Trademark Appeal Case
称呼の類似性:一音の差異
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900450(T2009−900450/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5263189号商標(以下「本件商標」という。)は、「FINESTONE」の文字を標準文字で表してなり、平成20年6月5日に登録出願、第2類「塗料」、第17類「断熱用岩石繊維または断熱用グラスウール」及び第19類「建築用プラスチックまたは鉱物製断熱材料,建築用ポリスチレンフォーム製断熱外装板,建築用及び壁用モルタル,石膏,しっくい,その他の建築用塗材,セメント及びその製品」を指定商品として、同21年7月28日に登録査定、同年9月4日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 登録第3332402号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成6年9月14日に登録出願、第19類「ゴム製建築専用シート,ゴム製防水屋根葺き材」を指定商品として、同9年7月18日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2 登録第81250号商標(以下「引用商標2」という。)は、「FIRESTONE」の欧文字を横書きしてなり、大正4年4月19日に登録出願、第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年9月4日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が6回にわたりなされ、さらに、平成20年1月30日に第12類「自動車用のタイヤ及びチューブ,二輪自動車及び自転車用のタイヤ及びチューブ,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片,ゴム製の緩衝器及びその附属品,ゴム製の空気ばね」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3 登録第1335431号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和44年8月1日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同53年6月21日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が3回にわたりなされ、さらに、平成21年1月21日に第12類「船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
上記の引用商標1ないし引用商標3を一括していうときは「引用各商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第27号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標1との対比
本件商標は、標準文字にて「FINESTONE」と欧文字に書してなるものであるから、これより「ファインストーン」の称呼を生ずることは明らかである。
他方、引用商標1は、「Firestone」と特徴のある書体で書され、該欧文字に相応する「ファイアストーン」の称呼が生ずるものである。
ここで、両商標の差異は、第三音の「ン」と「ア」にある。撥音「ン」はそれ自体響きの弱い鼻音であって、その前の「ファイ」に吸収されやすい音であること、及び比較的聴取され難い中間に位置することから、該「ン」の音が称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものではない。そして、両商標は共に6音で構成されており、夫々第1音にアクセントを置いて発音されるのが自然な称呼である。したがって、両商標をそれぞれ一連に称呼する場合には、全体として語調、語感が近似し、互いに聞き誤るおそれがあるので、類似する商標である。
(2)本件商標の指定商品中の「建築用プラスチックまたは鉱物製断熱材料、建築用ポリスチレンフォーム製断熱外装板、しっくい、その他の建築用塗材」と引用商標1の指定商品「ゴム製建築専用シート、ゴム製防水屋根葺き材」は互いに類似する商品である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人及び使用に係る商標について
申立人は、社名に「ブリヂストン」を有することからも明らかなように株式会社ブリヂストンの米国子会社であり、株式会社ブリヂストンの保有する商標管理を主な業務としている。
そして、引用各商標の商標「Firestone」は、もともとは1900年に米国で創業された老舗のタイヤメーカーの社名「The Firestone Tire & Rubber Company」に由来するものである(甲第5号証)。同社は、社名である「Firestone」をハウスマークとして広く使用してきた経緯があり、その技術力とブランドカのもと、米国第2位のタイヤメーカーとしての地位を築き上げてきた。全世界におけるタイヤ市場では、1986年当時、グッドイヤー、ミシュラン、ブリヂストン、コンチネンタルに続き第5位のシェアを有していた。同社は1988年に株式会社ブリヂストンに買収、完全子会社化されたが、買収後も、そのまま北米、中南米、欧州等の多数の生産拠点を中心として、「Firestone」ブランドのタイヤを製造販売し続けて、「Firestone」ブランドのタイヤは日本においても販売されている。
また、申立人は「Firestone」ブランド関連商標として、「引用商標1」を始め計13件の「Firestone」商標、若しくは「Firestone」を構成中に有している登録商標を取得してブランドの保護に努めている。
さらに、「Firestone」ブランド力の浸透を狙い、米国のみならず、日本におけるレースヘの参戦やスポンサー契約、戦績、商品カタログ、ミレニアムキャンペーンを通した広告宣伝活動にあたり、莫大な費用をかけてきた(甲第7号証ないし甲第25号証)。
以上のように、「Firestone」は、伝統あるブランドとして日本内外において積極的に宣伝広告された結果、相当の知名度、著名性をも獲得した状況にあると考える。
