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Trademark Appeal Case

商標不使用取消の正当理由

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2007−301543(T2007−301543/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4105304号商標及び登録第4123998号商標及び登録第4132919号商標及び登録第4133037号商標及び登録第4135567号商標及び登録第4144129号商標及び登録第4144134号商標及び登録第4144135号商標及び登録第4347375号商標及び登録第4379711号商標及び登録第4379712号商標及び登録第4379715号商標及び登録第4379716号商標及び登録第4383603号商標及び登録第4383604号商標及び登録第4383605号商標及び登録第4625159号商標及び登録第4625160号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 取消請求に係る商標

(1)2007年取消審判第301521号事件に係る登録第4105304号商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成8年5月16日に登録出願、第28類「遊戯用器具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,ビリヤード用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,釣り具」を指定商品として同10年1月23日に設定登録されたものである。

そして、本商標権については、専用使用権者を「ジャス・インターナショナル株式会社」として、地域を「日本国内全域」、期間を「平成20年1月23日まで」、内容を「全指定商品」とする専用使用権が平成12年12月20日付で設定登録され、その後、平成19年5月9日付で、該専用使用権の設定登録の抹消の登録がなされている。

(2)その外、併合した各審判事件に係る登録第4123998号商標、登録第4132919号商標、登録第4133037号商標、登録第4135567号商標、登録第4144129号商標、登録第4144134号商標、登録第4144135号商標、登録第4347375号商標、登録第4379711号商標、登録第4379712号商標、登録第4379715号商標、登録第4379716号商標、登録第4383603号商標、登録第4383604号商標、登録第4383605号商標、登録第4625159号商標及び登録第4625160号商標についての商標の構成、指定商品・指定役務、出願日、設定登録日等は、別掲(2)ないし(18)に示すとおりである(以下、上記した登録第4105304号商標をも含めて「本件各商標」という。)。

2 請求人の主張(要旨)

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第58号証を提出した。

(1)請求の理由

請求人が調査した結果、本件各商標は、商標権者により、少なくとも過去3年以内に日本国内でその指定商品又は指定役務には使用されていないことが判明した。

したがって、本件各商標の登録は、取消されるべきものである。

(2)答弁に対する弁駁

(ア)不使用についての正当理由の主張について

本件各商標は、被請求人により過去3年間使用されていないのは事実であり、被請求人とジャス・インターナショナル株式会社(以下「ジャス」という。)との間の契約(乙第1号証)及びそれに基づく専用使用権の設定等は、個人的な事情に属することであるから、本件各商標が不使用であったことの正当理由に該当するものではない。

(イ)本件各審判請求が信義則違反・権利濫用にあたる旨の主張について

請求人とジャスとは全くの別法人であり、請求人がジャスから代理人としての各種手続きに協力を得たとしても法律的に関係のないことである。請求人がジャスのダミーである旨の被請求人の主張は推測に過ぎない。

被請求人の主張は、全て、個人的・私企業的な自己の利益に基づいたものであり、世界的商標ブローカーとして、自己の金銭的要求を満たし、本件各商標による自己の利益の保持を要求しているに過ぎない。

被請求人関連の登録商標は、元々、ハーベイ・ボールの著作権の権利範囲にあり、それを剽窃して世界各国で商標登録したものであって、「スマイリー・フェイス」を特定の商標権者が独占することは、このマークの有名なエピソード、固有の人気や著名性に便乗する意図等があり、公平な競争秩序ないし公平の観念に反するので、本来、取消又は無効とされるべき商標である(甲各号証参照)。

そして、被請求人のビジネスは、東京高裁平成11年(ネ)第5027号損害賠償等請求控訴事件の判決(甲第19号証)において判示されたように、詐欺的ビジネスであり、該判決の内容は朝日新聞、読売新聞、産経新聞等においても報道されている(甲第18号証)。この報道の影響は大きく、その当時、メーカー、小売、問屋からこのような詐欺師のマークを使用することは非常識だとの非難を受け続けた。以上の状況で、ジャスは、被請求人の本件各商標を強調して事業を行うことは無理であり、従来から主張していたハーベイ・ボールの著作、創作、ストーリー、実績を強調し、著作権によって価値観を出す以外に無いと判断するに至ったものである。

3 被請求人の答弁(要旨)

被請求人は、本件各審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第11号証を提出した。

(1)不使用についての正当理由について

(ア)本件各商標は、イギリス在住のフランス人である被請求人が日本において正当に所有している登録商標である。

被請求人は、被請求人の商標を管理するスマイリー・ライセンシング・コーポレーション(現スマイリーワールド・リミテッド)を代理人として、平成12年10月30日に、ジャスとの間で、専用使用権設定契約(以下「本件契約」という。)を締結した(乙第1号証)。

