Trademark Appeal Case
称呼類似と観念の非発生
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900436(T2009−900436/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5258720号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成21年1月13日に登録出願、第29類「ドライフルーツ,乾燥果実」を指定商品として、同年8月21日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第4439121号商標(以下「引用商標」という。)は、「JARDIN」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年1月6日に登録出願、 第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,ハムサラダ,ポテトサラダ,マカロニサラダ,その他のサラダ,その他の加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,乾燥卵,液卵,冷凍卵,茹で卵,卵焼き,スクランブルエッグ,その他の加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,ミートソース,その他のパスタソース,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,卵どうふ,食用たんぱく,食用卵殻粉を主材とする粉状・液状又はタブレット状の加工食品」を指定商品として、同年12月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由の要旨
申立人は、「本件商標は、下段部の欧文字部分から『ジャルダン』の称呼が生じ、フランス語の観念『庭、庭園』が生じる。これに対し引用商標は『JARDIN』の文字部分から『ジャルダン』の称呼が生じ、フランス語の観念『庭、庭園』が生じるので、本件商標と引用商標は、称呼及び観念を共通にする類似の商標である。また、本件商標と引用商標は、その指定商品も同一又は類似のものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。よって、本件商標の登録は、取り消されるべきものである。」旨申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
4 本件商標の取消理由の要旨
登録異議の申立てがあった結果、商標権者に対し、期間を指定して意見を述べる機会を与えて通知した平成22年4月12日付けの取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、別掲のとおり、赤色系の色彩を有する図形と文字との結合商標であるところ、その図形部分と文字部分とを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情は見いだし得ないものであるから、それぞれが自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
そして、「Le・Jardin」の文字部分については、「Le」と「Jardin」とを黒点「・」を介して表されているので視覚上「Le」と「Jardin」とに分離して認識されるばかりでなく、「Le」の文字部分が英語の「the」に相当するフランス語の定冠詞であることから、同部分を省略してこれに続く文字部分が注目されるものであって、取引者、需要者は、「Jardin」の文字部分を捉えて取引に資する場合も決して少なくないものと判断するのが相当である。
そうとすれば、その構成中、「Jardin」の文字部分は、他の構成部分より独立して自他商品の識別力を有する要部とみるべき文字部分といえるものである。
しかして、該「Jardin」の文字は、「庭、公園」などの意味を有し、「ジャルダン」と発音されるフランス語の成語(クラウン仏和辞典第2版:三省堂)であるとしても、該語が我が国において広く知られた語とはいえないものであることからすると、その構成文字に相応して、フランス語の発音に相当する「ジャルダン」の称呼をも生ずるというのが相当であって、その観念は生じないものである。
これに対して、引用商標は、「JARDIN」の欧文字よりなるところ、本件商標とは大文字、小文字に違いはあるもののその欧文字としての綴り字が本件商標の要部である「Jardin」と同一であるから、本件商標についての上記の理由と同じ理由により、引用商標からは、その構成文字に相応して「ジャルダン」の称呼をも生ずるものであって、その観念は生じないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観において相違し、観念において比較できないとしても、本件商標の要部である「Jardin」と引用商標の「JARDIN」の文字は、その綴り字を同じくするものであって、称呼においては、「ジャルダン」の称呼を共通にするものであるから、両者は、外観上において文字部分が近似し、称呼上において互いに相紛らわしい類似の商標というのが相当である。
イ 本件商標と引用商標の指定商品の類否について
本件商標と引用商標の指定商品は、上記のとおりであるが、本件商標の指定商品である第29類「ドライフルーツ,乾燥果実」と引用商標の指定商品のうち 第29類「ハムサラダ,ポテトサラダ,マカロニサラダ,その他のサラダ,その他の加工野菜及び加工果実」とは、取引者、需要者においても、販売場所及び用途においても共通にする場合のある商品ということができるから、本件商標と引用商標の指定商品は同一又は類似するものと認められる。
(2)まとめ
したがって、本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品は引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 取消理由の通知に対する商標権者の意見
本件商標権者は、前記4の取消理由の通知に対して要旨以下のように意見を述べている。
(1)取消理由では、「Le」と「Jardin」を別々に分け、引用商標の「JARDIN」と、本件商標の「Le・Jardin」とが混同するとしている。しかしながら、本件商標は、「Le」と「Jardin」を分けずに、「ルジャルダン」と一体不可分で一気に発音され、よどみなく一連に称呼できるものである。
(2)取消理由では、本件商標を「Le」と「Jardin」を別々に分ける根拠として、「Le」は、フランス語の定冠詞であり、英語の「The」に相当するとされている。しかしながら、「Le」が、英語の「The」に相当するフランス語の定冠詞であることを知っている日本人は、ほとんどいない。したがって、本件商標から「Le」の文字列のみを切り出して評価できないものと考える。実際、本件商標の称呼である「ルジャルダン」の先頭の「ル」は、強くアクセントをつけて発音されるか、「ル」の発音を伸ばして「ルージャルダン」と発音されることが多く、本件商標は、引用商標の「ジャルダン」の称呼とは、極めて異なり混同は生じないものである。
