結論テキスト
審判費用及び参加により生じた費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2008−890106(T2008−890106/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5129395号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおり、「和幸食堂」の漢字を横書きしてなり、平成19年5月28日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成20年4月18日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録商標は、以下の(1)ないし(7)のとおりである(甲第4号証の1ないし7)。
なお、以下の7件の商標は、いずれも「特例商標」及び「重複商標」として設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3234249号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2に示すとおり、「とんかつ和幸」の文字を毛筆風の書体で横書きしてなり、平成4年9月14日に登録出願され、第42類「とんかつ料理の提供」を指定役務として、平成8年12月25日に設定登録されたものである。
(2)登録第3237537号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3に示すとおりの構成よりなり、平成4年8月25日に登録出願され、第42類「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成8年12月25日に設定登録されたものである。
(3)登録第3237538号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4に示すとおりの構成よりなり、平成4年8月25日に登録出願され、第42類「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成8年12月25日に設定登録されたものである。
(4)登録第3260752号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲5に示すとおり、「和甲」の文字を毛筆風の書体で縦書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「日本料理を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成9年2月24日に設定登録されたものである。
(5)登録第3275877号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲6に示すとおり、「WAKO」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「多目的ホールの提供,フランス料理の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成9年4月11日に設定登録されたものである。
(6)登録第3299054号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲7に示すとおり、「和光」の漢字を毛筆風の書体で横書きしてなり、平成4年9月30日に登録出願され、第42類「多目的ホールの提供,宝飾品のデザインの考案,フランス料理の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成9年5月2日に設定登録されたものである。
(7)登録第3299055号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲8に示すとおりの構成よりなり、平成4年9月30日登録出願、第42類「フランス料理の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成9年5月2日に設定登録されたものである。(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし第42号証(枝番を含む。但し、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
本件商標は、甲第4号証ないし第42号証の証拠方法により、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
(1)無効とすべき理由
ア 本件商標は、「和幸食堂」の文字からなるところ、その構成中前半の「和幸」の文字部分は識別性があり、その後半の「食堂」の文字は業種を表わす識別性のない部分である。
イ 引用商標2は、「とん」と「かつ」の文字が二段に書され、四角の枠に囲われ、その下に「和幸」の漢字を縦書きしてなるが、その使用態様について、当社の基準では、清刷りに示すとおり(甲第15号証)の態様で宣伝広告を行っている。