(2)申立人及びその関連会社は、タイヤと共通する原材料であるゴムを用いた事業として建築専用材料の製造販売にも携わっており、特には、「ゴム製建築専用シート、ゴム製防水屋根葺き材」に力を入れてタイヤ同様世界的規模で製造販売している(甲第26号証及び甲第27号証)。
甲第26号証及び甲第27号証の商品カタログにあっては、FirestoneのロゴマークであるFのマークを大きく掲載し、裏表紙には製造元の記載とともに引用各商標が付されている。
そして、本件商標と引用各商標とはその態様を比較すると、三番目の「N」「R」が相違するにすぎないので、全体としてみれば、外観上において相紛らわしいものである。簡易迅速を尊ぶ商取引の現場においては、かかる差異は着目され難く、まして、「F」からはじまり「STONE」で終わる態様からなる本件商標に接した取引者需要者にあっては、まずは著名商標である引用各商標を想起させるものと思料する。
このような事情下において、「建築用プラスチックまたは鉱物製断熱材料、建築用ポリスチレンフォーム製断熱外装板、しっくい、その他の建築用塗材」についてはもちろん、建築関連商品を指定商品とする本件商標の指定商品について、本件商標を使用した場合、これに接する取引者需要者は当該商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと思料する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号によりその登録を取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「FINESTONE」の文字よりなるところ、構成文字中の前半部の「FINE」の文字は「立派な、上等な、すばらしい」の意味を有する平易な英語として一般に知られており、また、後半部の「STONE」の文字も「石、小石、岩」の意味を有する平易な英語として、同じく一般に知られている語であるから、これらの発音に倣い、これよりは全体として「ファインストーン」の称呼を生じ、「立派な石、すばらしい石」の意味合いを生ずるものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、前記第2(別掲(1))のとおり、「Firestone」の文字よりなるところ、構成文字中の前半部の「Fire」の文字は「火、発火」の意味を有する平易な英語として一般に知られており、また、後半部の「stone」の文字も「石、小石、岩」の意味を有する平易な英語として、同じく一般に知られている語であるから、これらの発音に倣い、これよりは全体として「ファイアストーン」の称呼を生じ、特定の成語としての確定した意味を生じないとしても、「火の石」の如き意味合いを生ずるものというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標1の比較
本件商標から生ずる称呼「ファインストーン」と、引用商標1から生ずる称呼「ファイアストーン」とを比較するに、両称呼の差異は、第3音における「ン」と「ア」との音の差異を有するものである。
しかして、該差異音は、「ン」が鼻音で弱く響く音であるのに対し、「ア」は、有声の開放母音ではっきりと澄んだ音であるから、その音質を全く異にするものである。
してみれば、該差異音が、たとえ比較的聴取し難い中間に位置することを考慮してもなお、該差異音が両称呼全体に及ぼす影響は大きいものであるから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調・語感が異なり、両商標は、称呼上充分に区別し得るものである。
また、観念については、本件商標と引用商標1は、上記(1)及び(2)のとおりの意味合いを生ずるものであるから、両者は観念上も充分に区別し得るものであり、さらに、外観においても、両者は、前記第1及び第2(別掲(1))のとおり、明らかな差異があり、区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標1とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用各商標の著名性について
申立人の提出に係る甲各号証及び主張よりすると、申立人に係る引用各商標は、申立人と関連する、1900年に米国で創業された老舗のタイヤメーカー「The Firestone Tire & Rubber Company」のハウスマークとして、1988年に株式会社ブリヂストンに買収後も継続して外国を始め日本国内において「タイヤ」に広く使用された結果、本件商標の登録出願時(平成18年10月5日)はもとより、その査定時(平成19年7月12日)においても、我が国の自動車用のタイヤ関連分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認められるものである。
(2)出所の混同について
引用各商標の構成は、前記第2のとおりであって、大文字小文字の違い等があるものの、同じ綴りよりなるものであるから、引用各商標からは、それぞれ共通の称呼・観念を生ずるということができる。
そして、本件商標と引用商標1とは、上記のとおり、称呼、観念及び外観のいずれの点においても紛れるおそれのない、十分に区別し得る別異の商標というべきものであるから、本件商標と引用商標1を含む引用各商標とは、同様に、十分に区別し得る別異の商標であるといえる。
そうとすると、たとえ、引用各商標が、我が国の自動車用のタイヤ関連分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認められるものであるとしても、また、申立人及びその関連会社が、タイヤと共通する原材料であるゴムを用いた事業として建築専用材料の製造販売にも携わっていることを考慮しても、本件商標は、これを建築関連商品を含むその指定商品に使用した場合は、これに接する取引者・需要者をして、申立人、あるいは引用各商標を連想又は想起させるとはいえないものであって、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
3 まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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