Trademark Appeal Case
ビジネスデザインの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2007−5317(T2007−5317/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成18年3月27日に登録出願され、その後、指定役務については、平成18年10月10日、平成19年2月9日及び平成21年7月17日付け手続補正書をもって最終的に、第35類「経営コンサルティング」、第36類「企業の信用に関する調査」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『ビジネスを計画する、立案する』ほどの意味合いで一般に理解される『Business Design』の文字と、『ビジネス デザイン』の文字からなるところ、これをその指定役務中「ビジネスを計画する、立案するための役務」に使用しても、単に役務の質(内容)を表したものとしか認識されない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知(要旨)
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、以下の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成22年1月8日付けで証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。
(1)本願商標は、「Business Design」及び「ビジネス デザイン」の文字を二段に併記してなるところ、両語を結合した「Business Design」又は「ビジネス デザイン」の一連の文字については、本願の指定役務中「経営コンサルティング」との関係では、「企業や起業家のために、商売や事業等の企画・立案を行うコンサルティング」程の意味合いを理解、認識させるものというべきである。
(2)このことは、例えば,次の新聞記事及びインターネット情報において、以下のように紹介されている実情があることからしても、本願商標を前記役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、単に役務の質(内容)等を表示したにすぎないものと認識するに止まり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものとは認識しないというべきである。
ア 新聞記事に掲載されている事実
(ア)2009.12.29 愛媛新聞 朝刊
「乗車待ち時間 楽しく JR今治駅 専門校生が作品展」の見出しの下、「年末年始の帰省客らに列車の待ち時間を楽しんでもらおうと、・・・同校ビジネスデザイン科の生徒15人がデザインしたタオル、エコポスターなど約50点が飾られている。25日、同校生徒ら約20人が駅構内に作品を設置。タオルをハーブ栽培セットと合わせて販売する企画案など、ユニークな発想の作品が駅を彩った。」との記事。
(イ)2009.10.14 日刊工業新聞
「愛媛県、ビジネスデザイン助成に5件採択」の見出しの下、「【松山】愛媛県は2009年度えひめ中小企業応援ファンドを活用したビジネスデザイン助成事業で・・・計5件を採択した。同事業は県内企業製品のデザインを活用した市場競争力を強化するのが狙い。デザイン企画開発経費など対象経費の2分の1以内で1年間助成する。」との記事。
(ウ)2009.09.02 北國新聞 朝刊
「わがまち賛歌 南砺市蓑谷地区(2)〔注目の講座〕『社長の奥さん』応援 社保事務所が新たな試み」の見出しの下、「南砺市蓑谷の中島社会保険労務士事務所が今年から開いている『社長の奥さん 応援講座』が、砺波地区の中小企業の経営者夫人の間で関心を集めている。講座はいわゆる『社長の奥さん』が対象で、毎回講師を招き、日ごろ抱えている悩みを解決するためのアドバイスを受けるとともに、参加者同士の交流を深めるというもの。・・・所長の中島武司さん(43)は5年前から同市城端の起業家支援センター内に「ビジネスデザイン工房」を構えている。・・・企画を担当する産業アドバイザーの浦井啓子さん(32)は『こんな講座を待っていたという声を多く頂いた。』」との記事。
(エ)2007.02.12 FujiSankei Business i.
「【仕事人】戦略的ビジネスデザインコンサルタント・能登左知さん」の見出しの下、「【用語解説】戦略的ビジネスデザインコンサルタント/会社概要、プレゼンテーション資料、プレゼンの仕方など『視覚的に訴える』ビジネス戦略をアドバイスする。理論構築はもちろんだが、デザイン工学修得のデザイナーとしてビジュアルの見せ方に専門性を発揮したコンサルタントを行う。」との記事。
(オ)2004.11.08 読売新聞 東京朝刊
「[教育改革]大学編 変わる授業(47)企業戦略、学生が指南=北海道」の見出しの下、「札幌市中央区の北五条通に面したおにぎり店・・・社長の南部均(57)は学生四人とテーブルを囲んでいた。学生の一人、北星学園大の岩城繁(21)が南部に切り出す。『・・・売り上げ拡大には、新商品を開発しましょう』。・・・南部は知人の経営者に誘われ、小樽商科大助教授の酒井弘一(48)の授業に参加した。地元企業の経営戦略を学生が編み出すという授業を目の当たりにし、『学生の斬新な発想が生かせるかも』と新商品開発を依頼した。・・・学生が企業に経営を指南する−−。酒井の『ビジネスデザイン論』は、商大生にとどまらず、北星学園大や藤女子大、北海道大など、道内の他大の学生も参加するユニークな授業だ。」との記事。