ウ 被請求人は、商標「和幸食堂」が登録になるとすぐに、東京都葛飾区青戸3丁目36番1号に店舗を開設した(甲第18号証)。
その商標の要部は「和幸」であり、これに続く「食堂」は、業種を表す識別性のないものである。
また、商標審査基準の商標法第4条第1項第11号の「6.(1)」には「商標の構成部分中識別力のある部分が識別力のない部分に比較して著しく小さく表示された場合であっても、識別力のある部分から称呼または観念を生ずるものとする。」と記載されているが、本件商標の場合は、商標の構成中識別力のある部分と識別力のない部分とは、同書同大に書されているとしても、明らかに商標審査基準の違反であることは、明白であり、商標法第4条第1項第11号に該当し違反して登録になったものである。
エ 請求人は、「とんかつ和幸」の名称で昭和33年10月以来本日まで50年間の長きにわたり、全国各地において「とんかつ」の商売を行ってきており、「とんかつ和幸」の名称は、著名である。
そして、引用商標2は、平成8年12月25日に登録になり、13年間使用し続けた結果、「とんかつ和幸」商標は、著名商標となっている(甲第5号証及び第6号証)。
報告書(甲第20号証)にも記載されているように「和幸食堂」を使用することは、当社の「和幸」と消費者及び取引者間において誤認混同を生じており、商標「和幸食堂」は、前半の「和幸」は「とんかつ」については著名であり、後半の「食堂」は業種を表示するもので識別性がなく、本件商標の要部は「和幸」にある。
したがって、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものである。
(2)「和幸」についての「名称使用禁止等請求事件」
東京地方裁判所における平成4年(ワ)第21445号「名称使用禁止等請求事件」の当事者間の和解条項の二に、「原告の表示である『とんかつ和幸』と明確に区別できる表示(以下、『新表示』という)に変更する。右冠等は、『本家』、『元祖』など、被告が原告の本家であると誤解されるような表現であってはならない。よって、原告は、被告に対し、被告が従来及び右変更に至るまで、とんかつ屋としての『和幸』、『とんかつ和幸』の表示を用いて営業していることについて、何らの請求もしない。ただし、被告は、新表示を平成七年三月末日限り、原告と協議の上決定するものとし、その決定後は、新たに出店するとんかつ屋については、新表示を用いる。」ことに端を発している(甲第21号証)。
今年(平成20年代)になってからは、第43類「飲食物の提供」について本件商標「和幸食堂」を登録し、さらに、商標「いなば和幸」等を登録・出願するなど、「そのうち『和幸』という名称ははずすつもりだ」と「新表示」についての話し合いの中で言っていた事実に反することを行っており、被請求人は、裁判所の和解調書を踏みにじるものである。
(3)結論
本件商標は、前述のとおり、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当して登録になったものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 請求人が所有する引用商標2は、漢字2文字にて「和幸」と同書、同大、等間隔にて一連に縦書きされ、その上部に、正四角の枠内に平仮名4文字を2行にて「とんかつ」と、印章の如くデザインされた模様的図形を配置してなる、文字と図形の結合商標であり、その要部は文字部分「和幸」である。そして、上記構成に照応して「和幸」の文学部分から「ワコウ」、及び模様的図形と「和幸」の文字部分を結合した全体から、「トンカツワコウ」の称呼が、それぞれ生じるものである。
イ 本件商標は、漢字4文字にて「和幸食堂」と同書、同大、等間隔にて一連に横書き書きしてなる文字商標である。付言すると、「和幸」の文字部分と「食堂」の文字部分とを結合した文字商標である。
しかして、本件商標の文字の結合に関して、一般の需要者を基準にすると「食堂」の文字は、「レストラン」の文字の如く、「何かを食べさせてくれる場所」との印象・連想を直接的に与えるから、本件商標の指定役務との関係では、役務の提供場所に相当する付加的部分というべきであり、自他役務の識別機能は、ないか、或いは小さいものである。
そして、「何かを食べさせてくれる場所」を意味する「食堂」の文字が付加された「○食堂」、「○○食堂」、「○○○食堂」等が、いわゆるサービスマークの登録制度がスタートした平成4年4月1日から、今日に至るまで、本件商標以外に普通の態様のものが登録された事実は無く、また、出願された場合には、分離観察され「食堂」の語を除く要部と同一又は類似の先願商標によって拒絶されているという審査事実(商願2000−84927号の猫飯食堂事件、商願2007−122339のロ福食堂事件等)から、「○○食堂」の態様である本件商標は、商号とか屋号の略称の態様ではないことを裏付けるものである、というべきである。
ウ また、事実、被請求人の商号は、「和幸株式会社」であるから、その略称は「株式会社」の文字を除いた「和幸」である所、被請求人が本件商標を選択した理由を推測すると、請求人に対抗するために、請求人の所有する商標の「主要部分(和幸)」に、指定役務との関係において、識別力を有しないか、あるいは、識別力の弱い「付加的部分(食堂)」を加味して、特許庁へ申請したものと考えられる。
