結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2009−890090(T2009−890090/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5044506号商標(以下「本件商標」という。)は、「Franz von Metternich」の文字を標準文字で表してなり、平成18年8月2日に登録出願、第33類「洋酒,果実酒,薬味酒」を指定商品として、平成19年3月19日に登録査定、同年4月27日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録第1525037号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、昭和52年12月15日に登録出願、第28類「ライン産の発泡性ぶどう酒」を指定商品として、昭和57年7月30日に設定登録され、その後、平成5年1月28日及び平成14年4月16日に商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品については、平成15年6月18日に第33類「ライン産の発泡性ぶどう酒」とする書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証(枝番を含む。)を提出している。
〈請求の理由〉
(1)引用商標について
(ア)引用商標の構成
引用商標の構成は、下方にドイツワイン法に基づいたワインのタイプ、栽培地域名及び公的検査合格番号として「SEKT・BEREICH JOHANNISBERG」及び「Amtliche Pr(u)fungs Nummer H 313 18 76」(綴字記号「ウムラウト」を有する文字は「()」で囲んで代替した。以下同じ。)が表示され、その上方に大きく「F(u)rst von Metternich」と欧文字で横書きし、さらにその上方に「肖像画」を縦長楕円形の額内に描いてなる結合商標であり、この欧文字と肖像画が大きく明瞭に表示され、その要部となっている(甲第2号証)。
なお、肖像画の人物が「F(u)rst von Metternich」自身であることは、世界大百科事典30(甲第17号証)の「メッテルニヒ」の項及びその他の証拠で明らかである。
(イ)引用商標「F(u)rst von Metternich」(フィルスト フォン メッテルニヒ)及びその略称の著名性
「フィルスト フォン メッテルニヒ」の名称は、ドイツワインの文化の発祥地「ラインガウ」の「ヨハニスベルガー」において、数世紀にわたり引き継がれてきたものであり、世界中のワイン愛好家に知られ、日本においても取引者、需要者の間で広く認識されている(甲第6号証ないし甲第14号証)。
(a)世界酒大事典(1995年8月1日柴田書店発行:甲第6号証)の「メッテルニヒ」を見出し語とする箇所(456頁)に「ゼクトの商品名。ドイツのフュルスト・フォン・メッテルニヒ社製。ヨハニスベルク城のリースリング種で、シャンパン方式でつくられた製品。正式名はフュルスト・フォン・メッテルニヒ(メッテルニヒ侯爵)といい、ブリュットとトロッケンがある。」との記載がされている。
(b)日経BPムック プロフェッショナルのための世界ワイン大全(1999年2月25日初版第3刷日経BP社発行:甲第7号証)の「Weingut Schloss Johannisberg」(ワイン農場・シュロス・ヨハニスベルク)の項(196頁)に「世界で最も名を知られたドイツの醸造所のひとつである」との記載と共に「Schloss Johannisberger Riesling アウスレーゼ」、「Schloss Johannisberger Riesling シュペートレーゼ」及び「Schloss Johannisberger Riesling ハルプトロッケン」の「シュロス・ヨハニスベルガー」のラベルを付したボトルが表示されており、このラベルには引用商標「F(u)rst von Metternich」が上方のリボンの部分に使用されている。
また、「Henkell S(o)hnlein」の項(321頁)に「ラインガウを有するヘッセン州の州都、ヴィスバーデンに位置する。130年前、アダム・ヘンケル氏とヨハン・ヤコブ・ゼーンライン氏はそれぞれゼクトの醸造所を設立。ドイツゼクトの歴史は両者の働きがあってのことと言われている。国際的に名高いブランドを持つ両醸造所が、1986年合併し当時ドイツ最大級のゼクト醸造所となった。130年来、共有してきた伝統の結果として、合併後も同様のブランドを生産し続けており、その中で頂点にたっているのが、紹介されている“メッテルニヒ侯爵ゼクト”。」との記載と共に「F(u)rst von Metternich Brut フュスルト・フォン・メッテルニヒ・ブリュット」のボトル写真が紹介されている。
(c)「新ドイツワイン」(1984年3月15日初版 柴田書店発行:甲第8号証)の171頁ないし172頁に「シュロス・ヨハニスベルク醸造所」の見出しの下「...1775年における貴腐ぶどう、遅摘みの発見、そして1816年にはウィーン会議の功績により、オーストリア皇帝フランツ1世から、元オーナーの祖先クレメンス・フォン・メッテルニヒに城が送られた事実など、華やかさの多い醸造所である。...」旨の記載がされており、この「クレメンス・フォン・メッテルニヒ」が引用商標に描かれている「肖像画」(F(u)rst von Metternich)の人物である。
(d)「ワインものがたり」(1998年12月19日初版 大泉書店発行:甲第9号証)の「ドイツワインの格付けと分類」の項(92、93頁)には「ドイツワインの格付けと分類については、QmP、QbA、並級酒群の三つの格付けがあり、QmPでは補糖が認められず、QbAでは補糖が許されている、と説明されている。
