、現在、一重項酸素捕捉活性も含め、ポリフェノール類もORAC法との相関性を認識しながら、産官学が連携して2008年度中には統一見解を提案したいと努力している。」の記載がある。
(3)甲第14号証は、2009年(平成21年)6月30日にプリントアウトされた「HEALTH&BEAUTY健康美容EXPO」と称するウェブページであり、そこには「セティ/フルーツと野菜から抽出したアンチエイジング素材が好調」の見出しのもと、「2008/1/7 セティ(株)(本社東京都千代田区、レジャル・ファビェン社長)のアンチエイジング素材『オキシネア○(○の中にRの記号)』の健康食品メーカーからの引き合いが盛んだ。(中略)個々の原料を単独で抽出するよりも、抗酸化の指標であるORAC値が高くなり、“ポリフェノール”の1種である“バイオフェノール”の量が多くなるという。WHOが提唱する一日に必要なフルーツと野菜5種、400g以上に値するORAC値4000μmolTE/gを0.8gで実現可能。また、米国では1日3500μmolTE/gの食品を摂取しようという運動が起きている。」の記載がある。
(4)甲第16号証、甲第17号証、甲第19号証、甲第20号証及び甲第22号証は、2009年(平成21年)6月30日又は同月9日にプリントアウトされたネットショッピングのウェブページであるが、これらには、栄養補助食品(サプリメント)や茶が紹介され、その商品説明に活性酸素吸収能力(抗酸化機能)の意を表わすものとして「ORAC」「オーラック」「ORAC商品」「ORAC指数」などの語が用いられている。
2 「オーラック」と「ORAC」の語について、職権による証拠調によれば、以下の事実が認められる。
(1)「朝日新聞」(2005年4月20日 大阪地方版/和歌山 24頁)において、「ウメで老化予防できるかも 南高梅に高抗酸化機能 /和歌山県」の見出しのもと「同センターが、県内で収穫される南高梅の果肉100グラム当たりの抗酸化機能を調べたところ、1700ORACを記録したことが分かった。」の記載がある。
(2)「日本食糧新聞」(2006年6月26日)において、「太陽化学、ORAC啓蒙と緑茶カテキンを提案」の見出しのもと「太陽化学(株)(三重県四日市市)はカテキン、カロチノイド、アントシアニンなどの抗酸化物質の抗酸化力の強さを、ビタミンE様物質(Trolox)量に換算して表す『活性酸素吸収能力(ORAC)』の啓蒙と、同社の緑茶カテキン『サンフェノン』を使用した生体内抗酸化食品の提案を進める。ORACは米国農務省(USDA)と国立老化研究所の研究者が開発した分析法で、すでに米国ではORAC値を表記した食品が数多く上市されている。」の記載がある。
(3)「サンスター株式会社」のウェブペ−ジにおいて、「2007年プレスリリース」として、2007年3月30日付けで「新感覚のヘルシー飲料 おいしく手軽に豊富で多彩なポリフェノールを摂取できる『健康道場 4つのベリーの恵み』新発売」をタイトルとするプレスリリースが掲載され、そこには、「サンスター株式会社では、『健康道場』シリーズから、手軽に安心してポリフェノールを摂取できるヘルシー飲料『健康道場 4つのベリーの恵み』を、2007年3月22日(木)より全国百貨店にて新発売いたします。」「『健康道場 4つのベリーの恵み』は、1缶で6,000を超えるORAC値※を実現し、さらに複数のベリーからそれぞれに特徴を持つ多種のポリフェノールを摂取することにより、健康づくりのための様々な働きが期待できます。」「※ Oxygen Radical Absorbance Capacityの略で、食品の抗酸化力を示す値。米国では、1日の食生活でのORAC摂取単位を3,000〜5,000に増やすと、健康に有益との報告もあります。」の記載がある。
(4)「化学工業日報」(2007年4月4日 5頁)において、「サンスター、『健康道場』に新飲料、ポリフェノールを手軽に摂取」の見出しのもと「サンスターは『健康道場』シリーズに手軽にポリフェノールを摂取できる飲料『健康道場4つのベリーの恵み』を追加し、発売した。(中略)食品の抗酸化力を示すORAC値は一缶で六千を超えるという。」の記載がある。
(5)「FujiSankei Business i.」(2007年10月12日 11頁)において、「日本アムウェイ 新サプリメント DNA修復の効果追求」の見出しのもと「【用語解説】『トリプルX』 日本人が日常的に必要なビタミン、ミネラルをカバーするサプリメント。グレープフルーツ、アスパラガスなど21種類の植物原料を、『活性酸素』吸収力を損なうことなく独自の濃縮技術で加工したのが特徴。活性酸素吸収力を示す数値『ORAC』は従来に比べ2倍になったという。」の記載がある。