然るに、特許庁の担当審査官は、本件商標の類否判断において、「食堂」の語を除く要部と同一又は類似の先願商標によって拒絶されているという審査事実や取引の事情、及び商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察せずに、本件商標と引用商標とを、単なる商標の外観構成自体により対比観察し、被請求人の主張するような誤った判断をしたというべきである。
エ さらに、取引の経験則上、一般の需要者は、たとえば飲食物を提供する食堂を選択する際、「○○食堂」の「食堂(食べ物を提供するお店)」の文字に重きをおかず、前者の「○○」の新たな言葉ないし造語の部分に重きをおくことが多い。すなわち、「とんかつ、を食べに食堂へいこう」と思ったとき、普通一般に、需要者は、新たな言葉ないし造語の部分である「和幸」の文字部分に注意が引かれるものと認められる。
したがって、商標の類否判断に当たっては、商標の「特徴部分」はどの部分であるかということを、一般の需要者の立場に立脚し、かつ、取引の実情を考慮して認定判断することが相当である。
この点、最高裁の判例をみると、一般に商標が類似するかどうかは、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認を生ずるおそれかおるか否かによって判断すべきものであり、その類否判断をするに当たっては、両商標の外観、称呼、観念を観察し、それらが取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであるとされているから(役務商標も同様である)、上記基準に基づき、需要者の通常有する注意力を基準とした場合、本件商標は、「食堂」の文字を除いた「和幸」の文字部分に特徴部分がある、というべきである。
よって、被請求人の答弁する如く、本件商標の外観及び称呼のみに拘泥した類似判断は妥当ではない。
オ 加えて、本件商標を構成する「食堂」という文字は、「何かを食べさせてくれる場所」との印象・連想を、一般の需要者(消費者)に直接的に与えるから、当然に「とんかつ、の提供」も含まれると考えられ、それ故に、本件商標と引用商標とを識別化するというよりは、むしろ、逆に一方(本件商標)が、他方(引用商標)を含むかのような印象を与える。そして、両商標は、識別力の強い部分(主要部分)である「和幸」の文字部分に商標としての特徴があることから、取引の事情を参酌すると、商標全体から受ける印象・連想がきわめて類似している。
したがって、本件商標と引用商標とは、互いに類似関係にあるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 商標法第4条第1項第15号に該当しないとの「答弁書7(3)]答弁に対して、請求人は、以下のように弁駁する。
「混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断基準は、以下のとおりであり、これらを総合的に考慮するものである。
(イ)その他人の標章の周知度(広告、宣伝の程度又は普及度)
(口)その他人の標章が創造標章であるかどうか
(ハ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
(ニ)企業における多角経営の可能性
(ホ)商品間、役務間又は商品と役務間の関連吐
(へ)不正の目的の有無
上記(イ)について、今後、証拠によって立証する。
上記(ロ)について、「和幸」の名称は、請求人の創業者、日比生一虎がかつて執筆活動の際に用いていたペンネーム「日比生和夫」から「和」を、そして、数寄屋橋ショツピングセンター内の「ステーションパーラー」の共同経営者であった協和株式会社の「名和幸夫氏」の「幸」をとり、名和氏の許諾を得て「和幸」と名づけものである。したがって、引用商標の「和幸」の文字部分は、創造語に相当する。
上記(ハ)について、引用商標の「和幸」の文字部分は、請求人のHP等から明らかなように、ハウスマークである。
上記(ニ)について、請求人は、企業における多角経営もしている。
上記(ホ)について、請求人は、とんかつ、を主とする飲食物の提供のみならず、飲食物を提供する場所において、「弁当」も販売していることから、商品と役務間の関連性が強い。
上記(へ)の不正の目的について付言すると、被請求人の代表者は、かつて、前記協和株式会社の役員を務めていたが、昭和51年に協和株式会社から独立して和幸株式会社を設立した。その際、請求人の商号ないし営業及びその名声ないし信用を熟知しており、また、「和幸」の文字部分を使用することに関して、請求人に無断で「とんかつ和幸」を出店したために、請求人との間に裁判上の様々な紛争が生じており、現在も継続中である。
付言すると、裁判上の和解調書(平成4年(ワ)第21445号事件)において、被請求人は、「和幸」の文字部分を商標として勝手に使用してはならない作為義務を、請求人に対して負担しているのにもかかわらず、それを無視し、請求人に無断で、本件商標の商標登録出願を特許庁に申請したものである。
イ このような事実を考慮すると、被請求人には、一般世人をして、その営業(役務)を、請求人の営業(役務)と誤認混同せしめる目的のあったこと、換言すれば、請求人の商標ないし営業が有する名声ないし信用等を自己の営業にただ乗りする意図(フリーライド)のあったことは明確である。
