Trademark Appeal Case
「里」と「故郷」の観念類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第91100号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4265765号商標(以下「本件商標」という。)は、「りょうまのふるさと」の文字と「竜馬の故郷」の文字とを二段に併記してなり、平成9年11月21日に登録出願され、第33類「日本酒」を指定商品として、平成11年4月23日に設定の登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件商標は、昭和63年10月27日に登録出願され、「竜馬の里」の文字を横書きしてなり、第28類「酒類」を指定商品として、平成3年9月30日に設定登録されている登録第2333417号商標(以下「引用商標」という。)と、観念において類似する商標であって、引用商標に係る指定商品と同一の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。
3 取消理由の通知
平成11年11月29日付けで、商標権者に要旨下記の取消理由を通知した。
本件商標と引用商標とは、いずれも「竜馬のふるさと」の観念を生ずるものであるから、両者は観念において類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品に包含されているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べ、証拠として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
本件商標の「りょうまのふるさと/竜馬の故郷」を出願した経緯は、当社が「竜馬の里」を付した「清酒」を昭和62年9月17日に徳利に詰めて発売していたものを、申立人は当社が出願していないことを知り、先に出願して申立人の登録商標としてしまったことに単を発しているのである。
このことは、申立人の所有する登録商標「竜馬の里」が昭和63年10月27日に出願されている、つまり、当社が「清酒」を発売した後であることからも明らかである(乙第1号証)。
また、申立人は本商標権者と前記引用商標につき、平成6年3月1日付で使用許諾契約を締結したが、契約締結後その商標の使用状況についての報告及び商標の使用料の支払いがないことを理由にその商標の使用を許諾できないと回答されたものであるが、この使用許諾契約にしても突然の申し入れであり、当社社長が同じ酒造会社であるから余分な争い事は避けたいとの理由で応じたものであるし、当社が高知市愛宕町から高知県伊野町勝賀瀬へ工場移転時に契約書が紛れてしまい、その理由を手紙で説明したのに聞き入れられず、契約不履行とされてしまったものである(乙第2号証)。
さらに、本件商標「りょうまのふるさと/竜馬の故郷」は当社の社長の母の父の曽祖父である「田中良助」が「坂本竜馬」と深い縁があり(乙第3号証)、それにちなんで本件商標の登録を受けたものであるし、それほど思い入れのある商標である。
申立人は、引用商標「竜馬の里」の「里」の語は、「故郷」、「ふるさと」の語義を有するから、引用商標「竜馬の里」からは「竜馬の故郷」、「竜馬のふるさと」の観念を生じ、本件商標と引用商標からは同一の観念を生ずると述べているが、甲第2号証〜甲第7号証は「さと【里・郷】」からの事例であり、「故郷(ふるさと)」を引いた事例は一切記載されていない。
そこで、「故郷(ふるさと)」を岩波新書発刊の「広辞苑」(乙第4号証)で引いてみると「古くなり荒れはてた土地。自分が生まれた土地。かつてすんだことのある土地。また、なじみ深い土地。」などと記載されている。
また「里」を引いてみると「人家のある所。ひとざと。律令制の地方行政区画の一。宮仕えする人の自家の称。妻・養子・奉公人などの実家。(寺に対して)俗世間。在家。養育料を添えて、子供を預けること。また、その家。(都に対して)田舎。在所。」などと記載されている。
このように、最もポピュラーである「広辞苑」には「故郷」と「里」が同義語として紹介されていないのであることから、一概に「故郷」と「里」が同義語と結論付けるのは無理があると思料する。
この「広辞苑」から判断する限りにおいては、本件商標「竜馬の故郷」は「竜馬の生まれた土地」、片や引用商標「竜馬の里」からは「竜馬の家のある所」の語義が成り立ち、「竜馬の生まれた土地」は一つしかあり得ないのであり、「竜馬の家のある所」は家を建てれば何箇所にも存在することからして、申立人が述べているような同義語とはなりえないのである。
ですから、申立人が述べている、高知県は「竜馬」の出身地であり、竜馬は若くして土佐藩を出奔し、その後「長崎」、「京都」等に居住した、とあるが、「広辞苑」の語義からは「長崎」「京都」も「竜馬の里」となりえる可能性がある。
また、申立人は「甲斐の里」と「甲斐の古さと」、「甲斐源氏の里」と「甲斐源氏のふるさと」、「杏の里」と「あんずの故郷」、「翡翠の里」と「翡翠のふるさと」が互いに独立の商標として併存し登録された例もあると認めているが、これは、審査官が「故郷」と「里」は観念が相違するとして適法に許可された証拠であり、「誰々の里」と「誰々の故郷」のような特定の人物の「里」、「故郷」を指す語ではなく、「竜馬の里」と「竜馬の故郷」の場合とは事情を異にしている、というのは詭弁としかいいようがない。
したがって、「竜馬の故郷」と「竜馬の里」とは、観念が相違するから、これに接する需要者、取引者は両者を何ら混同することなく、別異と理解することは容易と思われる。
以上のとおり、本件商標は引用商標と観念上相紛れるおそれはなく、商標法第4条第1項第11号の規定違反には該当せず、適法に許可されて然るべきである。
5 当審の判断
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲第2号証の「日本国語大辞典」(1992年4月1日 株式会社小学館発行)、甲第3号証の「辞林 21」(1993年11月1日 株式会社三省堂発行)、甲第4号証の「国語大辞典」(1993年1月10日 株式会社小学館発行)、甲第5号証の「大辞泉」(1998年11月20日 株式会社小学館発行)及び甲第6号証の「大辞林」(1995年11月3日 株式会社三省堂発行)には、「里」の語が「故郷、ふるさと」等も意味するものである旨記載されている。
そうとすれば、「竜馬の里」の文字よりなる引用商標は、これより「竜馬のふるさと」の観念をも生ずるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、いずれも「竜馬のふるさと」の観念を生ずるものであるから、両者は観念において類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品に包含されているものである。
なお、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記3)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見は、以下の理由により、採用することができない。
商標権者は、証拠として乙第3号証を提出し、最もポピュラーである「広辞苑」には「故郷」と「里」が同義語として紹介されていないのであることから、一概に「故郷」と「里」が同義語と結論付けるのは無理がある旨述べているが、「竜馬の故郷」「竜馬の里」の文字に接する取引者・需要者は、両者より同様の意味合いを想起することは決して少なくないものとみるのが相当であるから、上記認定のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも「竜馬のふるさと」の観念を生ずるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。