また、「シュロス・ヨハニスベルガー」の見出しの下に(100、101頁)「シュロス・ヨハニスベルガーを生み出す醸造所は、ライン川流域のほぼ中心にあるヨハニスベルク村の、川を南に見おろす高い丘の上にある。ここは1090年に創設された、この地でもっとも古い歴史を持つ醸造所の一つで、はじめはヨハニスベルク修道院の所有だった聖ヨハネにちなんで名付けられた。この修道院は、シュペトレーゼ(遅摘み)の発見によってドイツワイン史に名を残している。...」や「●歴史上の人物たちが所有したワイナリー 醸造所はやがてナポレオンの支配下に置かれ、彼の敗退後は、1816年にオーストリアの皇帝、ハプスブルク家のフランツ1世のものとなった。そしてのちに、皇帝からウィーン会議で功績のあった宰相メッテルニヒに与えられた。...」という記載がされている。
上記のように、「ラインガウ地域」ではシュロス・ヨハニスベルクの「フィルスト フォン メッテルニヒ」がドイツワインとして著名である。
引用商標「F(u)rst von Metternich」は、ドイツワインの中で、ラインガウのメッテルニヒ醸造所、シュロス・ヨハニスベルクで生産されたワインのみに使用される商標であり、品質分類によれば「QmP」である。
(e)「ヴィノテーク」(第25巻第6月 平成16年6月1日発行 発行人 株式会社ヴィノテーク 田崎真也:甲第10号証)の「バイイング・ガイド 田崎真也セレクション」において「17point/20」、「F(u)rst von Metternich Riesling Sekt Cuvee TrokennNV 11.5%、 フュルスト・フォン・メッテルニッヒ・リースリング・ゼクト・キュヴェ・トロッケン ピーロート・ジャパン」との見出しの下「ドイツ・ラインガウ地方のヨハニスベルクで造られる、リースリング100%からのゼクト。ドイツで最も有名なゼクトのうちのひとつ。外観はグリーンがかった淡い色調に気泡はきめ細やかで滑らか。...」との記載がされている。
(f)「ドイツワインのお勉強 Deutscher Wein Cite」とするウェブサイト(甲第11号証)の「ラインガウ」を見出しとするウェブページに、この生産地帯の特徴と共にラインガウ二山五城の内、2山の1つとして「Schloss Johannisberg」の記載がされている。
(g)「ドイツワイン基金駐日代表部」のウェブサイトにおけるウェブページ(甲第12号証)の「ドイツ BESTジャーマンワイン 2002」とする報告によれば、QbAのワインから甘口トロッケンベーレアウスレーゼまで、19のカテゴリーに分類された192種の2002年ビンテージ白ワインが審査された。その結果、シュロス・ヨハニスベルガーSchloss Johannisbergerにつき、Riesling Beerenauslese(リースリンク ベーレンアウスリーゼ)の分野で、栽培地域 Rheingau 飲頃 2020 点数95.4で第3位にランクされている。
また、「愛知万博 ドイツ館公式サイト」とリンクするウェブページ(甲第12号証の1:2葉目)において「ドイツ・パビリオンでドイツワインを」の見出しの下に「2005年2月18日 中部国際空港開港に当たり、ルフトハンザドイツ航空便が名古屋からフランクフルトに初航した。それに伴いドイツワインのプリンセス ティナ・キーファー(24歳)さんが来日し、乗客約245人とドイツ高級ゼクト フュルスト フォン メッテルニヒで乾杯した。このゼクトは愛知万博期間中ドイツパピリオンで提供される。」との記事が掲載がされている。
(h)「ドイツワインニュース3」(2005年4月15日ドイツワイン基金駐日代表部発行:甲第12号証の2)において、「リースニングのふるさとドイツ」「生産地域ごとの収穫報告」の項に13地域中の「ラインガウ ヨハニスベルク」のワイナリーの写真と共に、2005年の収穫量が比較的高かったことが報告されている。
(i)「ドイツワイン基金駐日代表部」のウェブページ(甲第13号証)において「ドイツ大使公邸でアイスワイン及びゼクトの試飲会を開催」として、2008年12月2日に開催された試飲会で、スピーチする駐日ドイツ連邦共和国「デア大使」が掲載されている。
(j)「日本ドイツワイン協会連合会」のウェブサイト(甲第14号証)の「■ラインガウ地域」とするウェブページにおいて「●ドイツが誇る銘酒の里」の見出しの下に「ヴィースバーデンの近くからロルヒハウゼン約50kmのライン河北岸の南に面した斜面がドイツワインの銘醸地、ラインガウです。...12世紀になると、次々とたてられた修道院で、儀式や訪問者のために盛んにワインがつくられました。そのなかでは、シュペートレーゼワイン(遅摘みワイン)の方法を発見したヨハニスベルク修道院が有名です。...」との記載がされている。
(ウ)「メッテルニヒ」の著名性
「メッテルニヒ」の名称は上記のように、ラインガウ地域のヨハニスベルクで製造販売されてきたゼクト、リースリング等のドイツワインの銘柄として著名である。また、ワインの醸造主の略称として著名であるばかりでなく、引用商標の肖像画の人物であり、政治家「メッテルニヒ侯爵」としても世界的に著名である。また、彼の父の名が「Count Franz George Karl von Metternich」(伯爵フランツ ゲオルク カール フォン メッテルニヒ)であり、「FRANZ」の名が単に男の名前であると同時にメッテルニヒ侯爵の父の名である(甲第15号証ないし甲第25号証)。
(エ)引用商標の使用状況
引用商標「F(u)rst von Metternich」に関してのワインの広告、販売や紹介などは、以下のとおりにされている(甲第26号証ないし甲第34号証)。