ウ なお、被請求人は、営業の混同を避けるために、特に注意を払ったというような事情、請求人が和解により、いわゆる「のれん分け」があって「和幸」という文字を含む商標を使用することを認めたという事情、あるいは、「和幸」を含む商標で「とんかつ、を主とする飲食物の提供」をする店が、同じ地域に沢山あって、「和幸」という文字が、その営業を識別する力が減退化しているというような事情等の特別な事情は存在していない。
エ しかして、他人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体的に表わされているもの、又は観念上の繋がりがあるもの等を含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認される(特許庁の商標審査基準、改訂第7版の第43頁)。
オ また、知的財産高等裁判所第3部の判決では、結合商標において、識別力の小さい部分と識別力の強い部分があることを認め、識別力の強い部分がある部分が商標の特徴部分であると認定判断をしている(平成18年(行ケ)10497号)。
さらに、裁判所に顕著な事項であるが、最高裁の判例においても、引用商標と同一の部分をそのままその構成の一部に含む結合商標であって、その外観、称呼及び観念上、この同一の部分がその余の部分から分離して認識され得るものであることに加えて、引用商標の周知著名性の程度が高く、しかも、本件商標の指定商品と引用商標の使用されている商品とが重複し、両者の取引者及び需要者も共通している場合において、これらの事晴を総合的に判断すれば、本願商標は、これに接した取引者及び需要者に対し、引用商標を連想させて商品の出所につき誤認を生じさせるものであり、その商標登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(フリーライド)やその希釈化(ダイリューション)を招くという結果を生じかねないと考えられ、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」とされている(平成13年7月6日、最高裁第二小法廷/判決/平成12年(行ヒ)第172号)。
カ よって、本件商標は、知的財産高等裁判所第3部の判決、前記最高裁第二小法廷/判決等に照らして、いわゆる広義の混同(経済的、人的、契約的)が生じ、引用商標の識別力が減退化する(競業関係において、顧客吸引力が弱まる:減退化理論)ことから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として平成21年7月10日付け上申書にて、乙第1号証ないし第182号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求は不適法なもの
本件商標は、「和幸食堂」の漢字を横書きしてなるところ、請求人は、登録第3234249号、登録第3237537号、登録第3237538号、登録第3260752号、登録第3275877号、登録第3299054号及び登録第3299055号商標を引用して、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当すること、並びに登録第3237537号が商品「とんかつ」について著名な商標であるため、「和幸」については出所の混同を生じているので、商標法第4条第1項第15号に該当するものであることから、その登録を無効とすべきであると主張している。
なお、請求人が、第三者の登録に係る商標を引用して本件商標の登録の無効を主張している点は、審判請求についての利益があるものとは思われないため、この点を理由とする請求は、不適法なものとして却下されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記引用の各商標と類似するものではないから、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
請求人は、本件商標の要部が「和幸」であり、これに続く「食堂」は、業種を表す識別性のないものであるということを前提として、「和幸食堂」が引用各商標と類似するものとしている。
ところで、「和幸食堂」は、一見して商号とか屋号と認識される態様のものであり、構成とか称呼が冗長でもないので、分離して称呼、観念されることがあるものとは考えられない。
本件商標の指定役務は「飲食物の提供」であり、市場を転々と流通する商品の商標のように、いわば、草々の間における取引を前提として考察しなければならないような事情にはない。
経験則上、利用者が「とんかつ和幸」と「和幸食堂」とを取り違えるようなことがないことは、理由を詳述するまでもなく明らかなところである。
審判請求書第5頁下12行以下に、本件商標が審査基準違反であるというような記述があるが、もともと、審査基準は法律でもなく、また「和幸食堂」のような商標を例として取扱いとか解釈を挙げているものでもないので、かようなことを記載される趣旨が理解し難い。
いずれにしても、本件商標と引用各商標とは非類似のものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、前記引用の登録第3237537号商標と類似するものではなく、取引上これと紛れるものではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