この契約書においては、ジャスは、専用使用権の設定後は自らの費用負担及び責任において許諾商標の保守に尽力する一方、被請求人は、本件契約書締結の時点から、日本国内における直接の営業活動を行ってはならないとされ、契約の有効期限は平成16年10月31日までとされた。そして、この契約に基づき専用使用権の設定登録がなされた。

しかるに、ジャスは、各専用使用権を前記及び別掲に示した各登録商標の記載のとおり、平成20年1月23日ないし平成24年11月29日までの日付を終期として、特許庁においてその登録を行った。その後、本件契約終了後に、被請求人は再三にわたりジャスに対し、専用使用権の抹消を求めたが、ジャスはこれに応じなかった。ジャスが専用使用権の抹消にようやく応じ、抹消の申請登録がなされたのは、いずれの商標権についても平成19年5月9日のことである。したがって、この専用使用権抹消の時点まで、被請求人は、自ら本件各商標を使用することができなかった。

また、この専用使用権設定登録抹消後、同年11月の本件各審判請求までのわずかな時間で、外国在住の被請求人が、新たに日本における代理人を選定し、サブライセンス契約の締結までこぎつけるのは現実には不可能といわざるを得ず、被請求人には落ち度はなく、被請求人は、本件各商標を使用することができなかったものである。

(イ)被請求人は、専用使用権者であったジャスを通じても、本件各商標を使用することはできなかった。

ジャスは、被請求人の日本における代理店であったばかりではなく、被請求人の所有する商標に類似する商標を有する請求人の代理店でもあった。

ジャスは、被請求人と専用使用権設定契約を締結した理由につき、平成18年10月31日付の書面(乙第3号証)において、「JASSは、ルフラーニ氏と2000年10月30日付けで『商標使用契約』を締結しましたが、実際は彼の商標を使用することが目的ではなく、ルフラーニ氏からの苦情を防ぐために契約したに過ぎません。」等と述べ、被請求人の商標権の行使を妨害する意図であることを自認している。

また、ジャスは、被請求人の本件各商標登録に対し異議を申し立て、更に、本件各商標と類似した商標を登録しようとすらしていたものであり、被請求人の権利と両立しない活動すら行っていたのである。

したがって、ジャスの専用使用権の設定が、被請求人の日本での商標の使用を妨げることにあったため、専用使用権者を通じての日本での商標の使用は全くなされなかった。外国にある被請求人に、ジャスのかような意図を知る由もなく、被請求人は、上述の専用使用権の抹消の問題が生じるまで、ジャスを信頼し、被請求人の商標の日本での使用をジャスに託してきたのである。本件各商標の不使用の事実が存在するとすれば、それは、専用使用権の設定によって、被請求人自らの商標使用が制限される一方で、ジャスの背信的意思ないし悪意により、専用使用権者を通じても本件各商標を使用できなかったことに基づくのである。

したがって、本件各商標の不使用には、やむを得ない事情があったものである。

(2)本件各審判請求が信義則違反・権利濫用であることについて

ジャスと請求人は、一体のもの、あるいは、請求人は、ジャスの道具として使われている法人と捉えられるものである。

ジャスの代表取締役は、請求人の取締役である。さらに、ジャスの取締役2名は、請求人の取締役の両親である(乙第4号証ないし乙第6号証)。現段階では、請求人とジャスとの資本関係は明らかではないが、いずれにせよ、かかる役員構成からみても、ジャスと請求人の意思決定の過程は実質的に同一である。

請求人は、「スマイルマーク」の創作者を自称するアメリカ人のハーベイ・ボールの死後、アメリカで発足したハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の日本支部となっている(乙第7号証)。そして、請求人の会社の目的には、スマイル・マークの登録商標の所有と保護が掲げられているが(乙第4号証)、ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団日本支部の住所は、現地調査の結果、マンションであり、926号室は「山下会計事務所」と表示されており、広告等もない(乙第10号証)。日本支部として行ってしかるべき活動を行っているのはジャスであり、請求人に独自の実質的な活動は認められない(乙第8号証、乙第9号証)。

