Trademark Appeal Case
周知商標と類似商品の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900152(T2009−900152/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5202998号商標(以下「本件商標」という。)は、「Propecia」の欧文字を標準文字で表してなり、平成20年6月23日に登録出願、第3類「シャンプー,ヘアーリンス,ヘアーコンディショナー,ヘアトニック,化粧品」及び第29類「アミノ酸を主成分とする粉状・顆粒状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ペースト状・棒状・ゲル状・板状の加工食品」を指定商品として、平成21年1月26日登録査定、同年2月6日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての要旨
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下(ア)ないし(ウ)の登録商標(以下これらをまとめて「引用商標」という。)を保有している。
(ア)登録第4014184号商標は、「PROPECIA」の欧文字を横書きしてなり、平成7年8月7日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙」を指定商品として、平成9年6月20日に設定登録されたものである。
(イ)登録第4028971号商標は、「プロペシア」の片仮名を横書きしてなり、平成7年8月7日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙」を指定商品として、平成9年7月18日に設定登録されたものである。
(ウ)登録第4670100号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成14年8月21日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」を指定商品として、平成15年5月9日に設定登録されたものである。
(2)申立人は、1983年に男性型脱毛症(以下「AGA」という。)の原因物質の産生を抑制する「フィナステリド」の合成に成功し、1998年にAGA治療薬として発売を開始した。このAGA治療薬の製品名称として採用したのが「PROPECIA」(引用商標)であり、「PROPECIA」は、「前向きに」、「改善」の意味を有する「Pro」と「脱毛症」の意味を有する「Alopecia」の一部から採った「Pecia」とを結合させた、申立人の創作に係る創造語である。我が国では、2005年12月より、引用商標の使用権者である万有製薬株式会社(以下「万有製薬」という。)を通じてその製造及び販売を行い、引用商標は、本件商標の出願日である平成20年6月23日の時点では、申立人の業務に係る商品を示すものとして、広く認識されるに至っていた。
また、本件指定商品中の「シャンプー、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー、ヘアトニック、化粧品」の中には、抜け毛予防、発毛、育毛等の商品もあり、育毛や発毛を増進するためのサプリメント等も多数存在するところであるから、申立人の製品と本件商標の指定商品とは、用途及び目的において重複し、需要者を共通にするものであり、生産部門・販売部門・流通経路をも共通にすることがある点でその関連性は極めて強いものといえる。
以上のように、引用商標は、申立人の業務に係る商品を示す商標として周知・著名であるから、これを同一又は類似である本件商標を、引用商品と極めて強い関連性を有する指定商品に使用された場合、申立人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある。また、本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者、需要者があたかも申立人と経済的又は組織的な関連を有する者の業務に係る商品であるかのごとく混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 取消理由通知
当審において、商標権者に対し、平成22年2月16日付け取消理由通知書をもって通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)AGA治療薬「プロペシア(Propecia)」の著名性について
申立人が提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、米国ニュージャージー州に本店所在地を有する製薬企業であり(甲5)、米国で「PROPECIA」を使用したAGA治療薬(以下「申立人商品」という。)を1998年に発売を開始し、現在では世界60か国以上の国々にまで販売を拡大している(甲8)。「PROPECIA」は、「前向きに、改善」の意味を有する「Pro」と「脱毛症」の意味を有する「Alopecia」の一部からとった「Pecia」とを結合させた申立人の創作にかかる創造語と認められるものであり、本国である米国を始め、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、中国、韓国等々世界の多くの国において登録されている(甲53〜甲65)。
我が国においては、2005年10月に厚生労働省の承認を受け、同年12月より、引用商標を使用し、申立人の子会社である万有製薬株式会社を通じてその製造・販売が行われている(甲5〜甲10)。