請求人は「とんかつ和幸」の生い立ち等についてるる述べている。そして、「和幸」の使用についての被請求人との間のこれまでの経緯を挙げている。被請求人も、そこに挙げられている事情等について一々争うことはしない。しかし、本件商標「和幸食堂」と「とんかつ和幸」とが非類似のものであることは、前述のとおりであり、「飲食物の提供」という役務にあって、一部に共通するところがあるとしても、利用者が不用意に間違えるということがないことも、明白なものというべきであるから、両者が紛れることはなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
(4)不正競争等の意図の有無
被請求人による本件商標の採択には、曲折はあったものの、当初から不正競争の意図を持っていたとか、著名商標へのただ乗りのような意思を有していたというような事情はない。
この点に関する請求人の主張は、根拠がない。
被請求人は、もともと、商標「とんかつ和幸」登録第3225630号商標を出願し、請求人が挙げている引用各商標と共に、重複登録されていたものである。
存続期間を更新しないで商標権を消滅させたのは、他の重複登録商標等との関係もあり、識別可能な附記をしたため、商標の態様が同一であるとはいえなくなったためである。「和幸」を含む商標「とんかつ和幸」と同一性があるという商標の使用を止めるというつもりはない。
被請求人は、この登録第3225630号商標の出願時に善意に商標「とんかつ和幸」を使用していたのであるから、サービスマーク登録制度の採用時の特例(平成3年法律第65号附則第3条)により、使用を継続することができる立場にある。
重複登録の商標の商標権が存続期間の満了により消滅したことは、継続的使用権の有無あるいは継続的使用権の存続に影響を与えないことは、自明である。
請求人提出の甲各号証及び主張を総合すれば、以下の事実が認められる。
(1)甲第8号証及び第20号証によれば、昭和33年10月創業の和幸商事株式会社を含む和幸グループ会社(株式会社東邦事業、和幸フーズ株式会社)は、創業以来50年間にわたり、全国各地において「とんかつ和幸」の名称で、とんかつ屋を営んできたこと。
2007年度時点で全国24の都道府県に272店舗を有し、その内、関東地方(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の1都6県には、207店舗を出店していること。
そして、そのグループ全体の年間の総売上高は、2005年度が211億円、2006年度が210億円、2007年度が215億円に達するものであることが認められる。
(2)甲第5号証及び第6号証によれば、260店舗の内の155店舗において、引用商標2と同一又は実質的に同一の商標が、請求人の役務又は店名を示すものとして前記各店舗で使用されていたこと。
(3)乙第20号証によれば、「和幸」の文字について、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、1番目の意味として「豚カツ屋の名称。以下の3つがあり、別会社である。」と記載されていること。
そうすると、「和幸」の文字のみで、一般的に「豚カツ屋の名称」であると理解、認識されているものと認められる。
(4)乙第21号証によれば、「二ツ星と一ツ星で6店舗」の見出しの下に、「といったところである、ただこの中でどうしても目をひくのは『和幸 日本料理』であろう。普通に考えれば『和幸=とんかつ』だと思うけれど・・・」と記載されているとおり、一般に「和幸」といえば「とんかつ(料理)」又は「とんかつ店」であると認識されているものと認められる。
(5)以上の証拠を総合勘案すれば、請求人の引用商標2は、甲第32号証の21によれば、1993年(平成5年)5月18日には使用されていたことが認められるところ、平成4年8月25日に登録出願され、平成8年12月25日に登録されて以降からでも、現在まで少なくとも13年間以上にわたり使用された結果、遅くとも本件商標の出願時(平成19年5月28日)において、請求人の業務に係る役務「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」を表示する商標又は店名として、少なくとも関東地方における取引者・需要者の間には広く認識されていたものと認められるものであって、その周知性は登録査定時においても継続していたものと優に推認できる。
本件商標は、前記第1のとおり、「和幸食堂」の文字よりなるところ、その構成中「食堂」の文字は、「食事をする部屋、いろいろな料理を食べさせる店」(広辞苑第五版)を意味する漢字の成語であって、その指定役務との関係よりみれば、役務の質(店の業態、役務の提供の場所)を直接的に表しているものであるから、その構成中前半の「和幸」の文字部分が独立して取引に資される場合があるものというべきであり、これより、「ワコウ」の称呼をも生ずるというべきである。
これに対し、引用商標1は、「とんかつ和幸」の文字を筆書き風に横書きしてなるところ、その構成中「とんかつ」の文字が役務の提供の質(内容)を直接的に表すものであるから、後半の「和幸」の文字部分が独立して取引に資される場合があるものというべきであって、これより、「ワコウ」の称呼をも生ずるものと認められる。
