Trademark Appeal Case
称呼の類似性と音の差異
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第91995号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4160596号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成9年1月8日に登録出願され、後掲(1)に示すとおり、「ALTONE」と「アルトーン」の文字を二段に横書きしてなり、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガ−ゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液」を指定商品として、平成10年6月26日に設定の登録がされたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下、三共株式会社を「申立人S社」、大正製薬株式会社を「申立人T社」という。)の述べる登録異議の申立ての理由は、要旨つぎのとおりである。
本件商標は、申立人S社及び申立人T社の引用に係る登録商標、すなわち、昭和35年3月31日に登録出願され、後掲(2)に示すとおり、「アルトロン」と「ARTORON」の文字を二段に横書きしてなり、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和38年4月9日に設定登録された登録第608511号の1商標(以下、「引用A商標」という。)、同じく、昭和47年3月29日に登録出願され、後掲(3)に示すとおりの構成よりなり、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和53年9月29日に設定登録された登録第1346656号商標、同じく、平成3年2月15日に登録出願され、「ARTORON」の文字を横書きしてなり、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成5年6月30日に設定登録された登録第2551469号商標、同じく、平成1年2月2日に登録出願され、「アルテオン」と「ARTEON」の文字を二段に横書きしてなり、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年3月31日に設定登録された登録第2389123号商標と称呼上類似するものであり、その指定商品も抵触するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
また、引用A商標は、申立人S社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前より広く一般に知られていたものであって、これと称呼上類似する本件商標を指定商品に使用すると、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成11年2月23日付取消理由通知書をもって商標権者に対して通知した本件商標の取消理由は、要旨つぎのとおりである。
本件商標と引用A商標は、その構成それぞれ前記したとおりのものであって、前者から生ずる「アルトーン」の称呼と後者から生ずる「アルトロン」の称呼とは、いずれも5音構成よりなり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭部分の「アルト」の3音及び語尾音「ン」を共通にし、異なるところは、中間における長音(「ー」)と「ロ」の音の差異にすぎない。そして、差異音とても、長音は、前音の母音(o)を一音節程度伸ばす音であり、「ロ」の音は、歯茎音の中でも響きの弱い子音(r)と母音(o)との結合した音であって、いずれも母音の(o)を共通にし、しかも、中間にあっては明瞭に聴取され難いこともあって、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語韻語調が近似し、彼此聞き誤るおそれがあるものとものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用A商標とは、称呼において紛れ得るものであり、かつ、引用A商標の医薬品分野における周知性も併せ考慮すれば、両商標は類似のものとするのが相当であり、かつ、本件商標の指定商品は引用A商標の指定商品中に包含されているものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は取り消すべきものである。
4 商標権者の意見
上記取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨つぎのとおり述べ、証拠方法として、参考資料1乃至参考資料5を提出した。
(1)本件商標が「ALTONE」の欧文字と「アルトーン」の片仮名文字とを上下2段に横書きしてなるに対して、引用A商標が「アルトロン」の片仮名文字と「ARTRON」の欧文字とを上下2段に横書きしてなるものであるから、本件商標と引用A商標は、その外観において互いに紛れるおそれは全くない。
(2)本件商標より生ずる「アルトーン」の称呼と引用A商標より生ずる「アルトロン」の称呼とを比較してみると、両称呼は、語頭部において「アルト」の3音及び末尾において「ン」の音を共通にするものであるが、第4音目において前者が第3音の「ト」音に続く長音であるに対して、後者が「ロ」音の短音とするの差異がある。
この前者の差異音の長音は、その前音の無声の破裂音である「ト」音の母音(o)を一拍延ばした音である。これに対し、後者の差異音の「ロ」音は、舌先を歯茎に向かって弾かせる比較的に強い音として発音される有声の弾音であり、それに続く末尾の「ン」音が鼻音で弱音であることと相侯って、該「ロ」音が一層明確に発音または聴取されるものである(この点について「取消理由通知書」は何等触れていない。)。したがって、両称呼は、この差異音の音質・音感が異なり、これが全体の称呼に及ぼす影響が極めて大きいものであるから、全体として称呼した場合には、その語音語感が異なるものとなり、明確に区別して発音または聴取されるものである。
(3)本件商標と引用A商標は、それぞれ造語よりなるものであるから、その観念においても互いに紛れるおそれの全くないものである。
上述のとおり、本件商標と引用A商標は、その外観・称呼および観念のいずれにおいても互いに紛れるおそれの全くないものであるから、非類似の商標であることが明らかである。
また、この商標権者の主張と同様に非類似と判断されている審決例(参考資料3乃至参考資料5)があり、これら審決例においても本件商標と引用A商標とが非類似の商標であるとの主張の正当性が立証されているところである。
さらに、上述のとおり、本件商標と引用A商標とが非類似商標であることから、引用A商標が医薬品の分野において周知性を有していると仮定しても、これが両商標の類否に影響を及ぼすものではない。
以上詳述したとおり、本件商標は、引用A商標とは非類似の商標であるから、取消理由摘示の法条に該当するものでなく、その登録は取り消されるべきでない。
5 当審の判断
本件商標についてした先の取消理由は妥当なものであって、本件商標と引用A商標とは、称呼において互いに相紛らわしく、その外観、観念の点を考慮するとしても、なおその出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標といわなければならない。
すなわち、口頭又は電話による商取引が普通一般に行われるというべき本件商標の指定商品の分野においては、商標より生ずる称呼を重要な取引指標とする取引事情にあること、さらに、引用A商標が申立人S社に係る高脂質血症改善剤(治療剤)を表示するものとして医薬品の商品分野において相当程度の周知性を有しているものと認められること等取引の実情を総合勘案するに、本件商標をその指定商品について使用することにより、需要者はその商品の出所を混同するおそれがあるといわざるを得ないから、結局、本件商標は、引用A商標と類似し、かつ、その指定商品も引用A商標の指定商品中に包含されるものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ない。
商標権者は、意見書において、両者の称呼を比較した場合、後者の差異音の「ロ」音は、舌先を歯茎に向かって弾かせる比較的に強い音として発音される有声の弾音であり、それに続く末尾の「ン」音が鼻音で弱音であることと相侯って、該「ロ」音が一層明確に発音または聴取されるものである(この点について「取消理由通知書」は何等触れていない。)と主張しているが、取消理由は、差異音である長音は、前音の母音(o)を一音節程度伸ばす音であり、「ロ」の音は、歯茎音の中でも響きの弱い子音(r)と母音(o)との結合した音であって、いずれも母音の(o)を共通にし、しかも、中間にあっては明瞭に聴取され難いこともあって、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語韻語調が近似し彼此聞き誤るおそれがあると認定し、かつ、前記取引事情を総合勘案した結果、両商標を類似としたものであって、この認定、判断に誤りはない。
また、商標権者がその主張の根拠として提出した審決例(参考資料3乃至参考資料5)をみるに、なるほど参考資料3(昭和59年審判第8339号)の事例が商標の構成において本件事案と酷似するものであるとしても、その指定商品は電気機械器具、電子応用機械器具等の機械器具に係る事例であって、本件事案とは指定商品の分野を異にし、また、このほか提出の審決例も商標の構成その他において、本件事案とは自ずと事情を異にするものであるから、それら提出の審決例をもって本件の類否判定の基準とするのは必ずしも適切でなく、その主張は採用することができない。
その他、前記認定を覆すに足りる証左は見出せない。
したがって、本件商標は、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録は取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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