(イ)内服タイプのAGA治療薬は、申立人商品「プロペシア(Propecia)」が世界で初めてであり、服用の手軽さに加え、臨床試験期間において服用看者の98%にAGA進行の抑制、あるいは、改善効果が認められたという驚異的な試験データにより(甲16)、製品販売と同時に医療関係者の間で広く知られることとなり、発売当初より新聞・雑誌等の多くのメディアにおいても大々的に取り上げられている(甲15〜甲20)。
2008年における販売額は、我が国において92億5000万円(我が国における内服タイプ男性型脱毛症薬の市場占有率100%)、世界全体において403億3000万円となっている(甲21)。
(ウ)申立人商品は、処方せん医薬品に該当し、一般需要者・消費者を対象とする宣伝・広告を行うことができないため、申立人は、病院配布用パンフレットや一般患者向けに作成されたパンフレットにおいて、引用商標を大きく目立つように表示しており(甲22〜甲31)、また、万有製薬を通じて、ウェブサイト「AGA−news」を立ち上げ、一般患者を対象にAGA疾患治療の啓発を図るとともに(甲32〜甲35)、AGA治療のため医療機関に相談することを呼びかけるためのテレビCM、新聞広告、キャンペーンも盛大に行っている(甲36〜甲52)。
また、申立人商品は、成人男性を主な読者層とするスポーツ新聞や一般紙等でも頻繁に紹介されている(甲66〜甲128)。例えば、「男性型脱毛症に悩む方に救世主!“飲む”発毛剤」の見出しの下に、「“飲む発毛剤”として知られるプロペシア(一般名フィナステリド)が国内で発売されて1ヶ月、反響が広がっている。男性型脱毛症(AGA)に効果のある処方薬で、日本での開発・販売元の万有製薬のAGAコールセンターには連日、電話が殺到しているという。・・・」(平成18年1月18日付けスポーツニッポン 甲66)、「薄い髪は病院で治す!AGA(男性型脱毛症)治療最前線」の見出しの下に、「・・・世界初の飲むAGA治療薬『プロペシア』が1998年に米国で発売され、日本では万有製薬が発売元になっている。・・・プロペシアは現在世界60力国以上で販売されており、海外の臨床試験では、使用者の90パーセント以上に抜け毛の進行抑制や改善効果があったという。」(平成18年8月23日付け中日スポーツ 甲80)、「男性型脱毛症<AGA>薄毛でもう悩むことはない!?万有製薬から『プロペシア』と呼ばれる処方薬が登場し、『薄毛環境』は激変した」の見出しの下に、「去る20日は『頭髪の日』ということで、最近話題になっている男性型脱毛症の飲み薬、『プロペシア』の存在を、薄毛で悩んでいる男性諸君にもっと広く知ってもらおうと、・・・」(平成18年10月26日付け日刊ゲンダイ 甲85)、「薄毛の悩みに朗報」の見出しの下に、「・・・そんなAGA患者に朗報となったのが2005年に国内承認された医薬品『フィナステリド(商品名・プロペシア)』の登場。世界で唯一の内服型AGA治療薬だ。・・・」(平成19年11月30日付け産経新聞 甲127)等々、本件商標の出願前に発行された各種新聞に「プロペシア」に関する紹介記事が数多く掲載されていることが認められる。
更に、各種インターネット検索エンジンにおいても、申立人商品に関する膨大な数の記事が掲載されている(甲129〜甲141)。このインターネット情報は、本件商標の出願後に打ち出されたものではあるが、上記した新聞記事情報等とも併せみれば、本件商標の出願前における事情を充分に推し測ることができるものである。
(エ)以上の事実からすると、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、我が国においても、取引者・需要者、特に、AGA患者やその潜在的な成人男性をはじめ、医師、薬剤師等の医療従事者の間において広く知られていたものと認められ、その著名性は登録査定時においても継続していたものということができる。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記したとおり、「Propecia」の欧文字を標準文字で表してなるものであるのに対して、引用商標は、「PROPECIA」の欧文字若しくは「プロペシア」の片仮名からなる商標である。
両商標の類否についてみるに、両商標は、いずれも、その構成文字に相応して、「プロペシア」の称呼を生ずるものと認められるから、称呼においては同一のものである。また、本件商標と欧文字からなる引用商標とは、綴り字を同じくするものであるから、外観においても相紛らわしいものである。
そして、「Propecia/PROPECIA」の語は、親しまれた観念を有するものではないが、前記したとおり、「前向きに、改善」の意味を有する「Pro」と「脱毛症」の意味を有する「Alopecia」の一部からとった「Pecia」とを結合させた申立人の創作にかかる創造語と認められるものであって、独創性の強い商標であるということができる。
(4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関係について
申立人の業務に係る商品はAGA治療薬であるところ、本件商標の指定商品の中には、うす毛の予防を目的としたシャンプー、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナーも多く、発毛や育毛を主眼とするヘアトニックその他の頭髪用化粧品等も数多く存在するところであり(甲142〜甲153)、いわゆる健康食品・サプリメントに関しても、育毛や発毛を増進するためのサプリメント等も多数存在することが認められる(甲155〜甲156)。
そして、本件商標に係る上記商品の需要者と引用商標の主たる需要者(特にAGA患者)とは、需要者層において共通にすることも多く、また、製薬会社の中には、ヘアケア商品や化粧品等の医薬部外品、サプリメント・健康食品等の製造・販売に携わる会社も数多くあり、生産・販売部門を共通にすることも多い。加えて、薬局やドラッグストア等では、医薬品を販売する一方、ヘアケア商品等の医薬部外品、健康食品・サプリメント等も主要な商品であり、両商品は、広い意味において販売場所をも共通にするということができる。