(カ)2004.08.18 読売新聞 東京朝刊
「[新社長デビュー]兼松・三輪徳泰氏57 安全な食材輸入などで勝負」の見出しの下、「・・・取引先が必要とする商社の機能を探り、提供できる企業になる。そのために、三つの改革に取り組む。第一は『フォア・ザ・チーム』。・・・ 第二に、ビジネスデザインの革新。営業の第一線で忙しい社員から寄せられた新しいビジネスの提案を具体化する専門部署を作る。」との記事。
(キ)2000.11.06 日本食糧新聞
「日本能率協会、『FOODSHOP2001』スポンサー募集」の見出しの下、「二〇〇一年4月施行予定の『食品循環資源の再生利用などの促進に関する法律』を視野に、環境コストを経営責任の中に位置づけるとともに、いかにその低減をはかるか。また、その中でいかに消費者の共感をえるビジネスデザインを描くかを提案する。」との記事。
(ク)1998.07.28 流通サービス新聞
「大阪商工会議所、ベンチャー人材育成で『ネスク起業塾』を開講」の見出しの下、「大阪商工会議所(大西正文会頭)は、・・・実際に起業を志している人や新たな事業にチャレンジしようという意欲のある人を対象に、ビジネスプランの作成や資金調達、販路開拓、ベンチャーサポーターの上手な利用方法など、五カ月間(月一回)にわたり実践的な指導を行う。・・・専門アドバイザーはビジネスデザイン社長でコンサルタント経験豊富な・・・」との記事。
イ インターネット情報に掲載されている事実
(ア)「ビジネスデザイン推進機構」のサイト(http://ipbd.jp/)では、「ビジネス環境のグローバル化に伴い激化する競争的環境の中で・・・、ビジネスに関わる複雑なステイクホルダー間の要求を調整し、ビジネスを成功へと導く最適な枠組みをデザインすることが本質的に重要となる。」との記載。
(イ)「愛媛県のビジネス・デザインコーディネーター、ワクタルWAKTAL」のサイト(http://www.waktal.com/)では、「ビジネスを物語にして、お客さんに伝えていく。 経営ってお金の管理だけじゃないですよね? 商品を企画したり、販路を開拓したり、販促を計画したり。そこにはシナリオがあります。・・・つまり、ビジネスそのものをデザインしていくのです」との記載。
(ウ)「EveryMonday戦略/経営コンサルタント無料相談会」のサイト(http://fri.club.officelive.com/default.aspx)では、「富士通総研 第二コンサル本部流通・サービス ビジネスデザインコンサルチームでは、毎週月曜日(14時〜17時)に、無料にて3時間マンツーマンで無料相談会をおこなっております(新規事業企画立案/マーケティング企画立案/事業拡大戦略に関するもので過去に事例がない新しい発想を必要とする案件全般)」との記載。
(エ)「ビジネスを創造する大前研一のビジネススクール」のサイト(http://www.attackers-school.com/course/shueki.html)では、「時代や社会構造が激変する中で、“ビジネスを設計する力(ビジネスモデリング)”は、極めて重要な能力となっています。この能力は、事業全体を俯瞰し、新しい視点や気づきで 事業機会を捉え創造し、事業を組み立てるのがビジネスデザイン力です。」との記載。
(オ)「ビジネスデザインコンサルタントの役割」のサイト(http://www.recto.co.jp/kyokan/impression/main.html)では、「ビジネスデザインコンサルタントは、企業のための戦略パートナーであり、事業を創造的にデザインします。その仕事は、多岐にわたりビジネス創造から企業イメージやアイデンティティーの確立、スタイル再生とアプローチ方法、事業戦略からマネジメントまで...と業績に直結する問題に対峙します。『ビジネスを成功に導く』には、戦略に創造性を発揮するビジネスデザインコンサルタントの存在を欠かすことはできません。株式会社レクトでは、ビジネスデザインコンサルタントがコンサルティングを実施しています。」との記載。
4 証拠調べ通知に対する意見(要旨)
請求人は、前記3の「証拠調べ通知」に対し、平成22年2月19日付け意見書において、以下のように意見を述べている。
(1)証拠調べ通知書に記載されている事実が、現実に本願商標の出願前や出願後に存在していたかどうか、ということが争点となるのではなく、証拠調べ通知書にある事実を個別に勘案した場合に、本願商標が指定役務に係る役務の質(内容)との関係において、自他役務識別機能を有しているかどうかを考察すべきである。
(2)「デザイン」の語に「設計[立案]する」という和訳が当然存在するが、一般の日本人が想起する概念は、『広辞苑』による「下絵・素描・図案」なる水準が妥当であると言わざるを得ない。
(3)本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとしても、審判請求書に添付した「日本経済新聞平成19年1月1日版」の写しを再度検討すれば、本願商標は商標法第3条第2項に該当する。
5 当審の判断
(1)本願商標は、別掲のとおり、「Business Design」の欧文字と「ビジネス デザイン」の片仮名文字を二段併記してなるところ、その構成中欧文字の各字は、若干不鮮明に表された字ではあるが(ただし、u、n、D、g及びnの各字は除く)、明瞭に読める字と併せみれば、各文字が「Business」及び「Design」の文字から構成されてなるものと無理なく認識できるものである。