(a)日本の輸入総代理店であるPIEROTH JAPAN K.K(ピーロート・ジャパン株式会社)(以下「ピーロート・ジャパン」という。)のパンフレット(甲第26号証)、「Zwei Weine,ein Geist」(二つのワイン一つの精神)のモットーの下、ドイツワインとして、引用商標と同じラベル及び「Schloss Johannisberger」のラベルを使用したボトルを示しており、日本でも販売されている。
(b)「F(u)rst von Metternich」のホームページ(甲第27号証)において、シュロス・ヨハニスベルクの全景及び「F(u)rst von Metternich」の発祥の地であり、ラインガウ地方の特色を説明している。
(c)ピーロート・ジャパンのウェブページ(甲第28号証)において、「フィルスト フォン メッテルニヒ」の紹介文として、「ドイツの最も有名なスパークリングワインの為のドイツワインの最も素晴らしいワイン」との記載、「フィルスト フォン メッテルニヒ」(スパークリングワイン)の特徴ほか、1816年にオーストリアの皇帝フランツ1世から、彼の宮廷議長兼首相のクレメンス・メッテルニヒ・ヴィンツェスラウスにウィーン会議の功績に対して、フルダ近郊のドメーヌ・ヨハニスベルクが贈られたこと、シュロス・ヨハニスベルクのシュペートレーゼに関する歴史的な事柄、1934年以降この銘柄は「フルスト・フォン・メッテルニヒ」と呼ばれていることなどが記載され、また、「シュロス・ヨハニスベルクのワインセラーの壁にあるフィルストフォンメッテルニヒの紋章」の説明文と該写真、メッテルニヒの肖像画等が示されている写真などが掲載されている。
(d)同(甲第29号証)において、スパークリングワインの紹介がされている。
(e)同(甲第30号証)において「フィルスト フォン メッテルニヒ ロゼ」が販売のために紹介されている。
(f)同(甲第31号証)において「フィルスト フォン メッテルニヒ リースリング ゼクト トロッケン」が販売のために紹介されている。
(オ)「F(u)rst von Metternich」ワインの販売実績(販売:ピーロート・ジャパン)は、2003年22,434ボトル、2004年21,240ボトル、2005年23,480ボトル、2006年25,200ボトル、2007年16,960ボトル、2007年9,960ボトル及び2008年19,320ボトルであり(甲第32号証)、ラインガウ地域が、およそ35haのぶどう畑であるところ、リースリング100%のワインとして、日本において上記のような輸入量があることは、このワインの愛好家がいかに多いかを示すものである。
(カ)「世界の名酒事典」によるボトル紹介
(a)世界の名酒事典 1980年改訂版(甲第33号証の1)に「シュロス・ヨハニスベルガー Schloss Johannisberger」と「1090年の創立。以来争乱のたびに運命を変え、1816年ウィーン会議の立役者、宰相メッテルニヒ侯爵にオーストリア皇帝より与えられ、現在はその曾孫が所有。ラベルは2とおりあり、メッテルニヒ候の紋章を描いたものは城直送品、城の遠景を描いたものはゾエーンライン(S(o)hnlein)社の手でさばかれる。メッテルニヒ侯爵家醸」との記載がされている。
(b)同 1984−85年度版(甲第33号証の2)に「シュロス・ヨハニスベルガー Schloss Johannisberger メッテルニヒ侯爵家醸造所」と「ドイツ3大銘柄の一つ。古くはナポレオンが所有者で、それからフランツ1世へ、そしてメッテルニヒ宰相へと受け継がれた。」との記載がされている。
(c)同 1987−88年版(甲第33号証の3)に「メッテルニヒ侯爵ゼクト・トロッケン」と「メッテルニヒ侯爵ゼクト・ブリュット」や「シュロス・ヨハニスベルガー Schloss Johannisberger メッテルニヒ侯爵家」との記載がされている。
(d)同 2004年版(甲第33号証の4)に「シュロス・ヨハニスベルガー Schloss Johannisberger メッテルニヒ侯爵家」と「800年に及ぶ長い歴史をもつ由緒ある醸造所。35haの畑ではリースリング種のみ栽培。近代的なケラーから生まれるワインは魅力的でエレガント。 ピーロート・ジャパン」との記載がされている。
(キ)商標「F(u)rst von Metternich 」の文字を有する、別掲2のとおりの構成よりなる国際登録第796731号(日本国で登録済み。甲第34号証)があるほか、「F(u)rst von Metternich」の商標は、オーストリア、オーストラリア、ベネルックス、カナダ、スイス、ドイツ、デンマーク、エストランド、共同体商標、大英帝国、ギリシャ、香港、アイランド、日本、ノルウェー、シンガポール、その他マドリッド協定による国際登録等合わせて43件の登録を有しており、これら商標は、世界各国において商標権の保護と使用を継続している。
(2)商標法第4条第1項第11号の違反について
(ア)判決例の引用
請求人は、商標の類否判断に関する判決例として、平成20年(行ケ)第10178号審決取消請求事件の抜粋(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決:甲第5号証)及び、商標構成の音数の差について、「二個の商標の称呼の比較において、差異する部分に比して一致する部分が音数において圧倒的に多い場合には、差異の部分は無視され易く、両者は相まぎれるおそれがある」として商標の類似性を認めている判決例(昭和30年(行ナ)42号・昭和31年7月14日東高:甲第4号証)を引用する。
(イ)本件商標と引用商標との類否
(a)外観等
本件商標が文字商標だけであるに対して、引用商標が文字と肖像画の結合商標である点で、外観において相違する。