そうとすれば、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る「AGA治療薬」とは、極めて関連性の強いものといわなければならない。
(5)出所の混同のおそれについて
以上のとおり、引用商標の著名性の程度、商標の独創性、引用商標と本件商標の類似性の程度、商品の関連性及び需要者の共通性等を総合勘案すれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る著名な引用商標を連想・想起し、当該商品を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(6)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと認められる。
4 請求人の意見
(1)引用商標の著名性について
(ア)引用商標の著名性につき重要なのは、どの程度の使用事実・使用実績があるかという点にある。しかし、この点について、取消理由において何らの見解も示されていない。
(イ)甲第15〜17号証のウェブサイトが引用商標を付した製剤の販売開始時である2005年12月ころに立ち上げられているか否かは不明であり、甲第18〜20号証のテレビ番組は、いずれも2005年12月からはだいぶ経過したときに放送されている。よって、仮に引用商標の著名性が肯定されるとしても、甲第15〜20号証からは、本件商標の出願の際に、引用商標が著名性を獲得していたとはいえない。
また、甲第15〜17号証は、その内容から、引用商標が「広く知られる」となったと認定することは誤りであり、甲第18〜20号証のわずか3件の証拠をもって「広く知られる」との結論を導き出すのは妥当でない。
さらに、2008年の販売額である92億5000万円を12で割ると、1か月当たり約7億7000万円となる。万有製薬のプロペシアは一人当たりの1か月分の医療費代金が約7500円らしいので、2008年には、約10万3000人(我が国人口の約0.08%。AGA看者の0.7%)しか、万有製薬のプロペシアを購入していないことになる。この事実にかんがみると、引用商標が需要者、取引者に全国的に広く知られている商標というのは誤りである。
(ウ)甲第33〜35号証の万有製薬のAGA関係のホームページのトップページのページランクは、いずれも「3」であって高くなく、このようなウェブサイトの存在をもって、著名性を認定するのは誤りである。
甲第36〜52号証の新聞記事等には、「Propecia」の記載がないから、著名性を肯定するものではない。
甲第66〜128号証の2は、「飲む薬」、「飲む育毛剤」などという記載が前面に押し出されているものでしかないから、引用商標を肯定する根拠とはなり得ない。
(エ)そうすると、ウェブサイトにおける検索結果を示す、甲第129〜132号証しか、引用商標の著名性に寄与するものとはなり得ないが、これをもって引用商標の著名性は、肯定できない。
(2)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性について
(ア)取消理由通知は、本件商標に係る上記商品(薄毛の予防を目的としたシャンプー等)の需要者と引用商標の主たる需要者(AGA看者)とは需要者層において共通することも多い、としているが、検索エンジンによる「シャンプー」の検索結果に対し、「うす毛 予防 シャンプー 」の検索結果は、1.3%(Google)、0.04%(ヤフージャパン)であり、そもそも日本の総人口の数%しか、抜け毛予防等を目的としたシャンプー等の購入者は存在しないのであるから、本件商標の指定商品シャンプー等を「薄毛の予防を目的としたシャンプー」等に限定して、シャンプー等と処方せんが必要な男性型脱毛治療薬とが極めて関連性が強いとの結論を導き出すのは失当である。
(イ)取消理由通知書では、製薬会社の中には、ヘアケア商品等の製造・販売に係る会社も数多くあると認定している。しかし、商標権者の調査では、製薬会社売上げトップ10社のうち9社が、ヘアケア商品等の製造を行っていない。したがって、生産、販売部門を共通にすることが多いという認定は、単なる憶測でしかない。
また、取消理由通知書では、薬局等では、医薬品を販売する一方で、ヘアケア商品等も販売する旨の記載がなされているが、引用商標に係る商品「男性型脱毛治療薬」を一般的な医薬品に拡大している。
客観的に見れば、我が国の一般的な需要者を基準とすると、シャンプー等と処方薬との関連性は極めて強いと考えることはできないであろうから、都合の良いように、本件商標の指定商品について用途を限定したり、引用商標に係る商品を拡大して、両商品の関連性が極めて強いと述べることは失当である。
(3)出所の混同のおそれについて
以上のとおり、引用商標の著名性は否定され、商品の関連性及び需要者の共通性も否定されるのであるから、結果として、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえないことは明らかである。
5 当審の判断
(1)前記3の取消理由は、妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用できない。
(ア)商標権者は、甲各号証について意見を述べつつ、引用商標の著名性は肯定できないと主張している。