(6)「化学工業日報」(2008年5月22日 9頁)において、「AOU研究会、抗酸化力の指標確立へ分析技術開発めど、夏にも標準化」の見出しのもと「産学官が連携するAntioxidant Unit(AOU)研究会は、食品や飲料の抗酸化力の評価の統一指標であるAOUの確立に向け、実用的な分析技術の開発にめどをつけた。活性酸素吸収能力(ORAC)を測る分析技術をベースに、ポリフェノール系とカロテノイド系の2つのカテゴリーに分け、分析・測定する方法で、他の分析法などとの比較や、野菜などに抗酸化物質含量から算出される抗酸化力の数値との相関性が確認された。抗酸化物質は現在、測定の標準法がなく、研究会では協力の試験機関でのデータの確認など、さらに測定値の信頼性を精査し、今夏までにORACのデファクトスタンダード化を目指す。普及のための提案、食品業界への情報発信を進める計画。ORACは、米国で開発された抗酸化力の新しい分析のための指標。抗酸化物質を定量化するのではなく、抗酸化力を活性酸素を吸収する能力としてとらえ、ビタミンE様物質に置き換えて分析する手法。米国では、ORAC値を表記したサプリメントや飲料の製品化が進んでいる。」の記載がある。
(7)「化学工業日報」(2008年10月15日 9頁)において、「ユニテックフーズ、リンゴ由来の機能性食品素材シリーズ拡充」の見出しのもと「ユニテックフーズが今回、市場投入する『ポマクティブ HFV』は、プロシアニジン、ケルセチン、フロリジンなどのポリフェノール成分を90%以上含むパウダー品。米国の抗酸化指標であるORACによる測定値では、1グラム当たり1200マイクロモルTEと優れた抗酸化力が算出されている。」の記載がある。
3 前記1及び2で認定した事実によれば、「ORAC」の語は、「Oxygen Radical Absorbance Capacity」の略語で「オーラック」と称呼され「活性酸素吸収能力」を表すものと認められる。
また、「ORAC」は、1992年(平成4年)に米国で開発された抗酸化力の新しい指標であり、2006年(平成18年)には、米国ではORAC値を表記した食品が数多く市場に出ており(上記1(1)及び2(2))、我が国においては、2005年(平成17年)4月には抗酸化機能を表わすものとして新聞記事に用いられ(上記2(1))、2008年(平成20年)3月には、学会でも取上げられ、同年5月以降、産学官が連携するAntioxidant Unit(AOU)研究会が同年の夏までにORACのデファクトスタンダード化を目指していることが認められる(上記1(2)及び2(6))。
さらに、「ORAC」の語は、2006年(平成18年)6月から太陽化学株式会社が、2007年(平成19年)3月からサンスター株式会社が、同年10月には日本アムウェイが、2008年(平成20年)1月にはセティ株式会社がそれぞれの商品について、その説明等に用いていたものと推認することができ(上記2(2)ないし(5)及び1(3))、現在においても「ORAC」又は「オーラック」の語が、栄養補助食品やお茶について、その商品説明に用いられている(上記1(4))。
そうとすれば、「ORAC」及び「オーラック」の語は、本件商標の登録査定前から食品を取り扱う取引者・需要者の間においては、「活性酸素吸収能力」を表すものとして理解・認識され、その状況は現在においても継続しているものと判断するのが相当である。
してみれば、「オーラック」の片仮名文字と「ORAC」の欧文字とを二段に普通に用いられる方法で横書きしてなる本件商標は、これをその指定商品第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」に使用しても、これに接する取引者、需要者は当該文字を「活性酸素吸収能力」を表わすためのものと認識するにすぎないものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標といわなければならず、商標法第3条第1項第6号に該当する。
4 したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反してされたものである。
第4 商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由に対して、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。
第5 当審の判断
上記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2号の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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