しかし、文字部分において、両者は共に18字中15字まで同一であり、大文字、小文字の区別、「F」「v」「M」の頭部から始まる5字、3字、10字の3部に分かれた文字配列を同一としているので、構成上極めて近似する。
(b)称呼、観念
本件商標の構成は、上記第1のとおりであるところ(甲第1号証)、本件商標「Franz von Metternich」は、欧文字18文字という長さであり、「フランツ フォン メッテルニヒ」と称呼されるが、文字配列の3部の区切りに応じて簡略に「フランツ」、「フォン メッテルニヒ」又は「メッテルニヒ」の称呼も生じる。
また、「Franz」は、独和辞典によれば、「男名」とされ、また、「von」は「称号又は貴族の表示として」の意を有し、本件商標は「メッテルニヒのフランツ」又は「メッテルニヒ家のフランツ」の観念が生じる。
一方、引用商標の構成は、別掲(1)のとおり、中央下方で一行に横書きされた「F(u)rst von Metternich」の欧文字とその上方に描かれた額縁付きの「肖像画」との結合商標であり、当該ラベル中、この欧文字と肖像画が大きく明瞭に表示され、自他商品の識別機能を持つ商標の要部となっている。
してみると、引用商標は、「フィルスト フォン メッテルニヒ」と称呼され、簡略に「フィルスト」又は「フォン メッテルニヒ」又は「メッテルニヒ」の称呼が生じる。また、ドイツ語の「F(u)rst」は、「君主」、「国王」、「侯爵」等の意味を有するので「メッテルニヒ家の君主」、「メッテルニヒ侯爵」等の観念が生じる。
(c)称呼、観念の比較
本件商標と引用商標は、当該文字部分において、頭部「Franz」と「F(u)rst」とは、称呼、観念において若干の差異が存在する。しかしながら、これら5字は、後半の13字「von Metternich」と比較して、圧倒的に字数が少なく、かつ音数も短いものであって、かつ該文字全体の18文字中15字までの83%以上が同一文字である。また、大文字、小文字の配列を同じくし、かつ同一間隔で表示され、「F」「v」「M」で始まる3部構成を用いているので、極めて近似した商標である。
したがって、両商標に接する取引者、需要者は字数が多く、音数も長い両商標の共通部分、特に「Metternich」の部分に注意力を惹きつけられるのが自然である。
また、「Franz」と「F(u)rst」は、共に先頭文字を「F」とし「フ」と称呼され、さらに5文字中に「r」という同一文字を含んだドイツ語であるので、その差異は微少であって識別が難しい。
したがって、両商標は「Metternich」と略称される類似の商標である。
さらに、ワインという嗜好品の場合、味と香りと色彩、ぶどうの栽培年、醸造所、生産地等が商品選別時に重要な要素となるところ、本件商標と引用商標は「メッテルニヒ」と略称されることにより、引用商標の文字と肖像画から来る「メッテルニヒ」という醸造所、その持主また歴史上の人物、著名な政治家としての「メッテルニヒ」を思い起こさせる商標である。
このような名称「Metternich」をドイツワインに使用するとき、取引者・需要者が商品の出所につき、誤認、混同をするおそれが大きい。
(ウ)小括
以上の状況や事情を合わせて判断すると、本件商標と引用商標とは「メッテルニヒ」の称呼、観念が生じる類似の商標である。
また、本件商標の商品「洋酒、果実酒、薬味酒」は「発泡性ぶどう酒」と類似しているので、本件商標を第33類の指定商品に付して使用するとき、商品の出所を誤認、混同するおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、商標法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(エ)登録異議の決定
本件商標に対する登録異議決定(甲第3号証)については、以下の点においてその判断を認めることができない。
(a)異議決定では、本件商標、引用商標の対象となる文字部分について「Metternich」、「von Metternich」の部分を抽出し、称呼又は観念しなければならないとする特段の事情は見いだせない。と判断しているが、両商標の当該文字部分については、欧文字として18文字中15字を同一とし、大文字、小文字の区別、「F」「v」「M」で始まる5字、3字、10字の3部構成を同一とし「von Metternich」の部分が全体の72%を占め、同一文字、同一構成、同一間隔の文字配列であることに鑑みれば、まさに「特段の事情」ありと見るのが自然である。
さらに引用商標は、肖像画と結合しているが、この肖像画から「メッテルニヒ」又は「メッテルニヒ侯爵」等の称呼、観念が生じる以外に、他の称呼、観念が生じる余地がない。文字から生じる称呼、観念と相まって、肖像画から表示される「メッテルニヒ」の印象、記憶、連想を強めているものと解される。
(b)また、本件商標の「フランツフォンメッテルニヒ」の称呼と引用商標の「フィルストフォンメッテルニヒ」の称呼とでは、構成音が明らかに異なり、それぞれを一連に称呼した場合であっても、十分に聴別でき、相紛れるおそれはない。と判断しているが、両者間で相違しているのは、前部の4音に過ぎず、文字構成として11音中7音までが同一音である。前部の4音が異なるからといって、後半の「フォンメッテルニヒ」の7音の同一性を無視して、「構成音が明らかに異なる」という判断は、到底認めることはできない。
(c)さらに、「メッテルニヒ家のフランツ」と「メッテルニヒ家の侯爵」とは、観念が明らかに相違する。と判断しているが、本件商標の「フランツ」はドイツ語で男性名とされ、日本語で例えれば、「太郎」のような名であり、「山田太郎」或いは「浦島太郎」又はそれ以外の人物とも考えられ、特定することができない。また引用商標の「侯爵」は、貴族階級の一つを示すに過ぎず、両者共に多数の人物を包含する名称である。