しかしながら、甲第66〜128号証の2は、AGA治療に関する内容の一般向け新聞記事であり、甲第95、113、114、117、122号証を除き、申立人商品についての記載がされており、見出し中に引用商標が記載されているもの(甲71、81〜85、87〜89、91〜94、102、105〜107、111、118、121、123、124、126)や申立人商品の写真が掲載されているものが多く、これらの記事には申立人商品以外の商品は一部を除き掲載されていない。したがって、これらの記事には、AGA治療薬を前面にして記載されているものがあるとしても、引用商標の著名性認定の証拠となり得るものである。しかも、このようにAGAについて一般向け新聞において頻繁に取り上げられることは、AGAについての関心の高さを伺わせるものといえる。
また、万有製薬及びAGAに係るウェブサイトのみではその閲覧者は限られ、甲第36〜52号証の万有製薬のTV広告、新聞広告は、申立人商品が処方せん医薬品であるため、一般人を対象とした広告が行えない(甲32)ことから、直接、申立人商品について広告するものではなく、AGA治療について医療機関に相談することを呼びかける内容であるが、これらの広告が盛大に行われるならば、AGA患者は、唯一の内服タイプの育毛剤である申立人商品に係る情報も得ようとすることもあるというべきであるから、これらの証拠のみでは著名性に関する直接的な証拠とはならないとしても、引用商標に係る著名性認定の証拠となり得るというべきである。
さらに、商標権者は、申立人商品の販売額(甲21)について、2008年の販売額92億5000万円は、約10万3000人(AGA患者の0.7%)しか申立人商品を購入していないことになるから、引用商標が需要者、取引者に全国的に広く知られている商標とはいえない、と主張しているが、申立人商品は、医師の処方によって販売される薬剤であって、同年度の上記販売額、服用患者数は、決して少ないものとはいえない。
そして、これらの新聞記事、広告宣伝、販売実績等を総合的に見るならば、引用商標は、本件商標の登録出願時には、取引者、需要者、特に、AGA看者やその潜在的な成人男性をはじめ、医師、薬剤師等の医療関係者の間において広く知られていたものと認めることができるから、商標権者の上記主張は、採用できない。
(イ)また、商標権者は、「薄毛の予防を目的としたシャンプー」等に限定してシャンプー等と処方せんが必要な男性型脱毛治療薬との関連性を導き出すのは失当であるとし、また、製薬会社売上げトップ10中9社がヘアケア商品の製造を行っておらず、製薬会社の中には、エアケア商品等を製造・販売に係る会社が数多くあるとの認定は誤りであるとして、両商品の関連性が極めて強いというのは失当であると主張している。
しかしながら、製薬会社若しくはその子会社がヘアケア商品や化粧品を製造、販売していることは明らかであり、例えば、
・第一三共ヘルスケア株式会社:「カロヤン薬用シャンプー」、「カロヤン薬用コンディショナー」(http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_karoyan/products/karo_shco.html)
・全薬工業:「ロモコートシャンプーM」ほかスキンケア、ボディケア商品(http://www.zenyaku.co.jp/product/hair/index.html)
・大正製薬株式会社:「プレリアップクレンジング」、「プレリアップスカルプシャンプー」、「プレリアップコンディショナー」、「プレリアップリンスインシャンプー」、「プレリアップマッサージトニックEX」(http://www.catalog-taisho.com/search0_an.php?c_id=39&parent_f=1)
・常磐薬品工業株式会社:「ノブ ヘアシャンプー D」(http://tokiwastyle.jp/000004/item/57116/viewItem_Form.aspx)
・持田ヘルスケア株式会社:「コラージュフルフルシャンプー・リンス」(http://hc.mochida.co.jp/)
の事実からもうかがい知れるところである。
さらに、本件商標に係る商品が引用商標に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるか否かを検討する際、引用商標に係る商品の需要者等と本件商標の指定商品に係る需要者等の共通性について検討すべきであるから、特に本件商標の指定商品中の、特に「薄毛予防のシャンプー」の需要者についても検討すべきであることは当然である。したがって、本件商標の指定商品と申立人の業務に係るAGA治療薬とは、極めて関連性の強いものであるとの認定に誤りはなく、商標権者の主張は採用できない。
(ウ)「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきであると解されるところ、本件商標「Propecia」と引用商標「PROPECIA」、「プロペシア」とは、その欧文字において、大文字と小文字の相違にすぎず、いずれも「プロペシア」の称呼を生ずるものであるから、類似性の程度は極めて高いものである。
また、「PROPECIA」の文字は、既製語ではなく、独創性の程度も極めて高いといえるものである。
そして、前述のとおり、引用商標が申立人の業務に係るAGA治療薬を表示するものとして周知著名となっていたこと、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは関連性があり、その需要者において共通するものであることなどが認められ、これらの事情を総合考慮すると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用した場合、これに接する需要者が、周知著名な商標である引用商標を連想・想起して、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(2)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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