ジャスがハーベイ・ボールの代理人を勤めているのはいつの時点からか明らかではないが、ジャスは、平成10年には、ハーベイ・ボールの代理人として、被請求人の有する商標登録に対して、異議申し立てを行っている(乙第2号証)。それが認められなくなると、本件各商標と類似の商標出願(商願2002−18498等)を行う一方、被請求人の商標の使用を目的としない専用使用権の設定契約を締結するなどして、実質的に、被請求人の本件各商標の使用を不可能にした。そして、その一方で、会社の目的も全く異なる有限会社オリンピアの商号及び目的の変更を行わせて、現在の請求人である「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」とし(乙第4号証、乙第11号証)、同社に対し、ジャスの権利を承継させ、ジャスがそれまで行ってきた手続きを引き継がせたのである。

以上要するに、請求人は、何らの活動実績もなく、本件各審判請求がそうであるように、自ら表立ってできないが、ジャスが被請求人の営業活動を妨害しようとする際に、ジャスにより都合よく使われるダミー会社に過ぎないことが明らかである。

したがって、本件各商標の不使用の状態を意図的に作り出した者と実質的に同一である請求人による本件各審判の請求行為は、実質的には、ジャスが請求人を使って、被請求人たる商標権者を害することを目的としているといわざるを得ず、被請求人との関係において、信義則に反し、権利の濫用であることは明らかである。

よって、本件各審判の請求は認められるものではない。

4 当審の判断

商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについて登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取り消しを免れないこととなっている。

(1)本件各商標の使用の事実の有無について

被請求人は、併合した各審判事件のいずれにおいても、本件各商標をその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについて使用をしていた事実を裏付ける証拠を何ら提出していない。

したがって、本件各商標は、本件各審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る指定商品又は指定役務について使用されていなかったものといわなければならない。

(2)不使用についての正当理由の有無について

被請求人は、本件各商標を使用していないことについて正当な理由がある旨主張して、乙第1号証ないし同第3号証を提出している。

(ア)被請求人が不使用についての正当理由として挙げているのは、被請求人は、ジャスとの間で、専用使用権設定契約(乙第1号証)を締結していたため、この専用使用権抹消の時点まで、日本国内において、自ら本件各商標を使用することができなかったこと、また、専用使用権者(ジャス)の背信的意思ないし悪意により、専用使用権者を通じての日本での商標の使用も全くなされなかったこと、更に、本件契約(乙第1号証)終了後に、再三にわたりジャスに対し、専用使用権の抹消を求めたが、ジャスはなかなか専用使用権の抹消に応ずることなく、結局、抹消の申請登録がなされたのは平成19年5月9日のことであり、専用使用権設定登録抹消後、本件各審判請求がされた同年11月までのわずかな時間で、外国在住の被請求人が、新たにサブライセンス契約の締結までこぎつけるのは現実には不可能であったことを挙げている。

(イ)しかしながら、商標法第50条第2項所定の正当な理由があることとは、地震、水害等の不可抗力によって生じた事由、放火、破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等、商標権者等の責めに帰すことができない真にやむを得ないと認められる特別の事情が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうものと解されている。

そうとすれば、被請求人が不使用についての正当理由として挙げている前記理由は、被請求人が自らの自由な意思に基づく選択によって、ジャスとの間において締結した契約に起因していることであるから、このような当事者間における契約を原因とする事情は、そもそも、上記した商標権者等の責めに帰すことができない真にやむを得ない特別の事情と認めることはできない。

なお、付言すれば、被請求人が主張している専用使用権者であるジャスとの関係にしても、乙第1号証の契約書によれば、その第5条(対価)には「JII(株式会社ジャス・インターナショナル)は、各ライセンシーから受領した売上報告書をSLC(スマイリー・ライセンシング・コーポレーション)に提出する。売上報告書の提出期限は、未収ロイヤルティの有無にかかわらず、各サブライセンス契約年度の末日より30日以内とする。」とあり、第7条(義務不履行)には「いずれかの当事者が本契約または本契約上の義務に違反した場合、もう一方の当事者は、違反当事者への書面による通知をもって本契約を解除することができる。」とあり、更に、第10条C(その他)には「SLCは、自らの著作権、商標、営業上の信用および評判を守るため、JIIの事業活動を監督する権利・権限を保留する。」と規定されている。

これらの規定からみれば、被請求人が外国に在住していたとしても、また、被請求人の商標を管理するSLCが外国企業であったとしても、専用使用権者であるジャスの動向を売上報告書の提出等を通して充分に把握し得たはずであり、その事業活動を監督し得たはずである。しかるに、被請求人がその主張を裏付ける証拠として提出しているのは、ジャスがローラン・デュポワ弁護士に宛てた平成18年10月31日付の書面(乙第3号証)のみである。このことからみれば、被請求人(SLC)は、専用使用権者の事業活動を充分に監督し、所要の措置を講じていたものとはいい難いから、これらの点についての被請求人の主張も採用できない。