同じく、引用商標2は、別掲3のとおり、太線で表された四角形内に「とん」と「かつ」の文字を二段に併記し、その下に太字ゴシック体で「和幸」の漢字を縦書きに配してなるものであるところ、その構成中の「とんかつ」の文字が役務の提供の質(内容)を直接的に表すものであるばかりでなく、視覚上も「和幸」の文字部分が分離して看取されるところから、「和幸」の文字が独立して取引に資される場合があるものというべきであって、これより、「ワコウ」の称呼をも生ずるものと認められる。
同じく、引用商標3は、別掲4に示したとおり、正方形の二重輪郭内に「とんかつ」、「恵亭」、「和幸」、「KEITEI」の各文字(それぞれ文字の大きさ、書体を異にしてなる。)を四段に横書きしてなるものであるところ、視覚上も、籠字の「和幸」の文字部分が分離して看取されるところから、「和幸」の文字が独立して取引に資される場合があるものというべきであって、これよりは、単に「ワコウ」の称呼をも生ずるものと認められる。
同じく、引用商標4は、別掲5のとおり、「和甲」の文字を筆書き風に縦書きしてなるものであるから、これより、「ワコウ」の称呼を生じ、特に観念の生じない造語よりなるものというべきである。
同じく、引用商標5は、別掲6のとおり、「WAKO」の欧文字を横書きしてなるものであるから、これより、「ワコウ」の称呼を生じ、特に観念の生じない造語よりなるものというべきである。
同じく、引用商標6は、別掲7のとおり、「和光」の漢字を筆書き風に横書きしてなるものであるから、これより、「ワコウ」の称呼を生じ、特に観念の生じない造語よりなるものというべきである。
同じく、引用商標7は、別掲8のとおり、楕円輪郭線内に建物の図形と文字を配した構成からなるところ、その構成中顕著に表された横書きの「WAKO」の文字より、「ワコウ」の称呼を生じ、特に観念の生じない造語の一種と認められる。
ところで、商標審査基準(改訂第9版)の「九、第4条第1項第11号の5.(6)」 によれば、結合商標の類否について、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」とされている。
してみれば、仮に本件商標「和幸食堂」がまとまりよく一体に表されていると仮定しても、その指定役務中「とんかつ料理を主とする飲食物の提供」については、本件商標中の「和幸」の文字部分が、需要者の間に広く認識されている「和幸」の文字と同一であることからすれば、本件商標と引用商標1ないし3とは類似の商標であるといわざるを得ないものである。
そうすると、本件商標と引用各商標とは、観念においては、それぞれ造語と認められるから比較することができないとしても、「ワコウ」の称呼を共通にし、特に、引用商標1ないし3とは、本件商標の要部(自他役務の識別標識として機能する部分。)である「和幸」の文字(漢字)を同じくし、その外観も同一であって、かつ、本件商標の指定役務は、引用各商標の指定役務と同一であるか又は含まれるものであるから、結局、本件商標は、引用各商標と類似するものといわざるを得ない。
(1)被請求人は、答弁書中で「請求人らと関係のない第三者の商標の登録の事実を上げて、本件商標の無効を主張されることは、請求の利益を欠くもの」として、「この点を理由とする請求は、不適法なものとして却下されるべきである」旨主張しているが、第三者の登録商標を引用することによって、無効の理由とすることが、必ずしも「請求の利益を欠くもの」ということはできないから「不適法なもの」ということはできない。
(2)被請求人は、平成21年7月10日付け上申書において「本件商標の後半の『食堂』の文字部分は、たとえ自他役務の出所識別機能が弱い文字部分であっても、料理分野の決定に際して取引者・需要者が最初に着目する文字部分であるため、商取引の実情においては、本件商標の前半の『和幸』以上に重要な要素となっており、該文字部分を完全に捨象してしまう特別な理由は何ら存しない」旨主張するが、「食堂」の文字部分が、本件商標の指定役務との関係で自他役務の識別標識としての機能を果たさないことは、被請求人も認めているとおりであり、むしろ、取引者・需要者は、本件商標の前半の「和幸」の文字部分を要部と理解、認識するものというべきであるから、被請求人のこの主張は、採用の限りでない。
(3)同じく、前記上申書において、被請求人は「本件商標の前半の『和幸』の文字部分が商標権者の商号の略称に該当することを考慮すると、取引者・需要者は、ごく自然に、本件商標全体を『商号の略称』と『食堂』の語が結合したものと想起し、商標権者が営む定食料理や家庭料理を提供する一般飲食店の屋号や店名と把握することも多いというべきである」旨主張しているが、一般消費者が『和幸食堂』の店名をみて、直ちに本件商標の商標権者の商号であると認識できないことは、乙第20号証の「和幸」の文字で検索した場合に「豚カツ屋の名称。以下の3つがあり、別会社である。」と記載されている内容から判断しても、にわかには認め難く、被請求人のこの主張も、採用の限りでない。
以上のとおり、請求人の主張するその余の無効理由について論及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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