しかしながら、これに「Metternich」の語が付けられれば、事情は一変する。本件商標に「von Metternich」(メッテルニヒ家)というファミリーネームがつくと、「メッテルニヒ家のフランツ」の観念が生じ、引用商標の「メッテルニヒ家の侯爵」と同一家系に属する人物という観念が生じるものである。
加えて、引用商標のように肖像画が結合される場合には、人物が特定される結果、ドイツワイン醸造所の所有者として著名であり、かつ歴史上の人物としても著名な「メッテルニヒ」の名が浮かび上がる。
してみれば、両商標は、この名「Metternich」を共通とすることにより密接な関連性を表示している。即ち、「メッテルニヒ家のフランツ」といえば、ファミリーとして、引用商標の人物の父親の名前が連想され、家系上の関連が明らかになる(甲第23号証ないし甲第25号証)。このことは、世界大百科事典平凡社発行30巻(甲第17号証)では、メッテルニヒ侯爵の父親が「フランツ・ゲオルク・カール・フォン・メッテルニヒ」であることを明示しており、また、「フランツ」の名で知られる近世の「皇帝」も存在した(甲第15号証の2)ことにより観念上「メッテルニヒ家の皇帝」という連想さえ生じる名前である。
このように両商標には、観念上の関連性が密であり、異議決定のように単に「観念が明らかに相違する」と判断するのには納得することができない。
(3)商標法第4条第1項第15号の違反について
上記(1)のとおり、引用商標は、ドイツワインに付して使用され、何世紀にもわたり製造、販売されてきた。特に、リースリング種のゼクトは著名であり、格付けは「QmP」である。このゼクトがドイツワインを代表する一つとまでいわれている。また、引用商標は、肖像画と文字との結合商標であり「メッテルニヒ侯爵」又は「メッテルニヒ」と称呼し記憶され、ラインガウにおける著名なメッテルニヒ侯爵醸造所及びワインを想起させる商標である。
一方、本件商標の構成が「von Metternich」又は「Metternich」の文字を有しているので「メッテルニヒ」と略称され、商品「洋酒、果実酒、薬味酒」に付して使用される場合は、あたかも「ラインガウ地域」で生産される著名なドイツワイン「Metternich」と何らかの関連があるかのごとき印象を取引者、需要者に与え、記憶、連想が生じる。また、本件商標の権利者「モーゼルラントエーゲー」(モーゼルラント社)の国籍がドイツ連邦共和国であり、現にドイツワインの生産、販売者でもある(甲第36号証 世界の名酒事典2008年版)。
そうすると、本件商標をワインに付して使用される場合には、経済上又は又は組織上メッテルニヒ醸造所と何らかの関連があるかのごとき印象、記憶と連想が生じ、全体として他人の業務にかかる商品(ドイツワイン)と混同を生じさせるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、商標法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
〈答弁の理由〉
(1)請求人は、本件商標に対し引用商標を引用し、両商標は称呼、観念上互いに類似するとし、また、引用商標がドイツワインの著名なブランドであるから本件商標の使用は他人の業務にかかる商品と混同されるおそれがあるとして、その登録は商標法第4条第1項第11号及び第15号に違反してなされたものであると主張している。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
請求人は、両商標の類似性について、その根拠を「メッテルニッヒ」に求めるが、本件商標が一般的な人名であるのに対し、引用商標は明確な爵位を有する人物を特定したもので、その差異は全体的印象において明らかであり、少なくとも提出された各甲号証から引用商標が「メッテルニッヒ」の略称で広く取引されている事実は見られない。
(3)引用商標の著名性について
引用商標の著名性に関しても、これを立証する客観的証明、例えば、引用商標を付したドイツワインが、国内で販売されている全ドイツワインに占める割合〈市場占有率〉、或いはそのための宣伝広告費等の証明がなく、したがって「ドイツで最も有名なゼクトのうちのひとつ。」(甲第10号証〉との記載がそのまま国内において妥当するとは限らない。
ところで、「世界の名酒事典」(甲第33号証)をみればわかるとおり、フランスワインにしろイタリアワインであれ、或いはドイツワインといってもその種類は非常に多く、その中で著名なワインを即答できるのは余程の通であり、一般のワイン愛飲家が「F(u)rst」の意味を知っているとか、「Metternich」を見てドイツ出身のオーストリアの政治家を連想することがあってもこれがワイナリー名であることまで想いをはせることはないものと思料する。
(4)ワインの宣伝について
ワインの宣伝に関して述べるに、例えば、ビールは強力な宣伝媒体であるテレビを通じて目から耳から主にメーカーブランド(サッポロ、アサヒ、キリン、サントリー等)が毎日のように消費者に訴えられるが、ことワインについてはメーカー名は勿論のことワインのブランドが広く宣伝されることは少なく、あえて著名なワインといえば高価なことで知られる「ロマネコンティ」位で「メッテルニッヒ」が単独で周知著名であるとは到底思われない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものではなく、また、登録異議決定の理由も妥当であると確信する。