してみれば、被請求人が主張している種々の事情は、被請求人の内部事情に属するものというべきであるから、これをもって前記した不使用についての特別の事情と認めることはできない。

(ウ)したがって、商標権者である被請求人が本件各商標の指定商品あるいは指定役務について本件各商標を使用することができなかったことにつき、正当な理由があったものと認めることはできない。そして、他に、前記特別の事情が存したことを認めるに足る証拠もない。

(3)本件各審判請求が信義則違反・権利濫用に当たるか否かについて

この点について、被請求人は、請求人とジャスとは、その役員構成(乙第4号証ないし乙第6号証)からみても、両者の意思決定の過程は実質的に同一であり、請求人とジャスとは一体のもの、あるいは、請求人は、ジャスのダミー会社に過ぎないものであるから、本件各商標の不使用の状態を意図的に作り出したジャスと実質的に同一である請求人による本件各審判の請求行為は、実質的には、ジャスが請求人を使って、被請求人たる商標権者を害することを目的としているといわざるを得ず、信義則に反し、権利の濫用である旨主張している。

(ア)ところで、登録商標の不使用による取消審判について、商標法第50条第1項には、「・・・何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されていることからみれば、請求人による本件各審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる特段の事情がない限り、当該請求が違法なものとなることはないものと解される。

そこで、本件各審判請求が専ら被請求人を害することを目的としてなされたものであるか否かについて検討する。

(イ)被請求人の提出に係る乙各号証によれば、請求人の商号や会社の目的は、平成15年7月15日に変更の登記がなされており、商号は「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」となり、会社の目的は「スマイル・マークを利用した衣料品、アクセサリー並びに帽子等の制作及び販売、スマイル・マークの登録商標の所有と保護」等となっており、平成15年8月7日には、請求人会社の取締役としてチャールズ・ボールの就任の登記がなされている(乙第4号証)。そのチャールズ・ボールは、「スマイル・マーク」の創作者を自称するアメリカ人のハーベイ・ボールの息子であり、ハーベイ・ボールの死後、アメリカにおいて「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」を設立しており、請求人は、その日本支部となっていることが認められる(乙第7号証)。

そして、そのハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団については、乙第7号証によれば、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団は公的団体です」の見出しのもとに、「『黄色い顔に小さい目』の『スマイリー・フェイス』は別名『モナリザ以来の笑顔』といわれ、1963年末に米国人『ハーベイ・ボール』氏によって、創作・著造されました。彼の故郷マサチューセッツ州やウスター市では彼の創作・著作が公認され、地元には博物館が建てられています。1999年にはアメリカの70年代を代表するイメージとしてアメリカの郵政公社の記念切手となり、公式ビデオでは70年代を代表する風俗として収録されています。残念なことに『ハーベイ・ボール』氏は2001年4月12日に死去され現在は長男の『チャールズ・ボール』氏を中心として『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』が設立され、彼の偉業を後世に残す『ワールド・スマイリ一』の活動を行っている。日本でのスマイリー・フェイス商品化の事業の収益の一部はこの『ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団』の活動資金となっている。」と記載されている。また、乙第8号証には、「スマイル商品事業展開」の見出しのもとに、「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』活動を支える大きな基金は『スマイル商品化事業』である。現在は主に日本で行っており、スマイル・フェイス商品を多くの日本人の方々に提供し多くの支持を受けている。この事業は一般の商品販売とは異なり、アメリカのハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の『ワールド・スマイル・デイ』の活動を支えるものであり、間接的に世界中に大きく貢献している。」と記載されており、その下に「スマイリー・フェイス商品化代理人は『JASS INTERNATIONAL INC.』です。商品化は当社の許可を得てください。」と記載されている。

(ウ)これらの記載からみれば、「スマイル・マーク」がハーベイ・ボールの著作に係るものであるか否かはさて措くとしても、請求人は、アメリカで発足したハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団の日本支部として、「スマイル・マークを利用した衣料品、アクセサリー並びに帽子等の制作及び販売、スマイル・マークの登録商標の所有と保護」等の事業を行っていたものと認められる(実際の活動は、代理人であるジャスが行っていたとしても)。

そうとすれば、請求人による本件各審判請求は、請求人による「スマイル・マーク」に係る事業の障害となる本件各商標を排除するために行われたものと推認されるところであり、このような請求理由は、不使用取消審判の請求理由として想定される主要な請求理由の一つといえるから、この観点からみた場合、本件各審判の請求自体が専ら、被請求人を害することを目的としてなされた違法なものとは認められない。