そして、プログレッシブ英和中辞典(小学館発行)によれば、「business」の文字が「職業、商売、商業、商取引」等を意味し、また、「design」の文字が「設計[立案]する、下絵を書く」等を意味する高校程度の平易な英語として一般に広く知られているものであるから、両語を結合した「Business Design」の一連の文字からは、「商売(ビジネス)を設計[立案]する」程の意味合いを理解、認識させるというべきである。
また、コンサイスカタカナ語辞典第3版(三省堂発行)によれば、その構成中下段の「ビジネス」の文字が「業務、実務、事務、営業、仕事、商売」等を意味し、また、同「デザイン」の文字が「設計、計画、企画、図案」等を意味する外来語として一般的に使用されているものであるから、上記と同様、両語を結合した「ビジネス デザイン」の一連の文字からは、「ビジネス(商売)を設計・計画(デザイン)する」程の意味合いを容易に看取させるというべきである。
(2)そうであれば、「Business Design」及び「ビジネス デザイン」の文字から構成され、上記(1)のとおり、「ビジネス(商売)を設計・計画(デザイン)する」程の意味合いを直感させる本願商標を、その指定役務中「経営コンサルティング」について使用した場合には、前記3の「当審における証拠調べ通知」で述べたとおり、これに接する取引者、需要者は、単に「企業等のために、商売(ビジネス)の設計・企画(デザイン)を行うコンサルティングの役務」程の意味合いを理解、認識するものというべきである。
そして、その実情については、前記3で示した新聞記事及びインターネット情報からも十分に窺うことができるものである。
そうすると、本願商標は、単に役務の質(内容)を表示したものとして認識されるに止まり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、「証拠調べ通知書に記載された事実の存否ではなく、本願商標が指定役務に係る役務の質(内容)との関係において、自他役務識別機能を有しているかどうかを考察すべきである」旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号の判断に際しては、「商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和53年(行ツ)第129号 昭和54年4月10日第三小法廷判決言渡 裁判集民事126号507頁、判例時報927号233頁参照)」と判示されているとおり、本願商標と同一又は類似の標章を多数の者がすでに取引に際して使用している実情がある故に、その独占使用を認めることが公益上適当と認められないからである。
イ 請求人は、「デザインの語に『設計[立案]する』という和訳が当然存在するが、一般の日本人が想起する概念は『広辞苑』による『下絵・素描・図案』なる水準が妥当であると言わざるを得ない」旨主張している。
しかしながら、「design」の文字は、高校レベルの平易な英語であって、1番目の意味も「設計[立案]する」である。また、「デザイン」の片仮名文字も「設計、計画」等を意味する外来語として広く一般に使用されている語であるから、「デザイン」の文字に接する一般の日本人が、「下絵・素描・図案」なる意味合いしか想起し得ないものとは俄に認め難く、かつ、一般の日本人が想起するその概念が、請求人主張の水準程度であるとする証拠の提出もない。
ウ 商標法第3条第2項について
請求人は、本願商標は、使用により自他役務の識別力を獲得しているから、商標法第3条第2項の要件を具備している旨主張し、証拠方法として「日本経済新聞平成19年1月1日版」の「たくましいジャパン2.0」の見出しが付された新聞記事のコピーを証拠物件として提出している。
ところで、出願に係る商標が、指定役務に係る役務の質を表示するものとして商標法第3条第1項第3号に該当する場合に、それが同条第2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び役務について、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該役務に係る売上高等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決定すべきものであり、その場合に使用に係る商標及び役務は、出願に係る商標及びその指定役務と同一の場合に限られるものである。
そこで、以上の前提を踏まえて検討するに、提出された前記物件を子細に調査しても、「Business Design」ないし「ビジネス デザイン」の文字が前記物件で使用されている事実を発見出来なかった。他に、本願商標が、識別力を得るに至ったとする証左の提出もない。
そうすると、本願商標が、その指定役務に使用された結果、自他役務の識別力を獲得するに至ったと認めるに足る充分かつ客観性のある事実は見出せないものであるから、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するとする請求人の主張は、採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠によっては、本願商標が同法第3条第2項の要件を具備するに至ったものとは認めることができない。
したがって、本願商標を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。