(1)請求人の提出する証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア ドイツのラインガウ地方は、白ワインを中心とするワインの産地として知られ、同地方ヨハニスベルク村のヨハニスベルク城において古くからワインの醸造が行われ、その醸造所(場)は、「シュロス・ヨハニスベルク(醸造所)」と呼ばれ、1816年にオーストリア皇帝の所有からメッテルニヒ侯爵の所有になり、現在は、メッテルニヒ醸造所(証拠により、「メッテルニヒ侯爵家醸造所」、「フィルスト・フォン・メッテルニヒ社」などの表示がされているものもある。なお、「F(u)rst von Metternich」はドイツ語で「メッテルニヒ侯爵」の意味である。)が醸造している(甲第6号証ないし甲第9号証、甲第11号証、甲第12号証の2、甲第14号証ほか)。上記醸造所は、請求人の傘下となっている(甲第7号証、甲第32号証)。なお、メッテルニヒは、19世紀初頭のオーストリアの政治家である(甲第15号証ないし甲第25号証)。
イ メッテルニヒ醸造所は、古くからワイン「シュロス・ヨハニスベルガー」を製造し、当該ワインは、製造時期等により、ラベルに相違があるものの、「ラベル」は、「Schioss Johannisberger」の文字が下段に配され、上段に城の遠景と紋章を中心にし、左右に「F(u)rat von」及び「Metternich」の文字の書かれたリボン等からなる図形が配されているものである(甲第9号証ほか)。
ウ メッテルニヒ醸造所は、1925年にオーナーの名前を付けたスパークリングワイン(ゼクト)「フュルスト フォン メッテルニヒャー シュロス ヨハニスベルガーゼクト」を発売し、この銘柄は、1934年以降「フュルスト フォン メッテルニヒ」と呼ばれ、1871年に肖像画を取り入れた商標が使用されている(甲第28号証)。使用されている商標(甲第26号証)は、引用商標である(ささいな相違点があるが引用商標と略同一の商標といえるものであり、引用商標と見て差し支えない。)。
エ 引用商標に係るスパークリングワイン(ゼクト)は、ニッカウヰスキー株式会社が輸入、販売し(例えば、1999年2月25日初版第3刷発行のプロフェッショナルのための世界ワイン大全 甲第7号証)、現在は、ピーロート・ジャパン株式会社(以下「ピーロート・ジャパン」という。)を通じて販売され、750ml及び200ml6本セットの販売数は、それぞれ、2003年が14,460本、4,472セット、2004年が17,400本、2,400セット、2005年が17,400本、3,800セット、2006年が20,400本、3,000セットである(甲第32号証)。なお、2003年は、他に200mlが3,072本販売されている。
オ ワイン「シュロス・ヨハニスベルガー」は、「日経BPムック プロフェッショナルのためのワイン大全」(日経BP社 1999年2月25日初版第3刷発行 甲第7号証)、「ワインものがたり」(株式会社大泉書店 1998年12月19日初版発行 甲第9号証)、「’80改訂世界の名酒事典」(講談社 昭和54年12月20日第1刷発行 甲第33号証の1)、「’84−’85年度版世界の名酒事典」(講談社 昭和59年2月24日第2刷発行 甲第33号証の2)、「’87−’88年度版世界の名酒事典」(講談社 昭和62年6月9日第1刷発行 甲第33号証の3)、「世界の名酒事典2004年版」(甲第33号証の4)に掲載されている。また、甲第33号証の1によれば、「シュロス・ヨハニスベルガー」のラベルは2通りあり、メッテルニヒ侯の紋章を描いたものは城直送品、城の遠景を描いたものは、ゾェーンライン社の手でさばかれると説明され、甲第33号証の1ないし3には紋章のラベルと城の遠景のラベルの2種類のラベルの商品が掲載され、甲第33号証の4には、城の遠景のラベルの商品のみが掲載されている。なお、甲第33号証の1ないし4の書籍には、ボトルの写真はあるが、ラベルの文字は小さく判読できないものであり、また、商品の説明には、「メッテルニヒ侯爵家醸」、「メッテルニヒ侯爵家醸造所」、「メッテルニヒ侯爵家」などの記載はあるものの「F(u)rst von Metternich」若しくは「フィルスト・フォン・メッテルニヒ」の記載は見あたらない。甲第33号証の3では、商品説明として「ドイツ3大銘柄の一つに数えられる由緒あるワイン」の記載があり、甲第33号証の4では、商品説明として「800年におよぶ長い歴史のある由緒ある醸造所」の記載がある。
また、ワイン「シュロス・ヨハニスベルガー」は、ドイツワイン基金駐日代表部のウェブサイトの「ドイツ Best ジャーマン ワイン 2002」の「Riesling Beerenauslese」の3位として紹介されているが、醸造所の説明には「Johannisberg」とのみ記載されている(甲第12号証)。
カ スパークリングワイン(ゼクト)「フュルスト フォン メッテルニヒ」については、世界酒大事典(1995(平成7)年8月1日発行 甲第6号証)に「メッテルニヒ Metternich」を見出し語として「ゼクトの商品名。ドイツのフュルスト・フォン・メッテルニヒ社製。ヨハニスベルク城のリースリング種で、シャンパン方式でつくられた製品。正式名はフュルスト・フォン・メッテルニヒ(メッテルニヒ侯爵)といい、ブリュットとトロッケンがある。」との記載と共に引用商標と略同一のラベルが使用されたボトル写真の掲載がある。
「ヴィノテーク 第25巻第6号(株式会社ヴィノテーク 田崎真也 平成16(2004)年6月1日発行 甲第10号証)に「このワインに注目!!」において「17point/20 F(u)rst von Metternich Riesling Sekt Cuvee TrokenNV 11.5%、 フュルスト・フォン・メッテルニッヒ・リースリング・ゼクト・キュヴェ・トロッケン ¥3465 ピーロート・ジャパン」との見出しの下「ドイツ・ラインガウ地方のヨハニスベルクで造られる、リースリング100%からのゼクト。ドイツで最も有名なゼクトのうちのひとつ。...」との記載と共に引用商標と略同一ラベルの写真が掲載してある。
