Trademark Appeal Case
マルチカロチンの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90254号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4203643号商標(以下「本件商標」という。)は、「マルチカロチン」の文字を左横書きしてなり、平成9年3月25日に登録出願され、第29類「天然カロチンを主原料としカプセル化した加工食品」を指定商品として、平成10年10月23日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第10号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 当審の取消理由
本件商標は、「マルチカロチン」の文字を普通に用いられる方法で横書きし、第29類「天然カロチンを主原料としカプセル化した加工食品」を指定商品としてなるものであるが、「マルチカロチン」の語からは、多数のカロチノイド(例えば、α‐カロチン、β‐カロチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン)を含有してなるカロチンの意味合いを容易に想起するものである。
そして、甲各号証によれば、「マルチカロチン」の語は、米国等において前記意味合いで使用されており、登録異議申立人(以下「申立人」という。)においても本件商標出願前より「マルチカロチン」の語を、前記意味合いをもって使用している事実がある(甲各号証参照)。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、単にその商品の品質、効能等を表示するにすぎず、商標としての機能を有しないものとみるのが相当である。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである、との取消理由を商標権者に平成11年5月18日付けで通知した。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、第29類「天然カロチンを主原料としカプセル化した加工食品」を指定商品としているが、該商品は所謂健康食品に属する。
カロチンがカロチノイド炭化水素のことで、α‐カロチン、β‐カロチン等の種類があることは、確かにそのとおりである。しかしながら、このような認識は化学の専門家ならいざ知らず、本件指定商品の属する分野における一般需要者、即ち健康食品の需要者がそのように認識しているとは到底考えられない。
甲第1号証の化学大辞典は化学分野の専門的な辞典で、化学関係の辞典としては極めて権威のあるものである。甲第2号証のマグローヒル科学技術用語大辞典もその名の示すとおり科学技術の専門用語の解説をしたもので、極めて専門的な辞典である。しかし、一般需要者はこのように高度に専門的な辞典に説明されているようなレベルの解釈はしない。このような一般需要者の認識は通常の国語辞典や現代用語に関する辞典のレベルであるとするのが相当である。そしてこのような辞典には、カロチンには多数の種類があるというようなことは記載されていず、むしろ、カロチンとは単一の物質であるかのような印象を受ける。即ち、一般需要者はカロチンには多数の種類のカロチノイドがあるとは理解していないと考えるのが相当である。
してみれば、健康食品の需要者が「マルチカロチン」の語から多数のカロチノイドの意味合いを容易に想起するとは到底考えられない。
一方、「マルチ」という語は「多数の」を意味する接頭語として使用されることはあるが、そうだからといって「マルチ...」がすべて「多数の...」を意味するとして商標登録されないというわけではない。「マルチ...」として登録されている商標は枚挙にいとまがない。
以上の通り、本件商標は商標の品質、効能等を表示するものではなく,商標法第3条第1項第3号に違反してはいない。
5 当審の判断
本件商標は、「マルチカロチン」の文字を普通に用いられる方法で横書きし、第29類「天然カロチンを主原料としカプセル化した加工食品」を指定商品としてなるものであるが、申立人の提出した甲第1号証の「化学大辞典2(第28刷)」(共立出版株式会社昭和59年3月15日発行)、甲第2号証及び甲第4号証の「マグローヒル科学技術用語大辞典(第3版1刷)」(株式会社日刊工業新聞社1996年9月30日発行)、 甲第3号証の「大辞林(第二版)」(株式会社三省堂1995年118月3日発行)及び甲第5号証の「ど忘れカタカナ語辞典(第10版)」(教育図書株式会社平成3年1月20日発行)等によれば、「マルチ」及び「カロチン」の語についてそれぞれ記載されている事実より、「マルチカロチン」の語からは、多数のカロチノイド(例えば、α‐カロチン、β‐カロチン、リコベン、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン)を含有してなるカロチンの意味合いを容易に想起するものである。
そして、申立人の提出した甲第6号証ないし甲第9号証、甲第11号証ないし甲第14号証及び甲第16号証のガイドブック等によれば、「マルチカロチン」の語は、米国等において前記意味合いで使用されており、申立人においても本件商標出願前より「マルチカロチン」の語を、前記意味合いをもって使用している事実がある。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、単にその商品の品質、効能等を表示するにすぎず、商標としての機能を有しないものとみるのが相当である。
そうとすると、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由は妥当なものであって、商標権者の意見は、以下の理由により、採用することができない。
(1)商標権者は、乙第1号証ないし乙第3号証を示し、これらの各辞典の説明からはカロチンに多数の種類があるというようなことは窺い知ることはできない。また、「マルチカロチン」の語が商品の品質、効能等を表示するということはあり得ない旨主張しているが、上記認定のとおり「マルチカロチン」の語からは、多数のカロチノイドを含有してなるカロチンの意味合いを容易に認識させるといえるから、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
(2)商標権者は、登録例(乙第4号証)を示し、これらが登録されていることに鑑みれば、本件商標が登録要件に違反しているいうことにはならない旨主張しているが、上記認定のとおり本件商標をその指定商品について使用しても、単にその商品の品質、効能等を表示するにすぎないものといえるから、その登録例等とは事案を異にするものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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