(3)また、「Jardin」は、「庭、公園」の意味を有することを、本件商標から「Jardin」を切り出し評価するとされているが、「Jardin」がフランス語の「庭、公園」の意味を知っている目本人はほとんどいない。このように、本件商標は、引用商標のような意味合いを直ちに認識させるものとはいい難く、また、特定の商品の品質等を具体的に表示するものともいえない。本件商標は文字列全体をもって一体不可分の一種の造語として認識し把握されるとみるのが自然である。
(4)登録第3128923号「Le Jardin\ル・ジャルダン」は、商標登録第3118468号「Jardin\ジャルダン」が先行商標登録されているにも拘わらず登録されている。商標登録第3128923号と商標登録第3118468号の両方が登録されていることから、本件商標と引用商標は別物であることを示している。
(5)以上の理由により、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能を有し、引用商標と出所の混同を生ずるおそれはなく、商標法第4条第1項第11号の規定に該当しないものである。
(6)なお、(株)中島董商店は数多くの指定区分並びに商品を取得されているが、「JARDIN」と名のつく商品が市場にて実際に流通しているか、また、同一又は類似する商品が存在するのかにかかわらず、実質、取引者、需要者が取引において自他商品の識別力において誤認するとは考えられない。
6 当審の判断
本件商標権者は、取消理由における、本件商標と引用商標が類似するとした判断は誤りであると主張するので、以下この点について検討する。
商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
また、商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定するがごときことは許されないが、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあり、この場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一又は類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照)。
そこで、以上の見地に立って、本件商標と引用商標の類否について判断する。
本件商標は、別掲に示したとおり、図形と文字との結合商標であるところ、これらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情は見いだし得ないものである。
本件商標の文字部分は、「Le」「・」「Jardin」により構成されているものであるところ、黒点「・」を介することで視覚上「Le」と「Jardin」の二つの文字を看取させるものである。そして、「Le」の文字は、フランス語の定冠詞として容易に認識されるものである。
この定冠詞は、「(definite article)冠詞の一つ。名詞(単数・複数とも)の前(稀に後)に付して、その名詞によって表される類の中の特定の個体・メンバーに限定する働きをもつ。the(英語)、le, la, les(フランス語)、der, die, das(ドイツ語)の類。」(「広辞苑 第六版」岩波書店)の意味を有し、それ自体に格別の意味がなく、他の語に冠して、その語を特定し又は強調すると認められるものであるから、取引者、需要者は、構成中の「Jardin」の文字部分を本件商標の主要な部分と認識し、これより生ずる称呼をもって取引にあたる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して、フランス語読みに「ルジャルダン」の称呼を生ずるほか、「Jardin」の文字部分に相応して「ジャルダン」の称呼をも生ずるものというべきである。また、該「Jardin」の文字は、「庭、公園」などの意味を有するフランス語の成語(クラウン仏和辞典第2版:三省堂)であるとしても、我が国において知られた語とはいえないものであるから、本件商標より観念は生じないものである。
なお、フランス語の定冠詞に関しては、図形と「bel」の文字からなる商標と「LA BELLE」の文字商標との類否において、後者の「LA」の文字部分がフランス語の定冠詞であり、識別標識として顕著な部分は後半の「BELLE」の文字であるとした上で、両商標は、共に「ベル」の称呼を共通にする類似の商標であると判示した例が存する(東京高裁 昭和60年4月30日判決言渡 昭和58年(行ケ)第257号)。
これに対し、引用商標は、「JARDIN」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して、フランス語読みに「ジャルダン」の称呼を生ずるものということができる。
そうすると、本件商標と引用商標とは、共に「ジャルダン」の称呼を共通にし、また、観念においても、「Jardin(JARDIN)」は、我が国において格別に親しまれた語ということはできないが、フランス語で「庭、公園」の意味を有する語であること、及び本件商標中の「Jardin」の文字部分と引用商標の「JARDIN」の文字とは、小文字と大文字の表記に相違はあるものの、その綴り字を同じくすることから、両商標は、図形部分の有無等外観において相違する点を考慮しても、共に「ジャルダン」の称呼において類似する商標といわざるを得ず、かつ、本件商標の指定商品「ドライフルーツ,乾燥果実」は、引用商標の指定商品中の「加工果実」に包含される商品と認められるものであるから、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
なお、商標権者は、登録第3128923号商標と登録第3118468号商標の両方が登録されていることから、本件商標と引用商標は別物であることを示している旨主張しているが、両登録商標は、平成4年のサービスマーク登録制度導入に伴う特例による重複登録商標であることから、両商標は互いに類似の商標として重複登録されているものである。
また、商標権者は、引用商標の使用された商品が市場にて実際に流通しているか不明であり、取引者、需要者が取引において自他商品の識別力において誤認するとは考えられない旨主張しているが、本件商標と引用商標とが称呼において類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似するものであること前記のとおりであるから、本願商標と引用商標とをそれぞれの指定商品に使用するときは、その出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ず、さらに、請求人は、商品の出所について混同のおそれは存在しないことを証する何らの証拠も示していないことから、該主張は採用できない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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