「’87−’88年度版世界の名酒事典」(講談社 昭和62年6月9日第1刷発行 甲第33号証の3)には、「メッテルニヒ侯爵ゼクト・トロッケン」及び「メッテルニヒ侯爵ゼクト・ブリュット’82」が紹介されると共に引用商標と略同一ラベルの写真が掲載してある。なお、醸造所については「ゼーンライン・ラインゴールド醸造所」と記載されている。
ドイツワイン基金駐日代表部発行のニュース「German Wine News vol3」(2005年4月15日号 甲第12号証の2)や愛知万博関連ウェブサイト(甲第12号証の1の2枚目)に2005年のルフトハンザ航空の中部国際空港への初航の際、乾杯用に「フュルスト フォン メッテルニ(ッ)ヒ」が提供されたことなどが記載されている。
(2)以上の認定事実よりすれば、以下の事実が認められる。
ア ドイツ国ラインガウ地方ヨハニスブルクにあるワインの醸造所「シュロス・ヨハニスベルク」は、長い歴史のある醸造所であり、請求人の傘下のメッテルニヒ醸造所(フュルスト・フォン・メッテルニヒ社)がワインを醸造している。
上記醸造所が製造するワインに「シュロス・ヨハニスベルガー」があり、このワインは、ラベルの異なる2種類の商品があり、そのうちの一つである城の遠景を描いたラベルの図形中には、リボン内に「F(u)rat von」及び「Metternich」と記載されている。しかしながら、上記ワインは、ラベルに「Schioss Johannisberger」の記載がされているものであり、「シュロスヨハニスベルガー」として取引されていることは認められるものの、「F(u)rat von Metternich」の文字部分をもって取引されている事実は認められず、また、上記ワインが我が国において書籍などで掲載されていることは認められるが、その掲載数は多いとはいえず、また、ワインの専門誌及び多数のワインを紹介する書籍にそれらのワインの一つとして取り上げられているものであり、ラベルの文字がほとんど判読できないものである。
また、上記醸造所において、引用商標を付したスパークリングワイン(ゼクト)が製造され、「フュルスト フォン メッテルニヒ」と呼ばれていることが認められるとしても、上記スパークリングワインの我が国における販売数は、2003は、750mlが14,460本、200mlが3,072本及び200ml6本セットが4,472セットであり、ドイツワインの日本への2002年12月から2003年11月間の輸出量は93,503hlであること(甲第12号証の1)よりすれば、正確には同一期間ではないものの、その輸入実績は、輸入されたドイツワインの約0.18%にすぎず、販売数は、2004年以降の年も大きな変化は見られないものであり、国内全体で販売されるワインの総量からすれば、極めて少ないものと認められる。そして、上記ワインの書籍等への掲載が認められるものの、掲載数もわずかである。
そして、ドイツワインの産地、醸造所の紹介やワインの紹介の際の醸造所は、「メッテルニヒ侯爵家醸造」などと記載されていることはあっても「F(u)rat von Metternich」「フュルスト・フォン・メッテルニヒ」と紹介しているものはない。
そうとすれば、引用商標は、請求人が関係を有するメッテルニヒ醸造所の製造するスパークリングワイン(ゼクト)に使用する商標として、我が国の取引者、需要者に広く知られているとまでは認めることはできない。
また、「F(u)rat von Metternich」が、醸造所の名称であるとしても、当該醸造所を表すものとして広く認識されているとも認めることはできない。
イ 請求人は、引用商標の使用状況として、輸入総代理店であるピーロート・ジャパンのチラシやパンフレット抜粋(甲第26号証)、フュルスト・フォン・メッテルニヒ社のウェブサイト写し(甲第27号証)、引用商標に係る商品を販売するピーロート・ジャパンのウェブサイトのページ写し(甲第29号証ないし甲第31号証)を提出しているが、これらのチラシ及びパンフレットの配布場所、配布数等は不明であり、また、ウェブサイトは、不特定多数の者が頻繁に見るものであるとは限らないし、また、これらのパンフレットやウェブサイトで紹介されている「フュルスト フォン メッテルニヒ ロゼ」は甲第32号証によれば、2007年6月以降に販売されたものであり、本件商標の登録査定時(平成19年3月19日)以後のものであって、これらの事実を総合してみても、引用商標が需要者に広く認識されているとはいうことができない。
(1)本件商標及び引用商標について
ア 本件商標は、上記第1のとおり「Franz von Metternich」の欧文字からなるところ、「Franz」、「von」、「Metternich」の構成各文字間に一文字分の間隔を有してなるものの、全体がまとまりよく一体的に書してなるものであり、いずれも我が国において親しまれている語ではないから、構成全体をもって、一体的に把握されるというのが相当であり、本件商標よりは、「フランツフォンメッテルニヒ」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を生ずるものとは認められない。
イ 引用商標は、別掲(1)のとおり、重厚な縦長楕円形の額内に肖像画を配した図形と「F(u)rst von Metternich」との欧文字、及びその下方にドイツワイン法に基づいたワインのタイプ、栽培地域名及び公的検査合格番号として「Amtliche Pr(u)fungs-Nummer H 313 18 76」及び「SEKT・BEREICH JOHANNISBERG」より構成されるものであって、全体としてラベル様にバランスよく配置してなるものであるとはいえ、その構成上から「F(u)rst von Metternich」の欧文字部が独立しても識別標識として機能するものとみて差し支えない。