(エ)また、確かに、ジャスは、請求人の代理人として活動をしていたものと認められ(乙第8号証)、それ以前からも、故ハーベイ・ボールの代理人として活動をしていたことが認められる。

このことは、例えば、各審判事件の乙第2号証(商標登録原簿の写し)には、本件各商標について、異議申立に係る予告登録及び確定登録の記載があり、特許電子図書館により、そのうちの例えば、登録第4105304号商標に係る平成10年異議第90982号の商標登録異議決定をみれば、商標権者は「フランクリン ルフラーニ」であり、登録異議申立人は「ハーベイ・ボール」、その代理人は「ジャス・インターナショナル株式会社」であり、登録異議の申立ての理由には、「本件商標は、申立人本人が1963年12月にアメリカで作った『SMILEY FACE(スマイリー・フェイス)』を勝手に剽窃し、申立人の『著作権』を侵害する為、登録を取り消すことを要求する。」旨記載されている。

そうとすれば、被請求人は、遅くとも、該異議申立の副本が被請求人に送付された平成10年10月頃までには、ジャスがハーベイ・ボールの代理人として被請求人の有する商標登録に対して異議申立てを行っていたことを知り得たはずであり、ジャスがハーベイ・ボールの代理人として活動していた事実を認識していたものということができる。

そして、被請求人は、ジャスとの間で、平成12年10月30日に乙第1号証の契約を締結したのであるから、被請求人は、上記の事実関係を承知の上で、ジャスとの間で乙第1号証の契約を締結したものといわなければならない。

加えて、被請求人及び被請求人と独占的総合代理店契約を締結していた株式会社イングラムの「SMILEY FACE(スマイリー・フェイス)」に係る事業は、東京高裁平成11年(ネ)第5027号損害賠償等請求控訴事件(平成12年1月19日判決)において、「本件放送(FM東京のラジオ番組)の核心的部分である『被控訴人(株式会社イングラム)のビジネスが国際的詐欺ビジネスの様相を見せ始めた』との摘示事実は、被控訴人のビジネスを批判する文言としてはやや穏当を欠く表現ではあるものの、その主要部分が真実であるから、本件放送は、被控訴人の名誉を毀損するものであるが、違法性を阻却されるというべきである。」と判示されており、このことが朝日新聞、読売新聞、産経新聞等においても報道されていた事実が認められる(甲第18号証、甲第19号証 参照)。

このような状況のもとに、SLC(スマイリー・ライセンシング・コーポレーション)とジャスとの間で乙第1号証の契約が締結されたことからみれば、ジャスは、乙第1号証の契約の対象となった本件各商標を前面に打ち出して事業を行うことには困難が伴ったものと推測されるところであり、ジャスが乙第3号証の書簡において、「JASSは、ルフラーニ氏と2000年10月30日付けで『商標使用契約』を締結しましたが、実際は彼の商標を使用することが目的ではなく、ルフラーニ氏からの苦情を防ぐ為に契約したに過ぎません。」と述べていることにもやむを得ない側面があったものということができる。

そうとすれば、ジャスが被請求人との間で乙第1号証の契約を締結したこと及びその契約に基づき専用使用権の設定をしたことが被請求人の日本での商標の使用を妨げることを目的としてなされたものとはいい難く、また、ジャスが該契約の対象となっている本件各商標を積極的に使用しなかったとしても、そのことが被請求人を害するためであったものともいい難い。そして、ジャスにおいて該契約に違反する行為があったというのであれば、先にも述べたとおり、被請求人(SLC)は、より早い段階において所要の措置を講ずることも可能であった筈である。

してみれば、ジャスは、本件各商標の不使用の状態を被請求人を害する目的をもって意図的に作り出したものとはいえないから、被請求人が主張しているように、請求人とジャスとが実質的に同一といえる立場にあったとしても、請求人による本件各審判の請求が、専ら、被請求人を害することを目的としてなされたものとは認められず、他に、被請求人の主張を認めるに足る証拠も見当たらない。

したがって、請求人による本件各審判請求を信義則違反・権利濫用に当たるものということはできない。

(4)まとめ

以上のとおり、本件各商標は、その指定商品又は指定役務について、本件各審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人によって使用されていたとの事実を認めることはできず、また、被請求人が本件各商標をその指定商品又は指定役務について日本国内において使用していないことについて正当な理由があったものということもできない。そして、請求人による本件各審判の請求が信義則違反・権利濫用に当たるものということもできない。

したがって、商標法第50条の規定により、本件各商標の登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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