そうとすると、該文字部分よりは、「フュルストフォンメッテルニヒ」の称呼を生ずるものと認められる。そして、該「F(u)rst von Metternich」は、「メッテルニヒ侯爵」を意味するドイツ語であるが、我が国において知られている語ではないから、特定の観念を生ずるものとは認められない。
また、上記肖像画は、特定の人物として知られているとは言えないから、称呼、観念を生ずるものとは認められない。
してみれば、引用商標よりは、「フュルストフォンメッテルニヒ」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものというのが相当である。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、本件商標について、「Franz」は、独和辞典によれば「男名」とされ、「von」は、「称号又は、貴族の表示として」の意味を有するものであるとして、本件商標は、「メッテルニヒ家のフランツ」の観念を生ずると主張し、引用商標について、「F(u)rst」は、「君主。侯爵」等の意味を有するから「メッテルニヒ家の君主」、「メッテルニヒ侯爵」の観念を生ずると主張しているが、本件指定商品の分野において、これらの語が当該ドイツ語として、広く認識されているとは認められない。また、引用商標に係るスパークリングワインの紹介において、「メッテルニヒ侯爵家醸造」などと記載されてる事実は認められるが、その事実は、わずかにすぎず、「F(u)rst von Metternich」が、上記醸造元を示す表示として、限られた我が国のワイン愛飲家において知られるものと推認することはできるとしても、一般の需要者(ワインの消費者)間に広く認識されていたとまではいえないから、本件商標及び引用商標よりは、請求人の主張する上記の観念を生ずるものとは認められない。
また、「Metternich」が、オーストリアの政治家として事典等に掲載されている事実があるとしても、本件商標の需要者間にその事実が一般的であるとはいえないから、本件商標及び引用商標は、その「Metternich」部分から、上記政治家を観念するとはいえない。
(イ)請求人は、本件商標及び引用商標について、18文字という長さであり、文字列の区切りにおいて簡略にいずれも「フォンメッテルニヒ」及び「メッテルニヒ」の称呼を生ずると主張しているが、本件商標及び引用商標から生ずる「フランツフォンメッテルニヒ」及び「フュルストフォンメッテルニヒ」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものであり、いずれも構成全体に特に軽重の差を見いだせないものであるから、上記一連の称呼のみを生ずるというべきである。
さらに、引用商標を使用した当該スパークリングワインが「Metternich」や「メッテルニヒ」として略称して取引されている事実も認められないから、引用商標の「Metternich」の文字部分より、単に「メッテルニヒ」の称呼が生じるものということはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観において判然と区別し得る差異を有するものであり、かつ、前者「Franz von Metternich」の欧文字と後者「F(u)rst von Metternich」の欧文字部分とを比較しても、両欧文字はそれぞれ一体的に把握されるところ、両者はその前段の「Franz」と「F(u)rst」の綴りにおいて大きく異なり、加えて、後者は第2字目が綴字記号ウムラウトを有する文字であるところから、一見しても視覚上の差違が顕著であって容易に識別できるものである。また、両者の観念については比較すべくもない。
しかして、本件商標から生ずる「フランツ フォン メッテルニヒ」の称呼と引用商標から生ずる「フィルスト フォン メッテルニヒ」の称呼とは、称呼の識別上重要な要素を占める前段部において、その構成音は冒頭の「フランツ」と「フュルスト」の部分において、顕著な差異を有するから両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れることなく明瞭に区別することができるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、これらの外観、観念及び称呼のそれぞれの相違を総合勘案すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(1)上記1で認定したとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者及び需要者に請求人若しくはメッテルニヒ醸造所の業務に係るスパークリングワイン(ゼクト)を表示するものとして広く認識されているものとは認めることができないし、また、「F(u)rst von Metternich」が、請求人関連のメッテルニヒ醸造所を表示するものとして、取引者、需要者に広く認識されているものとは認められない。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標や「メッテルニヒ醸造所」を連想、想起するようなことはないというべきであり、その商品がメッテルニヒ醸造所又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に該当しない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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